Sunday, November 22, 2009

Carbon Markets

月曜日のFinancial Securityのクラス。次回のテーマは「気候変動問題と国際金融」。僕には“Carbon Markets”というお題でプレゼンしなさいとのお達し。ひどい丸投げ発注だとは思いつつ、まぁ良い機会なので(と自分を納得させて)、一通り、勉強し直してみた。以下、プレゼン原稿日本語下書き前篇。

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“Carbon Market”と一口に言っても、実際には、取引されるcarbon creditの種類ごとに、いくつかの市場に分かれている。Kyoto Mechanisms (KMs)、EU-Emission Trading Scheme(EU-ETS)、CCX,、RGGI、etc.。ただし、取引量(数量(tCo2e)ベース及び金額ベース)で見ると、前二者の規模が圧倒的。国際的な重要度、制度の成熟度合いといった意味でも、この二つは別格。というわけで、Kyoto MechanismsとEU-ETSの二つの市場に絞って見ていくことにする。
 
1.市場の背景
Kyoto Mechanismsの根拠である京都議定書(1997年採択、2005年発効)は、国ごとに温室効果ガス(GHG)の削減目標(legally binding)を課す国際約束。約束期間は2008~2012の5年間。削減義務は、いわゆる先進国に対してのみ課せられている。言わずもがなだが、アメリカは、この議定書から脱退したので、削減義務からは自由。削減義務対象国は、自らGHGの排出削減を行う他、carbon creditを排出削減の一部に充てることもできる。

一方のEU-ETSは、EU域内の企業を対象とするGHG排出削減枠組み。規模、業種等一定の条件を満たす企業には、排出削減義務が課せられており、それらの企業は、Kyoto Mechanismsの場合と同様、自ら排出削減を行うか、carbon creditを取得することにより、削減義務を達成しなければならない。現在行われているPhase IIの期間は京都議定書と同じ2008~2012年。その前に、試行的性格を有するPhase I(2005~2007年)が行われた。

2.市場の構成
次の図は、carbon credit市場の構成を示したものである。[World Bank “State and Trends of the Carbon Market 2009” p.1のTable1を編集。]

それぞれの青色の円の大きさは、各sub-marketの市場規模(数量(tCo2e)ベース。2008年値)を表している。もっとも、AAUとERUの円は、小さすぎてほとんど見えなくなってしまっている。

EU-ETSルールに基づくcreditは、EUA(EU-Alliance)の一種のみだが、京都議定書(及びその運用細目であるマラケシュ合意2007)に基づくcreditにはAAU、ERU、CERの三種類がある(Carbon Marketでの取引対象にならないRMUについては割愛)。

これらのcreditは、allowance creditかproject-based creditかで分類することが可能。allowance creditに分類されるEUAとAAU(Assigned Amount Unit)は、自らに課せられた削減義務の達成に余裕のある企業又は国が、自らへの初期割当量(その量までならGHGを排出してもよいとされている量)の一部をcarbon creditとして、他の主体に販売するもの(又は、それが転売されたもの)である。
 
一方、project-based creditに分類されるERU(Emission Reduction Units)とCER(Certified Emission Reductions)は、具体的な排出削減活動の見合いとして発行されるcredit。それぞれ、削減義務対象国で行われる削減事業(共同実施事業(JI))、非削減義務対象国で行われる削減事業(クリーン開発メカニズム(CDM))に対応。CERは更に、CDMプロジェクト実施事業者から直接買い付けるpCER(primary CER)と、その転売商品であるsCER(secondary CER)に分けられる。pCERについては、CERの発行(issuance)が確定する前に売買契約を結ぶのが一般的なため、issuanceに関するリスクを伴う(その分、sCERよりは安い)。また、プロジェクトのどの段階で売買契約を結ぶかは、CDM事業ごとにまちまちであり、それに応じてpCERの価格には幅がある(当然、契約するのタイミングがプロジェクトの早い段階であればあるほど、issuance失敗のリスクは大きくなるので、その分、価格は安くなる)。

当然ながら、EUAはEU-ETSの目標達成に、また、AAU、ERU、CERの三種のcreditは京都議定書の目標達成に用いられるのが原則だが、実際には、必ずしもそのとおりになっていない。というのも、EU-ETSには、“Linking Directive”と呼ばれるルールがあり、ERU及びCERをEU-ETS上の約束達成に用いることを認めている(換算比率=1対1)。このため、EU-ETSのMarketとKyoto MechanismsのMarketは、ERU及びCERという両Marketsで通用する商品を介して事実上繋がっている。[出典:UNEP “Guidebook to Financing CDM Projects” p.20]

更に言うと、単に繋がっているというだけでなく、Kyoto MechanismsのMarket全体に占めるEU-ETS参加者からの需要が巨大。World Bankは、5年間の全需要1,635 Mt-CO2eのうち、750 Mt-CO2eがEU-ETSで義務を負う民間企業(private sector)からもたらされると試算している。[出典:World Bank “State and Trends of the Carbon Market 2009” p.55]

このため、EU-ETS Marketの市況がCER市場(pCER及びsCER)の価格形成に大きな影響を与える状況となっている。このことは、下の図からも見てとれる。2008年秋以降、EUA、sCER、pCERの価格が揃って下落しているが、こうした値動きは、主に、EU-ETS参加企業の動向の結果として生じたと見るのが一般的である。[出典:World Bank “State and Trends of the Carbon Market 2009” p.6]

(次回に続く)
my room, Washington DC, Nov 22, 10:32

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