Monday, September 29, 2008

House Rejects Financial Rescue

僕がNY州の片田舎で、財布を失くしたり見つけたりして、一喜一憂している間に、世の中は(アメリカは?)えらいことになっています。

日本でこの記事を読まれている方も、おそらくご存じだと思いますが、こちら時間の今朝(29日朝)、アメリカの下院(House of Representatives)は「金融安定化法案」を否決。これを受け、29日のNY株式市場では、ダウ工業株30種平均が史上最大の下落幅(前週末比$777.68)を記録(ちなみに、これまでの最大は$684.81で、9.11テロ後初めての取引日(2001.9.17)に記録。)し、当然ながら、30日の東京株式市場でも、株価は全面的に下がっているようです。【日経平均、午前終値544円安 一時3年3カ月ぶり安値(日経新聞)】

このニュース、アメリカで生活している人間にとっても、はっきり言って寝耳に水で、僕の周りの人たち(総じて金融危機には興味ナシ)も、今回は、さすがに「おいおい」と言っています。

まずは、金融安定化法案をめぐる昨今の状況を整理しておきましょう。
  • 法案の要点:最大7,000億ドルの公的資金による不良債権買取り
  • 28日、大統領と議会(両党)の代表は、法案について合意に達し、その内容を公表。
  • また同日、大統領は「議会で直ちに承認されると確信している」との声明を発表。
  • マケイン、オバマの両大統領候補も暫定的な支持を表明。
  • 法案を巡る下院での採決は、賛成205票/反対228票 で否決。(下院の定数は435議席)
  • うち、民主党:賛成145票/反対95票、共和党:賛成65票/反対133票。(書き損じじゃないですよ。)

確かに、「ギリギリの議論が続いている」という趣旨のニュースは流れてましたが、まさか否決されてしまうとは!! 僕が知る限り、議会での採否を危ぶむ記事はほとんどなかったと思うので、僕だけでなく、アメリカ人(マスコミやウォール街も含め)にとっても、大きなsurpriseだったのではないかと思います。

それにしても、このニュース、僕にはよくわからないことだらけです。「アメリカの国会は党議拘束が緩い」という話は前からちょくちょく聞いていましたが、いくらなんでもこんな大事な局面で、大統領と両党下院代表が合意している法案を否決してしまうとは…。「レームダック期に入ったブッシュ政権の威信の低下が原因」なんて記事をいくつか見かけましたが、そんなことは百も承知でも、やっぱりこのニュースは解せません。ブッシュの威信があろうがなかろうが、そもそもなんで反対せなあかんのかがわからん…。

というわけで、適当にあたりをつけてピックアップしてみたWashingtonpostの記事(30日付)を踏まえつつ、今回の経緯について、僕なりに想像してみました。

まず、今回の造反(特に、共和党の造反)は、単純に"Anti Bush" を意味するものではない、ということ。法案を巡る一連の議論の中でのBushの立ち位置は、もはや、自分の意見を率先して提示する役回りではなくて、民主党と共和党の調整役または仲裁役に徹していたんだと思います。だから、Bushの政策(あるいはBush本人)が気に食わないといった理由で造反した議員が多数出たと考えるのは、ちょっと短絡的ではないか、と。(もちろん、仲裁者としての威信が地に落ちていたことについては議論の余地もないですが。)

じゃぁどこがもめていたかというと、やっぱり"Demorats vs Republican"という構図なわけです。民主党には、より手厚い支援をするべきだと考えている議員が多いし、一方の共和党には、政府が市場に介入するなんてのは生理的に受け付けない、という議員が多い(たぶん。ここはちょっと推測。)。もっとも、DemocratsかRepublicanかを問わず、アメリカ人(のエリート)のmajorityは、市場信奉者なので、今回のような大規模な政府介入に対しては、どちらの党からもある程度の造反議員が出るのは織り込み済みです。ただ(どこまで緻密に票読みしたのかは知りませんが…)、これくらいだったらなんとか過半数とれるだろうという妥協のラインが、今回の法案だったんだと思います。

で、昨日から今日にかけて、Bushも、民主党議員も、共和党議員も、揺れている議員の取込みを必死にやったらしいのですが、最後の最後でいらんことをした(と共和党から名指しで非難されている)のが、カリフォルニア州選出のNancy Pelosiというおばちゃん。このおばちゃん、投票直前に、

(Bush administration) policies built on budgetary recklessness, on an anything-goes mentality, with no regulation, no supervision, and no discipline in the system

という、なんとも空気の読めない演説をしでかしたばっかりに、議場を最悪の空気に陥れ、結果、造反議員が続出した。んだそうです、Republican曰く。(このおばちゃんが、この発言をしたのは紛れもない事実。)

しかも、この一件を大統領選と絡めようとしている共和党議員がいます。McCain候補の内政顧問を務めるD. Holtz-Eakin議員もその一人で、こんなことを言っています。

"Just before the vote, when the outcome was still in doubt, Speaker Pelosi gave a strongly worded partisan speech and poisoned the outcome. This bill failed because Barack Obama and the Democrats put politics ahead of country,"

McCainは、「アメリカ全体にとっての危機である金融危機が一段落するまでは自分のキャンペーンは中断する」と言って、自主的に選挙活動を中断しているので、「それに引き換えObama陣営と来たら、こんな局面までも選挙活動に使うのか!!! きーっ」という批判になるんでしょうね。

というわけで、このWashingtonpostの記事を読む限り、ギリギリのところでつながっていた両党の合意は、今回の否決を機に崩れてしまいかねない状況のようで、Bushと両党下院代表は、「修正のうえ、再議決を目指す」と言っていますが、果たしてそれが実現するのかどうか、個人的には怪しいなと思っています。(ちなみにアメリカは、両院で可決されないと、法律として成立しない、という仕組みだったと思います。)

また、そもそも論になっちゃいますが、この法律が通ろうが通ろまいが、どっちにしたって「焼け石に水」だ、という主張も根強くあるようです。僕は専門家ではありませんし、きちんと数字を追っかけているわけでもないですが、でも何となく、それが当たっているような気がしています。これから年末にかけて、世の中が大きく動くんじゃないか、と…。長い目で見たときにそれがいいことなのか、悪いことなのかはわかりませんが。(そもそも、良いとか悪いとかいう問題ではないのかもしれません。)

my home, Syracuse, Sep 29, 26:00

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