Thursday, February 18, 2010

Hannah Arendt

先学期は、電車通勤していたおかげで、日本語の本もわりとたくさん読めたのだが、Syracuseに戻ってからは、その機会がめっきり減ってしまっている。そんなわけで、3週間前のエントリで触れた、仲正先生の本(『今こそアーレントを読み直す』 講談社現代新書(2009))を、今日、ようやく読み終えた。

ハンナ=アーレントという思想家が、何を、どう考えたかについて、仲正先生一流の解釈を、初心者にも分かりやすい言葉で示した一冊。なんてことは、僕が敢えて書かなくても、この本のタイトルを見ればだいたいわかる。もう少し詳しく言うとどうなるか。本著「終わりに」の中で、著者仲正さん自身が非常に簡潔にまとめておられるので、以下、引用させていただく。(※はblog筆者による注釈)
アーレントは「『全体主義の起源』によって“反全体主義(=自由)の闘士”としてアメリカの思想論壇に登場し、大きな期待を受けたわけだが、彼女は、「人間の自然な本性」をナイーヴに信じ、抑圧からの「解放」によって、人間本性が開花すると楽観的に考える当時の思想界の風潮に逆らった。彼女の「政治」哲学からすれば(※ アーレントには、独特の「政治」観があり、世間一般で考えられている“政治”とは別のものを想定しているので、ここはカギ付き)、右であれ左であれ、「人間の自然な本性」を一義的に規定し、人民を最終的な「解放」へと導こうとするような思潮は、「複数性」(※ アーレント哲学の最重要キーワード)を破壊し、全体主義への道を開くものに他ならない。そうした「人間の自然な本性」に対する過剰な期待、幻想に抵抗して、「複数性」を回復すべく、彼女は「政治」「人間性」「自由」の意味するところを、哲学的に掘り下げて考えようとしたのである。  
わかりやすい「気付き」の契機の多い本ではないが、(いい意味での)ボディブローのように、思考回路の「芯」の部分に、じわじわと沁み渡ってくる一冊。
my room, Syracuse, Feb 18, 26:23

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