記事曰く、「仏サルコジ大統領が、家庭及び事業者からの二酸化炭素の排出に税をかけたいと発表した」が、「多くの人から疑いの目を持って見られている」とのこと。導入当初は、排出権の市場価格と同じ水準(現在、€17($24.74)/t-CO2)で始め、以後、段階的に税率を上げていく。炭素税から得られる税収 € 3 billion(導入時の税率にての仏政府見込み)については、他の税の減税及び還付を通してその全額を家計及び事業者に返還。課税対象は、ガソリン、ディーゼル燃料、石炭及び天然ガスで、その大半が原子力発電によって賄われている電気には、課税しない。(注: ちなみに、仏日米の原子力発電依存度は、それぞれ、およそ8割、3割、2割。) ガソリンを例にとると、税率は、リッターあたり4 ユーロセント(= 5.28円)。雑誌Paris-Matchの世論調査によると、賛成34%、反対65%とのこと。
記事では特に触れられていないが、EU-ETSとの関係はどうなるのだろうか。直観的には「二重課税」に当たりそうな気がするのだが、その点、どう整理するおつもりなのか(というか、そもそも整理するつもりがあるのかどうか)はわからない。
ところで、聞くところによると、税とcap-and-tradeのどちらが優れているかと言えば、「税の方がいい。ただ、新たな税を導入することのpoliticalな意味での難しさを考えればsecond bestとしてのcap-and-tradeもあり。その場合、できるだけ排出権の全量をオークションで販売すべし」というのが、アメリカのエコノミストの間での一応のコンセンサス(らしい)。
これはつまり、排出権のallocationに政府が関与することによって発生する非効率(厚生損失)のことを問題にしているわけだろう。ただ、実際には、cap-and-tradeだと政策ターゲットである「排出量」を直接管理できるのに対し、税だと社会全体のelasticityを推測した上で税率を決めないといけないといったことがあったり、逆に、税だと税率が決まっているので私企業が炭素コストを織り込みやすいのに対し、cap-and-tradeだと排出権価格が変動するので操業計画を立てにくい、といったことがあったりするなど、ミクロ経済学のグラフには現れにくいメリット/デメリットもいろいろある。
この点に関し、「国際炭素税」(?)推奨派のNorhaus先生は、“A Question of Balance”の中で、税によるアプローチ(price approach)の方がcap-and-trade(quantity approach)より優れている理由として、以下の6点を挙げておられる。
- ベースラインについての議論をする必要がない。
- コストの方がベネフィットに比べてより非線形的であれば、税の方が有効。vice versa。 → GHGの排出削減について言えば、税の方が有効。
- quantity approachの下での排出権価格は、その性質上、安定性を欠きやすい。
- 税の場合、税収を還元することで、課税導入によって生じる死荷重を解消することができる。
- 排出権のallocationに絡む公平性の問題が生じない。
- 政府がallocationを差配するquantity approachは、より、coruptionの温床になりやすい。
ちなみに、ここアメリカでのcap-and-trade法案(American Clean Energy and Security Act 2009)の上院審議は、とりあえず、医療保険法案の形がつくまで、一旦保留、ということのようで。
my room, Washington, D.C., Sep 11, 22:24
No comments:
Post a Comment