その根拠というのが、2007年4月2日の“Massachusetts v. Environmental Protection Agency”最高裁判決。これは、
- May the EPA decline to issue emission standards for motor vehicles based on policy considerations not enumerated in the Clean Air Act?
- Does the Clean Air Act give the EPA authority to regulate carbon dioxide and other greenhouse gases?
これは ―厳密に言うと、もうワンステップはさむのだがやや細かいので端折る―、気候変動対策法案(今年で言えばWaxman-Markey法案)が議会で成立しなかったとしても、GHGの排出は、結局のところCAAで以て規制される運命にある、といった構図が出来上がったことを意味する。「重役さん」の見立ては、このことに依拠していたわけだ。産業界は、EPAが独自に定める(CAAを執行するための)regulationによってGHGの排出が規制されるのよりも、新法案による規制を望んでいると言われている。その方が、議会での審議プロセスを通して、いろいろと注文を付けやすいからだ。
ところが、いま実際に起こっているのは、産業界による、Waxman-Markey法案潰しのlobbying。これはいったいどういうことなんだろうか、という問に対する謎解きが、こちらのGristの記事に書かれている。というのが、今日のエントリーで書きたかったことなのだが、ここに至るまでの前置きが、大変長くなってしまった…(汗)
この記事、非常に長大かつ複雑なのだが、その内容をごくごくごくごく掻い摘んで言うと― もともと、Clean Air Actは、伝統的な大気汚染物質(NO2、SO2、etc.)を規制することを念頭に作られた法律なので、そこに、無理やりGHG規制を接ぎ木しようとすると、いわゆる「裾きり」(排出量が一定量以下の小規模事業場を規制の対象から外す仕組み)の運用にムリが生じる。このため、その部分の規定を、いわば「勝手に」読み変えて(即ち、裾きり値を引き上げて)、GHGに適用しようというのがEPAの方針。だが、実際にそういった形でregulationが制定されたならば、反対勢力は、「EPAによる違法行為だ」として、regulationの無効性を司法の場で訴えにかかるだろう、と。というわけで、Waxman-Markey法案が下院を通過した時点で、
they (=industry people)’ve largely decided that they would rather have “the uncertainty of the Clean Air Act than the absolute certainty of a very expensive [legislative] program,” (産業界は、高くつくことがもはや明らかとなったWaxman-Markey法案を推すよりも、Clean Air Actの不透明さに賭けてみる方が得策であるとの判断を下した)のではないか、というのがGristの記事のごくごく大雑把な要約だ。この記事の内容が本当だとしたら、冒頭でふれた「重役さん」の見立ても怪しいということになってくる。いずれにせよ、当座は、health care法案で忙しくて、他のことに時間を割いている場合ではない、というのが上院の現状かもしれないが。
※ ちなみに、Massachusetts v. Environmental Protection Agency判決については、UC-BerkleyのLaw Schoolで行われた、この判決の内容に関する授業の動画が、webにアップされている。
my room, Washington, DC, Sep 24, 25:51
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