Sunday, November 8, 2009

A Roadmap for U.S.-China Collaboration on CCS

今年1月、Pew Centerとの共同で“A Roadmap for U.S.-China Cooperation on Energy and Climate Change”とのレポートをを取りまとめたAsia Societyが、4日水曜日、今度は“A Roadmap for U.S.-China Collaboration on Carbon Capture and Sequestration”と称するレポートを発表している。今回のパートナーは、前回のPewに代わってCenter for American Progress。(2月のレポートに関するMSJ記事はこちら

なぜCCSなのか。同レポート曰く、
“One critical pathway for collaboration specifically identified in the United States and China’s recent joint commitments is carbon capture and sequestration technology, or CCS, which has the potential to mitigate emissions from coal-fired power plants.”
との由。この背景には、当然ながら、米中両国が、単にGHG排出量の多い国(世界第一位、第二位。両国合わせると世界全体の41%)であるというだけでなく、両国とも、石炭への依存度が非常に高いエネルギー構造を持つという事実がある。

レポートでは、両国が、まず協力して手をつけるべき点として、以下の3つを挙げている。
  1. Sequester the pure CO2 streams on existing commercial plants
  2. Invest in research and development on retrofitting older power plants
  3. Catalyze markets for CCS
1.は、もっともsequestrationを行いやすいパターンである、既にpureなCO2を排出しているタイプの施設(=“capture”工程が不要)で、まずはCO2のsequestrationをやってみましょう、という提案。この実証実験は中国国内のみで行うこととされており、アメリカは“substantial contributions to those projects in practice, equipment, and science”を行うとしている。

2.は、CO2とその他のガスが混ざった状態の気体を排出している施設から、pureなCO2を取り出せるようにするための改修(retrofit)の行い方について、R&Dを行いましょうというもの。この実証実験は米中両国で行うとされており、そのための研究センターについては、“which might be set up within existing U.S. Department of Energy calls for a collaborative research center” としている。

3.は、CCSが、今後、商業ベースで実施されていくためには、そこへの資金の流れを作ってあげる必要があり、その役割を果たしうると考えられるのは、①CO2排出抑制に経済的価値を与える国内法と、②現行CDMのような国際的な途上国支援枠組み、とした上で、最後には、“the United States and China will have to eventually build an international mechanism to reduce the costs of second and third generation technologies aimed at meeting global 2020 and 2050 CO2 output targets.”とも述べている。

このcollaborationによって、両国が享受しうるベネフィットとして挙げられているのは以下の9項目。
  1. Accelerate U.S. technology
  2. Create U.S. jobs
  3. Lower U.S. electricity prices
  4. Increase Chinese CCS expertise
  5. Facilitate additional collaboration in preferred Chinese areas
  6. Direct cost savings
  7. Risk sharing
  8. Financial sureness in the market
  9. Rapid emissions reductions 
僕はこれらのほかに、明示的には書かれていないけれども(←当たり前)、アメリカ国内でsequestrationの実証実験を行えば、ほぼ確実に発生すると考えられる“NIMBY”的反対運動に伴う行政的・政治的コストを回避できるというメリットも、アメリカ側は織り込んでいるのではないかという気がする。更に言えば、中国の発電所の構造を仔細に見聞する大義名分を得られるという戦略的メリットも、あるいはカウントされていたりするのかもしれない。もっとも、この点は、中国側から覗き見されるリスクも負うという意味で、諸刃の刃ではあるのだが。

共同R&D施設の米国内誘致をさらっと表明していたりもしていて、正直、アメリカにとって虫の良すぎる提案であるようにも思うのだが、大枠で見れば、気候変動の分野では、米中両国は、国内排出削減対策・外交交渉の両面で協調を図ることによって、互いの利益を増幅できるのは事実だと思う。来週末のObama訪中で、どこまで具体的な議論が交わされるのか、注目して見てみたい。
my room, Washington DC, Nov 7, 24:52

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