本書全体を通しての、文字通りの「感想」を書こうかとも思ったのだが、後藤田さんご本人の生の言葉を前にしては、意味薄弱にして陳腐な言葉の羅列以上にはなりえない気がしたので、やめておく。以下、本書からの引用及び要約を。
- 憲法9条に関する考え方(上巻p.124)
- (昭和26、27年当時を振り返って)『よくぞ共産革命が起きなかったなと、今の時点で振り返ってみて思いますね。あの時期を乗り越えていった日本の政治指導者、それを認めた国民の選択の賢明さというものは、今から振り返ってみると、良かったなというのが率直な感じです。』(上巻p.133)
- 警察に関する考え方(「忍」の一字、受身の行政、それであるが故の情報力の重要性)(上巻p.148)
- 国家公安委員会による警察組織のコントロールのあり方(人事権を介した監督、個々の事件についての指揮監督権はない)(上巻・p.153)
- (今の警察制度を肯定し、国家警察設立という考え方を批判しつつ)『やはり権力は諸刃の刃ということを絶えず考えていないと過去の愚を繰り返すと思いますね。』(上巻・p.158)
- (官僚時代の後藤田氏から見た田中角栄評価として)『あの人ぐらい早く中身を飲み込む人はいない。理解が早い、そして即決する。わかった、と言ったら必ず実行してくれている。』『見通しが確か』『必ず努力してくれる。』『必ず結果の報告が事前にある。』『この人ぐらい頼りになる人はなかった』(上巻・p.184)
- 自身の自治次官就任固辞を巡る自治大臣(当時)とのやり取り(上巻・p.226)
- (部下を叱るときには袋叩きにはせず、逃げ道を与えてあげることが重要だとした上で)『具体的には、厳しく言った後で、「まあそういうことだよ、君な」というようなかけ声をひとつかけてやるわけですよ。』(上巻・p.235)
- (ベトナム戦争当時のアメリカ情報機関について)『非常に合理的でお金を十分かけているし、ある意味において、合理的とでもいうか、そういう活動はしているけれど、情報機関のやり方としてはあまり上手ではないな、という印象でしたね。要するに、すべてを物量で押していくということですから、やはり情報ということから考えると少し無理なのではないか、無理というより、成果が少ないのではないかという印象でした。』(上巻・p.260)
- 『罰則さえ強化すれば事件が減ると思っているのは、基本的に間違いだ』『要するに素人は、罰則をむやみに強化したがるんだ。』(上巻・p.271)
- 真野毅氏国家公安委員任命の際の国家公安院長とのやり取り(上巻・p.274)
- 日中国交回復の際の田中総理、大平外相の動き(上巻・p.338)
- (オイルショック時の売り惜しみ買い占め問題対応法案の際の経緯触れて)『総理、罰則はあまり強いのはいけませんよ、と。なぜだ、と言うから、罰則が強いと罰則の構成要件をどうしても厳しく書かざるを得ません、そうなると、取調官庁は動きにくくなる』(上巻・p.360)
- ロッキード事件に関する誤発表を巡る防衛庁幹部とのやりとり(上巻・p.389)
- 日中平和条約に向けた動き(昭和52年の訪中と、帰国後の政府内部での動き)(上巻・p.412)
- 自治大臣時代、昭和55年の衆参同日選挙の可否を巡る事務方とのやり取り(下巻・p.26)
- (官房長官時代に田中六助氏から受けた指摘として)『後藤田さん、あなたは総理の前で他の人がおるときに平気で、それはいけない、とかやっつけるだろう、あれはよせ、と言うんだな。二人だけならいいよ、と。ああ、いいことを聞いたといって、僕はそれからは、よほどのことでないと第三者がおるときには言わなくなった。』(下巻・p.105)
- 国鉄民営化成功の要因(カリスマ性のある会長、中曽根総理の政治手法)(下巻・p.108)
- (行管庁・総理府の統合を巡る経緯に触れて)『私は本当にこの時に初めて、役所の統合がどれくらい難しいかを痛切に感じました。』(下巻・p.134)
- 昭和61年の衆参同日選に向けた中曽根総理の「不退転の決意」(下巻・p.166)
- (内閣への各省からの出向人事に触れて)『とかく母屋を見ているんですよ。それは人事ですよ。』『だいたい使いっ放しになるんだ。問題はそこにあるね。』(下巻・p.210)
- (アメリカの大統領府に言及しつつ)『あそこの三権分立と日本の三権分立は全然違いますしね。それから役人の任命がこちらはメリットシステム(実績主義)だし、向こうは、幹部は全部スポイルズシステム(政治任用)ですよ。まったく違う。今の大統領府は、1936年のブラウンロー委員会の答申を受けてできたんですよ。ところが、あれはうまくいってるかというと、必ずしも中へ入ってみると良くないんだ。』(下巻・p.210)
- イラン・イラク戦争時、ペルシャ湾への掃海艇派遣を巡るやり取り(下巻・p.226)
- 掃海艇派遣への反対を最後まで貫けた理由(組織に頼らない自前の情報収集能力、「辞める腹」)(下巻・p.228)
- (総理の座を巡る権力の奪い合いについて)『要するに、鉄砲での殺し合いから票による奪い合いになった。そこが進歩しただけだ。』(下巻・p.248)
- 『僕は、党の改革は中でやれということで終始一貫している。出ていって、外からワーワー言っても意味はない。中からひっくり返してしまえということですよ。』(下巻・p.296)
- (湾岸戦争後の掃海艇派遣に関して)『ショートカットで法律に規定のないことをやるのはよくない、ということです。ちゃんと法の整備をやれと言っているんです。』(下巻・p.315)
- 宮沢内閣不信任決議の際の動き。(とりわけ、武村正義議員の動きについて)(下巻・p.331)
my room, Washington DC, Nov 26, 23:30
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