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Friday, June 4, 2010

renewed career goal

純粋だった23歳の頃に比べればいろんなことを知ってしまった一方で、何かを達観するにはまだまだ知らないことが多すぎる31歳の今日この頃、この先のcareer goalをどこに設ければいいんだろうかと、改めて考えてみた。というと、記事の内容に比べてちょっと大仰すぎる気もするが。

留学の二年間も含めれば、「環境」の世界で一応、9年間やってきたことになる。今の僕が、「どうしても生きる世界を変えたい」という欲求を持ち合わせていない以上、この先も「環境」という分野で仕事をしていくことには変わりはないだろう。

問題は、その中で何を追い求めていくかである。それを考える上で、温暖化問題に対する自分の立ち位置を認識することは、この時代に「環境」分野で生きていこうとする人間にとって、避けては通れないステップ。では実際、僕自身、どうかと言えば、温暖化問題を全て「陰謀論」で説明しようとする向きには与せないけれども、温暖化問題を巡る世界の動向に陰謀的な要素――温暖化問題を利用して、自国に有利な状況を作りだそうとする動き――が皆無だと決めてかかるのもナイーブに過ぎると考えている。世の中の凡そ全ての事柄がそうであるのと同様に、温暖化問題も、100%本当でもなければ、100%嘘でもない、リアルとフェイクの入り混じった灰色の世界と考えるのが健全であろうと思う。

一方で、二年の留学期間を経て、僕の中での「日本」或いは「国」というものに対する考え方が、それまでとは、少し違ったものになってきたのも事実。「腐っても鯛」ではないが、いくら20年来の停滞の中にあるとはいえ、日本は未だに歴とした大国だし、その国の国民であるという事実だけで、異国の地にあっても様々なbenefitを利用させてもらえるということを、初めて外国で暮らしてみて、つくづく実感した。と、同時に、この「鯛」ステイタスは、放っておいて維持できるものではないということも強く感じている。「鯛」になるための椅子が限られた数しか用意されていないのであれば、他を押しのけてでも、確保すべきものは確保しにいかなければならない、と。

ありがちな言い方で言えば、「国益」vs「地球益」みたいな話なのかも知れない。そこでどういう立ち位置をとるべきかだが、どちらか一方だけを追求するという答えがあり得ないのは言うに及ばず、単純に、「国益も地球益も両方とも大事」という答えもないなというふうに思う。というより、それはそもそも答えの体を成していないと。

両方ともを十全に追い求められるのであれば、そんな結構なことはないわけだが、それが出来ないからこそ、皆苦労しているのであって、単純に「両方とも」と言うだけでは、実質的に何も言っていないのに等しい。問われるべきは、両方を十全に満たす選択肢などそもそもあり得ないという前提の下、では、どのラインで折り合いをつけるのがもっとも適切かという問であろう。

advocateとしてならともかく、行政の立場で環境問題に携わる以上、なすべき仕事は、闇雲に環境の価値(上の話で言えば「地球益」)を唱えることではなく、もっとも適切な折り合いラインがどこにあるかを見極め、それを実現していくことではないかと思う。それこそが、「プロ」の仕事なのではないかと。

そういうことを、この先、一生かけてやっていけたらいいなと、このところ、考えています。“career goal”と呼べるほど、大したものかどうか、わかりませんが…。
my home, Syracuse, June 4, 22:48

Wednesday, May 12, 2010

Driving Habits vs Gas Prices

This looks interesting (via Chart Porn
my home, Syracuse, May 12, 13:03

Saturday, May 8, 2010

ready-to-use knowledge

帰国の日が近付くにつれ、「すぐに役立つ」知識に対する欲求が高まってきている気がする。何が「すぐに役立つ」知識かは、与えられる仕事次第で違ってくるので、最終的には、東京に戻ってみないとその範囲は特定できないが、よほど特殊な部署に配属されでもしない限り、理論的な経済学が、そのままの形で「すぐに役立つ」知識になり得ないことは明らか。政策づくりを理論的に支える縁の下の力持ちとして重要な役割を果たすにしても、文化包丁的にそれ一本で何から何まで料理してしまおうとするには無理がある。

その点、「すぐに役立つ」知識として、もっともその目的に適っているのは、何と言っても、過去のケースからの教訓であろう。成功例であれ、失敗例であれ、過去の同様の取組事例を知っていれば、それだけでも政策立案の際には「すぐに役に立つ」し、そういった事例をいくつか集めて、そこから共通する傾向を引き出せれば更に有効な情報となり得る。経営学の世界では、大々的に行われている研究手法である。

なまじっか抽象化された理論(経済学、政治学、etc.)の方が高度に発展し過ぎてしまっているせいか、政策の世界では、経営の世界ほどにはケースタディ的研究手法が発展していないように思う。あるいは、この世界では、ケーススタディが、正統派の学術研究よりも一段低いものと見なされている結果――まぁ、それ自体は別にそれでもいいんだけど――、国をまたいでの知見の収集・体系化がそれほど進んでいないということなのかなぁとも思う。

もっとも、政策の世界でも例外はあって、金融政策や、military operationも含めた防衛政策の世界では、理論的な研究と併せて、ケーススタディ的な議論も盛んに行われているように思う。一方で、例えば僕の専門領域である環境政策について言えば、他国の事例を横断的に学ぼうとしたときには、いったいどこにアクセスすればいいのか、といったところからして迷ってしまう。僕の勉強が足りていないだけなのかもしれないけれど。
たとえば、環境を学部名に冠したスクールなどでにいけば、そういったケーススタディを横断的・体系的に教えていたりもするのだろうか。 この辺りにアクセスすれば、それなりの情報が取れる、といったところがあるのであれば、押さえておきたいようにも思う。
Chicago, May 8, 11:07 CT

Wednesday, May 5, 2010

‘shrimp-turtle’ in US

NYT blog reports that "About 35 endangered sea turtles have washed up dead on beaches along the Gulf of Mexico." Regardless of where I'm working for, personally, I do love sea turtles (honestly, much more than other wild animals), and therefore this news was tragically sad for me...

According to the article, those suspected of killing the turtles are not BP's oil, but shrimpers. Shrimpers? Shrimpers and turtles?? That sounds familiar...

Yes, 'shrimp-turtle'is a classic WTO law case, in which US claimed the legitimacy of its import ban of shrimps that were "harvested with technology that may adversely affect certain sea turtles." Simply put, US's measure was ruled as legitimate under GATT Article 20 (Exceptions) unless it is applied in a discriminating way between WTO members.

But, I believe that WTO Appellate Body's rule premised successful enforcement of US domestic Endangered Species Act, which requires US shrimpers to use “turtle excluder devices” (TEDs) when fishing in areas where there is a significant likelihood of encountering sea turtles. Now, this premise looks somehow questionable, "the real culprit" has not yet been clear, though.

If this premise had gone, how would it affect the conclusion of 'shrimp-turtle' case? I think this point has not been discussed so much.
Maxwell School, Syracuse, May 5, 19:22

Tuesday, May 4, 2010

playing on others' grounds

After a long study on renewable energy, I finally got to the cost allocation issue about public infrastructures, which is somehow similar to the one concerning telecommunication industry's universal service.
  
Apparently, I'm in a place where I never expected to be, when I was started this research last December. Before recognizing it as the core of my answer, so long time already had passed; and not so much time was left, when I noticed it. But, if I knew this before I started my research, I'm not sure whether I still picked up this topic as my Independent Study's, because I'm not a guy highly concerned with infrastructure cost allocation issue. Simply saying, my area of concern is environment.

I think such phenomena should be common not only in the academic research field, but in the practical world. Even though quested value is environment, required policy tools to achieve it do not necessarily fall within the environmental policy field. Besides, such tendency has to grow as the environmental policy challenges are becoming increasingly complex.

Knowing this fact, I'm asking now what should I study? how should I collaborate with others? and in short, what should I do after coming back to my place? I have no clear answer.
Maxwell School, Syracuse, May 4, 22:06

Summary History of KGL bill 

Movement of immigration? Offshore drilling? What was the bill about??

But anyway, here is the good overview of what's been going on so far about Kerry-Graham-Lieberman's climate bill. (from New York Times, May 4, 2010)  

Thursday, April 29, 2010

EPA's modeling of Climate Bill

昨日のLA Timesの記事によると、Kerry-Graham-Lieberman climate bill(いわゆる“KGL Bill”)が、正式な公表を前に、EPAに送られたとのこと。EPAに送って何をするかと言えば、EPAがモデルを回して、同法案の効果を予測するらしく、記事によれば、
a modeling process that will take an estimated four to six weeks, after which the EPA will report how much the bill is likely to reduce greenhouse gas emissions, boost renewable energy and, most importantly, cost the average consumer. Many key senators have said they won't commit to the bill until they see those results.
との由。

immigration法案との絡みで揺れる、KGL Bill提出の政治情勢については正直そこまで興味はないが(というか、そこまで追いかけていたら切りがない)、こういった、法案の審議プロセスを見ておくのは興味深い。

「完全に公平」なんてことは、この世の中にあり得ないが、アメリカの政治プロセスを見ていると、少なくとも、「公平性を担保するための努力はしましたよ」と言えるだけの工夫は、随所に織り込まれていることに気づく。

“four to six weeks”後にまとめられるという、EPAのモデリング結果が公表されたとき、世間がそれをどう受け止めるのか――単なる“pretend”だと見るのか、信頼のおける客観的考察だと受け止めるのか。その点の興味深いし、時間があれば、モデルの中身も少しくらいは覗いておきたい。
Maxwell School, Syracuse, Apr 29, 13:43

Tuesday, April 27, 2010

Lisa P. Jackson @ "The Daily Show With Jon Stewart"

昨日の“The Daily Show With Jon Stewart”にUS-EPA(環境保護庁)長官のLisa P. Jacksonが登場。

中身的には、間もなく提出か(????????)と言われている、上院energy/climate法案(“Kerry-Graham-Lieberman Bill”)の話と、EPAによる温室効果ガス排出規制(regulation)の話がおよそ半々。もちろん、どこまでがlegislationの話で、どこからがregulationの話かなんて厳密には分けられないが。

序盤で“Massachusetts v. EPA” (2007) の話が出たり、後半では、economy wideのcap-and-tradeと産業別規制のどっちがいいか的な質問が投げられたりと、それなりにちゃんとした内容。現役閣僚を呼んでいるんだから、当たり前と言えば当たり前かもしれないが、climategate云々といったしょうもない話もなく、プロから見ても(いちおう、プロです。いちおうね)、まぁそれなりにまともな内容だったかなと。視聴者にリベラル層が多い番組だから、ということもあるのかも知れない。

「economy-wide or 産業別」に関する質問への、Lisa Jacksonの回答は、「下院案はeconomy-wideで通ったが、今はもう少し柔軟に考えています」的な感じ。KGM法案については、「EPAとして、発案者からの質問には答えているが、中身については全く知らない」とのこと。
The Daily Show With Jon StewartMon - Thurs 11p / 10c
Lisa P. Jackson
www.thedailyshow.com
Daily Show Full EpisodesPolitical HumorTea Party
Maxwell School, Syracuse, Apr 27, 21:33

Friday, April 16, 2010

America's Great Outdoors

最近巷で話題(?)のWashington Post紙の報じているところによると、16日、Obamaクンが、“America's Great Outdoors initiative”と称する自然保護政策の再編計画(ただし今回は荒々のビジョンだけ)を発表したとのこと。

この手の政策に、大統領自らが、わざわざ記者会見を開いてまで、コミットメントを表明するというのは、僕ら日本人からすると、些か違和感のある話なのだが、実際には、Obama自身が会見の中でTheodore Rooseveltに触れていた通り、この国の歴史の中では、国立公園政策が、しばしば大統領肝煎りの案件として登場してくる。そうした実績を持つ大統領としては、TRの他にもFDRやアイゼンハワーなどがいる。

それほど詳しく歴史を調べたわけではないが、この国における“国立公園”制度には、日本のそれにはない、独特のテイストが込められているように思う。

米国版国立公園制度(というか、それが“本家”ですが)の、そもそもの目的は、手付かずの自然の残る未開拓の土地を、国(=連邦政府)有化することによって、アメリカ国民全員の「公園」として保護すべしというものである。その根底には、この国特有のfrontier spirit――当然それは、この国一流のpatriotismにも繋がる――が横たわっていて、少し大げさに言えば、YellowstoneやYosemiteは、(どこの州、どこの地域の出身かに関わらず)この国の人たち全員が共有する“自分たち”の歴史の、重要な構成要素になっているんじゃないかという気がする。言うなれば、日本人にとっての京都や奈良のように。   

というわけで、そもそもの出発点からして、国立公園政策に懸ける国民の“気合い”が全然違うと思うのだが、それに加えて――これも、その“気合い”によるところが大きいのであるが――、園内の土地を基本的に全て「国有化」してしまったという点も、非常に大きな違いであるように思う。その結果、国立公園地域を単なる「保護エリア」「規制エリア」として管轄するのではなく、文字通りの「公園」として、政府自らが、観光業も含めた「経営」に乗り出すことができるし、それによって、それなりにたくさんの雇用を生み出すこともできる(cost/benefitが良いかどうかは別問題。この点、確か、Milton Friedmanが、『資本主義と自由』の中で論じていた気がする。未読。)。

実際、DC近郊のShenandoah国立公園は、FDR肝煎りのjob creation programであるCivilian Conservation Corps (CCC) の一環として整備されたものであるし、今回のObamaイニシアチブにもそのような性格が込められていることは言うまでもない。こういった政策は、国立公園内の土地が必ずしも国有化されているわけではない日本のような国では、なかなか難しい(やったとしても、ちょろっとしか効果が出ない)のではないかと思う。

というわけで、アメリカの国立公園が素晴らしいのは言うまでもないし、その分野の仕事に携わる人であれば、誰しもが憧れを抱きたくなるのは非常によく理解できるのだが、同じ「国立公園=national park」を名乗っていても、日本のとアメリカのとでは、そもそもからして、成立ちや性格が大きく違うし、そのように違った性格を持つに至った背景には、両国の発展プロセス(=“歴史”)の違いが大きく関係しているので(→ 要するに、政策レベルでどうこうできる問題ではない)、ここは潔く、「別物」と捉えて、日本は日本なりのやり方を探す方が現実的なのではないかという気がする。実際、それを模索してらっしゃる方も多いと思うんですけど。

そういう意味では、むしろ、ヨーロッパ各国がどうしているかを勉強する方が、プラクティカルなんじゃないかとも思うのだが、寡聞にして、欧州の国立公園政策事情などというものについては、これまでのところ、何の知識も持ち合わせていない。どなたか詳しい方がいらっしゃれば、教えていただければ幸いです。
Maxwell School, Syracuse, Apr 16, 16:58

Saturday, April 10, 2010

Environmental Regulations vs Free Trade Rules

Int'l Trade Lawの教科書が、環境保護のための国内措置と、自由貿易に関する国際ルールとの間にバッティングが生じる典型ケースを整理してくれている。一通り、頭に入れておくと便利そうなので、以下、ざっくりと要約。

1.途上国との関係
 環境に害悪を及ぼしていると考えられている、ある製品の販売規制が、その製品の輸出国である途上国からの輸入に、大きなインパクトを及ぼすと見込まれる場合、規制を敷く側の先進国は、当該途上国への経済的影響に配慮して、何らかの特例措置(移行期間の設定、技術支援等)を講じるべきであるか。

2.“Like Products”の解釈
 WTO法上、“Like Products”(同種の産品)については、いずれの国(輸入国自身を含む)の商品も非差別的に扱わなければならないとされているが、どこまでが“Like Products”と解釈されるべきか。たとえば、温帯に位置している国が、温帯林産の材木と熱帯林産の材木とを「“Like Products”ではない」と解釈し、熱帯林産の材木にのみ規制を課す(したがって、当該国の国産材木には同様の規制はかからない)ことはWTO法上、許されるか。

3.製造工程規制
 ある製品の製造工程に規制を課している国が、同等の規制を課していない国からの同製品の輸出を禁じる措置には、GATT Art XX: General Exceptionが適用可能か。
 
4.「緩い環境規制」に対する相殺関税 
 「環境規制の緩い国は、その国の企業に対して“事実上の補助金”を与えているのと同じ」とみなし、そういった国からの輸入品に相殺関税(countervailing duty)を課すことは、WTOのAgreement on Subsidies and Countervailing Measures(SCM Agreement)上、認められるか。
  
5.「環境補助金」に対する相殺関税
 その国の企業に、環境投資補助金を与えている国からの輸入品に対し、相殺関税を課すことは、SCM Agreement上、認められるか。

6.製造者に対する、商品の販売に付随する規制
 ある製品の製造者に対し、使い終わった自社製品をリサイクルする施設の設立を義務付ける措置は、WTO法上許されるか?(そういった施設の設立は、外国企業にとって、本質的に不利であると考えられるが)  また、梱包材の使用制限を、国内・輸入企業に一律に課す措置についてはどうか?

7.他の国際環境条約との関係
 ある国際環境条約(Multilateral Environmental Agreement: MEA)でauthorizeされた措置がWTOルールに抵触しているときに、そのMEAの締約国がそのような措置を実際に講じたならば、WTO法上、当該措置はどのように裁かれるか。

8.border tax adjustment
 国内で炭素税を課している国が、同様の税を、他国からの輸入品に対して課すことは、WTO法上認められるか。
    Maxwell School, Syracuse, Apr 10, 21:47

    after ‘shrimp-turtle’

    昨日のエントリの続きと言えば続きの話。今朝のInt'l Trade Lawのクラスでの教授のコメントが面白かったので、メモしておく。ちなみに教授曰く、そのコメントは「このクラスのprofessorとして」ではなく、彼一個人としてのもの、とのこと。

    議論のベースは、昨日のエントリでも触れた“India etc vs US: ‘shrimp-turtle’”事件。書き始めると長くなるので、詳細は端折るが(ご興味ある方はこちらを)、端的に言うと事件の経緯はこうである。
    1. 米国が、ウミガメの混獲防止措置を取っていない国からのエビの輸入を禁止する法的措置を施行。
    2. インド、マレーシア、パキスタン、タイの4か国は、米国のこの措置が、WTO協定に違反するとして提訴。
    3. Panel(一審に相当)、Appellate Body(二審に相当)とも、米国のWTO協定違反を認める。
    問題は、米国の措置(Section 609 of Public Law 101-162)がなぜWTO協定違反とされたかという点なのだが、米国自身、この措置が、輸入の量的制限(Quantitative Restrictions)を禁じたGATT Art XIに違反しているという点については争っていない。したがって、当該措置が、GATT Art XX: General Exceptionsの適用を受けるかどうかが争点となった。

    Art XXの適用を受けるかどうかは、①当該措置が、Art XX各項に定める例外事項のscopeに該当するか否か、と、②(If so,)当該措置が、Art XX chapeau(柱書き)の要件を満たしているか否か、の二段階のテストで以て判定される。Section 609は、①のテストをクリアしたものの、②のテストで「否」とされ、結果、「WTO違反」と判定されるに至る。

    Section 609を「WTO違反」に追いやったArt XX chapeauの原文は以下の通り(下線、blog筆者);
    Subject to the requirement that such measures are not applied in a manner which would constitute a means of arbitrary or unjustifiable discrimination between countries where the same conditions prevail, or a disguised restriction on international trade, nothing in this Agreement shall be construed to prevent the adoption or enforcement by any contracting party of measures:
    つまり、“arbitrary or unjustifiable”(恣意的な又は正当化できない)な方法で以て、ある国と別の国とを“discriminate”していないかどうかが判定のポイントとなる。

    本事件において、Appellate Bodyは、以下の二つの理由により、アメリカの取った措置は“unjustifiable”であると判定した;
    1. エビの輸出国に対し、事実上、米国の国内規制とcomparable(同程度)なだけでなく、essentially the same(本質的に同じ)な措置を取るよう求めた。⇒ 必要以上に輸出国のflexibilityを制限しすぎ。
    2. unilateralな措置を講じる前に、一部の国との間でのみ、真摯な国際交渉(negotiation)を行い、それ以外の国と同様の交渉を行う努力を怠った。⇒ discriminatory & unjustifiably
    判決後の米国は、Section 609自体は維持しつつも、他国の規制措置をより柔軟に認めるよう、ガイドラインを改定するとともに、インド等エビ輸出国との協定締結に向けた交渉を実施。‘shrimp-turtle’事件の判決から三年後に、マレーシアが、米国の判決不履行(=Section 609を撤回していない)に関して、再度の提訴を行った際には、Panel、Appellate Bodyとも、「米国の改善努力は十分行われており、その結果、Section 609は、今や“justified under Article XX”なものになっている」との判定を下している。

    前置きが長くなってしまったが、この事件に関してのColares先生の指摘は以下の二点;
    1. Appellate Bodyの二つ目の判定理由(一部関係国との真摯なnegotiationの不実施)には、それを以て“unjustifiable”かどうかの判定理由とするだけの十分な根拠がない。
    2. かつ、米国の措置を“unjustifiable”と断じたその判決が、結果的には、同国による「“multilateral”を騙った“unilateralism”の遂行」をauthorizeするという、皮肉な事態を招いた。
    つまり、一回目の訴訟の判決が、「協定締結に向けた交渉努力をしさえすれば、米国の措置はWTO上、“シロ”と判定される」との状況を準備した形になり、米国は、訴訟に負けたにもかかわらず、「“真摯”に交渉を行った」という実績さえ作れば、unilateralなエビ禁輸政策を大手を振って執行できるという、考えようによっては非常に美味しい結果を得た、というもの。二回目の訴訟の結果は、実際、その通りになっている。

    いつもながらに辛口のColares先生、ご自身の同僚(特に環境法の先生)の中にも、この判決を「国際環境問題の分野におけるunilateralismの否定、multilateralismの勝利」を打ちたてたものであるとして、肯定的に評価する向きが少ないくいことに言及しつつ、そういった見方は「表面的(superficial)である」と、バッサリ。

    貿易関連のlawyerとして、実務畑でもそれ相応の実績を積んでこられた方であるが故の、洞察とでも言うべきか。
    my home, Syracuse, Apr 9, 27:10

    Friday, April 9, 2010

    Interview #1

    Interview企画第一弾。州都Albany郊外のNYISOを訪問してきました。

    正式名称は、New York Independent System Operator。念のために言っておくが、“ISO14000”とか“ISO9000”とかの“ISO”とはまったく関係ない。あちらさんは、“International Organization for Standardization”の略。こちらのISOは、“company”という体裁をとってはいるが、non-profitの機関で、NY州内の①電力系統の運用、②電力市場の運営、③電力網建設の長期計画、④技術の開発・普及(Developing & Deploying )という4つの役割を担っている。電力自由化のタイミングに合わせ、1999年に設立。

    建物の外壁には、それが「NYISO」であることを示す表示は一切なされておらず(もちろん、表札なんてご丁寧なものはない)、一旦、行き過ぎてから引き返し、恐るおそる守衛さんに尋ねてみて初めて、そこが目的地であることを確認できた。道路からやや奥まったところに位置するその建物は、小ぶりの要塞かと見紛うほどの堅牢な建造物。聞いてみれば、州内全域をカバーする電力系統のオペレーション業務がこのビルの中で行われているんだとか。マンハッタンへの電力供給も、ここでコントロールされているということを考えると、建物の造りがそれだけdefensiveなのもむべなるかな。 

    現地では、事前にメールで送っておいた質問リストに沿って、“Senior Communications & Media Relations Specialist”なる肩書きのおじさんから2時間弱の説明を受ける。英語のリスニング能力不足のせいか、はたまた、工学的バックグラウンド知識の不足のせいか――まぁ、両方だろうな…――、おじさんの説明を隅から隅まで理解できたわけではなかったが、関連資料をがっさりいただき、「読んでみてわからんことが出てきたら、またメールで教えてね」とお願いして帰ってくる。まぁ、間違いなくメールするな(笑)

    今後、renewable energy(RE)発電の導入量が増えれば――少なくともNY州においては、“風力発電の導入量が増えれば”とほぼ同意である――、RE発電の“産地”(=upstate)から“消費地”(=downstate=NYC+Long Island)に電力を運ぶtransmission(送電線)の不足が、更なるRE導入のボトルネックとなりうる。というか、その問題は既に発現し始めている(参考)。そんな最中、NY州は、昨年12月、RPSの目標値(州内の全電力消費量に占めるRE起源電力の割合)を「2013年までに25%」から「2015年までに30%」に引き上げる決定を行った。

    この状況を、「電力網建設の長期計画」を担うNYISOとしてはどう見ているのか――今日のinterviewでは、この点を一番聞きたかったのだが、二時間弱のinterview全体から受けた印象としては(※ 彼が具体的にこう言ったわけではない)、「NYISO的にはあまり深刻には捉えていない」といった感じ。何と言うか、要するに、「他人事」なのだ。

    なぜそうなるのか、interviewの最中、或いは、帰りの車の中で、いろいろ考えてみたのだが、察するに、一番の理由は、文字通り「他人事だから」なんだろう。

    NYISOの2008 Annual Reportの背表紙には、“The NYISO operates New York’s bulk electricity grid, administers the state’s wholesale electricity markets, and conducts reliability and resource planning for the state’s bulk electricity system.”とある。この一文、(明記はされていないものの)NYISOのstatement of purposesと見て良いと思うのだが、「環境保護」に関する取組には、一切、言及がない。つまり、究極的に言えば、電力の「安定供給」と「経済運用」だけが彼らのmissionなのであって、それ以外のこと(including 環境対策)は、知ったこっちゃない――文字通り「他人事」なのだ。

    とは言え、州の政策の中で、「環境保護」(ここで具体的には、「RPS目標値の達成」)が絶対的な目標として位置づけられているのであれば、NYISOとしても、その実現を所与とした上で、「安定供給」と「経済運用」を達成しなければならなくなるわけで、間接的にではあるが、「RPS目標達成」が他人事ではなくなるはず。

    しかし、実際には、NY州におけるRPS目標値の位置付けは些か曖昧。日本や、米国の他の多くの州のように、各utility companyに、bindingな達成目標を負わせているわけではなく、州政府の一機関であるNYSERDAが、唯一の買い手として、公募・入札をするという方式なので、目標年次までに目標値に到達しなかったとしても、「政治責任」以上の問題が発生するわけではない。となれば、今後、transmissionの不足に伴うcongestion(混雑)問題の顕在化などにより、REの発・送電単価が上昇した場合、州政府としては、rate payer(電力消費者)への課金額を値上げしてでも目標値の達成にこだわるか(←NYSERDAによる買取の原資は、電力使用量に比例してrate payerに課されるお金で賄われている)、目標達成をあきらめる代わりに課金額の上昇を抑えるか、という選択を迫られるかたちになる。この構造からすれば、RPSの目標値は、「絶対的ではない」と見る方が自然だろう(ましてやこの秋には知事選を控えている)。

    つまりその、「環境問題に取り組まないNYISOが怪しからん」と言いたいわけでは全くなくて、transmissionの拡張が、今後のRE普及のカギを握っているのにもかかわらず、transmission敷設計画の任を負うNYISOに「環境保護」のmissionが課されていない、或いは、RPSを取り仕切るNYSERDAにtransmissionを云々する権限が与えられていない、という、現状の責任分担構造そのものに問題があるのではないかと。この辺り、もう少し深めれば、論文の結論部分に持って来れるかなと思ってみたりもしている(甘い?)

    ちなみに、帰り際、窓越しに、“operation room”も覗かせていただいた。もちろん、撮影禁止なので、ここで写真で紹介することはできないが、だいたいこれとよく似た感じ。一チーム5人の12時間交代制なんだそう。PCのディスプレイが、一人当たり、7,8枚はあったように思う。さながら、飛行機だか宇宙船だかのコックピット×5セットの様相。とはいえ、暑くも寒くもない今日みたいな日は、発電capacityにも十分余裕があると見え、皆さん、のんびりと仕事をこなしておられた。
    Maxwell School, Syracuse, Apr 9, 23:23

    Thursday, April 8, 2010

    General Exceptions (GATT 1947 Article XX)

    GATT 1947 第20条の規定する“General Exceptions”に関するAppellate Bodyの見解(@India etc vs US: ‘shrimp-turtle’)。Int'l Trade Lawの教科書から引用(斜体原文)。
    It appears to us (= Appellate Body), however, that conditioning access to a Member's domestic market on whether exporting Members comply with, or adopt, a policy or policies unilaterally prescribed by the importing Member may, to some degree, be a common aspect of measures falling within the scope of one or another of the exceptions (a) to (j) of Article XX. Paragraphs (a) to (j) comprise measures that are recognized as exceptions to substantive obligations established in such measures have been recognized as important and legitimate in character. It is not necessary to assume that requiring from exporting countries compliance with, or adoption of, certain policies (although covered in principle by one or another of the exceptions) prescribed by the importing country, renders a measure a priori incapable of justification under Article XX. such an interpretation renders most, if not all, of the specific exceptions of Article XX inutile, a result abhorrent to the principles of interpretation we are bound to apply.
    要するに、「第20条(a)~(j)の各項に規定する例外事項のいずれかに該当している限り、ある国が、他のWTO加盟国からの輸入品に対して、一方的(unilateral)な措置(measure)を課したとしても、そのことを以て自動的に、WTO協定違反とはならない(だって、そうなってたんじゃ、第20条を置いてる意味ないじゃん)」ということかと。

    ちなみに、環境規制に関係してくるのは、(g)項。以下、chapeauと(g)項の原文を。
    Article XX: General Exceptions
    Subject to the requirement that such measures are not applied in a manner which would constitute a means of arbitrary or unjustifiable discrimination between countries where the same conditions prevail, or a disguised restriction on international trade, nothing in this Agreement shall be construed to prevent the adoption or enforcement by any contracting party of measures:
    (g) relating to the conservation of exhaustible natural resources if such measures are made effective in conjunction with restrictions on domestic production or consumption;
    Maxwell School, Syracuse, Apr 8, 11:42

    Sunday, April 4, 2010

    Clean Water Act for regulating CO2?

    Clean Water Act(CWA)でCO2を規制してはどうか、という話があるらしい。元ネタはこれ:“EPA may try to use Clean Water Act to regulate carbon dioxide”@McClatchy Posted on April 4.

    記事によると、米EPAは、現在、“the effects of ocean acidification as it relates to the Section 303(d) program”に関するパブリックコメントを行っているとの由。

    EPAの解説によると、CWAのSection 303(d) programというのは、
    1. “the Impaired Waters”(汚染水域)のリストを作成する。
    2. リストに掲載された水域ごとにTotal Maximum Daily Load (TMDL)(総負荷許容量)を設定する。
    3. TDMLに基づき、各point sources(工場・事業場等)及びnonpoint sources(住宅地、農地等、それ以外の汚染源。非人為的なものも含む)にpollutant loadを割り振る。
    4. point sourcesに対しては、bindingな総量排出規制が適用される。
    といった構造だそうだ。大気中のCO2濃度が上がることにより海水の酸性度が増してしまう、という問題自体は理解できるが、このスキームでCO2を規制しようというのには、かなり無理があるのではないか。

    普通に考えれば、汚染と汚染源との因果関係が、ある程度特定可能である場合に適用可能な制度であると言えよう。この前提は、“CO2起因の海水酸性度の増加”という「汚染」には、当然ながら当てはまらない。オレゴン沖合を“Impaired Water”に指定したからと言って、Oregon州(あるいはその周辺)のpoint sourcesに対してのみCO2の排出規制を課すというのでは、とてもじゃないが、納得は得られないだろう。

    EPAのパブコメ告知を見ると、それほど具体的なステップにまで話が進んでいるというわけではなく、「もし仮に、CWA Section 303(d)を海洋酸性化に適用するとしたら、どういった点に気をつけるべきですかね?」という段階のよう。ともあれ、パブコメの結果を踏まえて今年11月15日までに発表されるというmemorandumにはやや注目か。
    Maxwell School, Syracuse, Apr 4, 17:00

    Saturday, April 3, 2010

    EU emissions plunge

    このエントリでも紹介した、ロンドンに本拠を置くNGO“sandbag”が、昨日発表された、EU Emission Trading Scheme(EU-ETS)の最新取引状況について、分析記事をupしている。彼らの意見にすんなり同意できるわけではないが、cap-ant-tradeという制度について、political economy的な側面も含め、practicalに改めて議論し直す際の出発点としては参考になるかと。

    以下、彼らの記事の中から、事実関係に当たる部分と、彼らの主張に当たる部分を、何点かピックアップ。(下線はblog筆者)

    ■事実関係■
    New data released today reveals greenhouse gas emissions across the EU are in steep decline. Emissions covered by the EU Emissions Trading Scheme between 2008 and 2009 dropped by 11%, following on from a cut of 6% the year before.
    Power generators saw their emissions fall by 119 tonnes (8%) last year but that still left them 124 tonnes short of permits. On the other hand heavy industry including steel and cement saw a fall of 96 million tonnes (18%) leaving them with 185 million tonnes of permits spare or 30% more than they needed.
    At the moment, under the EU’s target of a 20% cut in emissions by 2020 this would mean a reduction in the cap of 1.74% a year. Today’s figures revealed that we are already half way to achieving that reduction level with a decade still to go.
    ■sandbagの主張■
    unless caps are tightened there will be no overall reduction in pollution levels. Permits issued under the EU trading scheme can be banked forward indefinitely meaning they will sooner or later be used to pollute.
    If they (=heavy industry) were to sell them at today’s prices this would raise €2.4 bn with most of this money would coming from consumers of electricity.
    Given the cuts achieved to date, which can be banked, and the levels of reductions rich countries like the EU are now expected to deliver, it would seem tighter targets are the only sensible way forward.
    いろいろと問題は叫ばれているものの、個人的には、cap-and-tradeを諦めるにはまだ早い(というか、それにまともに対抗出来うる手段がない)という気がしているのだが、殊、EU-ETSという具体的実施事例に関して言えば――目標値が緩すぎるかどうかは別にしても――、放置しづらい問題が、いくつか生じてきていると言えよう。そういった不具合がcurableなものなのかどうか、また、そうであれば、どういった対策で以て治癒できるのか、しっかり検証しておく必要があるなと思う。

    このニュースに触れ、先学期、米国のcap-and-trade法案(←瀕死)についてのエントリを書いたことを思い出し、読み直してみた。やや書生的な匂いがしないではないが、この法案、非常によく書けているなと改めて感じる。残念ながら、この国で、この法案が日の目を見る可能性は、あまり高くはなさそうだが…。
    my room, Syracuse, Apr 2, 26:43

    Thursday, April 1, 2010

    Obama’s new fuel-economy rules

    こちらはおそらくApril Foolではないと思うのだが、米連邦政府による自動車の新排出規制が、本日、発出されたとの由。NYTなどが報じている。

    Gristに、新規制の概要が出ていたので、転記しておく。
    The bottom line: New automobiles will have to get better gas mileage
    The numbers:
    • Current standards: 27.5 miles per gallon for cars and 24 mpg for light trucks 
    • Starting in 2012, fuel efficiency will rise more than 5 percent each year 
    • New standards for 2016: 39 mpg for cars and 30 mpg for light trucks -- an overall average of about 35.5 mpg
    The environmental benefits: 
    • Will save 1.8 billion barrels of oil over the life of the program
    • Will prevent 900 million metric tons of greenhouse-gas emissions
    • Will be like taking 177 million of today's cars off the road, or shutting down 194 coal-fired power plants
    Fans of the plan:
    • The major automakers, because they now have certainty and one clear set of regulations to follow 
    • The major environmental groups, because the federal government is actually doing something to reduce greenhouse-gas emissions
    • California and 13 other states, because they have long wanted tougher auto emissions standards
    日本とは異なり、アメリカの自動車燃費規制は、メーカーごとに、売ったクルマの平均値で判定されるシステム。先述のNYT記事によると、Nissan Leafのような電気自動車は、申告できる台数(つまり、平均値を出すときの分母の数)にリミットはあるものの、「排出ゼロ」としてカウントされる(will be classed as zero-emissions vehicles, although there is a cap on the number of all-electric vehicles that carmakers can claim credit for.)らしい。

    となると、自動車メーカーにしてみれば、電気自動車の販売台数を伸ばそうというインセンティブは、日本でよりもアメリカでの方が、この先、強く働くことになるのだろうか。そもそも、電気自動車に対する関心は、日本より、アメリカの方が強く持っている気がするけれど。
    Maxwell School, Syracuse, Apr 1, 17:04

    Monday, March 29, 2010

    Climate Programs Evaluation by CBO

    米CBO(Congressional Budget Office)が、連邦政府の気候変動関連プログラムに関するレポート“Federal Climate Change Programs: Funding History and Policy Issues”を発行したので、読んでみた。

    特段、高度なeconometricsを使うこともなく、至ってシンプルかつオーソドックスにまとめられている。読みものとして、面白いか面白くないかと言われれば、はっきり言って面白くない。CBOという組織のmissionを考えれば、非常にいい仕事をしているのは確かなんだけど。
       
    全般的に、(経済学的に見れば)当たり前のことが述べられているだけなので――いや、それが彼らの仕事だから仕方ないんだが――、敢えて、ここで紹介したいと思える記述は、あんまり見当たらない。強いて言えば、Climate-Related Tax Preferences(気候変動関連租税特別措置)関連のくだりが比較的面白いかと。曰く;
    Most analysts argue that the most direct way to reduce GHG emissions is to tax them or to otherwise increase their price—for example, by imposing a cap-and-trade mechanism. Increasing the cost of GHG emissions would encourage reductions in emissions through a variety of means but leave determination of the best method to the individual or business. Tax preferences, by contrast, usually favor ways of reducing emissions that are specified in legislation. For example, there is a tax credit to encourage people to reduce consumption of home heating oil by installing solar-powered heating units, but there is no similar incentive to turn down the thermostat or put on a sweater, even though doing so could reduce GHG emissions at lower cost than installing solar powered heating units.
    「炭素税よりは、税控除の方が、概して、排出削減政策として好まれる傾向があるが、温室効果ガスの排出を減らす、より直接的な方法は、税控除ではなくて、課税の方である。たとえば、税控除の対象に、家庭用太陽熱ヒーターを指定すれば、それによって家庭で使われる暖房用の石油の量を減らせるかもしれないけれど、税控除で以て、暖房の温度設定を下げたり、単純にセーターを羽織ったりすることを、各家計に促す方法はない。その方が、太陽熱ヒーターの設置よりも安いコストで、同じだけの排出削減を達成できるかもしれないのにも拘わらず」との由。
         
    この記述の中身(=経済学の基本の「き」)自体がどうこうというよりも、こういうことをはっきりと言ってくれる機関があるというのは、素晴らしいなと。まぁ、このCBO様のお言葉が、どれだけ上下両院の皆さまに斟酌されるかはともかくとして。
    my room, Syracuse, Mar 29, 23:49

    Current mood around Cap-and-Trade

    Heal care法案がひと段落して、マスコミ、メディアでcap-and-tradeの文字を目にする機会が増えている気がする。たとえば、NY TimesのJohn Broderが、25日付の新聞に“‘Cap and Trade’ Loses Its Standing as Energy Policy of Choice”との記事を載せれば、28日、ハーバードのRobert Stavinsが、同記事に絡めて“Who Killed Cap-and-Trade?”との記事を、web上で発表する、といった具合に。以下、両記事の抜粋・要約を。

    ■“‘Cap and Trade’ Loses Its Standing as Energy Policy of Choice” by John Broder
    • Why did cap and trade die? 
      • “it was done in by the weak economy, the Wall Street meltdown, determined industry opposition and its own complexity.”
    • 下院審議では、多数票を得るため、“coal companies, utilities, refiners, heavy industry and agribusinesses”に対する妥協的・例外的措置をふんだんに盛り込み。
      • オリジナルのシンプルさは失われ、反対派からは、“cap-and-trade”ではなく、“tax-and-redistribution”と評される結果に。
    ■“Who Killed Cap-and-Trade?” by Robert Stavins
    • そもそもcap-and-tradeは本当に「死んだ」のか?
      • 決して「死んだ」わけではない。
      • 現在、準備中のKerry-Graham-Lieberman legislationにせよ、その対抗法案であるCantwell&Collinsの“the CLEAR Act”にせよ、提案者たちは“cap-and-trade”とは呼んでいないが、実質的にはそれと同じ機能・性質を持った制度が、部分的にであれ、盛り込まれている。
    • なぜ短期間に政治的な人気が激減したのか?
      • the economic recession; the financial crisis; and the complex nature of the Waxman-Markey legislation (which is mainly not about cap-and-trade, but various regulatory approaches)
      • しかし、もっとも重要な要因は、単に、cap-and-tradeが、もっとも真面目な討議に付された案だという事実(the simple fact that cap-and-trade was the approach that was receiving the most serious consideration)。下院を通す課程の中で真剣な討議が行われ、それが、反対勢力に火を付けた。
      • こういった結末は、それがどんな形の政策であれ、最初の気候変動政策(any front-running climate policy)は必ず迎えていたであろうもの。cap-and-tradeだったからこうなった、というわけではない。
    • なぜアメリカではこれほどまでに気候変動対策政策に対する政治的支持が低いのか?
      • それによってもたらされる「被害」の直接の結果(a direct consequence of the “disaster”)が明らかではないから。(これまで、米国で立法化に成功した環境法案は、いずれも、何らかの環境被害が広く周知された結果として制定されたもの)
      • 昨今のワシントンの、党派対立を前面に押し出す風潮(partisan political climate)が、同法案成立を一段と難しくしている。
    というわけで、頑張ってまとめてはみたものの、どっちの記事もたいして目新しいことは書かれてませんでした。さ、勉強しよ。
    my home, Syracuse, Mar 29, 12:02

    Friday, March 26, 2010

    COP 6, Election 2000, US Withdrawal ...

    Comparative Foreign Policyのエッセイ、二つ目を提出。このエントリで少し触れたが、外交史上の事件を一つピックアップし、Foreign Policy Analysisのメソッドを使って分析していくという課題。エッセイは3回(各回、ダブルスペースで10ページ)に分けて提出することとされていて、一回目の課題は、事件概要の記述。僕は、2001年の米国の京都議定書からの脱退をピックアップし、それに至る米-EU間のやりとりを調べて書いてみた。
       
    今日提出した二つ目エッセイの課題は、「これまで授業で扱ったtheoryを使い、当該事件を分析しなさい」というもの。いちおう断わっておくと、MaxwellのIR(International Relations)コースのクラスは、総じてこんな感じにアカデミック。実践性を期待してくると、少なからず肩透かしを食らう。MPA(Master of Public Administration)の方はそうでもない(と思う)けど。

    この辺りのエントリで書いたとおり、IRという学問の考え方・方法論には、些か、のめり込めないものがあり、今回のエッセイも、あんまり気乗りせずに書いていたのだが、いちおう、体裁を整え、規定の10ページを満たしたところで、さっくり提出。

    とは言え、書いてみると、やっぱり学んだことはある。詳しく書き始めると長くなる(し、あんまり面白くもない)ので端折らせていただくが、今回、使ったtheoryに基づいて言えば、あるpartyにとって、交渉相手が、①関係良好な相手であり、②経済的な相互依存度の高い相手であり、かつ、③相対的に自分よりも大きなcapabilityを持った主体である場合、当該partyは、相手に対し、譲歩をしてでもagreementを引き出そうとする、ということになる。しかし、実際に、2000年12月のCOP6において、EU代表団がとった選択は、米英二国がバイでまとめた妥協案を蹴り、同会議を「成果なし」で終えるというもの――EUにとって、上記①~③が当てはまると言えそうな状況であったのにもかかわらず。ちなみにその一か月後、米国ではBushが大統領に就任、更にその二か月後に京都議定書からの脱退を宣言するに至っている。

    こんな定性的・感覚的なtheoryがいつも妥当するとは限らない、というのは確かにその通りなのだが、「役立たず」と斬って捨てたくなる気持ちを抑え、「なぜこのとき、theoryの御宣託は当たらなかったのか」と考えてみると、少しは面白くなってくる。

    僕がエッセイの中で書いたのは、結局のところ、EU(もちろん、他の国もだが)の意思決定権者(特にpoliticalな)にとって、気候変動問題というのは、そこまでurgentな課題ではなかったからではないか、ということ。上記“theory”は、暗に、「二国間交渉=双方(少なくとも一方)にとってurgentな課題」との前提に立っているが、気候変動問題を巡るEU-US間の交渉は、実際にはそうではなかったが故に、theoryの主張と異なる結果がもたらされたのではないか、と。

    と書いてみたところで、引き続き、当たり前のことを言ってるだけのような気もする。しかし、僕のような環境屋からしてみれば、ついつい、「希望的観測」や「べき論」といった色眼鏡で見てしまいがちな、この種の外交イベントを、客観的に、或いは、実際の意思決定権者のそれに近い視点で理解しなおすのを手助けしてくれるという意味では、こういったメソッドにも、それなりの御利益があるのかも知れない。

    まぁ、それによって多少は気持ちが明るくなるかというと、実際には、その真逆なんだけどね。
    Maxwell School, Syracuse, Mar 26, 17:08

    Monday, March 22, 2010

    ObamaCare passed the Congress, and then ...

    ヘルスケア法案(通称、ObamaCare)が議会を通過。

    というわけで、少しくらいは知っておこうと、新聞・雑誌をいくつか流し読みしてみる。この記事(from The Economist)なんかが一番よくまとまっていて、僕のような、ObamaCare初心者にも分かりよいかと。
      
    同記事によると、昨日の深夜に下院を通過したのは、「上院案丸呑み」法案と、“reconciliation”法案の二つ。前者の方は、(上院案丸呑みなので)これで以て、議会プロセス完了。後はObamaのサインを待つのみ。ここでObamaがvetoするはずはないので、最低限、この案の成立は確定。

    一方の“reconciliation”法案は、上院のおかげで“flawed(「欠陥含みで」)and pork-laden(「豚肉満載の」。転じて、「選挙区向け公共事業満載の」)”になってしまった法案を、下院でもいちど叩き直したもの。よって、上院の再議決が必要なのだが、それには本来、60/100のsuper-majorityが必要(for filibuster-proof)なところ、Democrats執行部は、「これは予算関連の規定ですよ」ということにして(※ 予算関連規定であれば、budget reconciliation rulesで以て、単純多数決で通せる)、ことを進めようとしているらしい(同数だった時の最後の一票は副大統領Bidenが握っているので、厳密に言えば、過半数である必要もない。50票とれればOK)。

    当然ながら、Republicanはこれに反発。「“reconciliation”法案の一部は、この条件に合致しとらん」と。こんな場合、どうやって収拾つけるんだろうか。背景知識がないので皆目、見当もつかず。

    なんて記事を読んでいたら、隣に、Climate法案関連の記事も発見。Kerry、Lieberman 、Grahamの三者が、一段と、cap-and-trade色を弱め、エネルギー開発促進色を強めた法案を練り直しているとのこと。

    Economistの見立てによると、新法案では、エネルギー開発への補助金が、“一丁目一番地”になるという。cap-and-tradeは、「その原資を得るため(“to raise money”)」という位置付けに格下げされ、capの対象はutilitiesのみ。

    経済学的に言えば、― 税とcap-and-tradeのどちらが効率的かという議論はともかく、どうせcap-and-tradeを入れるのであれば ― economy-wideで入れる方が効率的なのは自明。R&Dなど、一部、公的補助が必要な部分はあるにせよ、それはあくまで「例外」として扱うべき。白黒逆転させて、utilityにのみ「例外」的にcap-and-tradeを導入してしまっては、cap-and-trade本来の効能は著しく損なわれる。

    政策の効率が落ちるというとは、その分だけ、余計なcostがかかり、totalで見れば、同じ政策目標を達成するのに、より多くの公的負担が必要になるということ。にもかかわらず、議論はそちらの方向へと流れていってしまう。economicsの儚さというか、political economyの難しさというか…。

    それでも、このタイミングで、何がしかの(連邦レベルの)cap-and-trade制度が、この国に成立するかどうかは、今後の世界の気候政策情勢に極めて大きなインパクトを持つ、と思う。実際のところは、きちんと数字を見ながら議論しないといけないが、直観的には、今の状況のままのEU-ETS市場が、今後も、単独で立ち続けていられるようには思えない。
    Maxwell School, Syracuse, Mar 22, 19:33