Thursday, December 3, 2009

Elevated and Volatile

水曜日はInternational Tradeのクラス。今日は、エネルギー問題の専門家がゲストスピーカーとして登場。これまで、このクラスにやって来たゲストスピーカーは、テロ対応の専門家、インドでITベンチャーを起こしたおじさん…etc.。Professor氏が、授業の看板である「貿易」はそっちのけで、自身のSAIS almuniネットワークの中から、気の合う仲間を呼んできては喋らせている感がなくもない(中にはかなり微妙な人もいた…)。しかし、少なくとも今日のスピーカーに関して言えば、(「貿易」との関連性はさておき)そう滅多に聴くことはできないだろうと思うくらいの面白い話を聴かせてくれる人だった。

エネルギー関連のコンサルティング会社を経営するRobert McNallyというのがその御仁。エネルギー市場のアナリストとして、キャリアを積んできた人で、子Bush政権時代(一期目)には、National Economic Councilのメンバーとして、White Houseでの勤務も経験している。その話しぶりは、頭の切れる人特有の「超高速マシンガントーク」であり、それがために、僕の耳が彼の喋った内容をどこまで正確に拾えていたか、正直言って、あまり自信はないのだが、そのことをお断りした上で、以下、氏の講演内容の中から気になったポイントをメモしておく。
  • エネルギー市場は、2000年以降、新時代(new era)に入った。そこでは、単にエネルギー価格が上昇(elevate)したというだけでなく、価格変動性(volatility)そのものが増大している。この傾向は、今後ますます強くなっていくだろう。
  • cap-and-tradeの導入を目指すか否かという一点を除けば、実は、子Bush政権とObama政権のエネルギー政策には、それほど大きな違いはない。
  • 早晩、shale gasがエネルギー分野でのhot issueになる。アメリカでは、(shale gasを含む)天然ガスは「クリーン」なエネルギーの一つとして位置づけられているので、shale gasの採掘が本格的になれば、風力や太陽光との間で、「クリーン」エネルギーの市場を食い合う可能性すらある。
  • 一方で、shale gasの採掘が水質汚染をもたらし得るのではないかという懸念がある。これについては、子Bush政権下のEPAが「問題なし」との調査結果を発表していたが、先日、Obama政権下のEPAが、この件に関する再調査を実施する旨、発表した。(おそらくこの記事。)
    (blog筆者コメント: ちなみに先日発表されたそれぞれとの共同宣言の中には、中・印両国におけるshale gas開発の援助が盛り込まれています。)
  • ニクソンは、マンハッタン計画とアポロ計画を引き合いに出しつつ、「石油依存からの脱却」を宣言したが、その後、30年以上が経っても、未だ実現しないどころか、むしろ、石油への依存度は当時よりも高まっている。石油からのエネルギー転換は、それほどまでに難しいということ。
  • 環境コミュニティ以外で、cap-and-tradeの導入を後押ししているのは、ヘッジファンドなども含む金融(とりわけGS?)業界のほか、農業系の利益団体、utilityの一部など。
  • 今後、climate-energy法案の審議が佳境に入った際には、cap-and-tradeの価格ceiling(K-B法案では、初年度=$28/t-CO2e、rising 5% over inflation anually)をいくらに設定するかというところで、両党間の妥協点が探られる可能性が高い。
  • とはいいつつ、climate-energy法案の成立可能性は現在のところ、50%以下と見る。health care法案の前にclimate-energy法案を審議していたならば、勝算は、もう少し高かったかもしれない。
  • Clean Air Actの二度の大改正(※ '70年改正と'90年改正?)はいずれも、共和党政権下で行われたものだった。民主党政権下で、大きな環境法案を通そうとすると、どうしても審議がpartisan化してしまって成立しづらい。①共和党政権下であり、かつ、②目に見える危機が社会全体で共有されている、というのが、法案成立には最も好ましい状況。
  • Manitoba大のVaclav Smil教授の論考がすばらしい。技術、経済、政治、歴史といったあらゆる要素が彼の議論のベースとなっており、エネルギー問題に関して、この人ほど深い議論を展開している人を他に知らない。
いろいろと気になるトピックもあるので、適宜、フォローアップしていこうと思う。それにしても、エネルギーの世界――それも、その世界の限りなくコアに近いところ――で生き抜いてきた彼のような人の話を聞いていると、環境政策なんてものは、所詮、もっともっと大きな力学の中で設定される「ストーリー」の範疇でしか泳げない、微力な存在なのではないかという気がしてきてしまう…。
my room, Washington DC, Dec 2, 26:41

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