Sunday, November 22, 2009

Carbon Markets #2

―前回からの続き―

3.市場動向
今日のCarbon Marketの特徴(或いは欠点)として、もっともよく指摘されているのは、そのvolatilityの大きさである。前掲のFigure1からも見て取れるように、2008年9月以降、carbon market全体の大幅な価格下落が発生した。もっともvolatilityの高いEUA(spot)の価格は、2008年7月に最高値(€28.73)を記録して以降、7~8か月の間に75%近くも下落。この間、sCERの取引価格も同様に下落した。また、CDM事業に要するコストとの関係上、一定以下の価格には下がり得ないpCERについては、sCERとの価格差が縮まった結果、市場から追い出される事態に発展、2007年には552million t-CO2eあった取引量が2008年には約3割減の389 million t-CO2eにまで落ち込んだ。

このようなcredit価格の下落が生じた原因としては、
① Global economic downturn → 京都議定書の義務を負う先進国におけるlower emissions
② ヨーロッパにおける economic downturn → EU-ETSの義務を負うEU域内企業のlower emissions
③ EU域内民間企業のmoney shortage → 手持ちcreditの売却・現金化
④ 初の本格的なAAU取引の開始 → 他credit需要へのしわ寄せ
などが指摘されている。[出典:World Bank “State and Trends of the Carbon Market 2009” p.5, p.53]
  
また、creditを初期に無料で割当てすることの弊害を、主に公平性の観点から指摘する声も大きい。EU域内においては、初期に比較的多めのcredit割当てを得ていた産業(主に重厚長大の多炭素排出型産業)ほどEUAの売却によって大きなwindfallを得ているとする批判がある。また、Kyoto Marketに関して言えば、ロシア、ウクライナ等の市場経済移行国がAAU売却の「含み益」を有している反面、実質的な買い手はEUと日本のみという状況であり、公平性の問題もさることながら、この状況下で市場が十分に機能しうるかといった問題もある(前掲Table 5参照)。この問題を解消する手段として、auctionによるcreditの配布方法が検討されており、2013年の開始が既に合意されているEU-ETSのPhase IIIでは、この手法を部分的に取り入れるとされている。[出典:World Bank “State and Trends of the Carbon Market 2009” p.10]
  
2012年以降の制度の見通しが立たないことも、市場に大きな悪影響をもたらしている。次期枠組みで全体のGHG排出削減量を増大させるためには、また、米国等における新たな地域carbon marketの立ち上がりによりoffset需要が高まる可能性を考えると、CDMの更なる促進が不可欠。しかし、post-Kyotoの国際約束に目途が立たない中、CDM開発に向かう資金の量は、経済情勢とも相俟って、大きく縮小しており、EUのprivate sectorのみが何とか買い支える状態となっている(EU-ETSについては、Phase III(2013~2020)の実施が既に決まっているため)。CDMの開発(計画~CERの発行)には、通常、2~数年の期間を要するため、昨今の新規CDM開発の沈滞が続くと、数年後のcarbon market(既存の二大marketsに限らず、今後、新たに本格的に立ち上がることとなるmarketも含めて)に大きな問題(credit供給の不安定化)をもたらす可能性が高い。

4.今後の見通し
一時は、約束達成のために、官民で相当のcreditsを買い集めなければならないと見られていたEU及び日本であったが、世界的な経済状況の悪化を受けて、2008年以降はGHGの排出量を大幅に減らしており、当初予測されていたほどのcredit購入は必要なくなるのではないかとの見通しである。これを受け、ロシア、ウクライナをはじめとする市場経済移行国が保有しているAAUは、最終的に供給過多となる可能性が高まってきており、今後、post-Kyotoの枠組みを議論する中で、今期のcreditの余剰分を来期に繰り越す“banking”を認めるかどうかが、一つの大きな争点になってくるものと考えられる。
 
また、CDM制度については、主に先進国側からの批判が根強く、次期枠組みにおいては、least developed countries(LDC)での実施に限定すべきとの意見が強い。この点が、どのような決着を見るかは、未だ見通しの立たない状況であるが、その結論次第によって、2012年以降のcredit需給の構図が大きく様変わりする可能性がある。
my room, Washington DC, Nov 22, 12:54

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