Sunday, November 15, 2009

Conception for Renewables Deployment

以前にもこのblogで書いたように思うが、留学中最後の学期となる来学期には、単位発行を伴う(つまり、授業受講の代替となる)論文を書くことにしている。テーマについては、正直、まだあまり絞り込めていないのだが、とにかく、再生可能エネルギー(RE)の普及政策の絡みで書くというところまでは、指導教官との間で合意が取れている。

今日のエントリーでは、その論文の、現段階での構想を書こうと思っていたのだが、いざ書き始めてみると、そこまで一足飛びにはたどり着けなさそうなので、まずは、その前段階として、電力部門における温室効果ガス(GHG)排出削減策に関する、自分なりの大枠の理解を書いておきたい。

政策の意思決定過程(いわゆる政治プロセス)を一旦度外視し、また、(“GHG排出過多”という外部不経済が生じていることを除けば)市場は完全であるという前提に立てば、政策の対象に「枠」を設けず―つまり、すべての財・サービスを対象とし―それらから生じるGHGの排出に、できるだけニュートラルに(或いは市場に任せるかたちで)値段をつける方法―具体的には、課税対象に歪みのない炭素税又は全量オークションによるcap-and-trade―が一番望ましいと言える。

このことを論理的に証明するのはさして難しいことではない。では、日本を含め、世界のいくつもの国々で実施されているRE普及施策は、すべて欠陥政策なのかといえば、一概にそうとは言えない。なぜかといえば、上の段落で一旦度外視した「政治プロセス」と、同じく「前提」の中で脇に追いやった「市場の不完全性」が、実際には、利いてくるからである。

たとえばごく単純な話として、歪みがなく、税率も十分に高い炭素税が導入されれば、それに越したことはないわけだが、政治プロセスを考えれば、その導入は容易ではない。おそらく、いかなる国であっても、税よりは補助的政策の方が、導入に至る政治的障壁がはるかに低いであろう。ひたすらに炭素税の導入を待ち続けるのではなく、より手のつけやすいところから手をつけていくという政策判断は、当然、あり得べきものである。

また、電力という市場の特異性(発電事業者としての電力会社の売手寡占状態;送電網運営会社としての電力会社の買手独占状態;各供給者(=発電事業者)の供給する商品(=電気)が直接最終需要家に届けられるわけではなく、すべての商品は一旦ストックヤード(=送電網)上で混ぜ合わせられてから発送されるため、各供給者の商品の質が市場全体に一律に影響してしまうという特性;その商品全体の品質管理の責任は送電網運営会社としての電力会社に委ねられているという現実 etc.)を考えると、仮に、上記のような「理想的」な炭素税が導入されたとしても、電力会社が発送電に伴うGHGの排出を減らす方向に舵を切るとは必ずしも限らない。市場の特異性=市場の歪みの存在により、電力会社にとっては、固定資本の増大(=経営リスクの増大)を伴うRE拡充(及びそれに見合った送電網補強)に走るよりも、炭素税支払いに起因する利幅の縮小を甘受する方が、経営判断として「合理的」なものとなる可能性があり得るからである。

こう考えると、まずは、理想形(炭素税or C&T)をスタート地点とした上で、回避不可能な「政治プロセス」と「市場の不完全性」を一つ一つ織り込んでいき、どこまで「スタート地点」から離れる必要があるかを見定めていくというのが本来あるべき姿勢なのではないかと思われる。言うまでもなく、スタート地点からは、できるだけ離れないに越したことはない。必要以上にスタート地点から離れてしまえば、その分、その制度(厳密にいえば、当該制度がembedされた状態の市場)の効率性を低め、それにより、社会全体のwelfareを毀損してしまうからである。

こういった理解に基づきながら、理想形=スタート地点からの距離が最適である政策とは、具体的にどういったものなのかに迫る論文にしたいというのが、現時点での大枠のスタンスである。文字通り、非常に「大枠」であるが…。

しかし、これを厳密にやろうと思うと、電力政策にまつわる「政治プロセス」と、電力市場の「不完全性」とを十分に知らないといけないわけで、そのための勉強をこの先の半年間でやりきれるかという点には非常に不安がある。更にメタ的に言えば、何を以て「やりきった」とするかも定かではない。調べていけば、次から次にいくらでも論点になりそうなポイントが見えてきて、下手をするといつまでたってもテーマを絞り込めないなんてことになるんじゃないかという不安もある。この辺は、むしろ、このissueに固有の問題というよりも、論文執筆スキルに関する問題かもしれないが。

というわけで、まだまだまとまりがないのだが、とりあえず、今日はこの辺で。師走の声を聞く前に、もう少し詰めておきたいと思う。
my room, Washington DC, Nov 15, 23:35

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