Monday, June 29, 2009

Free Trade or Environment Protection

昨晩のコンフェデレーションズカップ決勝、ブラジルvsアメリカは、予想をはるかに上回る好ゲームだった。アメリカは前半に2点を挙げ、2-0で折り返したが、後半、ブラジルに3点を返されて万事休す。とはいえ、アメリカの2点目のカウンターはめちゃくちゃきれいだったし、ゴールキーパー Howard の働きもamazing。そして何より、アメリカイレブンの必死さが画面からひしひしと伝わって来た90分間だった。皆さんご存じのとおり(?)、基本、このblogはアメリカに対して辛口なのだが、昨日ばかりは、アメリカびいき。試合終了の笛を聞いたときは観ているこっちまでがっくりきてしまったが、ブラジルベンチでドゥンガが子供のように喜んでいる姿を見ると、これはこれでうれしかった。「勝って当然」というプレッシャーの中、0-2から逆転し、きっちり優勝をさらっていくブラジルのすごさは言うまでもない。

さて、アメリカメディアがマイケルジャクソンで持ちきりだった先週金曜日、米下院ではWaxman-Markey法案が可決されたわけだが(詳しくはknj君のblogを)、同法案には、3月の記事で書いたように、“Carbon Tariff”と呼ばれる関税措置(温暖化対策の取組が足りていない(とアメリカが認めた)国からの輸出品に対して関税を課す措置)が含まれている。奇しくも同法案の下院通過とまったく同じ日、WTOは、UNEPとの連名で“Trade And Climate Change”というレポートを発表した。まだ実物には触れていないのだが、NY times(Web版)によると、「自由貿易は、意外にも、気候変動対策にプラスのインパクトをもたらすのです」みたいなことが書かれてあるらしい。

それだけだったら、「WTOさんとUNEPさんの間で、よく妥協点が見つかりましたね。大変だったでしょう。」というだけの話で面白くも何ともないのだが、LA timesは、同じレポートを別の切口から報じている。“WTO admits some trade limits may be necessary to stop climate change”と題されたその記事によると、
"WTO case law has confirmed that WTO rules do not trump environmental requirements," the global commerce body said. Import taxes on goods coming from countries that fail to meet environmental standards might be among the measures exceptionally permitted under global free trade laws, WTO said. (WTOは「WTOの判例は、WTOのルールが環境規制を凌駕しないということを認めている」、「環境基準を満たしていない国からの輸入品に対して関税をかけることは、国際自由貿易法において例外的に認められている」と述べた)
とのこと。まさに“Carbon Tariff”に対するGoサインともとれるような発言である。

これについて、イギリス紙Guardianは、

For more than 60 years, the GATT/WTO process has been animated by the goal of reducing barriers to trade. While the tax adjustments and carbon tariffs would not violate the letter of the agreements, they would certainly mark a revolutionary shift in the spirit. (60年以上の長きにわたり、GATT/WTO プロセスは、貿易の障壁を減ずるという目標によって突き動かされてきた。税の調整やcarbon tariffは、合意文書の文言に反しはしないが、WTOの精神からすると、革命的な変革を示すものと言える )

と書いている。Guardianは、「税の調整やcarbon tariffは、合意文書の文言に反しはしない」と断言しているが、その点については、まだ議論の余地があるという話を昨年12月に書いた。少なくとも、(Guardianとは違い、)その点に議論の余地ありとする勢力はまだいるということだ。それだけに、今回のレポートは、WTOにとって、それなりに大きな方針転換を意味するものといえるのではないだろうか。

今のところ、新聞情報にしか当たれていないので、近いうち、レポート本篇も読んでみようと思う。ともあれ、Carbon Tariffの世界にも少し動きが出てきたみたいだ、ということで。
Accra, Ghana, June 29, 7:03

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