Wednesday, September 16, 2009

Saying Germany in 1920's

伊藤嘉啓とおっしゃる大阪府立大の名誉教授(比較文学)の書かれた『石原莞爾のヨーロッパ体験』という本を読んでみた。1923年~25年の二年半、ベルリン留学中であった石原莞爾が、東京の妻に宛てて送り続けた手紙の数々を読み解きながら、当時の石原の考えと、人となりとを読み明かしていこうという試みの本。留学生の心掛けの在り方として、何か参考になることが書いてあるかと思って読んでみたのだが、結論から言うと、それほど面白い本ではなかった。

僕自身、石原莞爾なる人物を、それほどよく知っているわけではない。昔読んだ司馬遼太郎か誰かの小説で少しだけ触れられていたのを通して、断片的にその経歴を知っているくらいのものである。ただ、― やったことの善悪は別にして ― 類稀なる構想家というイメージが僕の中にはあった。また、彼のその一大構想が、ドイツ留学中に練られたものだったという話をどこかで聞いたことがあったので、留学中、彼がどんなことを考え、どんな風に構想を練り上げていたのかを知りたいと思い、この本を読んでみた、というわけだ。
  
しかし、本著の紙幅の大半は、石原の人間性を現すエビソード(的な手紙)の紹介に割かれていて、肝心の本業(=戦史研究)の部分については、それほど深く、掘り下げられていない。また、筆者は石原という人物が相当お気に召していらっしゃるらしく、あまり客観的とは言えない石原贔屓の解説を、しばしば付してらっしゃるのもいただけなかった。

石原本人も、この本で書かれているところによれば、僕の思っていた以上に、日蓮宗に傾倒しており、また、(日蓮思想とも無縁ではないようであるが)欧米、特に米国との戦争を、戦略的にというよりは、なかば運命論的に、予想・確信していたようである。伊藤氏は、「石原は強い信仰心を有していたが、戦略自体は、科学的・合理的に研究・立案していた」といった趣旨のことを、本著のどこかで書いておられたが、合理的な研究・立案の部分があまり詳しく書かれていなかったのが残念。
my room, Washington, Sep 15, 25:34

No comments: