別に、固有名詞としての、今の組織を特別気に入っているわけではないし、「好きだ」なんていう100%ポジティブな形容動詞を何の迷いもなく使えるほど、迷いがないわけでもない。であるからして、「この業態の組織で働くことは自分には合っているのかも知れない」くらいに抑制を利かせておく方が、僕の心情描写としては、より正確な言い方かも知れないが。
この仕事、まじめに取り組もうと思えば、常に、ある集合の中での「最適解」を探しながら、同時に、視点をどんどん高めていって、自分の視野の中に入る「集合」の数そのものを増やしていかなければならないものである(と思う)。「最適解を見つけ出す」と言えば聞こえはいいが、その営みというのは、言ってしまえば、互いに矛盾する複数の主体の間に妥協点を見出すことに他ならない。視野に入る「(部分)集合」の数が増えれば増えるほど、妥協点の模索という事業は、一層、困難の度を極めるし、その結果、生み出される妥協点が奇々怪々な様相を呈する可能性も高くなる。それでも、何らかの妥協点にたどり着けたのなら、まずは御の字と言うべきなのかも知れない。
ことほどさように、「勧善懲悪」でもなければ、「クリアカット」でもないこのお仕事であるが、そんな、ノイズだらけの複雑怪奇な世界に生きているからこそ、逆に、世の中の本質に近づけるときがあるんじゃないかと思う。より正確にいえば、「本質に近づきたい」という衝動に駆り立てられるときが。
留学に来る前、就職活動中の学生さんから「この仕事をしていて、一番良かったと思った瞬間はどんなときですか?」みたいな質問をされることがときどきあった。その都度、どんなふうに答えていたか、今となっては正直、忘れてしまったが(…汗)、いま、率直に思うのは、「あるプロジェクトが完了したとき」とか、「誰かに自分の貢献を認めてもらえたとき」とか、そういうことではなくて、むしろ、この仕事をしてきたことによって、上に書いたような、「本質に近づきたい」という衝動を与えてもらえたこと――それが、僕にとって、この仕事を選んで良かったと思える一番のポイントなのではないかと思う。
転職経験ナシでこんなことを言うのは、無知蒙昧にして傲岸不遜の謗りをお受けするかもしれないが、少なくとも日本に関して言えば、これと同じような機会を与えてもらえる業態というのは、他にそうたくさんはないのではないかと思う。というわけで、この人、それなりには、今の仕事を気に入ってるみたいです。
my room, Washington DC, Nov 23, 24:42
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