Monday, February 8, 2010

Transmission Congestion

朝から、Independent Study(I.S.)の担当教官(Popp先生)との面談に臨んできた。今の方向で進めいって良しとの御沙汰をいただき、一安心。

一週間前のエントリーで、「風力発電がtransmission(送電網)に与える影響は、いくつかの分野に分けられる」と書いたが、I.S.の論文では、このうち、transmission congestion(送電線混雑)問題に焦点を当てようかと考えている。

悩ましいのは―というのは、論文の書き手にとって、という意味でだが―日本とアメリカで、最初にfocusすべき分野が違っているということ。日本ではfrequency control(周波数調整。数秒~数時間の単位での電気の需給調整。参照)が一番の問題だが、アメリカでは、むしろ、transmission congestionの方が大きな問題となっている。これは、“系統規模が大きければ周波数は動揺しにくく、結果として送電容量の混雑などが顕在化しやすい”(*1)という、transmissionの特性のため。北米(米国&カナダ)の電力系統は、アラスカとケベックを除くと、Eastern、Western、Texasの三つに分割されている(参照)が、一番小さいTexas Interconnectionでも日本の総面積の二倍弱もある。それに、―これは僕の想像だが―、アメリカの送電網は相対的に容量が小さく、もともとcongestionを起こしやすい状態だったんじゃないかと思う。

どちらにfocusすべきか迷ったのだが、結局、「アメリカ型」の問題を選択することに。日本に帰れば、「日本型」問題のエキスパートはいくらでもいるだろうし、だったら、「アメリカ型」を学んで帰る方が、多少なりとも稀少価値をアピールしやすいのでは?というスケベった判断から。「アメリカ型」問題の方が、経済学で斬りやすそうという(一応まともな)理由もあるにはある。(「日本型」問題は、economicsより、engineeringで斬るべき部分の大きな問題であるように感じられた。)

最終的に、現在、アメリカの各州(参照)で行われているRenewables Portfolio Standard(通称“RPS”。発電事業者に、一定割合以上の再生可能エネルギー源の利用(又はそれを代替するcreditの購入)を義務付ける制度。transmissionはカバーしていない)の改善案にまで辿り着ければbestなのだが、実際、そこまで届くかどうかは不明。まずは、なぜアメリカでは、再生可能エネルギー自体の普及は目覚ましいスピードで進んでいるのに―これ自体のスピードは、既に日本のそれを上回っている(参照)―、transmissionへの投資は滞ったままなのかを考えていこうかと。たぶん、今日のLilacさんのエントリー(“いまさら3Gのカバレッジが問題になるアメリカ”)にも通じるような話になるんじゃないかと思う。

具体例として、地元NY州か、お隣のPJM Interconnectionを取り上げようと思っているのだが(NYはRPSを導入済み。PJM傘下13州(DC含む)のうち9州もRPS導入済み(ただし、うち3州は未稼働)(*2))、どちらを選ぶかは引き続き検討中。PJMだと、面積的にも、プレイヤーの数の面でも、若干、話が大きすぎかなぁという気がしていて、地元というこもあって、やや心はNY州に傾いている。

*1 伊藤 学 (2007). 海外における風力発電の動向について ―主に電力系統への影響評価事例を中心に―, 季刊 エネルギー総合工学, 30 (2), 47-54.
*2 PJM web site http://www.pjm.com/Home/faqs/renewables.aspx#FAQ3 


Maxwell School, Syracuse, Feb 8, 12:22

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