Saturday, December 26, 2009

What is Environmental Policy? #2

23日のエントリーの続き。

前回は、「環境政策とは何ぞや」という問いかけに始まって、「(広義の)環境政策の本旨は、いくつかの関連するファクターをバランスさせる(=政治的調整を図る)ことにあるのではないか」というところまで書いた。また、そこで考慮すべき重要なファクターとして、①国民経済、②外交、③技術、④(環境影響についての)科学的知見の4つを挙げた。

では、その政治的調整に至るプロセスの中で、(politicalではない)環境屋さんはどういう仕事をすればいいのか、というのが今回のお話。

「政治的調整」の前段階を担当するわけであるから、彼らの(というか「僕らの」なんだが)仕事は言ってしまえば、一種の「お膳立て」である。しかし、環境問題、とりわけ、温暖化みたいな巨大な問題になってくると、前回も触れたとおり、経済や外交といった超重要ファクターが複雑に絡み合ってくるので、「調整」とはいっても、関係者の話を聞いて直観的に落とし所を言い当てるといった名人芸のレベルははるかに超えている。となると、その政治的決断のための「お膳立て」も、単に判断材料をきれいに並べればいいというようなものではなく、各ファクター間の対立構造そのものをプログラムの中に取り込み、(理想的には)ある変数の値を決めることで、ファクター間の調整が自動的に図られるような次元までpolicy programを作り込む必要がある。そして、そこにこそ、環境屋の活躍の場あるのではないかと思うのだ。

この着想の直接のきっかけを得たのは、今学期のレポート執筆に際して調べた、Kerry-Boxer法案やWaxman-Markey法案のcap-and-trade制度から。たとえば、cap-and-tradeの中で、「emission allowanceの総量」という変数を決めることは、すなわち、①国民経済と④科学的知見の間での妥協点を決めることになる。また、その値を、中長期に亘って決めていく際には、implicitlyにではあるが、環境技術の開発見込みを織り込まなければいけない。Carbon Marketの価格安定化システムの一部として登場する、「allowance市場価格の上限額」という変数も、同様に、①国民経済と④科学的知見の妥協水準を決めるためのものである。

また、自国産業の“competitiveness”を守るためのBorder Carbon Adjustmentの仕組みには、いくつかの公式が組み込まれており、adjustment措置発動の当否が――少なくとも見かけ上は――公式のoutputで以て客観的に決まるようにデザインされている。これは、恣意性の入り込む余地を極力小さくすることで、①国民経済と②外交(我が国の対外的立場)の対立に④科学的知見からの要請が絡む、極めてタフな政治的調整を、出来る限り効率的な形で行うための工夫とも言えるのではないかと思う。

こういった形で、調整課程そのものを定型化し、policy programに組み込んでいくところ(或いは、そういったprogramを事務的にデザインするところ)に、今後の環境屋の活躍しどころがあるのではないかと、最近考え始めている。

もちろん、こんな仕事が容易にできるはずもなく、(環境影響についての科学的知見は言うに及ばず、)経済、外交、技術それぞれについての深い背景知識が、この仕事をするための必須の前提条件となる。また、そもそも、環境屋だけで全うできる仕事だとも思わない。他分野の専門家との協働が絶対的に必要だろう。

しかし、チームは組むにしても、人任せにせず、環境屋こそが、この手の本質的に「妥協」を伴う仕事に、主体的かつ主導的に取り組んでいくべきだと思う。「経済や貿易のことはわからないから」と、自らの役割を科学的知見の「知恵だし」だけに限定しようとしたり、ましてや、ネガチェックだけに血道を上げるなんてのは最悪。環境屋だけが、ひとり、「キレイ」なポジションを死守したところで、物事が前向きに進むわけではないのだから。

というのが、僕自身の仕事に関して、この秋に、僕なりに考えてみたことの、とりあえず今時点での結論。非現実的なほどに野心的な目標だが、それにしても、最終的なアウトプットの出し方まで、とりあえず何らかの道筋が一本見通せたというのは僕にとって大きな収穫。何を学び、何を考えるべきかの判断をする上で、有効な指針となってくれると思う。

留学期間も残りわずかとなってきた。このイメージを常に意識しながら、時間と労力の重点配分を徹底していきたい。
underground study room, Eggers Hall, Syracuse, Dec 26, 17:00

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