Sunday, January 31, 2010

Impacts of Large Amounts of Wind Power

Independent Study論文の最初のpartのdraft提出期限――というほど、厳密なものではないのだが、いちおう、「この日くらいに持ってきます」と担当教官に伝えておいた期日――が週明け月曜に迫っているので、そろそろ書き始めないとマズいのだが、なかなか書く内容を絞り込めずに苦しんでいる。

論文全体のテーマは、「再生可能エネルギー発電源を大規模に導入する際に必要となる送電網(transmission)関連の設備投資」について。最初のdraftは、「再生可能エネルギー発電源を大規模に導入することによって生じる送電システムへの影響」についてのみ書くことにしているのだが、数ある「影響」のうち、どの部分に焦点を当てるかで、その後の論文の方向性が少なからず定まってくるので、これがなかなか悩ましい。

今日、読んだ日本語の論文(*1)の中に、こんな一節があった。(下線はblog筆者)
風力発電の導入について各国で共通していることは,風力発電を始めとする再生可能エネルギーの既存の電力系統への大量導入は,技術的には可能であるが経済的な追加負担が必ず発生し,それを誰がどう負担するかというスキームの構築が重要だということであろう。
僕が今回の論文の中で明らかにしたいのは、まさにこの点なのだが、これをするためには、当然ながら、まずは経済学的検討の土台となる工学的知識を把握しなければならない。問題は、工学の領域にどこまで深く踏み込むか、ということである。

ここでいう「深さ」には、二つの意味合いがある。一つは、論文の中でどこまで言及するかという意味での「深さ」。もう一つは、論文の中では触れないながらも、背景知識としてどこまで知っておくべきかという意味での「深さ」である。当然ながら、後者の方が前者よりも「深い」。

今は、(最終的にどこまで言及するかはともかくとして)とりあえず、関連する論文を読み漁りながら、背景知識を深めていっている段階なのだが、やろうと思えば、どこまででも深めていけるテーマなだけに、どこでストップをかけるかが難しい。限られた時間を(この論文の主眼ではない)工学的知識の吸収に必要以上に割いてしまっては効率的じゃないし、かと言って、十分な背景知識なしに経済学的考察を行おうとしても、意味のある考察結果は得られないし…。

「経済的に実現可能な風力発電の普及」を促進するために行われたIEAの研究プロジェクト“Task 25”のfinal report summary paper(*2)によると、風力発電の大規模導入が送電システム全体に与える影響(the system wide impacts)は、①Balancing、②Adequacy of power、③Gridの3つの分野に大別できると言う。

①は、本質的にintermittent(断続的)な――人の手で、出力を完全にはcontrolできない――電力源である風力発電機からの電力供給と、市場からの電力需要とを、どのようにバランスさせるかという問題。ちなみに、電力という財は、常時、需要量と供給量を一致させておく必要があるので、通常の財では見られないほどの厳密さで、たえず供給量管理(=システム全体での出力調整)を行わなければならない。

②は、導入される風量発電容量のうちの何%が、「安定した(firmな)」capacityとしてカウントできるか――言い換えれば、どれだけの旧来型発電機を風力発電で置き換えられるか――という問題。このパーセンテージが低いと、見かけ上は大規模に風力発電が導入されているように見えても、実際には、旧来型発電機を代替することが出来ていない、ということになる。

③は、主に、congestion(混雑)の問題。電力の大消費地と発電地域の間に、十分な容量の送電線が敷設されていないと、せっかく発電をしても、その電力をスムーズに大消費地に運べないといった問題が生じる。これは、風力発電に限ったことではなく、旧来型の発電機でも起こりうる問題なのだが、風力発電の適地は、大消費地から離れた送電網の過疎地域であるケースが多いので、congestionが問題になりやすい。

これら三つの分野は、当然ながら、互いに関連し合っているのだが、その技術的な対応方法は、必ずしも同じではない。そのため、3つまとめて一つの仕組みでaddressする、という持って行き方は、ちょっと難しそうな(或いは無理が出そうな)予感。となると、この論文の中で、これら3つの問題をどのように扱うかが思案のしどころとなってくる。あくまで、何らかの形で3つすべてを包含する「仕組み」を模索するのか、それぞれ、別々の問題として考えるのか。後者の場合、3つの問題すべてを検討の対象とするのか、どれか一つ又は二つにfocusするのか。Focusする場合、その選定基準や如何――この辺りの問に、ある程度の答えを出さないことには、最初のpartのdraftも書き始められないなぁと悩んでいる次第であります。
*1 伊藤学 “海外における風力発電の動向について ―主に電力系統への影響評価事例を中心に―,” 季報 エネルギー総合工学, Vol.30 No.2, July 2007
*2 Holttinen et al. Impacts of Large Amounts of Wind Power on Design and Operation of Power Systems, Results of IEA Collaboration, October 2009
my room, Syracuse, Jan 30, 27:15

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