Saturday, April 4, 2009

Despute over an Orange

昨日のエントリーでも書いたとおり、この週末は、"Multi-Party Negotiation & Conflict Management of Environmental Disputes" という短期集中コースを受講している。アメリカのconflict managementの世界ではおなじみ"Interest-Based Negotiation"を環境問題に当てはめてみようというのが、このコースの趣旨。講師は、昨年までUS Institute for Environmental Conflict Resolutionという機関で所長を務めておられたEmersonさんというおばさま。現在は、うちの大学と、隣のSUNY-ESFで客員教授を務めている。
   
今日は一日、とある開発案件を例にとったロールプレイ。アメリカ西部の原野にある国有地内で、オフロードカーを走らせるコースの建設計画が持ち上がった。これをめぐり、オフロードカー倶楽部、トレッキング協会、地元先住民自治政府、郡政府観光局、州政府、連邦内務省国有地管理局のそれぞれの立場に分かれて意見を出し合う。アメリカで、この手のロールプレイを経験されたことのある方はお察しの通り、なんやかんやと鬱憤がたまる。午後の休み時間には、隣の席に座っていた中国人のEMPA生の方 (某役所で課長を務めておられるというそれなりのお歳のおじさま) に、「これ、現実と違い過ぎてないか?アメリカにしたって、本当の政策がこんなに住民参加型で決まってるわけでじゃないんじゃないの??」 とまくし立てられた。相当、ストレスがたまってたんだと思う。。。(お察しします。) 
     
とはいえ、今更ネガティブなことを書き連ねてもあんまり生産的じゃないので、あとあと使えそうな事をいくつかメモしておきます。  

そもそも、Interst-Based Negotiationてのは何かという話。よく使われる例は、オレンジをめぐる争奪戦のお話。AさんとBさんが、一個のオレンジをめぐって取り合いになる。AさんもBさんも、そのオレンジは自分のものだと言って譲らない。議論にならない言い合いをしているうちに二人とも疲弊し尽くし、双方納得はいかないながらも、半分ずつ持ち帰ることで妥協する。後日、再会した二人は、「ところで、あのオレンジは何に使いたかったのか」という話になる。Aさんは「オレンジジュースを作りたかったんだ」と言い、Bさんは「マーマレードを作りたかったんだ」という。そこで初めて二人が気づいたことは、最初からオレンジの取り合いをする必要なんてなかったということ(←マーマレードには皮だけあればよく、ジュースに皮は必要ない)。この例から分かるように、Position-Based (これは私のオレンジだ!!)の交渉は、ゼロサムゲームにしかならないが、Interest-Based(私がやりたいことはオレンジジュース/マーマレードを作ることだ!!)の交渉は、プラスサムゲームに持ち込める可能性がある、というのがInterest-Based Negotiationの基本的な考え方。

この話を聞くと、僕も含めて多くの(たぶん、多くの)日本人は、「毎回毎回、そんなうまいこといくかよ」とか、「現実的な範囲でなら、言われる前から自然にやっとるわ」とか言いたくなる。ただ、授業の中で、これを意識的にやってみて、思っていた以上に掘り下げられるもんだなぁという発見があった。たとえば、「次の休みにNYCに行くかAdirondack(←有名な州立公園)に行くか」というロールプレイの中で、「NYに行きたい」派(←別にクイズオタクなわけではない)が、"刺激を得たい"というinterestを挙げる。これに対して、「Adirondackに行きたい」派は、「刺激の質は違うが、Adirondackででも、ラフティングやスノーモービルで刺激を得られるよ」と反論する。
  
そんなのへ理屈じゃん――That's right。でも、交渉事なんて、へ理屈であれ何であれ、理屈をこねたもん勝ちという一面もあるわけで、そういう意味では、脳ミソを柔軟に使って理屈を編み出す装置としては、Interest-Based Negotiationも結構有用な気がしてきた(万能の道具でないことは言うまでもない)。
  
もうひとつは、Multi-Party Negotiationの技術の一つとして、交渉の最初に、groundrulesをみんなで決める、というもの。先述の開発案件ロールプレイで議論を始めるとき、司会役のEmerson教授が、「議論のルールを決めましょう」とフロアに振る。振られた側は、ちょっと「面倒くさいな」と思いつつも、「他人の発言中はinterveneしない」とか、「議場をdominateしない」とか、いくつか「ルール」を挙げる。出きったところで本番の議論が始まるわけだが、事前にこれをやっておくと、「自分たちで決めたルールだ」といういちおうの責任感があるので、なんとなく、そのルールは破りにくい。別に破ったからといってペナルティがあるわけでもなく、所詮、緩やかなプレッシャーに過ぎないのだが、それでも、各人に与える心理的効果はそれなりに大きい。当然ながら、「niceでありたい」と思う人や、体面を気にする人には、効果大。なので、日本人に対してこのワザを使えば、アメリカ人以上に効くんじゃないかという気がする。まぁ、気まじめ過ぎて、最初にルールを挙げるところで詰まってしまう、という可能性もあるが…。

最終日の明日の授業はお昼まで。各主体からコース建設プランの最終案を出し合った後、それを一つにまとめて終了です。
Maxwell School, Syracuse, Apr 4, 19:35

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