Monday, September 15, 2008

Surviving at the EPA

昨夜の報道の通り、リーマンは破産申請してました。僕の知らない間に、メリルもバンカメに買収されていたみたいです。AIGとWashington Mutualも危ないみたいですし、アメリカ経済、いよいよやばくなってきましたね。はなはだ感覚的なコメントで恐縮ですけど。。(苦笑)

せっかくなんで、ちょっとだけお勉強。ソースは、毎度のwikipedia。今回のリーマン破綻の記事を読んでいて、よく見かける"CDS"の三文字。これは、"Credit default swap"の略で、いわゆるデリバティブの一種だそうです。右の絵で(What a terrible figure...)、企業Aにお金を貸している企業Cに対し、企業Bが発行する「債権倒産保険」がCDS。つまり、企業Aが倒産すると、企業Cが持っていた債券は紙切れになってしまうわけですが、CDSを買っておけば、企業Bから損失を補償してもらえる、という仕掛け、だそうです。

このCDS、銀行間で相互にバンバン発行されまくっています。なので、倒産したリーマンブラザーズは、Aの立場でもあり、Bの立場でもある。リーマン=Aの場合、ほかの銀行(B)に損失補償の支払い義務が発生するし、リーマン=Bの場合は、ほかの銀行(C)が持ってるCDSが無効になってしまう。そろそろ考えるのがしんどくなってきましたよね…。僕は正直しんどいです。でも、もうあと一歩。

このCDS、企業Cからほかの金融機関に転売することも可能です。というか、CDS市場ができあがっていて(どこにあるのか知りません。たぶんnネットの中でしょう)、普通に売買されまくっているとのこと。ここまで考えると、連鎖的に、CDS市場がえらいことになる理由がなんとなくわかってきました。基本的に素人なんでこんくらいわかれば十分です。ごちそうさまでした。

さて、こっから先は本業のお話。明日の"Public Organizations & Management"の授業で使う教材は、"Surviving at the EPA"というハーバードのケネディスクールが出してるケーススタディで、レーガン政権下でのアメリカ環境保護庁(EPA)のお家騒動が描かれています。

Anne Gorsuchというゴリゴリ共和党のおばちゃんが、レーガン大統領の抜擢でEPAの長官(Administrator)に着任。Superfund法の施行担当局長(director)だった、EPAたたき上げのMike Cookを降格し、多額の財政出動を伴う同法の施行に消極的な姿勢を取り続けるも、あまりの「アンチ環境派」的政策遂行・人事異動に、庁内・民主党はもとより、共和党・産業界からも批判の声が上がり、長官就任後22か月目にして辞任に追い込まれる、という波瀾万丈のお話でした。

テーマはもちろん、poltical apointee(政治任用)。日本でも、賛成、反対の両方の議論がありますよね。安倍政権では、それに近いかたちもとられました。その辺も頭の片隅に置きつつ、読んでて感じたところを書きます。

1.political apointeeが機能するための条件
ポジかネガかは別にしてpolitical apointeeが十分な影響力を発揮するためには、以下の条件が必要。

i) 人事権を掌握すること
Gorsuch政権下では"a hit list of career civil servants to be fired or transferred o new positions"があった、との記述に続き、"This is a rite(通過儀礼) that, to greater of lesses degrees, Washington engages in after every presidential election"とも書かれていました。なんだかんだいっても、やっぱりこれは利きますよね。良いか悪いかは別ですよ。

ii) チームで乗り込んできて、ラインに入ること
日本の省庁の場合、今のところ、大臣・副大臣・政務官がpolitical apointeeなわけですが、彼らが"チーム"を構成しているかというと…? また、少なくとも業務のラインには入りこんでいません。部局長は、官僚が全部おさえてるわけですから。
このとき、EPAに何人の政治任用者が乗り込んできたのか、具体的な数字は書かれてませんが、この記述からして、少なくとも二桁はいってますよね。
"the majority of her appointees were formerly lawyers, lobbyists or consultants for indstries heavily regulated by EPA (...), and many others were individuals with experience in Regan's campaign but not the environmental arena "
 
iii) 明確な政治方針があること
明確な方針もなく、ただただ政治任用者が乗り込んできても、素人に舵を取らせることになるだけで、それなら、専門家=官僚に仕事をさせる方がよっぽどうまく船を操ってくれるはず。その専門家集団=官僚機構が、専門家ゆえのドつぼにはまっているとき(あるいは「はまっている」と、ときの政権担当者が判断したとき)に、舵の操縦権を奪うという意味においてのみ政治任用は意味があるんだと思います。このケースの当時は、環境政策よりもより高次の政策目標として、いわゆる「レーガノミックス」がありました。そんなわけで、ケース中でも、"the Regan's administration's EPA agenda"について"The agenda was no secret, consisting of budget cuts and force reductions, regulatory relief/reform, and greater delegation of responsibility to the states"と書かれています。もはや、やりたい放題ですね。おそろしや…。

2.political apointeeの是非
降格人事をくらったMikeさんは、こんな風に言っています。
"My experience raised very serious concerns about how political appontees could come in and take such license with the clearly attriculated will of the Congress and how they could ecercise such poor management. The concerns shook me deeply enough that for a time I contemplated(~を目論む) leaving the government."
そうですよね…。よくわかります。真面目にコツコツやってきた行政官にとっては、悪夢以外の何物でもないですよね。国民にとっても、非効率きわまりない乱行です。

ただ、アメリカという国は、こういうひどいこともたまには起こるということもよくよくわかった上でなお、democracyに基づくpoliticsに決定権を委ねるという“システム”と心中してるんだと思います。

いま、「是か非かどっちか選べ」と言われても、正直僕は選べないですが、是か非かを考えるポイントは「行政機構をいかに効率的に運営するか」というところにあるのではなくて、「民主主義をどこまで信頼するか」「どこまで割り切って民主主義と心中するか」というところにあるんだ、ということは記憶に値するんじゃないかと。

3.環境屋の特殊性
最後に、話は脇道にそれますが、EPAという役所について。この役所も、政府の一部でありながら、ときに野党的な独自マインドで突っ走るという意味で、どこかの国の環境担当官庁と似ているみたいです。ケース中、こんな記述がありました。
"I(=one of the EPA careerist) think she(=Gorsuch) had this general judgment ... that there were career people at high lavels that were Democratic stooges of liberal stooges, or ardent environmentalists who were to be mistrusted."
まぁ、共和党の人たちの目線によるものとはいえ、当たらずとも遠からずだったんでしょうね(笑)

なぜ環境官庁の職員は、政府の職員のクセに、いつまでたっても反政府的言動を止められないのか?これについては、いろいろ考えるところもあるので、またそのうち書きます。

はぁ…。長すぎた…。

my home, Syracuse, Sep 15, 25:16

1 comment:

jiro said...

タイトルのSurviving at the EPAというのは、批判されながらも22ヶ月間EPAで生き延びたGorsuch長官の物語ということでしょうか?それにしても、そんな状態で22ヶ月とは驚きです。どこかの国の環境担当官庁の長官・大臣でそれだけsurviveしたのは現総裁候補の方くらいですかね。