Friday, September 25, 2009

GHG Regulation under Clean Air Act

先週木曜の朝に参加した、とある環境コンサルのBreakfast Meetingで、「事情通然とした重役さん」が、「Waxman-Markey法案は近い将来に成立するだろう」との見立てを示しておられた、という話を金曜日のエントリーで書いた。この重役さん、もちろんただ単に、山勘やフィーリングでそうおっしゃっていたわけではなく、なぜそう言えるかの根拠も併せて示しておられた。

その根拠というのが、2007年4月2日の“Massachusetts v. Environmental Protection Agency”最高裁判決。これは、
  1. May the EPA decline to issue emission standards for motor vehicles based on policy considerations not enumerated in the Clean Air Act?
  2. Does the Clean Air Act give the EPA authority to regulate carbon dioxide and other greenhouse gases?
の二点が争われた裁判で、判決は「1. NO、2. YES」。つまり、「EPAには、Clean Air Act (CAA)で温室効果ガスを規制する権限があり、また、その権限は行使されなければならない(権限の行使を控える自由はEPAにはない)」ということを、最高裁が示したわけである。

これは ―厳密に言うと、もうワンステップはさむのだがやや細かいので端折る―、気候変動対策法案(今年で言えばWaxman-Markey法案)が議会で成立しなかったとしても、GHGの排出は、結局のところCAAで以て規制される運命にある、といった構図が出来上がったことを意味する。「重役さん」の見立ては、このことに依拠していたわけだ。産業界は、EPAが独自に定める(CAAを執行するための)regulationによってGHGの排出が規制されるのよりも、新法案による規制を望んでいると言われている。その方が、議会での審議プロセスを通して、いろいろと注文を付けやすいからだ。

ところが、いま実際に起こっているのは、産業界による、Waxman-Markey法案潰しのlobbying。これはいったいどういうことなんだろうか、という問に対する謎解きが、こちらのGristの記事に書かれている。というのが、今日のエントリーで書きたかったことなのだが、ここに至るまでの前置きが、大変長くなってしまった…(汗)

この記事、非常に長大かつ複雑なのだが、その内容をごくごくごくごく掻い摘んで言うと― もともと、Clean Air Actは、伝統的な大気汚染物質(NO2、SO2、etc.)を規制することを念頭に作られた法律なので、そこに、無理やりGHG規制を接ぎ木しようとすると、いわゆる「裾きり」(排出量が一定量以下の小規模事業場を規制の対象から外す仕組み)の運用にムリが生じる。このため、その部分の規定を、いわば「勝手に」読み変えて(即ち、裾きり値を引き上げて)、GHGに適用しようというのがEPAの方針。だが、実際にそういった形でregulationが制定されたならば、反対勢力は、「EPAによる違法行為だ」として、regulationの無効性を司法の場で訴えにかかるだろう、と。というわけで、Waxman-Markey法案が下院を通過した時点で、
they (=industry people)’ve largely decided that they would rather have “the uncertainty of the Clean Air Act than the absolute certainty of a very expensive [legislative] program,” (産業界は、高くつくことがもはや明らかとなったWaxman-Markey法案を推すよりも、Clean Air Actの不透明さに賭けてみる方が得策であるとの判断を下した)
のではないか、というのがGristの記事のごくごく大雑把な要約だ。この記事の内容が本当だとしたら、冒頭でふれた「重役さん」の見立ても怪しいということになってくる。いずれにせよ、当座は、health care法案で忙しくて、他のことに時間を割いている場合ではない、というのが上院の現状かもしれないが。

※ ちなみに、Massachusetts v. Environmental Protection Agency判決については、UC-BerkleyのLaw Schoolで行われた、この判決の内容に関する授業の動画が、webにアップされている。
my room, Washington, DC, Sep 24, 25:51

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