Saturday, October 10, 2009

Think Tanks in the USA

ずーーーっと放ったらかしにしてしまっていた、横江公美氏著 『アメリカのシンクタンク ―第五の権力の実相―』(ミネルヴァ書房・2008年)感想文の後篇を。(前半はこちらで。)

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そもそも、アメリカにおけるthink tankとはナニモノか、ということだが、本著中で引用されているJ.A.Smithという人の言葉によると、「アメリカの正式な政治過程の周辺で活動する民間・非営利の研究グループ」であり、その形態は、「資金源、支持層、研究とアドボカシーのバランス、対処する政策問題の範囲、スタッフの学術的名声や実践的な政治経験、イデオロギーによってそれぞれ異なってくる」ということらしい(p.62)。
  
つまり、一口に“think tank”と言っても、さまざまな形態があり得るわけだが、これに関して、E.Haasという人は、「人材」、「資金」、「テーマ設定」及び「アウトプット」の4要素を軸に、think tankを「コントラクト」、「アカデミック」、「アドボカシー」の3タイプに分類するという研究を行ったらしい(p.64)。 p.68に、その詳しいタイプ分けの表が出ているが、かいつまんで言うと、
  • 「コントラクト」型シンクタンク:PhD保持率が高く、資金源は政府からの委託研究と補助が中心で、中立的観点から、アカデミック色の濃い―しばしば長大な―研究を行う
  • 「アドボカシー」型シンクタンク:PhD保持率は低い代わりに高位官職経験者が多く、資金源的には個人・財団・企業からの寄付が中心、イデオロギー色が強く、アカデミックというよりは、よりリアルタイムの動きに対応するための提言を行うことを主業務としている
  • 「アカデミック」型:大ざっぱに言うと上二者の中間
といった感じ。著者横江氏が、それぞれの代表例として挙げているのは、「コントラクト」型―Rand、「アカデミック」型―Brookings、「アドボカシー」型―Heritage、Center for American Progress。また、Urbanは「コントラクト」と「アカデミック」の混合型、AEIは「アカデミック」と「アドボカシー」の混合型に当たるとのことである。
  
このように、アメリカでは、様々な形態のthink tankが活動しているわけだが、横江氏曰く、法的には、内国歳入庁発行の免税特権コード501(C)3を有していることが、アメリカでthink tankを名乗る上での、実質的な唯一の要件になっているとのこと。本著によると、「501(C)3の免税コードを持つ組織というのは、公共の役に立つ業務を行っていると政府からお墨付きをもらっている非営利団体であることを意味する。税法上では、非営利団体のなかで最優遇税制を享受する」らしく(p.80)、それだけに、同コードを取得するには、様々な条件をクリアする必要があるそうだ。たとえば、あからさまに、partisanとして政治活動するのはNG(p.85)。したがって、「アドボカシー」型と分類されるシンクタンクほど、(思想色はあっても、)partisanではないということを外向きに示す工夫を様々、行っているらしい(e.g. conservativeと見られているthink tankが民主党政権の元高官を雇う)。

本著後半のキーとなる部分をザザっと要約してみたが、この本、日本人にしてみれば、インナーの方でもない限り、なかなか見えてきにくい、アメリカthink tankの実態を、非常に詳しく紹介してくれていて、なかなかタメになる一冊であった。まだまだ、よくわからない世界ではあるが、なんとなく、いちおうの「土地勘」みたいなものは、この本を通して掴めたような気がする。また、感想文前半で触れさせていただいた、近年の米国における「電子政府」の爆発的発展を受けた、think tankの「情報プロセッサー」化について書かれている第5章、第6章も非常に興味深く、参考になるところが多かった。
  
惜しむらくは、ちょっと誤字や日本語表現上の誤りが多すぎるのではないか、ということ。昨年の大統領選に触れられている部分もあるので(ちなみに初版発行は2008年5月末)、機を逸しないよう、焦られたのかも知れないが、折角のユニークな研究内容なので、クレディビリティの面からも、もう少し、推敲に時間をかけられても良かったのではないかなぁと言う気がする。(まぁ、お前ナニサマって話ですが。)
my room, Washington DC, Oct 10, 23:14

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