エネルギー関連のコンサルティング会社を経営するRobert McNallyというのがその御仁。エネルギー市場のアナリストとして、キャリアを積んできた人で、子Bush政権時代(一期目)には、National Economic Councilのメンバーとして、White Houseでの勤務も経験している。その話しぶりは、頭の切れる人特有の「超高速マシンガントーク」であり、それがために、僕の耳が彼の喋った内容をどこまで正確に拾えていたか、正直言って、あまり自信はないのだが、そのことをお断りした上で、以下、氏の講演内容の中から気になったポイントをメモしておく。
- エネルギー市場は、2000年以降、新時代(new era)に入った。そこでは、単にエネルギー価格が上昇(elevate)したというだけでなく、価格変動性(volatility)そのものが増大している。この傾向は、今後ますます強くなっていくだろう。
- cap-and-tradeの導入を目指すか否かという一点を除けば、実は、子Bush政権とObama政権のエネルギー政策には、それほど大きな違いはない。
- 早晩、shale gasがエネルギー分野でのhot issueになる。アメリカでは、(shale gasを含む)天然ガスは「クリーン」なエネルギーの一つとして位置づけられているので、shale gasの採掘が本格的になれば、風力や太陽光との間で、「クリーン」エネルギーの市場を食い合う可能性すらある。
- 一方で、shale gasの採掘が水質汚染をもたらし得るのではないかという懸念がある。これについては、子Bush政権下のEPAが「問題なし」との調査結果を発表していたが、先日、Obama政権下のEPAが、この件に関する再調査を実施する旨、発表した。(おそらくこの記事。)
(blog筆者コメント: ちなみに先日発表された中・印それぞれとの共同宣言の中には、中・印両国におけるshale gas開発の援助が盛り込まれています。) - ニクソンは、マンハッタン計画とアポロ計画を引き合いに出しつつ、「石油依存からの脱却」を宣言したが、その後、30年以上が経っても、未だ実現しないどころか、むしろ、石油への依存度は当時よりも高まっている。石油からのエネルギー転換は、それほどまでに難しいということ。
- 環境コミュニティ以外で、cap-and-tradeの導入を後押ししているのは、ヘッジファンドなども含む金融(とりわけGS?)業界のほか、農業系の利益団体、utilityの一部など。
- 今後、climate-energy法案の審議が佳境に入った際には、cap-and-tradeの価格ceiling(K-B法案では、初年度=$28/t-CO2e、rising 5% over inflation anually)をいくらに設定するかというところで、両党間の妥協点が探られる可能性が高い。
- とはいいつつ、climate-energy法案の成立可能性は現在のところ、50%以下と見る。health care法案の前にclimate-energy法案を審議していたならば、勝算は、もう少し高かったかもしれない。
- Clean Air Actの二度の大改正(※ '70年改正と'90年改正?)はいずれも、共和党政権下で行われたものだった。民主党政権下で、大きな環境法案を通そうとすると、どうしても審議がpartisan化してしまって成立しづらい。①共和党政権下であり、かつ、②目に見える危機が社会全体で共有されている、というのが、法案成立には最も好ましい状況。
- Manitoba大のVaclav Smil教授の論考がすばらしい。技術、経済、政治、歴史といったあらゆる要素が彼の議論のベースとなっており、エネルギー問題に関して、この人ほど深い議論を展開している人を他に知らない。
my room, Washington DC, Dec 2, 26:41
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