Sunday, January 10, 2010

“Massachusetts v. EPA and its Aftermath”

水曜日のエントリーで触れた、Massachusetts v. EPAについてのBerkley Law Schoolの講義ビデオを見てみた。Payne教授のクラスなのだが、ゲストスピーカーがメインで喋っていて、このゲストスピーカーが誰なのかはよくわからない。もしかしたら、講義のどこかで自己紹介していたのを聞き逃しただけかも知れない。


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講義の過半は、“standing”(原告適格)の議論に割かれている。過去の環境訴訟を振り返りながら、Massachusetts v. EPAにおいてMassachusetts州に原告適格が認められたのはどういう論拠であったのか探る議論。

僕としては、「Clean Air Actは、EPAに対し、温室効果ガス(GHG)の規制権限を与えているか否か」という点に、より興味があったのだが、この点については、講義の最終パート約10分(1:36以降)で比較的コンパクトに述べられている。

Clean Air Act(CAA)のSection 112(b)(3)(B)は、以下のように規定している。
The Administrator shall add a substance to the list upon a showing (※ 規制対象物質を列記した“LIST OF POLLUTANTS”のことを指している)by the petitioner or on the Administrator’s own determination that the substance is an air pollutant and that emissions, ambient concentrations, bioaccumulation or deposition of the substance are known to cause or may reasonably be anticipated to cause adverse effects to human health or adverse  environmental effects.
ざっとCAAを見渡してみたところ、“air pollutant”を直接的に定義している条項は見当たらなかったので(もし僕が見落としているようなら教えていただけると幸い)、この規定が、実質的な“air pollutant”の定義規定となっているものと思われる。

Supreme Courtのmajority(5-4)の判断は、「GHGはCAAの“air pollutant”の定義に該当する」、従って、「Section 202(a) (“The Administrator(=EPA長官) shall by regulation prescribe ... standards applicable to the emission of any air pollutant from any class or classes of new motor vehicles or new motor vehicle engines, which in his judgment cause, or contribute to, air pollution which may reasonably be anticipated to endanger public health or welfare. ...”)により、EPA長官は、新車に対するGHG排出規制を行う権限を有するのみならず、それを行使する義務を負う」というもの。ちなみに、この引用の後半部分(which in his judgment cause, or contribute to, air pollution which may reasonably be anticipated to endanger public health or welfare)が、先月のEndangerment Findingに繋がっていくわけである。

講義を見終わってもよくわからない点が二つあった。

一つは、「EPAにはCAAに基づくGHG規制権限(及び義務)がある」とされた場合、EPAは、必要とあらば、新たな規制スキームを構築することもできるのかという点。たとえば、水曜日のエントリーでも触れた、水俣病訴訟のケースの場合、国は、旧水質二法に基づき、「指定水域の指定,水質基準及び特定施設の定め」をするだけで、必要な規制権限を行使することができた。つまり、新たな規制スキームそのものを構築する必要はなく、規制対象項目を追加するだけで足りたわけである。しかし、今回のEPAの場合、GHGをSOxやNOxと同様のスキームで規制できるかというと、物質の性質からしてかなり無理があるように思われる。この場合、EPAは、新たな規制スキームを――日本で言うところの「省令」で以て――free handで描けるということなのだろうか。或いは、Supreme Courtは、無理やりにでも、既存スキームを用いてGHGを規制するよう、EPAに求めているということなのだろうか。
   
もう一つは、この判決(それ自体は、新車の排ガス規制のみを対象としたもの)が、どういうメカニズムで、固定発生源の規制にも波及するのか、という点。僕の理解が間違っていなければ、議会がcap-and-trade法案を通せなかった場合にEPAが制定するとしているregulationには、自動車のみならず、固定発生源の規制も含まれていたように思う。これはなぜ、このようになるのだろうか。
  
投げっぱなしのエントリーですいません。先週に引き続き、知見をお持ちの方からのアドバイスをお待ちしております。
my room, Syracuse, Jan 10, 13:12

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