Wednesday, February 10, 2010

"Measure for Measure"

ときどき、このblogにもコメントをくださる某先輩が面白い記事を転送してくださった。“Measure for Measure” by Craig Pirrong @Global Energy Management Institute, Bauer College of Business, University of Houston。

いちおう、2月7日のFTの記事へのコメントという体裁になっているが、オリジナルの記事の方はたいして面白くもないので読む必要なし(何様だ、オレ?) Pirrongの記事だけ読んでも十分理解できるし、Pirrongの記事だけ読んでも十分に時間がかかる――blog記事にしてはめちゃ長い(笑)

この記事のポイントは、
although there is a strong conceptual case to be made for offsets (if it is cheaper to capture carbon somehow rather than reduce carbon output on other margins), the practical difficulties make it highly problematic to rely heavily on them.
The practical objection relates to transactions costs, notably what is sometimes called the measurement branch of transactions cost economics.
(拙訳) (他の利益に伴って発生する炭素の排出を削減するのと比べて、どちらが安いかということに関して)オフセットを支持する強い理論的論拠があるが、実務上の難しさを考えると、オフセットに強く依存することは大変疑問である。その実務上の反対理由となるのは、トランザクションコスト、とりわけ、その中でもmeasurement(測定)に関する部分である。
というところにある。

なぜそう言えるのかについて、blog後半で(長々と)論じられているが、Pirrongの論点は、大きく分けて、以下の三点に集約できると思う。

1. carbonは“bads”である。
carbonは、正の価値を持つ“goods”ではなく、負の価値を持つ“bads”なので、goodsの場合とは違って、“consumer”は、真面目にその品質をmonitorしようというincentiveを持たない。よって、その測定に関してはpublic regulationが必要となり、transaction costが発生する。

2. 債権としてのpermanence(永続性)の保障が困難。
オフセット事業を実施するdeveloperが倒産した場合、約束されたはずのcreditが発行されなくなってしまう(=permanence loss risks)。このリスクをmanageするという目的で、保険が売り出されたり、オフセットの「格付け」機関が登場したり、CDOs ― carbon derivative obligations ―が開発・販売されたりするだろうが、先のfinancial crisisで一般の債権について起こったことを思い起こすと、これらの仕組みが十分に機能するとは思えない。

3. additionality(追加性)の測定・判断が困難。
additionality(追加性)とは、あるオフセット事業から「産出」されるcarbon creditの量を算定する際にベースとなる考え方で、creditの販売益という「補助金」があろうがなかろうがいずれにせよ行われていたはずの事業と、実際にオフセット事業として行われる事業とのギャップを見ることによって、「追加的」に削減されるcarbon emissionの量を特定しようというもの。しかし実際には、「いずれにせよ行われていたはずの事業」(“base line scenario”と呼ばれる)の排出量を特定するのが非常に困難。Pirrong曰く、“highly, highly subjective, and built on layer after layer of assumptions.” (とてもとても主観的で、何層もの仮定の上に立脚するもの)

Pirrongがこの記事の中で言っていることは、去年の夏、僕がガーナでインターンをしながら実際に感じた印象と非常に近い(参照)。だからといって、「CDM廃止論」や「オフセット無用論」に直行するわけではないが、CDMやオフセット(ひいては、cap-and-trade)を考える際に、こうしたmeasurement問題への配慮が少なすぎるというPirrong指摘には全面的に同意できる。

経済学の観点からbig pictureを掴むのも大事だが、こういうB-School的な観点からの議論も、政策を考える上では非常に重要。問題は、経済学の議論以上に、耳を傾けてくれる人が政策畑には少なそうだということ。説明側の能力の問題と言ってしまえばそれまでなのだが…。
My room, Syracuse, Feb 9, 15:02

Tuesday, February 9, 2010

The evolution of DC Metrorail, 1976-2010

久々の鉄オタネタを。DC地下鉄網の変遷(1976~2010) via Chart Porn
折からの財政難を受け、WMATA(ワシントン都市圏交通局)は、今年7月以降、営業路線の縮小を予定しているらしい(参照)。このサイトは、それによって、DC地下鉄網が如何に「後退」するかをビジュアル的に伝えるためのもの。

週末は、Yellow Lineでの“ポトマック川越え”が出来なくなるらしい。ペンタゴン周辺とかアレクサンドリアに住んでいる人たちにとっては、ダメージは確かに大きそうだが、正直、それ以外の人にしてみれば、Yellow Lineなんて滅多に乗らないわけで、この措置が、WMATA(ひいてはWashington市)の財政難状況に鑑みて、「やむを得ない」ものなのか、そうは言ってもやっぱり「やり過ぎ」なのか、そこのところは、正直よくわからない。

実際に毎日Metroに乗っていた身からすると、運行本数の削減の方が、総体的なダメージは大きいような気がする。今でも、週末の運行本数の少なさは相当のもので、そうなると、正味の移動時間が計算できない(そもそも、「運転ダイア」なる概念はない。あるのは「運行間隔」だけ)ので、駅の近くに住んでる人でも「じゃぁ、車で行こうか」というふうになりがち。この状況が更にひどくなるわけだから、まさにジリ貧。運転本数の削減によって$8.5 millionの節約を見込んでいるそうだが、このあたりのdynamicな影響はちゃんと加味されているのだろうか。
   
ちなみに、DC地下鉄の乗り心地は、僕が知っているコミュータートレインの中では、文字通り「最悪」。阪和線が荒いとか、京阪が揺れるとか、そういう次元の問題ではない。しかし、路線を縮小するなんて言ってるくらいだから、あの乗り心地の悪さ――車輛のせいなのか、運転技術のせいなのかは知らないけれど――が改善される日は当分(永遠に?)やって来ないんだろうな。。
Maxwell School, Syracuse, Feb 9, 18:30

'fast track'

外交関係の授業を受けていると、たまに、「その国際合意は、treatyか、それとも、agreement (other than treaties)か」みたいな議論に出くわす。これまで、その違いがイマイチよくわからないままに来てしまっていたのだが、今日のInt'l Trade Lawの授業で、とてもわかりやすく説明されていたので、忘れないうちにメモしておく。

まず、米国がヨソの国と結ぶ国際約束(international agreement)は、以下の4つに分類できる(国際的な効力はいずれも同じ)。
  1. “Article II” Treaties (或いは、単に“Treaties”)
  2. Congressional-Executive agreements
  3. executive agreements pursuant to treaty
  4. Presidential-Executive agreements
1.の“Article II” Treatiesは、合衆国憲法Article II, Section 2, Clause 2(‘Treaty Clause’:“[The President] shall have Power, by and with the Advice and Consent of the Senate, to make Treaties, provided two thirds of the Senators present concur....”)に基づいて締結されるもの。基本的には、どんな国際合意にも使えるが(※ 違憲でない限り)、Senateの三分の二以上の賛成(いわゆる“super-majority”)が必要なので、実際にはあまり使われない。

2.のCongressional-Executive agreementsは、連邦議会(Congress)が、一定の範囲・期間内に限り、交渉権限を大統領に委任(delegate)するというもの。この場合、〈議会によるdelegation〉 → 〈大統領による(相手国との)negotiation〉 → 〈議会によるvote〉という流れを経ることになるが、最後のvoteは、up-or-down形式(賛成か反対かの二択。修正は不可)の単純多数決で、filibusterも使えないので、1.に比べれば、はるかに成立させやすい。いわゆる“fast track”はこのoptionを使ったもの。ちなみに、議会によるdelegationは、憲法Article I, Section 1(“All legislative Powers herein granted shall be vested in a Congress of the United States, which shall consist of a Senate and House of Representatives.”)によって授権された議会の立法権(legislative Powers)に依拠している。

3. のexecutive agreements pursuant to treatyは、既に締結されているtreatyの「執行(implementation)」とみなされる範囲内であれば、新たな議会手続きを経ずに行政府だけでagreementを結べるというもの。手続きは簡単だが、当然ながら、このoptionを使える範囲は非常に限られている。

4.のPresidential-Executive agreementsは、憲法Article II各sectionに規定された“executive power”だけに基づき、議会手続きを経ずに諸外国とのagreementを結ぶというもの。

Executive Branch(行政府)の立場からすると、4.を使えるならそれに越したことはない、ということになるが(それが無理なら2.がsecond best)、じゃぁ、どういう場合に4.が使えて、どういう場合には使えないのか――そこの線引きが次の問題になってくる。

これについて、最高裁のJackson判事は、Youngstown Sheet & Tube Co. v. Sawyer事件(1952)のconcurring opinion(同意意見)の中で、大統領と議会の権限の線引きが微妙な場合があり得る(“...there is a zone of twilight in which he [the President] and Congress may have concurrent authority, or in which its distribution is uncertain.”)と認めつつも、議会の意思が明示的又は非明示的に示されている場合(“with the expressed or implied will of Congress”)には、大統領の権限は、「憲法によって授権された大統領権限から議会権限を差し引いた部分」(“he [the President] can rely only upon his own constitutional powers minus any constitutional powers of Congress over the matter.”)に限定されるとしている。

憲法Article I, Section 8, Clause 3(‘Commerce Clause’:“[The Congress shall have power] To regulate Commerce with foreign Nations, and among the several States, and with the Indian tribes;”)で、外国との商取引を規制する権限が議会に属することは明確に示されているので、貿易関連の国際合意に、4.を使えないのは明らか。したがって、WTOをはじめとする貿易交渉においては、2.のoptionが使われているというわけ。

ちなみに――先生から言われて初めて気づいたのだが――日本は、何もしなくても「万年fast track」みたいな状態になっている。以下、日本国憲法上の「条約」締結に関する規定(第7条(天皇の国事行為)を除く)をば。
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第60条 (略)
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第61条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。

第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
1.、2. (略)
3.条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
4.~7. (略)
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Maxwell School, Syracuse, Feb 9, 17:35

Monday, February 8, 2010

Google, 'Parisian Love'

昨日のSuper Bowlは、アメリカ人に言わせれば、“So nice!!”なゲームだったらしい。僕も「いちおう観とかないとネ」くらいのノリで、一通り、だいたい全部観てみたが、「まぁ、こんなもんかなぁ」と。本音で言えば、やっぱり、昼間のCapitals vs Penguinsの方が断然面白かったと思う(もーいいって?)

Super Bowlと言えば、各社選りすぐりの新作CMを投入してくる(Super Bowl限定CMなんてのもザラ)ことでも有名。僕的には、どちらかと言うと、試合自体よりこっちの方を真面目に観ていたという説も。雑誌TIMEのwebサイトに、昨日放映された全68編のCMのリスト(そのままyoutubeに飛べる)が出ているので、ご興味ある向きは参照されたし。

僕的に一番上手いなと思ったのは、こちらのCM。だいたいのCMが、「おバカ」か「プチエロ」かその両方か、といったトーンで作られている中にあって、このCMだけは、明らかに異彩を放っていた。さすがgoogle。面目躍如と言ったところか。

TIMEの評価は「B」(可もなく不可もなく?)なるも、個人的には結構お気に入りだったのが、デニーズのこのCM。おバカCMの典型例(笑)

「環境blog」を標榜している(??)MSJ的には、いちおう、こちらも紹介しとかないとですかね…(苦笑)
Maxwell School, Syracuse, Feb 8, 19:56

Transmission Congestion

朝から、Independent Study(I.S.)の担当教官(Popp先生)との面談に臨んできた。今の方向で進めいって良しとの御沙汰をいただき、一安心。

一週間前のエントリーで、「風力発電がtransmission(送電網)に与える影響は、いくつかの分野に分けられる」と書いたが、I.S.の論文では、このうち、transmission congestion(送電線混雑)問題に焦点を当てようかと考えている。

悩ましいのは―というのは、論文の書き手にとって、という意味でだが―日本とアメリカで、最初にfocusすべき分野が違っているということ。日本ではfrequency control(周波数調整。数秒~数時間の単位での電気の需給調整。参照)が一番の問題だが、アメリカでは、むしろ、transmission congestionの方が大きな問題となっている。これは、“系統規模が大きければ周波数は動揺しにくく、結果として送電容量の混雑などが顕在化しやすい”(*1)という、transmissionの特性のため。北米(米国&カナダ)の電力系統は、アラスカとケベックを除くと、Eastern、Western、Texasの三つに分割されている(参照)が、一番小さいTexas Interconnectionでも日本の総面積の二倍弱もある。それに、―これは僕の想像だが―、アメリカの送電網は相対的に容量が小さく、もともとcongestionを起こしやすい状態だったんじゃないかと思う。

どちらにfocusすべきか迷ったのだが、結局、「アメリカ型」の問題を選択することに。日本に帰れば、「日本型」問題のエキスパートはいくらでもいるだろうし、だったら、「アメリカ型」を学んで帰る方が、多少なりとも稀少価値をアピールしやすいのでは?というスケベった判断から。「アメリカ型」問題の方が、経済学で斬りやすそうという(一応まともな)理由もあるにはある。(「日本型」問題は、economicsより、engineeringで斬るべき部分の大きな問題であるように感じられた。)

最終的に、現在、アメリカの各州(参照)で行われているRenewables Portfolio Standard(通称“RPS”。発電事業者に、一定割合以上の再生可能エネルギー源の利用(又はそれを代替するcreditの購入)を義務付ける制度。transmissionはカバーしていない)の改善案にまで辿り着ければbestなのだが、実際、そこまで届くかどうかは不明。まずは、なぜアメリカでは、再生可能エネルギー自体の普及は目覚ましいスピードで進んでいるのに―これ自体のスピードは、既に日本のそれを上回っている(参照)―、transmissionへの投資は滞ったままなのかを考えていこうかと。たぶん、今日のLilacさんのエントリー(“いまさら3Gのカバレッジが問題になるアメリカ”)にも通じるような話になるんじゃないかと思う。

具体例として、地元NY州か、お隣のPJM Interconnectionを取り上げようと思っているのだが(NYはRPSを導入済み。PJM傘下13州(DC含む)のうち9州もRPS導入済み(ただし、うち3州は未稼働)(*2))、どちらを選ぶかは引き続き検討中。PJMだと、面積的にも、プレイヤーの数の面でも、若干、話が大きすぎかなぁという気がしていて、地元というこもあって、やや心はNY州に傾いている。

*1 伊藤 学 (2007). 海外における風力発電の動向について ―主に電力系統への影響評価事例を中心に―, 季刊 エネルギー総合工学, 30 (2), 47-54.
*2 PJM web site http://www.pjm.com/Home/faqs/renewables.aspx#FAQ3 


Maxwell School, Syracuse, Feb 8, 12:22

the Washington Hilton vs. the Gaylord Opryland Hotel, Nashville

先週から今週末にかけて行われたアメリカの二つの政治イベント――the National Prayer Breakfast @ D.C. と the tea-party convention @ Nashville――について書きたかったのだが、時間がないので、その両方に触れられているNewsweekの記事をクリップしておく。

How the Tea Party Could Help All of Us by Jon Meacham (Feb 5, 2010)

記事は、この二つのイベントを、今日のアメリカ内部の対立を象徴するものとして描こうとしている。National Prayer Breakfastが“the establishment”かつ“the elitists”の集まりだとすれば、一方のtea-party conventionは、“the outsiders”かつ“the populists”な人たちの集まり。そんな対立構造を示した上で、記事は、tea-party conventionに批判的な内容へと進んでいく。「彼らの主張には一貫性がない」的論調で。

別にその論調自体に異論があるわけではないが、非米国人からしてみれば、tea-party conventionもさることながら、National Prayer Breakfastの方も、いったいこれが何なのか、さっぱりよくわからない。毎年、連邦議会の議員によって“organize”され、キリスト教団体「The Fellowship Foundation(通称、“The Family”)」によって“host”されているこのイベントには、「外国からの来賓」を含む「3,500人」前後のゲストが出席し、大統領はじめ政府の高官も出席、スピーチするのが慣例(from “National Prayer Breakfast”@ Wikipedia)って、いったいそれ、どんなイベントですか…というお話。“host”しているという、The Fellowship Foundationなる団体と合わせていろいろ調べてみたいのだが、残念ながら今はあんまり時間がない。

上の話とはまったく関係ないが、NY州知事が辞めるの辞めないのといった話が出ているらしい。(HuffPost) 噂によると、明日のNYTにDavid Paterson知事のsex scandalが載るんだとか。Patersonは、元々副知事だった人で、前知事の辞職を受けて今のポストに昇格した。ちなみに前知事の辞職理由もsex scandal。その前知事Eliot Spitzerが、今週木曜日に、うちの大学で講演会を予定しているというから、面白いと言うか何と言うか…。とにかくスゴいタイミングであることだけは確か。
my room, Syracuse, Feb 7, 25:17

Sunday, February 7, 2010

Hat Trick!!!

世の中的には、今日は何と言っても“Super Bowl Sunday”…。なわけですが、個人的には、ホッケーの方がもっと気になるわけで、ここのところ週刊化しつつあるホッケーネタを。


つい先ほど終わったばかりの、その“気になる”一戦は、Washington Capitals vs Pittsburgh Penguins。東地区の強豪チーム同士の対戦と言うこともさることながら、オリンピックの優勝候補、ロシアとカナダの両エース(Russia-Ovechkin@Capitals、Canada-Crosby@Penguins)の直接対決というわけで俄然盛り上がったこの一戦。NHLとしても、満を持して、このカードをSuper Bowl Sundayにぶつけてきたわけです(今日、アメリカで行われているNHLの試合はこの一戦だけ。カナダを含めても二戦だけ)。ビデオから伝わってくる、Verizon Centerの熱気が、いつもとは一味違う感じ。
開始6分のCrosbyの先制ゴールに始まり、一時は、1-4までリードを広げられたCapitalsなるも、3rd period、この日3点目となるOvechkinのゴールで4-4の同点に。続くOver Time(延長戦)2分、OvechkinのアシストからKnubleが決勝ゴールを決めて、Capitals、破竹の14連勝。Ovechkin、カッコよすぎです。
Maxwell School, Syracuse, Feb 7, 16:07