Sunday, April 12, 2009

A Question of Balance #1

水曜日の授業で使うプレゼン資料を作っていたら、夜の11時過ぎにWashington PostのNews Alert メールが届く。こんな時間になんだろうと思って見てみたら、なんてことはない、Obama家のペットが判明したという他愛もない記事。たったそれだけのニュースなのに、webサイト3ページにわたる長編記事が掲載されている。疲れて途中で読むのをやめたが、今日に至るまでのスクープ合戦の裏模様などが書かれているみたい。Post社内に、相当の思い入れを持って追いかけていた記者がいるんだろう。個人的には正直どうでもいいと思うんだけど(笑)
   
ともあれ、犬が決まったというだけでこれだけのニュースになるということは、Obama人気もまだまだ堅調ということか。ちなみに、新しくホワイトハウスの一員となったその犬は、生後6か月のオスのPortuguese water dog。ケネディ上院議員がObama girls(Obamaの二人の娘、MaliaとSashaのこと。米メディアでは、この呼称が普通に使われている)へのプレゼントとして贈ったそうで、贈られたObama girlsは、"Bo"と命名したらしい。
猫派の僕としては、猫さんたちにも、クリントン政権以来の官邸ポストを作ってあげて欲しいと思うのだが、これまでのところ、そう言った噂はまったく聞かない…。確かに、ヤツらは家にいるからいいんであって、職場にいたら、単なるヤル気阻害要因にしかならないかもしれない。。。

さて、今日は、Nordhausの"A Question of Ballance"を読了。というわけで、(一昨から同じような話が続いていて恐縮だが)今日を含めて2,3回で、この本について書いていこうと思う。

まず、この本のテーマは何かということだが、昨日のエントリーでも簡単に触れたとおり、気候変動対策の費用便益分析が主要テーマ。裏表紙の言葉を借りてもう少し丁寧に書くと、

... William Nordhaus integrates the entire spectrum of economic and scientific research to weigh the costs of reducinfg emissions against the benefits of reducing the long-run damages from global warming.

ということになる。

気候変動対策の費用便益分析レポートということであれば、我々環境屋さんの間では、2006年に発表されたStern Reviewも有名(というか、日本ではむしろこっちの方がはるかに有名)だが、両レポートのアプローチは、基本的には変わらない。ごく簡単に言えば、両方とも、将来的に発生するであろうthe costs of reducinfg emissions(排出削減に伴うコスト)と、同じく将来的に発生するであろうthe benefits of reducing the long-run damages from global warming(温暖化に起因する被害を減ずることによる便益)とを、それぞれ、現在価値に計算し直し、現在価値で測った時の benefit/cost が最大になるような政策変数(削減目標、税率、タイミング etc.)を弾き出しましょう、というアプローチだ。

ところが、両者の示す結果は、下のグラフで見ても明らかなように、あまりにもかけ離れている。(Baselineは何も政策を講じなかった場合。)

(本書p.100,101掲載のデータから作成)

このグラフで示された排出量を実現するには、Nordhausの計算によると、2015年時点で、Nordhaus案なら$41.90、Stern案なら$336.38を、税として、Carbon 1トンあたりに課す必要がある(同じだけの取引価格が生じるような排出量取引でも可)。実に8倍以上の開きである。

なぜこのようなことになるのか。これについてNordhausは、"[t]he Stern Review's radical view of policy stems from an extreme assumption about discounting."(スターンレビューの過激な予測は、discounting=割引率に関する極端な仮定に由来している)と述べている。(p.168)

Stern案がradicalなのか、Nordhaus案がtoo moderateなのかは一旦さておくとして、両案の大きな違いが、割引率に関する考え方の違いに依拠しているという点は、客観的に言ってまず正しい(と思う)。その点については、Stern陣営もきっと異論はないことだろう(もちろん、聞いてきたわけじゃないけど)。

というわけで、一昨日から散々書いてきているように、長期の費用便益分析を行うためには、割引率をどう設定するかが決定的に重要になってくるわけだ。

とりあえず今日はここまで。あと2回くらいで、この本についての感想その他もろもろをまとめてみようと思う。
Maxwell School, Syracuse, Apr 11, 26:11

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