Thursday, April 30, 2009

Obama’s green achievements at 100 days

ここ最近のアメリカのメディアは、国境の南からやってきたSwine Flu のニュースで持ちきり。と思っていたら、北(Syracuse的に言うと西?)の方から別の大きなニュースが飛び込んできた――クライスラー破綻。つい先日、就任100日の節目を迎えたばかりのObama政権だが、厳しい道のりはまだまだ続く。。。
 
そう、試験勉強やらレポートやらに明け暮れている間に、気がついたらObama政権が就任100日目を迎えていた。当たり前かも知れないが、この国ではこの100日間で、「大統領=Obama」のイメージがすっかり定着した気がする。前任者のおじさんの影はめっきり薄くなった。「Obamaが就任100日目」と言われれば、「まぁそんなもんかなぁ」という気はするけれど、テキサスのおじさんがホワイトハウスを去ったのは、100日よりもっともっと昔の出来事のような気がする。
  
ともあれ、この100日間にObama政権は環境の分野で何をやってのけたのか――という「まとめ」記事が、昨日のGristに出ていたので、簡単に要約しておく。ちなみにこのGristという団体、環境ニュースに特化した、同名のonline magazineを発行しているNPOで、若干、advocacy色が強くはあるものの、その情報量たるやものすごい。どうやって(というのは、要するに「誰のお金で」ということだが)運営しているのかはナゾなのだが、ともあれ、こういうソースの存在を見せ付けられると、日米のweb mediaの厚みの違いを痛感せざるを得ない。

本題に戻ろう。Obama’s green achievements at 100 days と題されたこの記事の概要は以下の通り。(カッコ内の日付は、このblog上での関連エントリー)

“Green Dream Team” [08/12/11]
何はともあれ、環境関連ポストの人選がすごい、とのこと。確かに。気候変動・エネルギー問題担当大統領特別顧問
Carol Browner(元EPA長官)はじめ、EPA長官Lisa Jackson,、環境基準委員会委員長Nancy Sutley、エネルギー省(DoE)長官Steven Chuらの名前が挙がっている。

“Notable Environmental Directives” [09/01/26]
就任早々の1月26日、環境関連の大統領司令(executive order)を発布。具体的には、「EPAに対し、カリフォルニアその他13州からの、新自動車排出基準に係る施行容認申請を見直すよう指示」、「交通省(the Department of Transportation)に対し、より厳しい自動車燃費規制を制定するよう指示」など。これらの指令については、その後、命を受けたEPA、DoTが、それぞれ、指令の実現に向けた取組を着実に遂行中とのこと。

“Stimulus Package” [1/24, 1/25, 2/3, 2/10, 3/23]
同記事が、"perhaps the biggest environmental breakthrough"と言っているのが、いわゆるStimulus Package(Recovery Act)での、大規模な環境関連事業の予算化。僕も異論はない。確かに、これまでの100日間での環境関連の一番大きな仕事と言えば、やはりこれだろう。このブログでも、気がつけば5回も取り上げていた。1月24日の回から順を追って見ていくと、stimulusに対する僕の考え方の変遷をたどれて面白い(??)

“the administration’s first budge” [4/5]
今月初旬に承認された、Obama政権の初(通常)予算。この中でも、stimulusに続き、$15 billion の環境・省エネ関連予算が盛り込まれている。ちなみに、Obamaチームの人たちは、この予算案にcap-and-trade関連の規定を紛れ込ませようと試みたが、これについては、議会で拒否された(詳しくは4/5のエントリーを)。

“EPA's Finding → cap-and-trade bill??” [4/17, 4/25]
今月17日、EPAが、「温室効果ガスは公衆衛生と福祉に対する脅威になりうる」とするfinding(最高裁からの検討指示に対する回答)を発表(現在、パブコメ中)。これが正式に成立すると、EPAは、Clean Air Actの中で、温室効果ガスを規制する「義務」(権利ではない)を負うことになるが、実際には、EPAが規制を制定するよりも、議会で新法を策定する方がいい、というのがObama政権、民主党首脳部、及びEPAの総意。現在下院で審議中の(cap-and-tradeを含む)いわゆるclimate bill(又は提案者の名前を取ってWaxman-Markey法案)の年内成立がなるかどうかが環境関連分野での今年一番の焦点。
  
ちなみに、Obama政権は、上記の他にも、この100日間で、こんな環境政策を繰り出してきたとのこと(以下、和訳、端折ります)。
  • Announcing plans to regulate coal-ash waste.
  • Signaling that they intend to take a closer look at permits for mountain-top removal , the controversial coal-extraction process.
  • Cutting off funding for the Yucca Mountain nuclear waste repository in Nevada.
  • Creating a Clean Energy Service Corps as part of the AmeriCorps.
  • Streamlining the loan guarantee program at the DoE, which gave out its first loan to a solar company on March 20.
  • Planting an organic White House vegetable garden.
まぁ、最後のポツは半分ネタでしょうが(笑) ちなみに、4つ目のポツに出てくるAmeriCorpsというのは、クリントン政権時代に作られた、連邦政府直営の職業訓練機関。その中に、Clean Energy Service Corpsという、green workers養成専門部門を作ったというお話。これはこれで取り出して、一度詳しく調べてみたい政策である。

my home, Syracuse, Apr 30, 23:52

Wednesday, April 29, 2009

What were they tihking, what should I think?

明日のQuantitative Analysisのfinal exam勉強中。ここ数十分、集中力途絶え中(笑)
   
ちなみに、昨日のエントリーには書きそびれたが、今学期の授業は昨日を以て全部終了。あとは明日のテストと、5月7日〆切のペーパーが2本。今週月曜日に風力発電のペーパーを提出して以降、先週・先々週ほどの追い込まれ具合ではなくなったが、とはいえ、やらるべきことはいっぱい残っているので、なかなかパーっとした開放的な気分にはなれない。最近、気候がめちゃくちゃ良いだけに、なんかもったいない気がしている。
  
ここ最近、疲れた時の気分転換にしているのが、途上国で働いたり、インターンをしたりしていた人たち(先輩・友人etc.)のブログを読ませていただくこと。6月からのガーナインターンの予習のつもりで読んでいるのだが、容易に予想できたとおり、インターンとは関係のないコトガラでも、ビシバシと琴線に触れてくる。「あぁ、この人はこの時期にこんなことを考えていたのか」とか、「この人は留学中にこんなことまでやってたんだ」とか。
  
これまでの一年弱、いちおう、それなりに納得のいく毎日を過ごせてきたとは思っているが、やり残していることももちろん多い。絶対に全部はやりきれないから、優先順位をつけることも必要。そう思うと、残りの一年間、何から手を付けていくべきか、先人たちのつぶやきも参考にさせていただきながら、一度、棚卸をやらないといけないなぁと思う。
Maxwell School, Syracuse, Apr 29, 22:33

Tuesday, April 28, 2009

A Question of Balance #3

長らく店晒しにしてきた"A Question of Balance"の感想文の最終回を書こうと思う。

1回目2回目で、「NordhausとSternのそれぞれのモデリングの結果には大きな違いがある」「その違いの最大の原因は、割引率の設定の仕方にある」「割引率の設定には価値観の要素が入らざるを得ず、したがってどのくらいに設定するのが正しいかを客観的に言い当てるのは困難」「ただし、少なくとも言えることとして、Sternの用いている割引率は、一般的に用いられている水準からはかけ離れている」といったことを書いた。
  
つまり、これまで2回は、Nordhaus-Stern論争 を軸に本書の内容を紹介してきたわけだが、実は、この本の中で、Nordhausが目の敵にしているものが、Stern Reviewのほかにもう一つある。京都議定書がそれだ。
   
webに掲載されていた本書の書評などを読んでいると、どちらかといえば、Nordhaus-Stern論争の方にフォーカスを置いて紹介しているものが多いように思うが、現実的な話からすれば、Nordhaus-Stern論争を深追いすることには、あまり利益がない。(喜ばしいことではないが、)現在の取組状況からすると、Nordhausの案でも十分にchallengingなので、Stern案は、super challengingとでも言うべきもの。"Challenging" vs "Super-Challenging" の議論を続けていっても、プラクティカルな意味では、あまり得るものがない。(割引率を巡る議論自体には、深める価値があると思うけれども。)
  
そういう意味では、むしろ、Nordhaus-京都議定書論争 の方が、実践的な意味で、深く考える価値があるのではないかと思う。

そもそも、Nordhausは京都議定書のどこが気に入らないのか――。時間がないので、若干端折らせていただくが、端的に言うと、彼の主張は、quantity-type approach(各主体に排出枠を定めることにより、排出を量的に制限する手法)よりも、price-type approach(排出量に応じて課金をすることにより、各主体の最適化行動を通して、排出削減を実現する手法)の方が、効果的・効率的だ、というもの。より具体的に言えば、京都議定書のような各国に排出削減目標を設定するやり方よりも、国際温暖化税の方が優れているというのが彼の主張だ。
  
彼の指摘する京都議定書の弱点(第Ⅷ章にて詳述)は、「将来の不確実性に対する対応幅がより限られている」「排出権価格の不安定さ(volatility)が大きい」などだが、基本的には、どれもほぼ的を射ているように思う。これらの指摘自体には、僕個人としては、ほとんど異論はないし、むしろ、よく研究する必要があるとすら思う。ただ、全体としての彼のスタンスには、大いに異論がある。彼が京都議定書の対抗案として掲げる、'harmonized carbon tax'は、意志決定プロセスをほとんど考慮に入れずに仮定された「理想形」の政策、言ってしまえば「絵に描いた餅」に過ぎないからだ。
   
彼は、この'harmonized carbon tax'"(an approach under which) countries would agree to penalize carbon emissions at an internationally harmonized ‘carbon price’ or ‘carbon-tax’"(国際的に調和のとられた「炭素価格」又は「炭素税率」で以て炭素の排出に課金することを各国政府が合意するアプローチ) と定義している(p.149)。実際の国際的な意思決定のプロセスを考えたとき、このようなアプローチがfeasibleだと言えるのか――。確かに、京都議定書のような(良くも悪くも)前代未聞の政策が産み出されてきた実績のある世界なので、何が起こっても不思議ではないと言ってしまえばそれまでだ。しかし、落ち着いて考えれば、国際法平面で主権国家に義務を課す(その代り、その義務の履行方法については問わない)京都議定書形式と、各国の国内法平面にまで手を突っ込んで、税率を指定してしまう'harmonized carbon tax'形式とでは、国際的な意思決定の難しさの次元が、一次元、違ってくるはずだ。そのような点には特に言及せず、単純に、国際政治の成果物である(したがって、不可避的に妥協の産物でもある)京都議定書と、一つの理想形である'harmonized carbon tax'との比較を通して、「quantity-type approachよりもprice-type approachの方が優れている」と結論付けてしまう論法には、いささか、公平さと丁寧さが欠けているように思う。

Nordhausからはやや離れるが、より大きな視点から言うと、一番の問題は、経済学ベースの理論的考察と、実際の意志決定過程とを繋ぐbridgeが欠如しているということにある。純粋に経済学的な見地から見て、どのような制度が効率的・効果的かといった議論は、それ自体、絶対に必要なものだが、その考察を、現場で「使える」政策提言にまで持っていくためには、経済学だけでなく、政治学・国際法学の知見も取り込んで、どのような制度設計ならば国際的な合意が可能かといった観点からの分析を加える必要がある。その意味では、(僕のような素人の言う話ではないが)本書の結論は、まだまだ、現場で「使える」域には達していない。その点を経済学者であるNorhausに求めるのは酷かもしれないけれど。
   
一方で、もっと深刻だと思うのは、意志決定に携わる側の人間の理解不足。経済学の結論は、たとえそのままでは「使えない」にしても、ひとつの理想形として、(なぜそれが理想と言えるのかという理屈も含めて)きちんと理解しておく必要がある。実際の意思決定の現場では、そんなことを言っていられない修羅場に出くわすことも多いのだろうが、逆に言えば、だからこそ、どちらに向かう方が(少しでも)より理想に近いのかを、時間をかけずに直感的に判断できるよう、普段からしっかりとした理解を腹に落とし込んでおく必要があるんじゃないかと思う。

もちろん、大いに自戒を込めつつ、ということである。
My home, Syracuse, Apr 28, 25:22

Monday, April 27, 2009

Day of Real Summer Heat

拍手っ!! 初真夏日!! (知らんけど、たぶん、「初」真夏日。)
  
ついこないだまで「雪が降る」とか、「花冷えだ」とか、「娯楽がない」とかぐちぐち言っていたと思ったら(最後のは、今も同じか。。)、いきなり今日は30℃超え。キャンパス内では、一ヶ月前まで雪で真っ白だったはずの芝生広場に人間がゴロゴロと転がり、Marshall Street界隈では、「あれっ、この辺にビーチとかありましたっけ??」と言いたくなるようなイデタチの男子・女子が闊歩しております。そんな光景を目にしながら、「あぁ、俺ってやっぱアメリカに住んでんだなぁ~」と実感している今日この頃であります。 
    
ともあれ、暖かいってのは良いことですね。最高です。やっぱ気分が晴れやかになります。白っぽい桜みたいなナゾの花(←嗅ぐと臭い)もキャンパス内にいっぱい咲いていて、もしかしたら、今が一年でSyracuseの一番良い季節なんじゃないかと思っております。まぁ、とはいえ、引き続き学期末ですのでで、ゴロゴロしたり、ビーチ行ったりしてる暇はないんですが。あ、ビーチはどっちみちないのか。。
  
ちなみに、皆さんから大変ご心配をいただいております豚フルエンザの件ですが、今のところ、Syracuseの人たちは、見るからに余裕をぶっこいておられます。あれだけ人間の行き来のあるNY市でさえ、これまでのところ、感染が確認されているのは、school tripでメキシコを訪れていたある学校の先生・生徒だけ、ということなので、まぁ、まだビビる必要はないのかなぁと思っておりますが。とりあえず、うがい・手洗い励行ということで。   
  
さて、そんな最中、日本でどのくらい大きく報じられているのかわかりませんが(というか、たぶん報じられていないと思いますが)、日本が、先の不況からどうやって脱出したかのナゾ解きをめぐって、『日本経済の罠』の小林慶一郎氏と、ノーベル賞学者クルーグマン君が、web上での公開討論を展開しています。(ひと月くらい前から始まっていたみたいですが。)

「2003年以降の日本の景気回復は輸出が主導したものであった、だから(だから?)こそ、この教訓に従い、現在のアメリカは、思い切った財政出動による需要の創出を行うことが必須である」と主張するクルーグマン氏に対し、小林氏は、VOXというweb siteで、
"Fiscal stimulus is a much-needed temporary painkiller, but it is not enough to put the global economy on a path to recovery. . . Stringent inspections and evaluations of bank assets by financial regulators, followed by sufficient infusions of taxpayer-funded capital will be the only effective means of clearing away the oppressive uncertainty."(財政出動による景気刺激策は、一時的な「痛み止め」としては確かに必要であるが、グローバル経済を回復軌道に乗せるには十分でない。(…) 金融規制当局による銀行資産の厳しい査察・評価とそれに続く十分な公的資金の注入こそが、(市場の)先行き不透明感を取り払う唯一の効果的な方法であろう。)
と述べています。この小林氏の意見に関し、クルーグマン氏は、NY times(web版)上のblogで、"That’s a fairly exotic argument"(非常に風変わりな意見だ) とした上で、"I’d like to see some supporting evidence." (証拠を見たい) と反論。直近のIMFの世界経済見通し(World Economic Outlook)を引用しつつ、あくまで、輸出の増加に金融危機の出口を求める論調を維持しています。

まぁ、小林さんも書いている通り(In fact, Krugman is only one of many internationally recognised economists asserting that fiscal spending for general demand stimulus such as public works projects – but not for the disposal of bad assets – can alter macroeconomic expectations.)、クルーグマンがアメリカのeconomistsの意見をどのくらい正しく代表しているか、という話はあるんですが、とはいえ、NY timesの彼のコラムにはそれなりの影響力があるみたいなので、そんな彼の意見に、きちんと反論することにはすごく意味があるんじゃないかと思います。
  
また、クルーグマンと小林さんのどっちが正しいとは僕は言いません(言えません)が、日本の貴重な経験が、こうやってまともに議論されるようになってきたということには、それ自体、価値があるんじゃないかと。はっきり言って、アメリカ人って人たちは、(この点に関しては、ウォール街の住人か、DCの住人かを問わず)、日本人が90年代にあれだけ長い間苦しんだのは、単に日本の経済政策がありえなくイケてなかったから(有体に言えば、「あいつらはバカだったから」)であって、自分たちはまさか同じ轍は踏まないよと思っている(少なくとも、最近まで思っていた)んじゃないかと思います。
  
そういう意味では、90年代の日本人がただ無為に時間を浪費していたわけではなく、政治的なせめぎ合いの中でではありますが、最善の策を講じるべく知恵を絞り抜いてきたんだということを、きちんとした理解に基づいて英語で示せば、多少なりとも、日本人・日本社会の見直しにもつながるんじゃないかと。まぁ、この人たち、素直に「すげぇ」とは認めないと思いますけどね(笑)
My home, Syracuse, Apr 27, 25:00

Sunday, April 26, 2009

Almost complete...

Economics of Science & Technology の論文執筆がほぼ終わりました。いったん寝て、明日の朝、もっかい見なおしてから提出します。

昨日のブログにも書きましたが、今回、この論文を書いていて、自分の無知さ加減をつくづく痛感させられました。「風力発電(および電力分野全般)」という分野に関する知識と、論文を書くという作業に関する技術の両方について、ほんと素人だなと。まぁ、両方とも、これまでまともに取り組んだことがなかったので、そりゃぁ素人に決まってるんですが…。
 
今はやや疲れきっていますが、学期が終わって落ち着いたら、昨日のブログにも書いたとおり、風力の勉強を再開したいなぁと思っています。あと、論文執筆の腕ももう少しは改善しないとね。

忘れるといけないので、風力発電の関係で、次に勉強してみたいと思っていることを書いておきます。
  • 風力発電の出力変動は、電力系統にどのような影響を与えるのか。また、ドイツなどの風力先進国において、この問題は、どのように対応されているのか。
  • 政府が特定の技術を狙い撃ちで支援することは、どういった場合に(経済的に見て)合理的と言えるか。
Maxwell School, Syracuse, Apr 26, 26:46

Saturday, April 25, 2009

Japanese Failure on Wind Power Development

今週末は、Economics of Science & Technology のレポート執筆に専念中。「この20年間、なぜ日本は風力発電市場を拡大できなかったのか」という平成最大のナゾ(??)に迫っております。
  
一般的な日本人の感覚では、風力発電なんてのは、いまだに採算も安定供給もおぼつかない、遠い「未来」のエネルギー源、くらいのイメージで見られているんじゃないかと思うのですが、ヨーロッパ(特にドイツ、スペイン、デンマーク)はじめ、アメリカ(特にカリフォルニア)、インド、中国なんかでは、(それなりに国の補助を受けつつではありますが、)純粋に営利を目的とする事業会社・金融機関が市場に参入し、風車をバンバン建てていくような時代に入っています。下のグラフを見ていただければ、日本が、ドイツ・スペイン・アメリカに水をあけられ、インド・中国にも置いていかれつつある状況がおわかりいただけるかと(NEDO編『風力発電導入ガイドブック(2008年度版)』より拝借)。欧州の風力先進3カ国では、単に風力発電のシェアが伸びて良かったね、ということだけではなく、外貨をじゃんじゃん稼いでくれる風車メーカーも立ち上がっています。直接・間接を合わせると、風車業界全体で、かなりの雇用を吸収しているとも。そういった環境面以外の社会的便益も併せて考えると、日本が90年代にこの分野で逃したサカナは結構大きかったんじゃないか、と。ちなみに2006年には、世界の風車メーカー上位10社が、新設風車の95%を供給していましたが、その10社の内訳は、ドイツ4社、スペイン2社、デンマーク(ダントツ首位のVestas社)、アメリカ、中国、インドが1社ずつで、日本のメーカーはゼロ。他の環境技術では、軒並み上位に日本メーカーが顔を出しているだけに、風力に関しては、日本の弱さが逆に際立っていますね。
     
それにしても、この世界、とにかく間口が広くて奥が深い。調べていけばいくほど、自分の無知っぷりを思い知らされます。芋づる式に知らない情報を集め始めると、ほんとにキリがないので、「えいや」で割り切って書くしかないわけですが、こんな知識レベルでペーパーを書いてしまっている自分が、正直、嫌になってきます。技術政策の論文なんてのは、常にそんな矛盾との葛藤なのかもしれませんが…。とりあえず、今回の論文はあさって出さないといけないので、えいやであれなんであれ、明日中に書き終えるつもりですが、風力発電のお勉強自体は、その後も続けてみよっかなぁと、ぼんやり考え始めているところです。
Maxwell School, Syracuse, Apr 25, 26:30

Friday, April 24, 2009

What makes you happy?

池田信夫氏が、直近(4/24)のエントリーの中で、「19日の記事には驚くほどの反響があり、出版化の話まで来た」と書いている。

「希望を捨てる勇気」と題されたその記事の中で池田氏が述べていることをいくつか抜き書きすると、

日本の産業構造が老朽化しており、これを再編しないと衰退する、と多くの人が90年代から警告してきた。20年間できなかったことが、これから数年でできるとは思えない。

これから始まる長期停滞においては、少子化とあいまって、ほぼゼロが自然な成長率になるだろう。

日本は現在の欧州のように落ち着いた、しかし格差の固定された階級社会になるだろう。ほとんどの文明は、そのようにして成熟したのだ。「明日は今日よりよくなる」という希望を捨てる勇気をもち、足るを知れば、長期停滞も意外に住みよいかもしれない。幸か不幸か、若者はそれを学び始めているようにみえる。

といった感じ。
  
MSJの4月1日エントリーの中で、僕は、「「低成長社会」のモデルを練り直す(或いは、もっと精緻に作り込む)必要があるということではないか」と書いた。書きながら、「じゃぁどういう方向に向かっていけばいいのか」という点は自分でも答えを持ちあわせていなかったのだが、池田氏の19日の記事を読んで、望むと望まざるとにかかわらず、日本の向かっていく先はこういう方向なのかなぁという気がした。
   
昔から何となく思っていることだが、一般的な人間にとっての「幸福」は、物質的豊かさの絶対量よりも、その変化率との相関の方が強い変数なのではないだろうかという気がする。ここでいう「幸福」は、あくまで当の本人がどう感じているかということであって、その人のことを周囲がどう思っているか――セレブで羨ましいなぁと思っているか、貧乏でかわいそうだなぁと思っているか――は関係ない。実際、周囲からは「地位もお金もあって何も言うことないよなぁ」と思われている人が、実は、年がら年中、何かに思い悩んでいて、まったく人生を楽しめていない、なんて事例はよくあるし、逆に、途上国に遊びに行ったときに、物質的にはすごく貧しそうだけれど、日本では見たこともないような屈託のない笑顔を浮かべている子供たちに出くわすことも珍しくない。

もし仮に、僕のこの仮説が正しければ、人間は、或いは、社会は、物質的豊かさの絶対量こそ少なくとも、増加率が大きければ幸せに暮らしていける、ということになる。そしてこの「増加率」という指標と、池田氏言うところの「希望」という概念とが、強く相関しているように思うのだ。この二つの仮定が正しいとすると、三段論法で、「希望を捨てた社会」=「幸福ではない社会」ということになる。だとすると、池田氏の示唆する、希望を捨てて、なお住みよい社会、というのはどういう状態なんだろうか。
  
それは、要するに「悟りの境地」ということなんじゃないかと思う。つまり、通常、僕らが普通に感じているような(したがって、経済学においてもそれを目標変数としているような)世俗的な意味での「幸福」を追求するのをやめて、「心の平穏」だとか「無我の境地」だとかを追求することで、「住みよさ」「心地よさ」を得ようとする状態。言いかえれば、池田氏自身の言う通り「足るを知る」ということであり、更に言えば「諦念」の域に達するということだろう。
  
19日の記事の中で池田氏は、「希望を捨てる勇気をもち、足るを知れば、長期停滞も意外に住みよいかもしれない」と述べているが、これは「希望を捨てる勇気を持つ」ことのススメではなく、彼なりの皮肉、あるいは、変革に踏み切れない日本社会に対する諦めの現れであろうと思う。それが証拠に、今日の記事では、
この意味で今の日本が不幸なのは、富が失われていることより希望が失われていることだろう。
と述べている。
  
よほど奇特な人でもない限り、イケイケどんどんの昇り調子のときに「悟りを開こう」なんて思ったりはしない。「悟り」を開く人には「悟り」を開くだけの、止むに止まれぬ理由があるものだ。そうやって「悟り」を開いたところで、簡単に楽になれるわけではなく、「悟り」の後には、当然のこととして、禁欲的な生活が待っている。ここでやりたい方題やってしまっては、全く以て、何のために「悟り」を開いたのやらわからない。
   
社会が「希望を捨てる」ということは、一個人としてではなく、社会全体として、この「悟り」のフェーズに飛び込むということだ。一個人としてなら、「悟り」を開くことで精神的な平穏を得、かえって心地よく暮らせる人もいるのだろうが、それを社会全体としてやるとなると(かつ、国民の自由を保障したままでやるとなると)どのような結果がその先に待っているのか、正直、僕には想像がつかない。政府が積極的に旗を振って、社会をそちらの方向に先導していくことなんて、本当に可能なんだろうかとも思う。
  
ただ、最初の方にも書いたとおり、望むと望まざるとにかかわらず、また、政府の方針如何にもよらず、日本社会は自律的に、そちらの方向に進んでいかざるを得ない状況にさしかかりつつあるような気はする。そして、留学中に、(昔から読まないとと思いながらまだ読めていない)『市場・知識・自由』を、今度こそ読もうと思った。
Maxwell School, Syracuse, Apr 24, 12:13

Thursday, April 23, 2009

Whitman Quest

期末試験 & ペーパーの日程が全部出揃い、相変わらず、きちきちの日程であることを再認識。同級生の話を聞いてると、それでも自分は結構マシな方みたいだったりするので、アメリカの大学院というところは、結構ハード。以下、自分のための、今後の予定メモ。ちなみに5月1日は、中休みとして、日帰り遠足に出かける予定です。

24 - 26 … Economics of Science & Technology のfinal paper執筆(27日提出)
27 - 29 ... Quantitative Analysis のテスト勉強(30日にfinal exam)
30 - 3 ... Evaluation of International Program のfinal paper執筆(7日提出)
4 - 7 ... Economics of Science & Technology のtake home ezam執筆(7日提出)
 
  
最近、目先のレポートのことばかり考えていると飽きてくるので、数か月後のプランを立てるのが趣味になりつつあります。現実逃避以外の何物でもありません(汗)。
   
とはいえ、いちおう真面目にやりたいなぁと思っていることがあって、何かというと、財務会計のお勉強をすること。というわけで、レポート執筆の合間に、諸先輩の皆さんに質問メールを送りつけ、どうやって勉強するのが効率的か、少しずつ情報集めをしているところです。
  
今日は、accountingのクラスのシラバスを入手するべく、我が大学のビジネススクールであるWhitman Schoolに潜入。いつも横を通り過ぎていながら、なんとなく敷居が高くて入れなかったあの建物に、意を決して乗り込んでみることに。Dragon Questならぬ、Whitman Quest、略してホイクエですな(←完全に某テレビの見過ぎ。)。ホントは、戦士とか魔法使いとか、そういう強そうな感じの人を連れていきたかったんですが、近くにそういう人が見当たらなかったので、とりあえずエコノミストを連れていってみました(Yさん、ついてきてくれてありがとうございます)。
  
6階とか3階とか1階とか、いろいろホイクエしてみた結果、いちおう、ボスキャラ的な人には会えたんですが、ボスキャラ曰く、「初級者向けの授業は秋学期にしか提供しません」とのこと。前にも書いたかも知れませんが、僕は今年の秋学期、DCで過ごす予定にしているので、その初級者向けクラスは取れません。なので、Whitmanで受講するというプランは敢え無く断念。ボスキャラさんに丁寧にお礼を言って帰ってきました。
   
というわけで、どうやって会計のお勉強をするかは、引き続き、考えないといけません。その前に、レポートを仕上げないといけないことは言うまでもありません…。
Maxwell School, Syracuse, Apr 23, 23:41

Wednesday, April 22, 2009

Obama talks up wind power on Earth Day

Final Week 突入~!! というわけで、春学期も残り一週間となりました。
  
アメリカの大学では、各学期の最後の授業後、教授が部屋を去っていく時に、みんなで拍手をするんですが、あれは何度やっても悪くないもんです。拍手してる僕らの側まで、「なんか一つやり遂げたぞー」っていう、勝手な達成感に浸れるんですよね。ホントは、来週〆切のfinal paperがごっそり残ってたりするんですけど。ともあれ、Evaluation of International Program の授業は今日を以て全日程終了。お疲れ様でしたー。
     
で、ぱちぱちぱちと拍手をした後は、ヘルスセンターで昨日予約した予防接種を注入。今回は、破傷風とB型肝炎(1回目)の2本。狂犬病も打とうと思ってたんですが、3回くらい打たないといけないらしく、それが全部終わるまでに3か月かかると言われたのでやめました。犬とコウモリには寄り付かないように(寄り付かせないように!?)します。
  
Earth Dayの今日、アメリカでは、Iowa州の風力発電機工場で、Obama大統領御自ら、風力発電に関する新ルールを発表しました。offshore(洋上)に発電施設を敷設するに当たってのルール等々を定めるもの。このルール、NYtimes紙に言わせると(なので、多少、割り引いて聞いてくださいね)、「我が国沿岸での洋上風力発電所の開発を著しく加速させる、長らく待ちわびていた一連のルール("a long-awaited set of rules that will significantly boost the development of offshore wind farms along the nation’s coastlines")」ということなんだそうであります。
  
同記事によると、米エネルギー省(DoE)は、「2030年までにアメリカ国内の電力の20%を風力でまかなうことが可能」との試算をしており、それによると、2030年時点での全風力発電量300GWのうち、54GWを洋上発電でまかなう予定なんだとか。
  
CO2の排出に値段がつかないこの国で、洋上風力発電が、果たして経済的競争力を持ちうるのか、という疑問は残りますが、今の政権の意気込みを見ていると、制度の整備+補助金の投入が一気に進めば、3, 4年後には結構すごいことになってるかも…という気もします。

これ自体、うれしいニュースなんですが、翻って日本のことを考えると、彼の国の風力後進国ぶりが、ますます浮き彫りになりますなぁ…。


Maxwell School, Syracuse, Apr 22, 24:45

Tuesday, April 21, 2009

Negotiation at Health Center

こんなこと書くと、日本でこのblogをご覧になっていらっしゃる方から、「毎日、仕事もせんと本ばっかし読んでんのに何言うてんねん」とお叱りを受けそうですが、ここしばらく、忙しい日が続いておりまして、昨日のプレゼンが終わったところで、若干息切れ気味でございます。というわけで、今日は一日、わりとだらだら過ごしてしまいました。明日は、気分入れ替えて頑張ります。
  
  
昔、つっても、4か月くらい前の話なんですが、新婚旅行中、NY市内で、僕が携帯電話をなくしました。幸い見つかったんですが、なくした場所(タイムズスクエアにある、とある劇場です)と連絡をとれたのがフロリダに移動してからだったもんで、数日後、NYに戻ってから、その劇場に取りに行くことに。
   
で、忘れもしない大晦日の日、指定された時間に行って、係員の人に「携帯くださいな」と言うと、「落し物係りのおばちゃんは今日はもう帰りました」とのたまう。「何をっ!!」と一瞬思ったものの、「帰ってしまったもんはしゃぁないかぁ」と思いかけた僕。と、そのとき、横にいたうちの奥さんが、別の係員を捕まえて、再度の交渉に挑戦。無理なもんは無理なんちゃう…と半分あきらめ気味に思っていたら、何と、交渉が成立し、係員さんパートⅡが僕の携帯を持ってきてくれたのであります。そのとき、「この奥さんに一生ついていこう」と思ったのは言うまでもありません。
  
なんで今更そんな話をするかというと、アメリカというところは、とかくそういうところだ、ということ。ガーナに行くための2回目の注射を受けることにした、という話は先週書きましたが、その予約の日が4/30になっていて、よく考えると、その日に注射を受けたら、B型肝炎の二回目の注射が、出発日に間に合わない(B型肝炎は、1か月のスパンをおいて2回受ける必要あり)。これはまずいということで、今日、ヘルスセンターへ交渉に行くことに。
   
受付のおばちゃんに「こうこうこういう理由だからさぁ、もうちょっと早くなんない?」と言うも、おばちゃんさんは、「感染症係の医者の予定は4/30まで埋まってます」の一点張り。こっちもこの4か月間で多少は成長したので、頑張ってゴネてみる。相手は、医者でも何でもない、普通の受付のおばちゃんだと知りながら、「一回目と二回目の間って、ほんとに三十日きっちり開けないとダメ?」とか、「一回受けるだけでも多少は効くもん?」とか、とりあえずいろいろ聞いてみる。「多少」ってなんだよ、と自分でも思いながら(笑) と、そのうち、相手も面倒臭くなってきたと見えて「たぶんダメだと思うけど、そんなに言うんだったら、ここに直接電話してみ?」と言って、お医者さんの部屋の電話番号を教えてくれる。で、直接お医者さんに電話してみたところ、お医者さん曰く、

そうねぇ。明日とかどう?
12:45、13:30、14:15、15:30が空いてるけど、どれがいい?

こらぁ、空きまくっとるやないか!!!!
  
というわけで、皆さんも、アメリカに来られたら、何事も一回では引き下がらず、相手が引くまで押し続けるというのを実践されてみるといいと思います。では、今日はこの辺で。(それにしても、今日の書き込み、ゆるいなぁ…。)
Maxwell School, Syracuse, Apr 21, 23:28

Monday, April 20, 2009

A Question of Balance #2

昨日、このブログで、「サクラが咲いた」と書いて喜んでみたと思ったら、今日は早速、花冷え。ただいまの気温、摂氏3度。昨日のエントリーを読んで、「これならシラキュースに行ってやってもいいかも」と思った皆さん、もう一度考え直してみた方がいいかも知れません(ウソ)。

今日は午後一の授業で、Nordhaus本の読書感想文を発表。昨日はあまりに眠かったので、今朝、プレゼン準備をすることにしていたのだが、若干、思っていたより長めに寝てしまったこともあり、予想通り、追い込まれる。ギリギリまで配布資料と発表原稿作っていたら、普段、20分かけて登校するところ、授業開始の15分前に家を出る羽目に。と、文字通り、last- minuteな感じではあったが、なんとかプレゼンも終了し、これで一つ、学期末のハードルを突破。めでたしめでたし。
  
というわけで、今日は、"A Question of Balance" by W. Nordhaus の感想文2回目をお送りします。(1回目はこちらを。)

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前回の続きで「割引率」のお話から。

Stern案とNordhaus案で、モデリングの結果に大きな違いが出る最大の原因は、割引率の設定の仕方にある、というところまでは前回書いた。では、この「割引率」、モデルを回す人たちはどうやって決めているのか。
  
どうやら、いろんな考え方があるらしく、ちょっとネットで検索してみたくらいでは「定説」らしきものにたどり着けない。この点は改めてお勉強が必要。賢者の皆さん、教材の推薦、お願いします。
   
というわけで、今日は、Nordhaus君が、割引率についてどう考えているかという点に限って説明することにする。それが正しいか正しくないかの判断は、ここではしません(てか、僕の能力ではできません)。  
   
まず、彼自身のモデル(DICE-2007 model)の中で用いている割引率について、彼は、
The approach in the DICE model is to use the estimated market return on capital as the discount rate. The estimated discount rate in the model averages 4 percent per year over the next century.
と述べている。年率4%。Stern Revieの割引率は0.1%/yearなので、その差は確かに大きい。100年後の1億円の現在価値が、Sternモデルでは9000万円以上になるのに対して、Nordhausモデルでは2000万円ちょっとにしかならないということだ。
 
Nordhaus君、割引率一般については、「二つの互いに関係する、ときに混同されがちな概念を含む(“Discounting involves two related and often confused concepts”)」ものだとした上で、それぞれの概念を、以下のように説明している。(p.169-170)
 
1.Real return of capital…財についての割引率(“the idea of a discount rate on goods”)。市場データから実測値を得ることが可能。
2.Pure rate of social time preference(or time discount rate)…後続世代の幸福(welfare)を、現代世代と比べてどの程度重視するか。この値がゼロならば、後続世代を、現代世代と完全に同等に扱う、という意味。

real return of capitalについては、Nordhausは「一般的に6%あたりをベンチマークとして使う」と言っている(p.170)ので、その値と、彼の割引率(=4%)とのギャップ(=約2%)が、time discount rateということなんだろう(←この点、明記はされていない)。一方で、Stern Reviewの年率0.1%という割引率は、(Nordhausのtermを使って説明すれば、)極めてゼロに近いtime discount rateを想定することによってもたらされている、ということになるんだろう。
  
time discount rateは、実証的・経験的に求められるものでもなければ、効率性の観点から理論的に得られるような数字でもなく、この値をどう決めるかは、ethicsやphilosophyの世界のお話である。構成要素の一つであるtime discount rateがそうやって決まってくるということは、結局のところ、割引率(discounting rate)全体も、「世代間公平をどう考えるか」という、倫理的・哲学的な論争からは逃れられないということだ。

それゆえ、Nordhausも、割引率についてはいろんな考え方がありうる(“alternative ethical perspective are possible”)としている(p.177)。つまり、Sternの極端に低い割引率も、Nordhausに言わせれば「正しい可能性はある」ということになるはず。だが、割引率設定を巡るSternのやり方については、以下の2つの理由から批判をしている。
  1. 常識からはかけ離れた値を設定しているのにもかかわらず、なぜその値を選ぶかについてのまともな説明がなされていない。
  2. 割引率については、本質的に、いろんな考え方がありうる(主観を排除しきれない)のにもかかわらず、割引率が他の値(0.1%以外)をとる可能性をまったく考慮していない。
もちろん、これは、Nordhausの見方であって、SternにはSternの反論があるんだろうと思う。本当は、両方ともの著作を読んでから書くべきなのかも知れないけれど、あくまで個人のunofficialなブログだということで、この点は、ご容赦いただきたい。

というわけで、今日の書き込みはここまで。予想通りではあったが、いざ書こうとすると、細かいところできちんと理解できていないところがすごく多いことに気づかされる(と言いつつ、レポートはもう出しちゃったんだけど。笑)。上の記述は、いちおう、自分で理解できていると思える範囲をぎりぎり出るか出ないかくらいのところで書いたつもりだが、もし、間違いを見つけられたら、ご連絡いただきたい。

次回(第3部)で、Nordhausシリーズは、とりあえず一旦終了にしたいと思っています。
My home, Syracuse, Apr 20, 27:00

Cherry is Blooming!!

Nordhausの本にかんする12ページもののレポート課題、終了~!!! まぁ、あした提出なんで、いま終わってなかったらむしろヤバイんですけど、そうは言ってもやっぱ12ページ書き終えたらうれしいわけで。ささやかな達成感に包まれております。というわけで、今日はレポートを書きあげたついでに、blog版Nordhaus感想文の第二部も書こうと思ってたんですが、残念ながら、眠いので寝ます

その前にひとつ。今日、学校の裏庭をふらふら歩いてたら、かわいげなピンクの花木を発見。もしやと思って近づいてみたら、案の定、あれ、あれですよ、旦那(←誰?)、サクラさんでございますよ!
  
というわけで、貴重なソメイシラキュース(?)のお写真をおすそわけ。

今年の夏から、シラキュースに来ようかなぁ…なんて考えてらっしゃる皆さん、このblogではこの一年間、寂れてるとか、寒過ぎるとか、娯楽がないとか、雪しかないとか、さんざんっぱらシラキュースの悪口を書き続けてきましたが、ご安心を。こうやって、シラキュースにも春がちゃんとやって来ます!

というわけで、夜中の3時にしてはまったく無意味なハイテンションを保ったまま、今夜は休ませていただきます。おやすみなさい。

My home, Syracuse, Apr 19, 26:49

Sunday, April 19, 2009

What to eat first after back to Japan?

土曜日の今日は、午前中、毎週恒例の奥さんとのSkypeトークで、一週間分の緊張を解きほぐす。電話中、ただ弛緩しきっているだけという説もある。世の中、何事も、視点次第では如何様にも見えるものだ。午後からはMaxwellに登校。Economics of Science & Technology のfinal reportの続きにとりかかる。今日は、欲しいデータがなかなか見つからなかったりして、ページ数はあんまり稼げなかったが、まぁ何となくメドはついてきた(気がする)
 
夕食は、久々の“MPA+α”日本人会で、Syracuse郊外にある某日本料理屋さんへ。席上、日本に帰ったら、まずはじめに食べたいかものは何かという話題で盛り上がる。僕自身、オイシイものは大好きだが、マズイものしか周りになくてもそれなりに暮らしていける方なので、正直、「いま、死ぬほど食べたい」と思えるものはない。とはいえ、何かないだろうかと、うーーんと頭をひねって考えてみた結果、出てきた答えは、

王将の餃子 と ヒロタのシュークリーム

両方同時に買ったとて(食べ合わせがいいか悪いかは別にして)、500円玉でお釣りがくるお値段。これで幸せになれちゃうんだから、自分ってホント幸せだよなぁと思った夜でした。オレの効用曲線バンザイ!!ということで。
 
さて、昨日のなし崩し的半徹で、さすがに今日はお眠なので、これから帰って、枝雀師匠の落語でも一席観たあと、早めに休もうと思います。
Maxwell School, Syracuse, Apr 19, 24:30

Friday, April 17, 2009

EPA Finds Greenhouse Gases Pose Threat to Public Health, Welfare

Director of Center for Asian Studies of American University(漢字で書くと美利堅大學亞洲研究所所長!!)であられる趙全勝(Zhao Quansheng先生の訪問講義を聞きに行く。講義のテーマは、ズバリ、“Pros and Cons in China and Japan”。今日の日中関係に残る課題と関係改善の兆候の両側面を(主にアメリカ人学生向けに)紹介するといった内容。一回きりの訪問講義とあって、「入門編」に徹した内容であったが、氏のrealisticなものの考え方と、日中両国に対する深い理解(中国理解が深いのは当たり前か)が端々に垣間見え、「出てよかった」と素直に思える講義であった(訪問講義は、肩すかしを食らわされることも多いんですけど。汗)。趙先生はD.C.在住とのことなので、秋にでも、研究室に一度お邪魔してみたいなと思う。というわけで、早速、講義のお礼 & 感想のメールを送信。
 

US-EPAが、「温室効果ガスは、人々の健康と快適な生活を脅かす可能性のある大気汚染に寄与するものである(greenhouse gases contribute to air pollution that may endanger public health or welfare.)」との公式見解(finding)を発表(正確には、今日から60日間のパブリックコメントの後に確定)。このニュースは、アメリカではそれなりに大きく報じられている。Washington Postからはnews alertが届いたし、NY times も大きな記事で掲載。1月26日に大統領司令(Executive Order)が出された時点でほぼ既定路線だったとはいえ、やはり、歴史的な一歩と言えるだろう。
  
Washington Postの記事によると、この"finding"の法的効果に関する解釈は一様でないみたいだが(このあたりはいかにもアメリカ的でようわからんです)、「一旦、この"finding"が確定したら、EPAは、自動車由来の温室効果ガスの排出を規制する義務を負う」という説がどうやら有力らしい。もっとも、大統領・EPAとも、EPAのregulation(政令??)で手当てするよりも、立法府によるlegislation(立法)で手当てする方が好ましいとの見解を示している。この点は、規制される側の産業界も同じ。行政にフリーハンドで書かれるよりは、議会の議論の中で決める方がまだましと思っているはず。つまり、この"finding"のホントの狙いは、EPAが自らregulationを作ることではなく、むしろ、「legislationが嫌ならregulationでやっちゃいますよ」というをはめることで、議会でのcap-and-trade法案の議論に弾みをつけることなんだろう。
    
そう考えると、就任から一週間と経たないうちに出されたexecutive orderは、戦略的な価値の非常に大きなものだったということになる。今でもはっきり覚えているが、あの日は、各メディアも、加州自動車規制の容認の方にばかり注目していて、Clean Air Actの件については、あまり大きな報道がなされていなかった。周囲に悟られないうちに、効果的な一手を仕掛けたという意味では、この一手は、Obamaチームの作戦勝ちと言えるのかもしれない。玉をとるまでの戦いはまだまだ長そうだけども。
Maxwell School, Syracuse, Apr 17, 29:24

Thursday, April 16, 2009

American Clean Energy and Security Act of 2009

History of International Relations の読書感想文(12ページモノ)を書き始める。いま、半分くらいまで終了。今週初め、クラスメイトの何人かに「朝型人間になる」宣言をかましてみたのだが、いざ挑戦してみると、やっぱり夜の方が集中できる。というわけで、例によって例の如く、あっさり前言を撤回し(ホントはもっと根気強く体質改善しないといけないんだろうけど)、明日、授業がないのをいいことに、今夜は息が続くところまで書き続けることにしようと思う。今夜中に4分の3くらいまで書き終えられれば、あとあとかなり楽になるなぁ。。
  
Pew Center(気候変動系シンクタンクの大御所)から届いたメルマガに、Waxman-Markey法案―正式名:American Clean Energy and Security Act of 2009―の概要が出ていた。4月7日のエントリーでも書いたが、同法案は、今年のcap-and-trade法案の本命。というわけで(どういうわけだろ?)、少し長くなるが、Pew Center作成による法案概要の概訳(もちろん公式訳ではないです)を作ってみることにする。こんなことやってる暇があったら、レポート書くべきでは?という気がしないでもないが、気分転換ということで(笑)。概要の原文をご覧になられたい方はこちらへ。

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American Clean Energy and Security Act of 2009 概要 (Pew Center作成の概要より一部抜粋の上、邦訳。文字の強調は筆者)
  • 2009年3月31日、Waxman (民主党‐カリフォルニア州)・Markey (民主党‐マサチューセッツ州)両下院議員によって提出。
  • Ⅰ) クリーンエネルギー、Ⅱ) エネルギー効率、Ⅲ) 地球温暖化汚染の削減、Ⅳ)クリーンエネルギー経済への移行 の4つの章から成る。各章の内容は以下の通り。
  • 第Ⅰ章: 再生可能電力に関する連邦基準、炭素回収・貯留(CCS)技術、新型石炭火力発電所に関するパフォーマンス基準、低炭素燃料に関する基準、スマートグリッドの推進
  • 第Ⅱ章: 建築物、照明及び電化製品の省エネプログラム
  • 第Ⅲ章: 温室効果ガス(greenhouse gas (GHG) )のcap-and-trade(詳細は後述)
  • 第Ⅳ章: クリーンエネルギー経済への移行に伴う、国内(産業)の競争力の維持及び労働者の保護、消費者への支援の提供、国内及び国外における適用(adaptation)イニシアチブの支援
Scope of Coverage(適用範囲)
  • 規制対象物質: CO2,CH4(メタン), N2O, HFCs, PFCs, SF6, NF3(注 NF3は京都議定書の規制対象外)
  • 規制対象施設: 大型固定発生源(年間25,000トン以上のGHGsを排出)、石油燃料の製造業者(精製者など)及び輸入業者、天然ガスの個人向け及び事業者向け販売業者、フロンガスの製造業者、その他の特定する排出源。

Target(目標)

  • 全対象施設から排出されるGHGの総量が、2005年レベルを基準として、2012年に3%、2020年に20%、2030年に42%、2050年に83%削減されるよう排出総枠を設定。
  • HFCsの商業用生産に関しては、毎年3%の削減が達成されるよう、別途、キャップを設定。

Distribution of Allowances(配分及び割当)

  • 排出枠をオークションによって配分するか、無償で配給するかについて、具体的には示さず。
  • (無償で配給するとした場合に)排出枠をどのように配給するかについても、一部例外を除き、具体的な方法を示さず。
  • これらについては、次のバージョンで示されるものと予想される。

Offsets and Cost Containment Measures(オフセット及びコスト抑制手法)

  • 20億トン相当までの排出削減については、オフセットの使用を容認 (10億トンは国内、10億トンは国外)。大統領は、このオフセット上限値の増減に関し、議会に対して検討を促す権限を有する。
  • 1トン分の排出をオフセットするためには、1.25トン分のクレジット(排出権)を提出する必要がある。
  • EPAは、「オフセットの品質維持に関する諮問委員会」の助言に基づき、(オフセットに)有効な(排出削減)事業のリストを決定する。
  • banking及び翌年度からの無利子borrowingを無制限に認める複数年履行制(2年周期)。
  • 2~5年後分からのborrowingも可能(削減義務の15%まで。また、この場合の利率は8%)。
  • 四半期ごとに戦略備蓄からの余剰排出枠のオークションを実施。
  • 初年度のオークションにおける排出枠の最低価格は、2012年排出枠予測価格(by EPA予測)の2倍に設定。その後、年々増額。

Carbon Market Oversight(炭素市場の監視)

  • 連邦エネルギー規制委員会 (FERC) により、排出枠及びオフセット市場を規制。
  • 大統領は、排出枠のデリバティブ(派生商品)市場の規制責任(者)を指名する。

Interaction with State and Regional Programs(州および地域プログラムとの関係)

  • 州は、より厳しい気候変動規制を実施することができる旨、明記。ただし、cap‐and‐tradeを除く。
  • 連邦レベルでのcap‐and‐trade制度実施のため、州レベルでのcap‐and‐trade制度は、2012~2017の間、中断しなければならない。
  • 連邦レベルでのcap‐and‐trade制度が適当ではなかったとの判断がなされた場合、各州は、州レベルのcap‐and‐trade制度を再開することができる。
  • カリフォルニア州又はRGGIによって2011年12月31日までに発行された排出枠を保有している者は、連邦の制度を通じて、それら排出枠の購入に要した費用の補償を得ることができる。

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去年のLieberman-Warner法案に盛り込まれていたCarbon Tariff規定 (アメリカと同レベルかそれ以上の温暖化対策をとっていない国からの輸入品には関税を課す、という規定)が、今年の法案にも盛り込まれているかどうかについては、とりあえず、この記事からは不明。春学期が終わったら、この点についても調べてみようと思う。

というわけで、宿題に戻ります。

Maxwell School, Syracuse, Apr 16, 22:28

(追記) NEDOさんのサイトに、すでに同法案の概訳が掲載されているのを発見!! たぶん、より網羅的でより詳しい情報が得られると思いますので、プロフェッショナルの皆様は、ぜひそちらのサイトをご覧くださいませ。(若干の徒労感に苛まれ中…)

Wednesday, April 15, 2009

Taste of Africa Day

今日のお昼は、Maxwell African Caucus (Maxwellに通うアフリカ出身学生&アフリカに興味のある学生の会)主催の“Taste of Africa Day”なるイベントに参加。無料でランチが振舞われるとあって(というのもなんですが。。)、普段学校でよく見かける面々はほとんどが参加していた気がする。冒頭、Caucusの代表らしき人から、最新のアフリカ情勢の説明があった後、buffet形式でアフリカ料理をいただきつつ、アフリカの太鼓 with ダンスを観て聴いて、Taste of Africaを堪能しましょうという趣旨。アフリカ人のクラスメイトたちは、カラフルな民族衣装を着て登場。やっぱり似合うし、なんか楽しそう。
    
料理もおいしく、非常に楽しい会だったが、その中でも一番際立っていたのはダンス。「人間ってこんなにいろんな動きができるんだ」と感心するくらいに動きまわる。身体のバネがとにかくすごい。そして何といっても踊っている本人達が心から楽しんでいる。ここのところ、若干お疲れ気味の僕は、その圧倒的なパワーに気押され気味…(苦笑) 6月のガーナ行きまでには、こっちもあんくらいテンションあげねば…(ムリ?)
   
ガーナと言えば、Akihitoさん、 “は~い私~~”さん、昨日のエントリーへの返信、ありがとうございます。その後、大阪の母上(←読者)からも「破傷風の注射は赤ちゃんの時に受けてるはずだけど、もう免疫が切れているのでは?」との的確なアドバイスが。というわけで、また日を見つけて、破傷風、狂犬病、B型肝炎の注射を打ちに行ってきます。
  
さて、午後のEconomics of Science & Technologyでは、一学期に一回回ってくるPolicy Discussionの司会役を担当。今日の担当は、僕と、韓国人のKさんという、こてこてのアジア人二人組。にもかかわらず、何の因果かお題は「アメリカの技術政策の課題」。まともに自分の意見を開陳しても、アメリカ人学生たちには太刀打ちできないので、プレゼンで彼らが勝手に盛り上がってくれそうな方向に議論を誘導し、あとはフロアにお任せすることに。この作戦がわりとキレイにはまって、(自分で言うのもなんだけど)なかなか良いディスカッションになった。
  
このクラス、先生だけでなく、生徒もみな、ひと癖、ふた癖ある。ミリタリーオタク、音楽オタク、環境オタク(←誰だっけ??)etc. みんなそれぞれの観点から「技術政策」に関心を持ってるもんだから、何かにつけて一過言ある人が多い。最初の頃は、ミリタリーオタク氏の暴走に、「お前の語りを聞きにきてるんじゃない」と、本気でイラついていた僕だったが、最近は、ちょっと引いて観察する余裕も。毎回、アメリカ人同士の奇論・暴論を交えた本気の言い合いを聞けるので、見ようによっては某在阪局制作の討論番組みたいで面白い(ちょっとホメすぎかな)。
  
今日のディスカッションでも、アメリカで理系に進む学生が減っているという事実に関して、「最近の学生は、nationに対するroyalityがなく、自分の儲けばっかり考えてMBAに走るから、アメリカの技術レベルが揺らぐんだ」とミリタリーオタク氏が主張すれば、別のアメリカ人が「学生に人気の分野は、市場原理に導かれて時代ごと効率的に決まってくるもの。てか、経済のクラスでpoliticalな議論するのはやめようぜ」とやり返し、クラスが和やかな(??)失笑に包まれる一幕も。英語がもうちょっとクリアに聞きとれれば、もっと楽しめるのだが。
  
授業の終了後、一緒にプレゼンしたKさんが、「ライオンの檻に放り込まれたけどなんとか食べられずに生還した」くらいの勢いで、「無事終わってよかったね~」と言いつつ安堵の表情に包まれていたのが印象的。まぁ、彼女は彼女でビビり過ぎだったと思うんだけど…(苦笑)
Maxwell School, Syracuse, Apr 15, 20:02

Tuesday, April 14, 2009

Road to Ghana #1

注射を打ちに行ってきました。
  
といっても別に、病気をしているわけではなくて、予防接種。実はこの夏、アフリカの(ここらへん→) にあるとある国際機関でインターンをする予定にしています。ガーナに渡航するにあたり、いろいろと予防接種を受けないといけないというわけ。とりあえず今日は、黄熱病とA型肝炎のワクチンを接種。自分の左腕の上腕二頭筋あたりに黄熱病の生ワクチン君が住み着いてると思うとなんかムズガユイ気分がします…(←たぶん考えすぎ)。
  
どのワクチンが要りそうで、どのワクチンが要らなさそうかを調べるだけでもけっこう手間がかかったので、今後のためにメモを残しておくことにします。貴重な情報をくださった先達の皆さん、ありがとうございます。

【注射したもの】
― 黄熱病(yellow fever)…ガーナに行くなら必須。これがないとビザがおりない。10年間有効。$115也。
― A型肝炎(hepatitis A)…今回の注射で6ヶ月間有効。6ヶ月後にもう一回打てば一生有効。一回当たり$58也。

【薬をもらったもの】
― 腸チフス(typhoid)…"VIVOTIF BERN EC CAP"という飲み薬タイプの生ワクチン(そんなものがあるとは知らんかった)。4回服用が1セットで、5年間有効。$46也。
― マラリア(malaria)…"DOXYCYCL"という薬を購入。マラリアの薬はいろいろ副作用がある(気分が滅入る、とか)と聞くので、どうしようか迷ったのだが、お医者さん曰く、「DOXYCYCLはそんなに深刻な副作用はない」とのことなので、いちおう購入。とはいえ、副作用で、軽い下痢が起こる可能性があるのと、日射に対する肌の抵抗力が落ちるらしく、日焼け対策が必須になるらしい。体質的に合う合わないもあると思うので、とりあえず飲んでみて様子を見ることにする。毎日服用、二か月分で$68.60也。(ちなみにLariumというマラリア薬は、副作用が結構キツイらしい。)
― 細菌性下痢の治療薬…これは予防薬じゃなくて治療薬。細菌性のお腹痛に効くらしい。まぁ一回くらいは下痢にもなるだろうからと思って買っておく。3日分で$16.50也。

【検討中のもの】
― 破傷風(tetanus)
…子供のときに受けた(と思われる)ワクチンが今も有効かどうかわからなかったので、とりあえず保留。きわめて一般的に育ってきた78年産まれの日本人男子なんですが、そういう人って、普通どうなんでしょう?ご存知の方、教えてください。

【不要と判断したもの】
― B型肝炎(heptitis B)…A型と違って、飛沫感染しないので(主に血液感染)。
狂犬病(rabies)…動物には近寄らないことにする。
― 髄膜炎(meningitis)…発症の多いシーズン(乾季)を外しているので。
― ポリオ(polio)…ガーナでは既に撲滅されているらしいので。

念のため、お医者さんに「今日は普通にしてていいのか」と聞いたら「全然OK」とのことだったので、アメリカ人の言うことを信じて(←危険。。)、今日の午後は、明日のプレゼン準備に励むことにします。
  
ちなみに、さっき、そのプレゼンの関係でPopp先生の研究室に行ってみたら、TwinsとRedosoxの切り抜き記事がやたらめったら壁と扉に貼ってありました。ひとつのチームの切り抜きを集めている人なら日本にも(黄色いチームの人たちを中心として)結構いますが、二つのチームの記事を同時に集めている人は珍しい。気になったので、打ち合わせ終了後、直接本人に聞いてみたら、「両方のファン」とのこと。やっぱりこの人、ちょっと変わっている…(笑) 帰り際、「僕も(松坂)Dice-Kのファンなんですよ」と言って、ちゃんと媚を売っておきました。
Maxwell School, Syracuse, Apr 14, 15:21

Peaks and Troughs, and Troughs..

今学期も残り3週間を切った。しかし、実質10営業日くらいの間に、プレゼンあり、読書感想文の〆切あり(←例のNordhausの本)、Quantitative Analysisの宿題あり、Econ of S&Tファイナルペーパーの提出ありと、非常に盛り沢山。いつもながら綱渡りである。今学期、それなりに真面目に勉強してきたつもりなのに、なんで結局こういうことになるのだろうか?? (そっか。メキシコ行ってたからか…)
  
うだうだ言ってても仕方がないのでやるしかない。今日の夕方、一番気になっているEcon of S&Tのファイナルペーパーの執筆計画を立てる。日がないことを改めて確認。かなりお尻に火が点いてきた。
  
というわけで、このblogもしばらくは短めのエントリーの日が続くかも知れない。Nordhausの続きは、できれば今週中には書きたいと思っているんだけど(授業の課題の下書き代わりにもなるので)。
 
そんな、フル操業していないといけない時期のはずなのに、ここ数日、英語のlistenningとspeakingが絶不調。。 先週の授業では難なく聞き取れていたはずの先生の話がなかなか頭に入ってこない。以前に、このブログでも書いた気がするが、語学というのは、本当にスポーツと良く似ているなぁと思う。わかりやすく好不調の波がある。本当は、スポーツと同じように、調子が悪いときには悪いなりに「まとめる」術を身につけないといけないんだけど、まだまだその域には達せず。。 調子が上向くまで、とりあえずできるだけあがいてみます。ふがふがふが…。
My home, Syracuse, Apr 13, 24:52

Sunday, April 12, 2009

Recovery Act Funds to Clean Up of Petroleum Leaks

今日はなんだかお疲れ気味。なので、Nordhausの感想文の続きは次回以降にして、今日は、環境ニュースの紹介でお茶を濁すことにする。Nordhaus続編を楽しみにされていた方、スイマセン。そんなにたくさんはいないと思いますが…笑。
    
紹介するのは、さっき届いたUS-EPA(米国環境保護庁)のメルマガに載っていたニュース。2月の景気刺激法(the American Recovery and Reinvestment Act of 2009)で$200 millionの予算がついたClean Up Underground Storage Tank Petroleum Leaks(地下貯油槽からの漏出油クリーンアップ)事業の詳細が発表されたとのこと。US-EPAのサイトに、詳細が載っている。
  
新設される基金については、メルマガによると;

The funds will be used for overseeing the assessment and cleanup of leaks from underground storage tanks or directly paying for assessment and cleanup of leaks from federally regulated tanks where the responsible party is unknown, unwilling, unable, or the clean up is an emergency response.

とのこと。直訳しても「係る」と「若しくは」がいっぱい出てきて非常に見苦しい日本語になるので(笑)、意訳を交えつつ箇条書きすると;
  1. (当該汚染サイトに責任を有する者が実施する)アセスメント及び浄化作業の監視業務(←監視業務自体は州又は地方政府が行う)に対する補助
  2. アセスメント及び浄化作業に対する(州または地方政府からの)直接的な財政支出に対する補助 (以下の場合が対象)
      イ) 責任を有する主体が不明の場合
      ロ) 責任を有する主体に洗浄作業を実施する意志又は能力がない場合
      ハ) 緊急を要する場合

ということか(これでも十分見苦しい??)。

US-EPAのサイトを見ても、具体的な雇用創出効果などは出ておらず(This money will create thousands of jobs と書いてあるだけ。まぁ出ていたからといって…という話でもあるが)、試算が十分でないようには見受けられるが、直感的に言って、景気対策の一環として行う環境政策としては、非常に良いものではないかと思う。

なぜそう思うか。

第一に、施行後、比較的短期間での、雇用創出効果が見込まれる点。「Cleanup(土壌洗浄)」というが、要は一種の土木工事。なので、業種的に言って、需要の増加は、雇用に対して弾力的に影響しやすいのではあるまいか。

第二に、経済の生産性を高められる点。この施策なかりせば、塩漬けになったまま活用されなかったはずの少なからぬ土地が、この施策のおかげで動きだすのは確か。ということは、少なからず、経済の生産性向上に貢献するはず。

第三に、産業構造の改善に貢献する可能性がある点。これは、アメリカにどのくらい油漏出サイトが残っているか次第だが、もし、今回の施策をやりきってもまだまだそのようなサイトが残っているのだとすれば(たぶん、そうだと思う)、本施策終了後も、「油漏出サイト浄化ビジネス」は、一つの産業として成立し続ける可能性が高い(補助がなくなっても自律できるか、それまでにtake offできるか、という問題はあるが)。もしそうなれば、この施策は、新産業の立ち上げにも貢献したこととなる。

第四に、(上記二点とも関係するが)この施策がなければ、あまり自発的には行われないであろう事業を補助の対象としているので、既存の民間事業者の仕事を、政府が「奪う」心配はないという点。(もちろん、財政支出である以上、マクロ的な意味でのクラウディングアウトはある程度伴う。)

そして最後に、環境対策の観点から見ても、本当にやる価値のある政策であるという点。人口の約半数が飲み水として地下水を利用していると言われるこの国にとっては、地下水に潜むリスクを減ずる政策のベネフィットはとりわけ大きい。

この政策について、EPAのJackson長官は、会見の中で“EPA is putting people to work by serving our core mission of protecting human health and the environment.” と述べている。なかなかかっこいいお言葉。その言葉が実現するかどうか、今後の進捗に期待したい。

Maxwell School, Syracuse, Apr 12, 23:39

A Question of Balance #1

水曜日の授業で使うプレゼン資料を作っていたら、夜の11時過ぎにWashington PostのNews Alert メールが届く。こんな時間になんだろうと思って見てみたら、なんてことはない、Obama家のペットが判明したという他愛もない記事。たったそれだけのニュースなのに、webサイト3ページにわたる長編記事が掲載されている。疲れて途中で読むのをやめたが、今日に至るまでのスクープ合戦の裏模様などが書かれているみたい。Post社内に、相当の思い入れを持って追いかけていた記者がいるんだろう。個人的には正直どうでもいいと思うんだけど(笑)
   
ともあれ、犬が決まったというだけでこれだけのニュースになるということは、Obama人気もまだまだ堅調ということか。ちなみに、新しくホワイトハウスの一員となったその犬は、生後6か月のオスのPortuguese water dog。ケネディ上院議員がObama girls(Obamaの二人の娘、MaliaとSashaのこと。米メディアでは、この呼称が普通に使われている)へのプレゼントとして贈ったそうで、贈られたObama girlsは、"Bo"と命名したらしい。
猫派の僕としては、猫さんたちにも、クリントン政権以来の官邸ポストを作ってあげて欲しいと思うのだが、これまでのところ、そう言った噂はまったく聞かない…。確かに、ヤツらは家にいるからいいんであって、職場にいたら、単なるヤル気阻害要因にしかならないかもしれない。。。

さて、今日は、Nordhausの"A Question of Ballance"を読了。というわけで、(一昨から同じような話が続いていて恐縮だが)今日を含めて2,3回で、この本について書いていこうと思う。

まず、この本のテーマは何かということだが、昨日のエントリーでも簡単に触れたとおり、気候変動対策の費用便益分析が主要テーマ。裏表紙の言葉を借りてもう少し丁寧に書くと、

... William Nordhaus integrates the entire spectrum of economic and scientific research to weigh the costs of reducinfg emissions against the benefits of reducing the long-run damages from global warming.

ということになる。

気候変動対策の費用便益分析レポートということであれば、我々環境屋さんの間では、2006年に発表されたStern Reviewも有名(というか、日本ではむしろこっちの方がはるかに有名)だが、両レポートのアプローチは、基本的には変わらない。ごく簡単に言えば、両方とも、将来的に発生するであろうthe costs of reducinfg emissions(排出削減に伴うコスト)と、同じく将来的に発生するであろうthe benefits of reducing the long-run damages from global warming(温暖化に起因する被害を減ずることによる便益)とを、それぞれ、現在価値に計算し直し、現在価値で測った時の benefit/cost が最大になるような政策変数(削減目標、税率、タイミング etc.)を弾き出しましょう、というアプローチだ。

ところが、両者の示す結果は、下のグラフで見ても明らかなように、あまりにもかけ離れている。(Baselineは何も政策を講じなかった場合。)

(本書p.100,101掲載のデータから作成)

このグラフで示された排出量を実現するには、Nordhausの計算によると、2015年時点で、Nordhaus案なら$41.90、Stern案なら$336.38を、税として、Carbon 1トンあたりに課す必要がある(同じだけの取引価格が生じるような排出量取引でも可)。実に8倍以上の開きである。

なぜこのようなことになるのか。これについてNordhausは、"[t]he Stern Review's radical view of policy stems from an extreme assumption about discounting."(スターンレビューの過激な予測は、discounting=割引率に関する極端な仮定に由来している)と述べている。(p.168)

Stern案がradicalなのか、Nordhaus案がtoo moderateなのかは一旦さておくとして、両案の大きな違いが、割引率に関する考え方の違いに依拠しているという点は、客観的に言ってまず正しい(と思う)。その点については、Stern陣営もきっと異論はないことだろう(もちろん、聞いてきたわけじゃないけど)。

というわけで、一昨日から散々書いてきているように、長期の費用便益分析を行うためには、割引率をどう設定するかが決定的に重要になってくるわけだ。

とりあえず今日はここまで。あと2回くらいで、この本についての感想その他もろもろをまとめてみようと思う。
Maxwell School, Syracuse, Apr 11, 26:11

Saturday, April 11, 2009

Take me out to the Ball Game

昨日のエントリーにも名前が出てきたYale大学経済学部の大御所、Nordhaus教授の近著("A Question of Balance")を、いま、しこしこ読んでいる。History of International Relations のクラスの担当図書2冊目。一冊目の本に比べるとはるかに面白い。内容が非常に濃いので、これをレポートにどうやってまとめるかは、悩みどころだけども。
  
経済学及び自然科学諸分野の知見に依拠する計量モデルを用いて気候変動対策の費用便益分析を行い、(一定の仮定の下での)最適政策モデルを示そうというのが本書の試み。昨日のエントリーで、割引率の話を書いたが、今日、この本を読み進めているうちに、まさにその割引率についての議論に遭遇した。というか、第4章 An Alternative Perspective: The Stern Review の30ページは、まるまる、割引率の議論に割かれている。有体に言えば、Sternの割引率の考え方と、自分のそれとがなぜ違っているのかを批判的に述べている。正直、今の自分にとっては難解すぎるところもあるが、丁寧に読めばなかなか面白い。詳細はあす以降に。
  
さて、久々に(?)遊びの話題を。まだ少し肌寒いながらも晴天に恵まれた今日の日中は、日本人の皆さんと連れだって、プロ野球観戦に行ってきた。といっても我が町にメジャー球団はないので、マイナーリーグの試合。いちおうこれで、アメリカ4大スポーツを制覇(?)したことになる。とはいえ、アメフトは大学バスケはNBAのオープン戦アイスホッケーはプロの2軍を観ただけなので、ほんとのメジャースポーツはまだ、ただの一戦も観戦してないんだけど(笑)
 
感想としては、一言、やっぱり野球は良い
  
天井ではなく青空の下でやるからか、単純に昔から慣れ親しんでいるからか、その辺はよくわからないが、これまでアメリカで観てきたスポーツの中で、文句なしに一番楽しかった。勝手な先入観かもしれないけれど、僕らのイメージする「古き良きアメリカ」のイメージに一番近いスポーツが野球であり、ballpark(野球場)であるような気がする。Syracuseの球場(Alliance Bank Stadium)も、決して大きくはないし、派手さもないが、芝生がきれいで、いい雰囲気のある球場だ。
  
$10 のチケットで、ダグアウトのすぐ上に陣取れるのにも驚き。まぁこれは、アメリカだからというわけではなくて、マイナーだからなんだけど。これまで、野球は外野席から観るもんだとばかり思っていたが、初めてピッチャーの顔が見える側から野球を観て、「これが正しい姿なのかも知れない」と思った。バットがボールを真芯でとらえたときの快音を、バッターボックスからほんの数メートルの距離で聞ける喜びは、野球ファンとしては堪らない。まぁ、某球場のライトスタンドで黄色いメガホン振ったり、風船飛ばしたり、隣のおばちゃんに焼鳥もらったりするのも、あれはあれで堪まんないんだけど(笑)

というわけで、我がSyracuse Chiefsは2-9の大敗を喫したものの、観戦自体は非常に楽しく、いい休日が過ごせた。聞くところによると、Syracuseが所属するリーグには、井川慶がプレイするチーム(Scranton)も所属しているらしい。うーん、Scranton戦のときにもっかい来てみよっかな~。
Maxwell School, Syracuse, Apr 10, 27;10

Friday, April 10, 2009

Controversy over discount rate

このblogにも、ときどきご登場いただいている、バークレーのK.S.君(最近、彼のblogの背景が一段と爽やかになりました)とチャットをしていたら、Nordhaus vs Stern の話から割引率の考え方に話が流れて、その話題で30分くらい盛り上がった。結論としては、「まだまだお勉強が足りないっす…」と実感。。。(なんじゃそれ)

というわけで、あまり詳しく書くと勉強不足がバレるので、サラっとしか書かないが、要して言えば、経済学の観点から地球温暖化問題を考えるためには、超長期のスパンで費用対効果を見る必要があり、そのためには割引率をどう考えるかが決定的に重要になる、ということ。
  
この割引率なるものをどう考えるかについては、定説と呼べるものが未だない。というか、長年、定説であったものが環境経済学者などの手によって覆されようとしている。その試みが成功するのか失敗に終わるのか、そこのところはまだよくわからないし、成功するにしても、どこに着地するのかはますますわからない。さらにやっかいなことには、割引率をどう考えるかには、多分にその人の価値観が絡む。それぞれ自説を唱えていらっしゃる学者の皆様は、「自分の説は客観的に見て正しい」とおっしゃるだろうが、僕には(勉強不足のせいなのかもしれないが)、ある程度主観が織り込まれているように見えてならない。まぁ、経済学なんて本質的にそんなもんだと言ってしまえばそうなんだけど、こと、割引率を巡る論争については、ことさらその傾向が強いように思う。
  
ともあれ、曲りなりにも「経済学が自らの専門分野である」と名乗りつつ、環境政策に携わろうという人間にとっては、割引率にまつわる諸々の議論にある程度精通し、自分なりのスタンスを持つことが必須の要件ではないだろうか―――と、30くらい前に思ったので、帰るまでに頑張って勉強します。
My home, Syracuse, Apr 9, 26:35

Thursday, April 9, 2009

Germany's policy of containment

6日付のFinancial Timesの記事が、最近のドイツの不況ぶりを報じている。右のグラフからも見てとれるように、1月のIndustrial Output(鉱工業生産高)は前年同月比で20%以上も落ち込んだらしい。
  
同記事によると、昨年のドイツの輸出高はGDPの47%強を占めており、日本(20%弱)、米国(約13%)と比べても突出して高い。しかもその40%以上が"investment goods"(投資財。具体的には、機械設備、建設機械など)で占められているとあって、世界経済減速の余波が直撃。先週発表のOECD予測では、今年(2009年)のGDPは、5.3%縮小の見込みとされている。(ちなみに、日本の予測値は6.6%の縮小。)
  
つまり、ドイツ経済も、日本経済と同様(あるいは、それ以上に)外需偏重型であり、それ故に、去年の秋以降は、これまた日本と同様のメカニズムで、世界不況のあおりをまともに食らっていると言えそうだ。ここまでは日独両国でよく似通っているわけだが、それに対する処方箋はというと、大きく違っている。同記事によると、
Her (=Merkel's) strategy seems clear – sit out the crisis, preserving industrial strength as much as possible, and await the eventual upturn. The reliance on exports “is not something you can change in two years”, Ms Merkel said. “It is not something we even want to change.”
とのこと。Merkel率いるドイツは、某国首相にちくちく言われながらも(…)、大規模な景気対策には走らず、"sit out the crisis"(危機を耐え忍ぶ)しているわけだ。記事は、発言の抜書きなので、Merkelの真意がどこまで正確に表現されているかわからないが、本当にこういうトーンだったんだとしたら、ある意味、相当腹が座ってらっしゃるなぁと思う。
  
アメリカもイギリスも日本も中国も、大規模な財政出動に躍起になる中、なんでドイツがこういう作戦に出るのかというと、「過去のハイパーインフレの経験から、ドイツ政府は、財政政策の拡大に関して他国と比べ物にならないくらい慎重」であることが原因だと、記者氏は述べている。また、ドイツ政府の債務残高は、EUの平均を下回っているにも関わらず、ドイツ国民の多くは、「もう無理。すでに過剰債務」と思っている、とも。
(と言いつつ、ちょうど今日、新車買替促進補助の予算を、1.5 billion ユーロから5.0 billion ユーロ(約6,600億円)に拡大する、というニュースが出ていた。)
  
ドイツ政府は、あくまで「外需主導で頑張るもんね」というスタンスを維持しているわけだが、記事の最後の部分では、van Ark とかいうNY在住のエコノミストの言葉を引きつつ、
To generate better domestic demand, the focus should be on creating productive jobs in service sectors that sell locally, Mr van Ark says. Dismantling obstacles to competition in services would encourage greater efficiency, higher productivity and lower prices that benefited consumers and led to higher real wages. “That is the sort of dynamic upward spiral that an economy needs to keep growing.”
と書かれている。僕も、2月25日のエントリー4月1日のエントリーで触れたとおり、結局のところ、議論は「いかにして外需主導モデルを卒業するか」というところに行きつくわけだ。

ドイツ政府は「卒業なんてしないよ」というスタンス。日本はと言えば、目下、ドイツと違って積極的な財政出動を行っているわけだが、これは、基本的に足下の内需拡大のための政策であって、産業構造そのものを内需主導型に変えるための政策ではない(と僕は思う)。つまり、日本も、中長期的に見れば、この問題から逃れられるわけでも何でもない。。
  
もう一つ、この記事を読んで思ったのは、アメリカやスウェーデンの経済政策を勉強するのもいいが、日本人はもっとドイツのことを研究すべきではないかということ。おそらく、経済的な意味での国の成り立ちが日本に一番近いのはドイツだろう。彼の国が、常に日本の先を行っているわけではないので、一方的に「先生」とするわけにはいかないが、互いに研究しあえば、(夢物語の事例としてではなく)現実的に参考にできる事例がたくさん見つかるのではないだろうか。それをするには、英語ソースでのドイツの情報が圧倒的に不足しているのが問題なんだけど…(言うまでもなく、日本に関する情報も同様。)。
My home, Syracuse, Apr 8, 26:20

Wednesday, April 8, 2009

50th Anniversary of the Antarctic Treaty

朝起きて外を見たら地面の上が白い。おいおい、4月に入ってもう一週間も経ってるんですけど!!! 今日の寒の戻りには、普段はナゾなほど寒さに強いアメリカ人たちも、さすがに参っているご様子。"Why we got to have snow in April??" "'Cause here is Syracuse!!" みたいな会話を今日だけで三回くらい聞いた(笑) こんなことを書くと、誰も来年Syracuseに来てくれなくなりそうなので大きな声では言えないが、天気予報によると、この雪、今日から土曜日まで断続的に降り続くらしい…。
  
今日は、Evaluation of International Programs のfinal paperに取り掛かっている。finalなので、最終提出日は春学期終了後の5月アタマだが、中間提出の〆切が明日。というわけで、例によってバタバタ(苦笑)
  
実際に世の中で行われているプロジェクトをひとつ取り上げ、そのevaluation(政策評価)の方法を考えろ、というのがこの課題。評価・分析するポイントをピックアップし、そのための情報を集めてくるには、何人が何日くらい働かないといけないかを考え、評価に要する予算も考慮した上で、feasible(実現可能)かつ効果的な評価手法を考えなさい、というもの。
  
International Program、つまり、国際機関が絡んでいるプロジェクトなら何を拾ってきてもいいのだが、僕は、どうせ近い将来ガーナの勉強をしないといけないので(詳しくはまた後日)、一石二鳥狙いでガーナUNDPの「LPガス普及プロジェクト」を取り上げてみた。元来、政策評価なるものがあんまり好きではない(というかどっちか言うとキ○イな)人間であるが(←スイマセン)、このプロジェクトは、真面目にやってみると意外に(?)面白い。無事、提出できた暁には、中身についても、詳しくご紹介したいと思う。

ともあれ、ここ一週間の間に、中国の技術政策を考えてみたり、アメリカの田舎の環境影響評価を議論してみたり、はたまた、ガーナの開発政策を評価してみたりと、忙しいとはいえ、政策好きにとっては、幸せな環境が与えられているなぁと思う。もちろん、「政策ごっこ」で終わらせないよう、常にその点は、注意しておく必要があるんだけど。
  
昨日6日から、ボルティモアで、南極条約協議国会議が始まったとのこと。このblogの読者にして、かつての"戦友"でもあるM氏が日本からのメールで教えてくれた。僕とM氏は、数年前、ともにこの案件に携わっていた間柄。僕にとっては、いまだに、一番強く印象に残っている仕事の一つだ。
  
今回は、南極条約締結50周年記念会議ということで、特別に、 南極条約協議国会議(the Antarctic Treaty Consultative Meeting)と北極協議会(the Arctic Council)のジョイントセッション(閣僚級)も行われた。その席上、クリントン国務長官が行ったスピーチの全文が、米国務省のサイトにアップされている。

「おめでとう」とか「ありがとう」とか、文字通り、外交辞令的な発言がほとんどだが、少しだけ、実質的な発言もしている。それが以下の部分で、ここで述べられている内容が、要は、今年の会議の主要議題になるんだろうと思う。(注!! 以下、いつもに増してマニアック)

The United States has also submitted a proposal to the Consultative Parties of the Antarctic Treaty to extend marine pollution rules in a manner that more accurately reflects the boundaries of the Antarctic ecosystem. Strengthening environmental regulation is especially important as tourism to the Antarctica increases. The United States is concerned about the safety of the tourists and the suitability of the ships that make the journey south. We have submitted a resolution that would place limits on landings from ships carrying large numbers of tourists. We have also proposed new requirements for lifeboats on tourist ships to make sure they can keep passengers alive until rescue comes. And we urge greater international cooperation to prevent discharges from these ships that will further degrade the environment around the Antarctica.

一つ目は、南極周辺海域の海洋汚染に関する規制の強化。"in a manner that more accurately reflects the boundaries of the Antarctic ecosystem"が具体的にどういうことを意図しているのか、これだけではよくわからないが、もしかしたら、積年の課題である、南極海洋生物資源保存条約をはじめとする漁業系条約との適用範囲争いに本格的に乗り出そうということなのかもしれない。
 
二つ目は、環境保護及び旅客の安全確保の観点からの南極観光の規制強化。こちらは、数年前から議論されてきた話。ただ、本当に法的に規制するとなったら、南極ギョーカイ的には、めちゃくちゃ大きなニュースになる。

ともあれ、南極という世界は、よくわからないところで、各国とも、国益をまともに気にしてんだか、環境保護派の好きなようにやらせてるんだか、読み切れないところがある。それゆえ、地(氷?)に足の着いていない議論がまま見られるのも事実で…。個人的には、法律家でも、環境保護派でもなく、実際に南極で活動しておられる科学者の皆さんの言葉をもっと大事にする必要があると思う。その意味では、クリントン発言の二つ目のポイントは、以前から科学者の方々が憂慮されていた点。進展があるといいなぁと、一個人として思う。
Maxwell School, Syracuse, Apr 7, 26:51

Tuesday, April 7, 2009

Waxman-Markey bill welcomed by US market

Economics of Science & Technology の課題を提出し、週末の短期集中授業も乗り切ったところで、なんとなく、ほっと一息ついていたのだが、今日の午後、改めてカレンダーを見直してみて、ほっとしているヒマなんてどこにもないことを再認識。幸い、先学期のように、〆切が一か所に集中しているわけではないので、メルトダウン的全崩壊のリスクはないが、一つ一つ〆切どおりに課題を終わらせていくと、最後の課題(Economics of Science & Technology の期末レポート) に充てる時間がほとんどないということが発覚(というか、再認識)。これはマズイ。どこかで貯金を作らねば…。えーっと、どこで??

久々にCarbon financeのサイトを見てみたら、cap-and-tradeを盛り込んだ The American Clean Energy and Security Act of 2009法案 が、3/31日に国会に提出されたというニュースが出ていた。提案者は、Henry Waxman(カリフォルニア選出民主党下院議員)とEd Markey(マサチューセッツ州選出民主党下院議員)。その記事のタイトル("Waxman-Markey bill welcomed by US market")を、このエントリーのタイトルにそのまま援用させてもらったが、ここでいうところの"US market"は、株価市場のことではなくて、RGGI(Regional Greenhouse Gas Initiative。東部諸州が自主的に行っているcap-and-trade制度)の排出権取引市場のこと。なので、この表題の付け方は、ちょっと吹かし過ぎだと思うが…(苦笑)
  
記事には、法案の中身についても、さらっと書かれているが、そこまで書いている時間はないので(←言い訳です)、詳しくは記事を読んでいただくとして、ここには、スケジュール感だけ書いておく。
    
同記事によると、法案は、提案者の一人であるMarkey議員が議長を務めるエネルギー・環境小委員会(the House subcommittee on energy and environment)で承認された後、もう一人の提案者であるWaxman議員が議長を務めるエネルギー・商業委員会(the House energy and commerce committee)に送られるとのこと。Waxmanさんは、「5/25までに自分の委員会を通過させる」と意気込んでいるらしい。で、最終的に、いつ法律として成立するかだが、同記事によると、気候変動問題専門シンクタンクPew Center(←その分野では超有名)のRoyさん曰く、
“be surprised if it became law this year”, but that it may not be necessary for a climate change law to be passed by both the House and the Senate for President
Barack Obama “to engage” in the Copenhagen talks. “Getting a bill through the
House [before December] gives Obama an idea of what’s on the table,”
とのこと。現実的な線では、今年12月のコペンハーゲン(というのは、次回の気候変動枠組条約締約国会議のことだが)の前までに下院を通せるかどうかが一つの試金石、ということのようだ。
Maxwell School, Syracuse, Apr 6, 26:23

Sunday, April 5, 2009

"Reconciliation"

週末の授業が終わった。今日の授業も、ディスカッションが中心だったが、本気モードのnativeと議論をするには、やっぱりまだまだ英語力が足りていない。講義の英語を聴きとるのとは、聞くのもしゃべるのも、求められるレベルが全然違う。そのレベルで英語をしゃべれるようにならないと、ホントは意味がないんだけどなぁ…。こっちに来た頃に比べれば、だいぶマシにはなったと思うが、目指すレベルに到達するには、まだまだ先が長い…。いちおう、まだ諦めてはいない。
  
今日も中国人のおじさんと少し立ち話をした。某省(地方政府)の環境保護庁にお勤めで、既に勤続20年らしい。こういう言い方をすると失礼だとは思うが、彼の地で20年間も環境行政に携わってこられたというからには、相当いろんな経験をしてこられたんじゃないかと思う。また一度、ゆっくりお話を聴いてみたい。というわけで、授業終了後、とりあえずメールを出してみた。
    
  
先週木曜日、上下両院が大統領の予算案を承認したが、その陰で、cap-and-trade 絡みのちょっとした(もしかすると大きな)動きがあった。

Obamaが示したもともとの大統領案には、cap-and-trade のオークションから得られる収入(向こう10年間で$646 billionと試算)を、拡大するヘルスケアの予算に充てると明記されていたのだが[3/27 grist]、当該部分は、上下両院での予算案承認の際に削除されてしまった。上院では、「キャップアンドトレード制度を伴う気候変動法案のために"reconciliation"を用いることを禁止する」(to prohibit the use of reconciliation in the Senate for climate change legislation involving a cap and trade system.)旨の改正決議付き。賛成67票、反対31票。賛成票のうちの26票はDemocratsからの造反。[4/1 grist]

大統領側が予算案の中で、なんでわざわざこんな規定を盛り込んだかという話だが、これには、filibusterという議会運営にまつわる制度が関係している。

現在の連邦議会上院で法案を通すためには(厳密に言うと、法案審議を終えて採決に移るためには)60票が必要(上院の議席数は100)。なんで過半数の51票じゃダメかというと、「反対側が延々と審議を続けることで時間切れ廃案に追い込むことができる」というナゾの制度(これをfilibusterという)があるから。この制度、もともとは制度というより、「演壇に立ち続けている限り、何時間でもしゃべりつ続けていい」というルールをいいように解釈した裏ワザ。昔懐かしい日本の牛歩戦術と基本的な発想はたぶん同じ。その昔、24時間以上しゃべり続けたツワモノもいたらしく、こんなんじゃ日が暮れる(というか日が昇ってもっかい暮れる)ということで、60の賛成票があればfilibusterを中断できるclotureという制度が導入された。なので、法案を通すためには、51票ではなく、60票が必要、というわけ。ちなみに今では、filibusterも近代化(?)されていて、実際に演壇に立ってしゃべり続ける必要はなく、「いま、僕たちfilibustingしてるもんね」と意志表示をするだけでいいということになっているらしい。なんだかポケモンかカードゲームかのワザみたいで、素人には何のこっちゃよく分からないが、たぶんこの理解で合っていると思う。詳しくはwkipediaを。

で、現在の上院の議席割りがどうなっているかというと、Democratsの議席が58で、cloture(= filibusterがえしっ!!)をするにはギリギリ2議席足りない。しかしここで更にもうひとつの裏ワザが。reconciliationといって、予算案にはfilibuserをかませられないことになっている。つまり、予算案だけは、単純過半数で通すことができるということ。
  
説明が長くなってしまったが、今回、大統領府側が狙ったのは、予算案の中にcap-and-trade絡みの規定を潜り込ませておいて予算案ごと通してしまうことで、filibusterを回避し、cap-and-tradeを既成事実化してしまおうという作戦。
  
結果はというと、上の方に書いたとおり、上下院とも、敢え無く敗北。上院でのDemocratsの投票結果から察するに、「cap-and-tradeの是非はともかく、そうゆう無茶なことはやっちゃいかんよ」というのが支配的なムードなんだろうと思う。僕も確かにそうだと思う。だって、どっちみち、本体の法案は、通さないといけないわけだし…。
  
というわけで、cap-and-trade法案の審議は、意味があったのかなかったのかよくわからない前哨戦を終えて、そろそろ本戦に移っていきます。
Maxwell School, Syracuse, Apr 5, 20:44

Saturday, April 4, 2009

Despute over an Orange

昨日のエントリーでも書いたとおり、この週末は、"Multi-Party Negotiation & Conflict Management of Environmental Disputes" という短期集中コースを受講している。アメリカのconflict managementの世界ではおなじみ"Interest-Based Negotiation"を環境問題に当てはめてみようというのが、このコースの趣旨。講師は、昨年までUS Institute for Environmental Conflict Resolutionという機関で所長を務めておられたEmersonさんというおばさま。現在は、うちの大学と、隣のSUNY-ESFで客員教授を務めている。
   
今日は一日、とある開発案件を例にとったロールプレイ。アメリカ西部の原野にある国有地内で、オフロードカーを走らせるコースの建設計画が持ち上がった。これをめぐり、オフロードカー倶楽部、トレッキング協会、地元先住民自治政府、郡政府観光局、州政府、連邦内務省国有地管理局のそれぞれの立場に分かれて意見を出し合う。アメリカで、この手のロールプレイを経験されたことのある方はお察しの通り、なんやかんやと鬱憤がたまる。午後の休み時間には、隣の席に座っていた中国人のEMPA生の方 (某役所で課長を務めておられるというそれなりのお歳のおじさま) に、「これ、現実と違い過ぎてないか?アメリカにしたって、本当の政策がこんなに住民参加型で決まってるわけでじゃないんじゃないの??」 とまくし立てられた。相当、ストレスがたまってたんだと思う。。。(お察しします。) 
     
とはいえ、今更ネガティブなことを書き連ねてもあんまり生産的じゃないので、あとあと使えそうな事をいくつかメモしておきます。  

そもそも、Interst-Based Negotiationてのは何かという話。よく使われる例は、オレンジをめぐる争奪戦のお話。AさんとBさんが、一個のオレンジをめぐって取り合いになる。AさんもBさんも、そのオレンジは自分のものだと言って譲らない。議論にならない言い合いをしているうちに二人とも疲弊し尽くし、双方納得はいかないながらも、半分ずつ持ち帰ることで妥協する。後日、再会した二人は、「ところで、あのオレンジは何に使いたかったのか」という話になる。Aさんは「オレンジジュースを作りたかったんだ」と言い、Bさんは「マーマレードを作りたかったんだ」という。そこで初めて二人が気づいたことは、最初からオレンジの取り合いをする必要なんてなかったということ(←マーマレードには皮だけあればよく、ジュースに皮は必要ない)。この例から分かるように、Position-Based (これは私のオレンジだ!!)の交渉は、ゼロサムゲームにしかならないが、Interest-Based(私がやりたいことはオレンジジュース/マーマレードを作ることだ!!)の交渉は、プラスサムゲームに持ち込める可能性がある、というのがInterest-Based Negotiationの基本的な考え方。

この話を聞くと、僕も含めて多くの(たぶん、多くの)日本人は、「毎回毎回、そんなうまいこといくかよ」とか、「現実的な範囲でなら、言われる前から自然にやっとるわ」とか言いたくなる。ただ、授業の中で、これを意識的にやってみて、思っていた以上に掘り下げられるもんだなぁという発見があった。たとえば、「次の休みにNYCに行くかAdirondack(←有名な州立公園)に行くか」というロールプレイの中で、「NYに行きたい」派(←別にクイズオタクなわけではない)が、"刺激を得たい"というinterestを挙げる。これに対して、「Adirondackに行きたい」派は、「刺激の質は違うが、Adirondackででも、ラフティングやスノーモービルで刺激を得られるよ」と反論する。
  
そんなのへ理屈じゃん――That's right。でも、交渉事なんて、へ理屈であれ何であれ、理屈をこねたもん勝ちという一面もあるわけで、そういう意味では、脳ミソを柔軟に使って理屈を編み出す装置としては、Interest-Based Negotiationも結構有用な気がしてきた(万能の道具でないことは言うまでもない)。
  
もうひとつは、Multi-Party Negotiationの技術の一つとして、交渉の最初に、groundrulesをみんなで決める、というもの。先述の開発案件ロールプレイで議論を始めるとき、司会役のEmerson教授が、「議論のルールを決めましょう」とフロアに振る。振られた側は、ちょっと「面倒くさいな」と思いつつも、「他人の発言中はinterveneしない」とか、「議場をdominateしない」とか、いくつか「ルール」を挙げる。出きったところで本番の議論が始まるわけだが、事前にこれをやっておくと、「自分たちで決めたルールだ」といういちおうの責任感があるので、なんとなく、そのルールは破りにくい。別に破ったからといってペナルティがあるわけでもなく、所詮、緩やかなプレッシャーに過ぎないのだが、それでも、各人に与える心理的効果はそれなりに大きい。当然ながら、「niceでありたい」と思う人や、体面を気にする人には、効果大。なので、日本人に対してこのワザを使えば、アメリカ人以上に効くんじゃないかという気がする。まぁ、気まじめ過ぎて、最初にルールを挙げるところで詰まってしまう、という可能性もあるが…。

最終日の明日の授業はお昼まで。各主体からコース建設プランの最終案を出し合った後、それを一つにまとめて終了です。
Maxwell School, Syracuse, Apr 4, 19:35

American "Karaoke" experience

今日は朝一で、秋インターンの申込先からの電話面接を受けた後 (朝から緊張してみたけど、意外とあっさり終了。そんな内容ならメールで聞けるじゃん…)、昨夜書きあげたレポートを大学に出しに行き、そのまま午後の授業に出席。5時に授業が終わったときには、さすがに疲れがどっと出て、今晩は休憩に徹することに決定。家で軽く宵寝をしたあと、D氏主催のカラオケパーティに行ってきました。
  
カラオケといっても、日本のようなBOX(個室)式ではなく、traditionalなスナック形式。ただ、日本のスナックとは違って(っていうほど日本のスナックに行ったこともないけど)年齢層がもうちょっと若く、女性のお客さんもいっぱいいます。「ママ」はおらず、その代わり(?)に、盛り上げ役のお兄さん三人組が司会とDJを担当していました。
  
というわけで、建物的には日本のスナックに近いんですが、雰囲気的には、スナックと、カラオケBOXと、クラブを足して3で割ったような感じでしょうか。結局こんな説明じゃようわからんと思うので、あとはみなさん各自でご想像ください。
  
自分に課して臨んだ「最低一曲歌うこと」というノルマは、無事達成。見ず知らずのアメリカ人の皆さんにも、喝采していただけて(歌の最中も嬉しそうに踊ってくれてました)、単純に楽しかったです。ストレス発散できました。
  
そんなこともしつつ、今週末は、今日から日曜日まで、3日間の集中コースを受講中。昨夏、夏学期の最初の授業を受けられなかったので、その分の単位(一単位)の穴埋めです。お題は"Multi-Party Negociation & Conflict Management of Environmental Disputes"。 明日はみっちり朝の8時半から夕方5時まで。遅刻するとまずいので、今日はそろそろ寝ます。授業の内容については、明日か明後日のエントリーにて。
My home, Syracuse, Apr 3, 26:46

Friday, April 3, 2009

Record Sales Growth of ...

明日〆切の "Economics of Science & Technology" のtake home exam を、なんとか無事終了。火曜日のエントリーで書いたとおり、結局、今週は、寝る間も削ってこの課題にかかりきりになってしまった。本来、そこまで時間を要する課題ではないと思うんだけども、英語で文章を書くのには、本当に時間がかかってしまう…。資料集めなどの準備の時間も含めると、ダブルスペース (一行おきに書くスタイル)でA4に8枚書くのに、延べ30時間以上はかかった計算になる。やれやれ。。
  
そんなわけで、体力的にはかなり消耗してしまったが(ただいま、若干、モウロウ気味。。)、課題の中身自体は興味深いものだった。今回の課題は、「政府資金で行われた研究の成果の民間企業への普及に関するアメリカの政策を評価せよ」というものと、「中国がより高度なR&Dを内製化できるようになるための方針を示せ」というもの。二問とも、この分野(技術政策)のど真ん中直球と言っていい問題。
  
前にも少し書いた気がするが、技術政策を論理立てて体系的に教えてくれるこの授業はpracticalで、非常に面白い。今学期、一通り勉強した後には、90年代以降の日本経済の低成長の元凶の一つともされる、近年の日本の技術政策を自分なりに解釈してみたいと思っている。論文にまとめられれば理想的なのだが(やるとしたら来年の春学期か)。
 
さて、このblogでは、日本国内のニュースは基本的に扱わないことにしているが、今日のYahoo! newsに非常にうれしいニュースが載っていたので、これまでの禁を破って(??)取り上げることとする。同記事によると、世界一おいしい餃子を世界一のお手ごろ価格で提供することで有名な(←以上は僕が勝手に書き足した内容)餃子の王将の先月の既存店売上高が前年同月実績を14.5%上回り、1967年の創業以来、最高の伸び率を記録したとのこと。WBCの日本優勝に勝るとも劣らない壮挙に、地球の裏側から、一人、快哉を叫んでいる。思い返せば、久宝寺口店、寺田町店、京都三条店、新橋店、水道橋店、西日暮里店と、僕の人生の傍には常に餃子の王将があった。ここアメリカでは、あの奇跡的ともいえる美味に触れられないのが残念でならないが、一年半後の再会に思いを馳せつつ、歴史的快挙に心から賞賛を送りたいと思う。
Maxwell School, Syracuse, Apr 2, 26:15

Wednesday, April 1, 2009

Slow Growth Society

韓国人の皆さんと、経済情勢の話をすると、皆、異口同音に 「日本の経済はrobust(堅調)でいいよね」 と言う。普段、日本のニュースに慣れ親しんでいる身としては、反射的に 「いやいやとんでもない」 と否定したくなるのだが、先様の状況を考えると、単純に否定すれば、逆に先方の気分を害するなと気づいて、喉まで出かかった言葉を呑む。そんな場面が今日もあった。
  
昨日付けのFinancial Timesに、面白い記事が出ている。欧米諸国では、アメリカのAIG騒動をはじめ、感情的とも言える世論の高まりが見られるのに対し、アジア諸国は、同様に急激な景気後退に見舞われながらも、奇妙にも平静を保っている、という記事。イギリス人かアメリカ人だろうと思われる香港在住のその記者は、この奇妙な「平静さ」の向こうに、アジア諸国の「自信」を感じ取っている。
  
日本からインドまでを、「アジア」の一言の下にひとくくりにするのには多少無理があると思うし、「平静さ」の源泉が本当に「自信」なのかどうかは甚だ怪しい(「過信」或いは「状況認識の甘さ」が源泉では??)とも思うが、欧米人がアジアをどう見ているかが示唆されているという意味では面白い。
  
この記事の中で、日本については、こう書かれている。
Even Taro Aso, Japan’s blisteringly unpopular prime minister, is blamed more for mispronunciation of Japanese than for his handling of the economy. If there is anger in Japan, it is not directed at bankers or fat cats, but at the once wildly popular Junichiro Koizumi, the former prime minister, who sold the country on the rhetoric of market reforms. Japanese are used to riding out difficult times. A boom for them is 2 per cent growth.(日本人は難局を乗り切るのに慣れている。何しろ、日本人にとって好況とは、2%の経済成長なのだ。)
「たかだか2%の成長でも「好況」だと実感できる社会」というのは、(インド人や中国人にとってだけではない)欧米人にとっても、驚きなのだ。
  
日本人と話をしていると、ときどき「スウェーデンのような社会を目指すべき」という意見を聞く。「スウェーデンのような社会」という言葉に込められている意味合いは人それぞれだと思うので、単純な議論はできないが、もしそれが「低成長でもそこそこ安定した社会」を意味するのだとしたら、日本は、(それなりの経済規模を持った国の中では)世界に先駆けて、既にそれを達成してしまっていると言えるのではないだろうか。

そのことの肯定的側面を強調するならば、日本人は、自国の経済システムの良さを、もうちょっと認めてあげてもいいということだと思う。日本から半年以上離れてしまっているので、肌感覚として、今の日本がどのくらい「冷え込んでいる」のかわからないが、最初の話に戻って、たとえば韓国と比べてみたときに、日本の経済の方がはるかに安定しているというのは否定しえない事実だろう。それは別に韓国との比較においてだけでなく、世界中のほとんどの先進国との比較において言えることだと思う。
  
否定的側面を強調するならば、「知らぬ間に目標地点に到達していたけれど、結局、あんまり幸せにはなれなかった」ということなのかもしれない。もしそうだとしたら、多くの人(多いのかな?)が理想として掲げている「低成長社会」のモデルを練り直す(或いは、もっと精緻に作り込む)必要があるということではないか。

いずれにせよ言えることは、諸外国との比較の中で、もっと冷静に自国の経済システムを分析・認識する必要があるということだろうと思う。今の日本人は、他国と比べればそこそこイケている部分の良さには気づかずに、「もっともっと」と欲しがる反面、本当に大切な部分についてはおろそかにしてしまっているような気がする。それは、経済のことに限らないのかもしれないけれど。
Maxwell School, Syracuse, Apr 1, 19:17