Sunday, January 25, 2009

What is a "Green Job"?

英語を読むのに疲れてきた今日は、朝から、youtubeで『たかじんのそこまで言って委員会』(←大阪よみうりTV制作のある意味すごい番組)を見て、そのまま、週末恒例になりつつある桂枝雀のDVDを一席鑑賞。(今日の演目は『鷺とり』。四天王寺さんが出てきます。懐かしや懐かしや)。ひとしきり大阪弁を聞きまくったので、ほとんどどこにいるのかわかりません。東京でないことだけは確かみたいです。
 
さて、今日は昨日の予告通り、blog "Environmental Economics" の記事をご紹介。このblog、州立アパラチア大学教授のWhiteheadさんと、オハイオ州立大学教授のHaabさんの共著みたいですが、今日ご紹介するのは、Whithead教授が書いた記事。

"Q and A with The Energy Collective" と題されたこのエントリーは、Obama政権の提唱するGreen Stimulus(環境にやさしい景気刺激策)の中身を、経済面・環境面から考察したもの。全文引っ張ってくると長くなるので、独断と偏見(!!)で要点をしぼって紹介させていただきます。
  1. そもそも"green job"とは何か?
    定まった定義はないが、代表的なものとしては再生可能エネルギー部門、住宅の耐熱化、smart grid(効率的な送電網)の建設など。それらの多くはいわゆる「建設部門」の仕事であり、彼らの仕事が常に「グリーン」かというと、そうではない。また、green jobについての研究の中には、「再生可能エネルギーを使用している工場で働いている労働者」のような間接的なものまで"green job"としてカウントしているケースがある。
     
  2. Obama政権は今後10年間、毎年$15 billionを投資して、500万の新たな"green jobs"を生み出すと言っているが、これは可能か?
    「今後10年間毎年$15 billionの景気刺激策」で「500万の雇用口創出」という結論を得るためには、乗数≒5 と想定する必要があるが、Obama政権のchief economistであるRomer教授が自身の論文(共著)の中で用いている乗数は1.5 (← つまり、500万という数字は非現実的だというのがWhithead教授の主張)。167万くらいが妥当な数字だと思われるが、それも、雇用の純増によって達成されるか、多部門からの移転によって達成されるかは定かでない。
     
  3. 現時点で、今後10年間に創出される雇用数についてコンセンサスを得ることは可能か?
    No. この手の問題には不確実性が必ず伴う。また、もうひとつ気になるのは、(エネルギー市場の)需要サイドを無視している点。需要サイドに手を着ける(← 具体的には税を課すなどしてCO2を多く排出するエネルギーの市場価格を上げる)ことをしなければ、供給サイドにばかりテコ入れしても、「(相対的に)高価な再生可能エネルギーの過剰供給」という結末に陥りかねない。
     
  4. その規模がどのくらいになるかはさておき、雇用創出効果が現れるのはいつ頃か?
    (green jobの主力である)建設業界は立ち上がりに時間のかかる業種なので、マクロ経済への効果が現われるのは早くとも今年末、あるいは来年になるだろう。政権が言っているほどに短期的なマクロ経済への効果があるかどうかは疑わしい。
     
  5. 再生可能エネルギーの導入をgreen jobの創出によって正当化しようというのは間違った議論か?
    Yes. 環境政策の有効性は、自然環境・生活環境の改善によってもたらされる経済的価値で以て評価されるべき。green jobの有効性を強調し過ぎると、「環境を改善して大きな経済的価値を生み出すが雇用は創出しない政策」が、不当に軽視される恐れがある。
     
  6. 景気刺激策の使い道のプライオリティはどうあるべきか?
    景気刺激策と環境政策は分けて考えるべき。マクロ政策としては、財政政策よりも、減税と金融政策の方が効果的だという意見は多い。
  7.    
  8. 2009年はどんな一年になると思うか?
    経済については楽観的だが、景気刺激策の効果については悲観的。意志決定過程で生じる時差(policy lag)によって、実際の発動までに時間を要して十分な効果を残せない反面、政府は多額の負債を抱えることになるだろう。気候変動問題についても悲観的。(と言いつつ、)一年以内にcap-and- tradeか炭素税が導入されることを期待…。

経済学者としても、環境保護主義者としても、基本的にまともな議論をされていると思いますが、リアルな政策決定プロセスをどのくらい意識できているかについては・・・?。「財政政策は効かない」(6.)というのは、世界の主流経済学者のほぼ通説のようですが、だからと言って、金融政策に一点張りするなんて現実的にできないことは、どの国にも共通の事情。で、どうせ財政出動をやるんだったら潜在成長率を高める投資に突っ込む方がいいわけで、その点はgreen stimulusを(相対的にであれ)評価してあげてもいいんじゃないかなぁという気がします。

とはいえ、傾聴に値する点もいくつかあると思います。経済面で言えば(時期・規模ともに)過度の期待は禁物という点がそうですし、また環境面で言えば、需要サイド軽視しすぎという指摘には特に注意が必要かと。Whitehead教授同様、僕も、stimulusの審議がひと段落したら、cap-and-trade or 炭素税の議論が本格化することを期待しつつ…。

my home, Syracuse, Jan 25, 16:51

2 comments:

Anonymous said...

日本でも「財政政策は効かない」ていう経済学者がテレビに出てたりするが、今回ばっかりは違うんじゃないかと思うんだよね。
教科書的には、変動相場制の開放経済では財政政策は無効で金融政策が有効ってことになってるけど、それは小国が前提。で、今回は米・日本・EU・中国が一斉に財政政策を打とうとしているわけで、(小国の)通貨高を通じて財政政策の効果が相殺される、ということにならないんじゃないだろうか。
こんなことが実際にできることなんてめったになくて、経済学の壮大な社会実験という感じがするよね。

髙林 祐也 said...

「財政政策が効かない」理由について、池田信夫氏は、「乗数効果は、昔信じられていたほど大きくないことが実証的に証明されつつある」「合理的期待形成仮説(=財政出動を公債発行によって手当てすると、民間主体は将来の増税を織り込んで行動するので、経済活動は拡大しない)が成立している」といった趣旨のことをおっしゃってます。(要約しましたので、正確な彼の意見はこちらhttp://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/67d34ea4493cc9de2a42d3f5e84f1613
を参照してください。)また、Mankiwは最近、policy-lag(=財政政策発動までの政策過程に時間を要するので、一番必要なときに間に合わない)を盛んに強調しています。
http://gregmankiw.blogspot.com/

と、財政政策が効かないとする理由はいろいろあるみたいなんですが、結局お前はどう思うんだと言われると…、僕にはよくわかりません。効果が「ゼロ」ってことはないんでしょうが、政策として十分な効果があるのかないのか、その点は正直、よくわからない。

とりあえず、この3点だけは言えるんじゃないかなぁというのが、最近の僕の中での結論です。

1.(経済学的な理由からではなく)政治的な要請により、現下の経済状況では、どの国も財政政策を打たざるを得ない。
2.どうせやるんだったら、早いに越したことはない。
3.どうせやるんだったら、少しでもたくさん、成長率を高められる用途(要は投資ですが)に突っ込む方がいい。