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Thursday, November 26, 2009

Safety Valve

先週末のエントリーに書いたとおり、これまで実施された中で人類史上最大のcarbon marketであるEU-ETSでは、credit価格のvolatility(変動性)が大きな問題となっている。このことは、アメリカの専門家の間でも当然認識されており、現在、上院で審議中の環境・エネルギー法案(Kerry-Boxer法案)に盛り込まれているcap-and-trade制度には、emission allowanceの価格にfloor(下限)とceiling(上限)を設ける仕組みがbuilt-inされている(詳細こちら)。その仕組み自体を不安視する向きがあるという話も、以前、このblogで書いた(こちら)。

スウェーデンの電力業界お抱えのElforskという研究機関が、昨年(2008年)10月、このvolatilityの問題を扱った“Managing Cost Variability in Emission Allowance Markets”というペーパーを出している。なかなかきれいにまとまった論文だったので、以下、そのポイントを。

曰く、目下、検討されている、価格変動軽減のための方策には、主に、以下の6つのものがある。最初の二つは、直接的に価格変動を抑えるものではないが、価格を抑えることによって、間接的に価格変動を抑えようという仕組み。残りの4つは、価格変動そのものを直接的に抑えることを目的とした仕組みである。

Offsets: cap-and-tradeでカバーされていない発生源からの温室効果ガス(GHG)の排出削減活動に対して、削減されたGHGの量に見合ったcredit(allowanceの代替品)を発行する仕組み。市場全体で見れば、allowance及びcreditの総供給量を増やし、allowance価格を引き下げる効果を持つ。Kyoto Mechanism下のCDM(クリーン開発メカニズム)がその代表例であるが、理論的には、必ずしも、国外で行われる活動に対象を限定する必要はない(現に、K-B法案は、アメリカ国内での活動にもoffset creditsの発行を認めるとしている。)

Investments: 省エネ促進のための投資がallowanceの需給を緩め、価格の低減に貢献するというお話。

Banking and Borrowing: 次(以降)の約束期間へのallowanceのcarrying over(Banking)及び/又は前借り(Borrowing)を認める仕組み。経済的には、①GHG排出抑制投資の長期的視点から見た最適化、②価格変動の安定化(∵排出抑制コストの長期期待に見合った値動き)、といったポジティブな効果を持つ。Bankingは、cap-and-trade制度の継続要望を高める政治的効果を伴うが、Borrowingは、そのまったく逆向きの効果を伴ってしまう。

Private Sector Instruments: 政府が対応するまでもなく、市場自ら、価格変動に対応するための金融商品(先物、オプション取引、etc.)を生み出すのではないかというお話。実際、EU-ETSとRGGIについては、先物取引が既に行われている。(※ このペーパーでは言及されていないが、EU-ETSについては、オプション取引も行われていたように思う。)

Carbon Market Efficiency Board: 通貨市場における中央銀行に当たる機関を創設し、同機関に、一定の範囲内でallowanceの供給量を調整する権限を与え、市場の価格安定の任に当らせるとする仕組み。2008年のLieberman-Warner法案で提案されていた。

Quantity-Limited Allowance Reserve: allowanceの価格が、あらかじめ設定された上限値(ceiling)を越えたときに、allowance reserveから、allowanceを自動的に放出する仕組み。allowance reserveについては、通常のプロセスの中でallocateされるallowanceとは別に、一定量を確保しておくとする方法や、将来の約束期間から“borrowing”してくる方法が考えられている。

Safety Valve: allowance価格がceilingに達した場合には、量的な制限を設けずに追加的allowanceの放出を行うとする仕組み。

以上の整理を示した上で、このペーパー自体は、Safety Valveに、ceilingだけでなく、floor(価格の下限値)も設けることによるSymmetric Cost Managementを推奨している。floorの導入により、single-sided safety valveの持つ欠点(①民間の投資計画に狂いを生じさせる点、②スキーム全体の排出削減量を減ずる点)が補われ、以下のような結果が期待される、とする。

 以下、感想。

1. Symmetric Cost Managementについてのシミュレーション(その結果が上の棒グラフ)では、①価格変動は正規分布に従うことと、②ceilingとfloorは価格の期待値から等距離(1 s.d.)に設定されることが前提とされており、その前提が狂えば、当然、上のような美しい結果は導かれない。近似的にでさえ、そのような前提が成立すると言えるのか?

2. このペーパーでは、Carbon Market Efficiency Board、Quantity-Limited Allowance Reserve、Safety Valveという3制度間での優劣比較はなされていない。それぞれ、どういったpro-conがあるのか?

3. 何らかの商品の市場において、価格変動幅を一定の範囲内に収める試みが実施されたことはあるのだろうか。また、実際には導入されないまでも、通貨市場におけるceiling及びfloorの設定が議論されたことはあるのではないかと察するのだが、あるとすれば、そこからはどういったimplecationが得られたのか。更に、固定相場制は、この制度を究極的に強めた形とも言えるように思うのだが、同制度の経験から得られるimplecationとは何か。
my room, Washington DC, Nov 26, 9:04

Thursday, December 18, 2008

Trade Barriers as Climate Change Policy

「奥さんが来るまでに痩せるぞ」作戦は、時間的に間に合わないことが確実になったので(最初から無理だったんじゃないのかという声も。というかそういう声しか聞こえてきません。)、「散髪とコンタクトでごまかすぞ」作戦に変更。今日は、アメリカではじめてのコンタクト購入も無事入済ませ、散髪も、美容院でそれなりにいい感じに切ってもらえたので、たぶん8割方はごまかせるんじゃないかと思っています(根拠不明)。
 
さて、だいぶ遅くなりましたが、今日は"Energy, Environment, and Resource Policy"の期末レポートで調べた内容を簡単に御紹介します。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
レポートで扱ったテーマは、温暖化対策政策の一環としての輸入障壁措置(trade measures)。ザックリ言うと、「自国と同レベルかそれ以上の温暖化対策をとっていない国からの輸入品には、税関で何らかの負担を課す」というもの。実際に立法化された事例はまだないが、欧・米でその導入に向けた動きがある(米:今春、国会に提出された12本の温暖化対策法案のうち、Lieberman-Warner法案を含む約半数が、このtrade measuresを含んでいる。 欧:EU-ETSフェーズⅢの案に抽象的ながらtrade measuresに関する記述がある。)。
 
その導入に当たって最大の懸念となると見られているのは、WTOの定める自由貿易ルールとの衝突。WTOは、締約国が「人間、動物又は植物の生命・健康を守るのに必要な場合」や「枯渇性天然資源(exhaustible natural resources)の保全に関係する場合で、(輸入国)国内における生産又は消費に関する規制と連動して行われる場合」などに、輸入障壁を設けることを認めている(GATT第20条)が、その適用除外規定が、"Process and Production Methods (PPMs)"(製造工程及び製造方法)にまで及ぶか否か(つまり、製品そのものが環境破壊を引き起こすわけではないが、その製造段階において環境破壊を引き起こしているようなケースもGATT第20条の対象となりうるか否か)については、論争がある。
 
これについては、Jeffrey Frankelというクリントン政権の下で大統領経済諮問委員会(Council of Economic Advisers;略称CEA)のメンバーを務めた著名な国際マクロ経済学者(現在はハーバードのケネディスクールに在籍)が、この10月に"Global Environmental Policy and Global Trade Policy"という論文を発表している(この論文自体は、経済学というより国際法的な視点からの分析。)。その要旨は、「エビ-カメ事件(the shrimp-turtle case. 詳細はこちらを)などの前例に照らして考えると、trade measuresは、うまく設計されていさえすれば、理論上はWTOルールに整合しうる(Trade measures, if well designed, could in theory be WTO-compatible)」というもの。
   
ではそもそも、trade measuresのメリットとは何なのか。これについて同教授は、competitivenessleakageという二つの概念を挙げて説明している。いずれも、京都議定書に代表される既存の多国間交渉をベースにした取組(同教授はmulti-lateral approachと総称。)の欠点として挙げられているものだが、前者は、国際間で取組の強度に差がつくことにより、より厳格な規制を敷いた国が、経済的競争力を失ってしまうというもの。当然のことながら、これは主に(輸出)産業界が懸念している点。一方、後者は、同じく取組の強度に差がつくことによって、より規制の強い国から、より規制の弱い国への汚染の漏出(leakage)が起こり、全世界で見れば、何もしない状態(buisiness-as-usual)よりも悪くなり得てしまうというもの。これは、①高炭素排出型の工場の移転、②高規制国における高炭素型燃料の需要減退→高炭素型燃料の価格下落→低規制国における高炭素型燃料使用量の増大 という2経路を通じて起こるとされる。こちらは、主に環境保護派によって懸念されている点。trade measuresは、これら二つの問題を克服するのに有用であるというのがFrankel教授の意見である。
 
以下は、Frankel教授の論文を離れ、僕自身の考えであるが、competitiveness問題に関する輸出産業界の懸念を払しょくし、同時に、安い輸入品の脅威にさらされている国内向け製造業者の後押しを得られるという意味では、trade measuresは、国内意思決定プロセスにおいて、multi-lateral approachに比べて、はるかに合意を得やすいのではないだろうか。また、国際交渉という極めて煩瑣なプロセスを省略できるというのも大きなメリットだ。一見、全世界で取り組まないことによるデメリットが大きいようにも思われるが、もし仮に、EU・米国(北米)・日本の3局が同様の規制を敷いたとすれば、世界のマーケットのかなりの部分を押さえることが可能であり、このことによるデメリットはそれほど大きくはならない(この点については、Frankel教授も指摘している。)。
 
しかし、もし仮に、WTOルールとの抵触問題がクリアされたとしても、深刻なデメリットは他にもあるのではないかと思う。
 
一つには、たとえ法的に問題がなかったとしても、特定の国に対して、実際にこの措置を発動するとなると、国際政治上かなりの緊張を伴うのではないかという点。何せ、シロクロの判断は、輸入国によって行われるわけである。たとえ何らかの独立機関にその判断を委ねるとしても、政治から完全に自由になることはできないだろうし、またどのような方法を取ったとしても、輸出国側を完全に納得させることは難しいだろう。
 
また、実はこれが一番本質的な問題だと思うのだが、有体に言えば、この措置は、先進国が自国内の市場から、発展途上国の製品を占め出すための道具として使えてしまう。あるいは、仮にそのような意図がまったくなかったとしても、結果的にそのような結果になり得てしまう。つまり、やや極端に言えば、「温暖化対策を推進するために途上国の経済発展の機会を制限する」という構図が浮かび上がってくる。ただしこれは、trede measuresに固有の問題ではなく、あらゆる手法による温暖化対策が、本質的な部分で抱えている問題だと思うが…。  
 
これら二つのデメリットは、WTO問題と同じか、考え様によってはそれ以上に深刻なものであるが、だからと言って、trade measuresという手法に未来はないかというとそんなことはないと思う。デメリットもあるとはいえ、メリットは確かに大きいし、multi-lateral approachの難航ぶりは周知のとおり。すぐに立法化されることはないにしても、ひとつの有力なオプションとして提示され続けるのではないだろうか。
 
来年の国会、アメリカでは、排出量取引法案の成立が一つの焦点になると思われるが、その法案で、trade measuresがどのように扱われるかについても、watchしていきたい。
my home, Syracuse, Dec. 18, 26:00

Thursday, November 6, 2008

Post Election

突然ですがクイズです。

右の地図は、カリフォルニア州の大統領選の結果を示したもの(from CNN)ですが、軒並みObama支持が並ぶ海岸沿いの郡(county)の中で、ポツンと、離れ小島みたいに赤色になってるLAの南の郡はどこでしょう?

答え――オレンジ・カウンティ。そう、ドラマで有名な、あの"The OC"です。10月29日の記事で書いた「金持ちは共和党を支持する」説が、非常にわかりやすく現われていたので、拾ってみました。特にそれ以上話は広がらないので、この話題はこれで終わり。


<Obamaさん近辺の今日の動き>
1.Emanuel下院議員をChief of Staffに指名→同議員も受諾の方向。
2.国防長官Gatesは留任?
3.Lieberman上院議員の去就、今だ定まらず。
4.BushがObamaをホワイトハウスに招待(来週月曜日)。

Chief of Staffというのは、日本語では「大統領首席補佐官」と呼ばれるそうで、政権によっては実質的に副大統領以上の(つまり大統領に次ぐ)権限を持ちうる要職です(だそうです)。知りませんでした。はい。日本政府には、これにぴたっと当てはまる役職はない気がしますが、wikipediaを読む限りでは、総理秘書官が一番これに近いのでしょうか。言ってみれば、総理秘書官(日本では原則、役人が勤める)のお仕事を、政治家(それも大物)がやっている、といった感じ?役人からすると超怖いだろうなぁ…。Emanuelさんは下院民主党の大物政治家で、クリントン政権のOB。かつ、Obamaさんと同じIllinoi出身で、選挙期間中から一貫してObamaさんを支えてきたお友達だそうです。

Gatesさんというのは、Rumsfeldがあまりにむちゃくちゃだということで、政権の途中に国防長官を引き継いだ共和党の政治家。現在、戦争継続中ということもあり、当面(1年くらい?)の留任を求めるのではないか、という噂が報じられています。一方で、本人は辞めたがっているという説も。

Liebermanさんについては、America's Climate Security Act of 2007、通称"the Lieberman-Warner bill"の起草者として、その名を覚えている人も多いのではないかと思いますが(えぇ、このblogの読者層は幾分(?)みどりに偏ってます。はい。) 、アメリカでは、むしろ、元民主党副大統領候補ながら、McCain候補を全面的に支持した大物困ったチャン議員として有名。2000年の大統領選挙ではAl Goreのrunning mateとして副大統領の座まであと一歩に迫りながらBush Jr.に敗北→2004年の大統領選に出馬するも予備選で敗北→2006年の上院選の予備選でもやっぱり敗北→無所属で出馬→民主党公認を蹴散らして当選→今回の大統領選ではMcCain全面支持(普通に共和党の党大会で応援演説してました。ちなみにこの人の英語は超聞き取りやすい)、という波瀾万丈(やりたい放題?)の数年間を過ごしてきた彼。McCainの敗北を受け、元の鞘に戻るのかどうかが注目されています。もっとも、過半数を確保した民主党からは、もはや強烈な秋波が送られるはずもなく、そんな状況の中で態度を決めかねているみたいです。

あと、どうでもいいと言えばどうでもいいんですが、Obamaの勝利演説のときのMichelleのドレスがひどすぎた、という話題が巷では盛り上がっています。そんなことどうでもいいじゃんと思いながら、一応…と思って見てみたら、確かにあんまりな感じのドレスでした。「お前がファッションのことを語るな」と言われそうなので、今日はこのへんで。

Maxwell School, Syracuse, Nov 6, 20:54

Friday, March 20, 2009

US Is Open to Carbon Tariff

秋学期に、ある授業のresearch paperでCarbon Tariff について書いたという話はこのblogでも、だいぶ昔(昨年12月18日)に紹介しました。このcarbon tariff、簡単に言うと、「自国と同レベルかそれ以上の温暖化対策をとっていない国からの輸入品には、関税を課す」というもので、去年、上院で廃案となったcap-and-trade法案(いわゆるLieberman-Warner法案)にも、盛り込まれていたものです。
  
正直、4か月前にresearch paperを書いていた頃は、アイデアとしてはあり得ても、実際に導入するのは相当難しいだろうと思っていたんですが、今週、この制度の導入を巡って、米中の閣僚級どうしが、マスコミ経由でやりあっています。

Washington Post紙によると、今週の火曜日、DoE(Department of Energy)のChu長官が、下院での委員会出席に先立ち、
establishing a carbon tariff would help "level the playing field" if other countries haven't imposed greenhouse-gas-reduction mandates similar to the one President Barack Obama plans to implement over the next couple of years.
と語ったとのこと。同記事によると、Obama政権がcarbon tariffについての見解を公に示したのはこれが初めて。

このChu長官発言に対して中国側も反論。中国日報紙によると、ワシントン訪問中の解振華(Zhenhua Xie)国家発展・改革委員会(the National Development and Reform Commission (NDRC))副大臣(前環境保護部大臣)が、
"I oppose using climate change as an excuse to practice trade protectionism,"
と発言したのに加え、先のWashington Postの記事によると、Li Gao NDRC上級交渉官(同じく訪米中)は、
a carbon tariff would be a "disaster," would prompt a trade war and wouldn't be legal under World Trade Organization agreements
と、Dow Jonesに語ったとのこと。

12月18日のエントリーでも書きましたが、carbon tariffがWTOに抵触するかどうかは、最終的に裁定にもちこまないと白黒つかないと思います。環境保護目的など、一定の条件が満たされている場合に加盟国が輸入障壁を設けることを容認する規定(GATT第20条)が、"Process and Production Methods (PPMs)"(製造工程及び製造方法)にまで及ぶかどうか(つまり、製品そのものが環境破壊を引き起こすわけではないが、その製造段階において環境破壊を引き起こしているようなケースもGATT第20条の対象となりうるかとうかと言う問題)については、国際的に、はっきりした結論が出ていないので。
  
もちろん中国は、この問題だけでなく、アメリカの全体的な貿易保護主義化に対して懸念を抱いています。今のところ、Obama大統領はことあるごとに「protectionismには対抗する」という旨のことを言っていますが、実際、どのくらい本気で「対抗」しようとしているのかは不明。先のstimulus packageにも"Buy American"条項が盛り込まれたわけですし…。また、昨今のAIG問題(AIGをはじめとする政府支援を受けた複数の金融機関の幹部が、多額のボーナスを受け取ってたいた件)に対する議会の反応を見ていても、アメリカ政界の"populism化"は、かなりの程度進行している気がします。

Washington Postの別の記事によると、前財務長官のPaulsonは、「carbon tariff みたいなものを導入したら、米中の気候変動分野での協力はますます難しくなる」として、carbon tariffを“a dangerous path to go down”と称したらしいですが、僕は、たとえこの一件が持ち上がろうとも、気候変動問題を巡る米中の協力関係は、そう簡単には挫折しないんじゃないかという気がしています。他のいろんな問題と同じように、今やアメリカと中国は、戦略上、お互いがなくてはならない存在。ただ、それはもちろん、日米や英米のような「ベッタリ」の関係ではなく、戦略上、お互いの必要性は認め合うものの(→ だから協力関係の枠組みそのものを潰してしまうところまでは行かない)、一定の「ルール」の中では、可能な限り相手から多くを引き出してやろうとやりあっている関係。そういう意味では、大枠での協力関係を維持しつつも、carbon tariffをめぐる攻防はしばらく続いていくんじゃないかと思いますし、もう少し大きな視点から言えば、今後、米中の協力/対立軸の中で、各国(もちろん日本を含む)にも大きく影響を及ぼすいろんなことが決まってくるんじゃないかと思います。気候変動の分野でも、それ以外でも。
Maxwell School, Syracuse, Mar 20, 17:31

Thursday, April 16, 2009

American Clean Energy and Security Act of 2009

History of International Relations の読書感想文(12ページモノ)を書き始める。いま、半分くらいまで終了。今週初め、クラスメイトの何人かに「朝型人間になる」宣言をかましてみたのだが、いざ挑戦してみると、やっぱり夜の方が集中できる。というわけで、例によって例の如く、あっさり前言を撤回し(ホントはもっと根気強く体質改善しないといけないんだろうけど)、明日、授業がないのをいいことに、今夜は息が続くところまで書き続けることにしようと思う。今夜中に4分の3くらいまで書き終えられれば、あとあとかなり楽になるなぁ。。
  
Pew Center(気候変動系シンクタンクの大御所)から届いたメルマガに、Waxman-Markey法案―正式名:American Clean Energy and Security Act of 2009―の概要が出ていた。4月7日のエントリーでも書いたが、同法案は、今年のcap-and-trade法案の本命。というわけで(どういうわけだろ?)、少し長くなるが、Pew Center作成による法案概要の概訳(もちろん公式訳ではないです)を作ってみることにする。こんなことやってる暇があったら、レポート書くべきでは?という気がしないでもないが、気分転換ということで(笑)。概要の原文をご覧になられたい方はこちらへ。

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American Clean Energy and Security Act of 2009 概要 (Pew Center作成の概要より一部抜粋の上、邦訳。文字の強調は筆者)
  • 2009年3月31日、Waxman (民主党‐カリフォルニア州)・Markey (民主党‐マサチューセッツ州)両下院議員によって提出。
  • Ⅰ) クリーンエネルギー、Ⅱ) エネルギー効率、Ⅲ) 地球温暖化汚染の削減、Ⅳ)クリーンエネルギー経済への移行 の4つの章から成る。各章の内容は以下の通り。
  • 第Ⅰ章: 再生可能電力に関する連邦基準、炭素回収・貯留(CCS)技術、新型石炭火力発電所に関するパフォーマンス基準、低炭素燃料に関する基準、スマートグリッドの推進
  • 第Ⅱ章: 建築物、照明及び電化製品の省エネプログラム
  • 第Ⅲ章: 温室効果ガス(greenhouse gas (GHG) )のcap-and-trade(詳細は後述)
  • 第Ⅳ章: クリーンエネルギー経済への移行に伴う、国内(産業)の競争力の維持及び労働者の保護、消費者への支援の提供、国内及び国外における適用(adaptation)イニシアチブの支援
Scope of Coverage(適用範囲)
  • 規制対象物質: CO2,CH4(メタン), N2O, HFCs, PFCs, SF6, NF3(注 NF3は京都議定書の規制対象外)
  • 規制対象施設: 大型固定発生源(年間25,000トン以上のGHGsを排出)、石油燃料の製造業者(精製者など)及び輸入業者、天然ガスの個人向け及び事業者向け販売業者、フロンガスの製造業者、その他の特定する排出源。

Target(目標)

  • 全対象施設から排出されるGHGの総量が、2005年レベルを基準として、2012年に3%、2020年に20%、2030年に42%、2050年に83%削減されるよう排出総枠を設定。
  • HFCsの商業用生産に関しては、毎年3%の削減が達成されるよう、別途、キャップを設定。

Distribution of Allowances(配分及び割当)

  • 排出枠をオークションによって配分するか、無償で配給するかについて、具体的には示さず。
  • (無償で配給するとした場合に)排出枠をどのように配給するかについても、一部例外を除き、具体的な方法を示さず。
  • これらについては、次のバージョンで示されるものと予想される。

Offsets and Cost Containment Measures(オフセット及びコスト抑制手法)

  • 20億トン相当までの排出削減については、オフセットの使用を容認 (10億トンは国内、10億トンは国外)。大統領は、このオフセット上限値の増減に関し、議会に対して検討を促す権限を有する。
  • 1トン分の排出をオフセットするためには、1.25トン分のクレジット(排出権)を提出する必要がある。
  • EPAは、「オフセットの品質維持に関する諮問委員会」の助言に基づき、(オフセットに)有効な(排出削減)事業のリストを決定する。
  • banking及び翌年度からの無利子borrowingを無制限に認める複数年履行制(2年周期)。
  • 2~5年後分からのborrowingも可能(削減義務の15%まで。また、この場合の利率は8%)。
  • 四半期ごとに戦略備蓄からの余剰排出枠のオークションを実施。
  • 初年度のオークションにおける排出枠の最低価格は、2012年排出枠予測価格(by EPA予測)の2倍に設定。その後、年々増額。

Carbon Market Oversight(炭素市場の監視)

  • 連邦エネルギー規制委員会 (FERC) により、排出枠及びオフセット市場を規制。
  • 大統領は、排出枠のデリバティブ(派生商品)市場の規制責任(者)を指名する。

Interaction with State and Regional Programs(州および地域プログラムとの関係)

  • 州は、より厳しい気候変動規制を実施することができる旨、明記。ただし、cap‐and‐tradeを除く。
  • 連邦レベルでのcap‐and‐trade制度実施のため、州レベルでのcap‐and‐trade制度は、2012~2017の間、中断しなければならない。
  • 連邦レベルでのcap‐and‐trade制度が適当ではなかったとの判断がなされた場合、各州は、州レベルのcap‐and‐trade制度を再開することができる。
  • カリフォルニア州又はRGGIによって2011年12月31日までに発行された排出枠を保有している者は、連邦の制度を通じて、それら排出枠の購入に要した費用の補償を得ることができる。

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去年のLieberman-Warner法案に盛り込まれていたCarbon Tariff規定 (アメリカと同レベルかそれ以上の温暖化対策をとっていない国からの輸入品には関税を課す、という規定)が、今年の法案にも盛り込まれているかどうかについては、とりあえず、この記事からは不明。春学期が終わったら、この点についても調べてみようと思う。

というわけで、宿題に戻ります。

Maxwell School, Syracuse, Apr 16, 22:28

(追記) NEDOさんのサイトに、すでに同法案の概訳が掲載されているのを発見!! たぶん、より網羅的でより詳しい情報が得られると思いますので、プロフェッショナルの皆様は、ぜひそちらのサイトをご覧くださいませ。(若干の徒労感に苛まれ中…)