better place社(以下、ベ社)のフィールドは電気自動車。だが、その商品は、電気自動車そのものではなく、それを走らせるためのインフラ、あるいはシステムの方。携帯電話で言えば、NokiaやSony Ericssonではなく、DoCoMoやSoftbankに当たる会社と言えよう。
具体的には、自動車本体から着脱可能なバッテリーを開発し、そのバッテリー自体は、ベ社が保有。ベ社は、バッテリーをユーザーに貸与し、その使用量(=走行距離)に応じて課金するというビジネスモデル。ユーザーが電気をチャージする方法は2つ。一つは停車中に充電する方法。充電器は、街中の駐車場などに設置され、駐車している間に充電が完了するという仕組み。もう一つは、専用の“ステーション”で、充電器そのものを交換するという仕組み。この方法だと、充電に要する時間を大幅に削減することができる(40秒で交換可能)。バッテリー交換ステーションは、高速道路沿いなどに設置される予定とのこと。それぞれの充電方法は、ベ社作成の動画でビジュアル的に紹介されている。
Economist誌曰く、電気自動車の最大のネックは、バッテリーの値段と充電時間の長さ。ベ社のビジネスモデルは、この二つのweak pointsを一挙に解決できる可能性を秘めている。Agassi社長曰く、“Only when the battery is physically and economically separate from the vehicle, will electric cars be cheap and convenient enough for the mass market.”
一方で、当然ながら否定的な意見もある。具体的には、
- ユーザーはインフラの制約を受けない普通のプラグイン電気自動車を好むはず。
- インフラに莫大な費用がかかる(バッテリー交換ステーションを1つ作る費用は50万ドル)。
- 最新の電気自動車は、バッテリーを車両のボディー回りに這わせる構造になっており、これは、バッテリー交換システムと相性が悪い。
など(いずれもEconomist誌から要約・抜粋)。ビジネスの世界のこと(=僕にとっては専門外)なので、確たることはまったく言えないが、個人的には、どのくらいのユーザーがベ社対応の自動車を買いに走るかが成否の分かれ目になるんじゃないかと思う。携帯電話と違って、自動車は、簡単に「試し買い」できるような安いシロモノではない。今後、インフラがどのくらい整備されるのか、本当にストレスなく使用できるのかがはっきり見えない中で、どのくらいのユーザーが、ベ社タイプの自動車を買いに走るだろうか??
逆に言うと、初期の携帯電話のビジネスと同様、端末(=自動車)自体は原価割れの超安価で売る、という戦略が登場するのかもしれないとも思う。ただ、少なくとも日本でそれをやるとなると、日産(←ベ社に自動車を提供)とそのディーラーとの関係が大変なことになったりはしないだろうか。
Economist誌によると、ベ社は、これまでに、イスラエル、デンマーク、カナダ、オーストラリア、米国二州(ハワイ・カリフォルニア)の政府との間で、充電施設ネットワーク構築の契約を取りつけたとのこと。日本でも、ちょうど今、横浜で、バッテリー交換ステーションのデモンストレーションが行われている(詳細はこちら)。ベ社のビジネスモデルが成功するかどうか、頭の体操としてはなかなかおもしろいと思うのだが、賢明なる読者諸兄姉の皆様はどう思われるだろうか?
(ベ社のビジネスモデルを説明するAgassi氏。SAPのCEO待ちポストまで上り詰めたというだけあって、そのプレゼン能力は相当のもの。スピーチ終了後には、スタンディングオベィションまで。)
my home, Syracuse, May 11, 25:06
5 comments:
ベタープレイスは僕も注目している会社です。ご存じだと思いますが、ベタープレイス・ジャパンは環境省の補助事業で横浜で実証事業を展開しようとしています。社長の藤井清孝さんは本社の社長とSAPつながりで、なかなかの人物です。(「グローバル・マインド超一流の思考原理」という著書も最近出しています)
日本では日産と組んでおり、2010年に電気自動車販売開始、2011年から量産化とのことですが、電池を交換できる場所の確保がやはり一番の課題ですよね。既存のガソリンスタンドが協力してくれれば強いと思いますが。まあゴーンさんが記者発表するくらいだからある程度のメドは立っているのでしょう。
プラグイン型との対比でいえば、消費者の立場からはバッテリー交換型の方がいかにもお手軽(自宅のインフラ整備が不要)で、現在の自動車利用形態に近いため、より筋がよいように思っています。
いずれにしろ、2010年代前半にデファクトスタンダード化を巡って激しい争いがあるのでしょうね。どちらが覇権を握るのか、なかなか見物です。
ルノー=日産とは、日本に限らず、グローバルレベルで提携を結んでいるようです。イスラエル政府との提携を発表した際にも、同国大統領、アガシCEOに並んでゴーンさんが会見に登場していました。
カナダではオンタリオ州(←うちから言うと隣州)で実証実験やるみたいなので、来夏までにそれなりに施設が出来上がるのであれば、帰国前に見て帰りたいなぁと思っています。
数百ボルトのくそ重たいバッテリーを何百回も交換する発想が分からないっすわ。携帯電話のバッテリーの電圧と自動車のバッテリーの電圧を同じ扱いにすると死人が出てしまいます。
ガススタでタバコをすいながらガソリン入れる人がいるので、バッテリー交換を平気にするんでしょうか・・・。
安全性の確保をする知恵がまず必要だとおもいますね。
このリンク先 http://w.on24.com/r.htm?e=146381&s=1&k=E948C66664596D3D5A64AC58C13CACD8 に飛ぶと、横浜で行われたイベントの映像をストリーミングできるんだけど(名前とメアドの登録が必要)、"Demonstration"という題名のビデオの39~45分くらいのところで、バッテリー交換の実演の様子が見られます。
とりあえず、人間はバッテリー本体に全く触ることなく、機械が全部やってくれる仕組みみたい。とはいえ、これで十分安全と言えるのかどうかは、もちろん俺にはようわからんので、もし時間あったら観てみてみて。
直感的には、セルフのスタンドで、そこらへんのおっさんに自分で給油させてるよりは、安全そうに見えたけど、どうでしょ??
こんばんは。おもしろいですね!カーシェアリングが流行る国ですから、こちらもいけそう!?
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