Thursday, October 1, 2009

Smart Grid

Obama政権のGreen Stimulusと言えば、「ポンコツ車(clunker)をディーラーに持ってって、燃費のいい車に買いかえるだけで、最高$4,500のバウチャーをget!!」という、いわゆる"Cash for Clunkers"がやたらと目立っていたが、こんなもんは、デトロイト救済のための一時凌ぎのゴマカシ(という言葉が言い過ぎならば「窮余の策」)以外のナニモノでもなく、CO2の排出抑制はおろか、景気回復のための手段としても、ほとんど効果はなかったのではないかと、個人的には思っている。

なんて話をしていたら、今日付けのWashington Postに、ちょうどこんな記事(“Sharp Drop in U.S. Auto Sales in September”)が出ていた。記事中、Nomura Securities(てか、リーマンからの移籍組??)のエコノミスト氏がおっしゃるには、"In a long-term theoretical sense, Cash for Clunkers doesn't do a whole lot for the economy, but it did instill a sense of confidence (= 自信を注入する) that we can exit this recession."とのこと。「自信注入」費=$3 billion(3000億円弱)也…。まぁ議会や政権の人たちも、こういう結果になることくらい、だいたい予想はできていただろうと思うが、「諸般の事情」を鑑みて、やらざるを得なかったということなのかも知れない。

"Cash for Clunkers"を筆頭に、Green Stimulusには、単なる「ばら撒き」施策もそれなりに含まれているわけだが、一方で、「おっ」と思わせるエッジの利いた政策が混ざっているのも事実。その代表格ではないかと思われるのが、いわゆる“Smart Grid”。目下、この政策についてお勉強中で、まだまだわからないことも多いのだが、今日は、頑張ってこれについて書いてみたい。

このSmart Gridなる施策、Obamaが引っ提げて来たタマというイメージが強いのだが(僕はてっきりそうだと思い込んでいた)、実は、2007年のEnergy Independence and Security Actの中で、既にその推進が謳われている。Obama政権の、いわゆるStimulus(American Recovery and Reinvestment Act)では、その推進のための予算の大幅増額($500 million → $11 billion追加)が行われた、というわけ。

非常に幅広い分野をカバーする政策なので(その意味では、総華的と言えなくもない)、要は何をしようとしているのか、なかなか捉えにくいのだが、主管官庁であるDoEの定義(こちらのp.3)によると、
The Smart Grid is the electric delivery network from electrical generation to end-use customer integrated with the latest advances in digital and information technology to improve electric-system reliability, security and efficiency. More broadly, the Smart Grid is the Internet brought to the utility, adding intelligence to revitalize the system rather than reinvent it.  
ということらしい。これを見ても、結局、さっぱりわからないので、もう少し具体的に見ていくことにする。

先に挙げたEnergy Independence and Security Act of 2007は、Secretary of Energy(エネルギー省長官)に対し、“the status of smart grid deployments nationwide and any regulatory or government barriers to continued deployment.”を、二年に一度、議会に報告するよう求めているのだが、その一回目の報告書“Smart Grid System Report”が、今年7月に提出されている。これによると、Smart Gridの本旨は、“digital technology”を用いて、“electric system”の“reliability, security, and efficiency (both economic and energy)” を改善することにある、とあり、そのために、以下のような方針の下、諸々の政策群を進めていくべしと述べられている。
  1. Enables Informed Participation by Customers (「知らされた」消費者の参加を可能にする)
  2. Accommodates All Generation and Storage Options (発電とpowerの貯蔵に関するすべてのオプションを取り込む)
  3. Enables New Products, Services, and Markets (新たな製品、サービス、市場を可能にする)
  4. Provides the Power Quality for the Range of Needs (必要に応じた品質の電気を提供する)
  5. Optimizes Asset Utilization and Operating Efficiently (固定資本の使用方法を最適化する)
  6. Operates Resiliently to Disturbances, Attacks, and Natural Disasters (混乱、攻撃、自然災害に対して弾力的に運用する)
これを見てもまだまだ抽象的だし、また、実際のところ、そのカバーする範囲は非常に幅広い(たとえば、3.には、EVの普及なんて話も含まれている)ので、その全体像を一言で言い表わそうという試み自体に無理があるのかも知れないが、そこを敢えて、smart gridの核となる思想は何かと言うならば、「demand sideの意向を詳細に汲み取ることにより、きめ細かなマーケティングを可能にする」ことにあるのではないかと思う。

たとえば、従来の電気メーターに比べ、より詳細な消費電力の把握を可能にするSmart Meter(或いはAdvanced Meterとも)を各需要家の建物に取り付けることによって、秒刻みで各時間帯ごとの電力消費量を把握し、ピーク時とオフピーク時の電気に、そのコストに応じた価格をつけること(このことは、需要家に対し、オフピーク時の電気利用を促す)や、これまでのように、高品質(というのは、電圧・周波数のブレが少ない、ということであるが)の電気を一律に配電するのではなく、各需要家のneedsに見合った質の電気を提供することによって、周波数調整(frequency regulation)に伴う発電効率のロスを減らすこと、などが提案されている。

こういった話に大いに絡んでくるのが、storage("power"の貯蔵。必ずしも「蓄」だけとは限らない)という技術で、今日は、これについても書こうと思っていたのだが、すでにだいぶ長い間、PCと向き合っている気がするので、この続きは、またの機会ということで。
my room, Washington,. DC, Oct 1, 22:35

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