Wednesday, June 10, 2009

Voluntary Carbon Market

今週、インターン先では、ガーナでCDMができないものかと考えている。
ガーナがホスト国となって「登録」(Registration)まで漕ぎつけたCDM案件は、今のところゼロ。したがって、CDMの登録に必要なノウハウも、ガーナには蓄積されていない。(蓄積されていないからこそ、CDM登録が0件なんだとも言える。ニワトリと卵)。2013年以降のCDM制度の先行きが不透明な中、ガーナとして、国内一例目のCDMにどこまでこだわるべきなのかという、もっともなご意見もある。というわけで、今日は、CDM以外の可能性も探るべく、いわゆるVoluntary Carbon Market (以下、VCM)について調べてみた。以下、今日の成果を。(ここまででお分かりの通り、今日のMSJは些かマニアックです。)。
   
参照させてもらったのは、Ecosystem MarktPlace と New Carbon Finance という二つの機関が毎年共同でまとめているVCMについての年次報告書(2009年版)(2009/5/20発行)。これによると、2008年のVCMは、前年に比べて大きく成長しており、クレジット価格の上昇や、市場規模の拡大が認められたとのこと。クレジットの主な買い手は、CSR (Corporate Social Responsibility) やPR (Public Relations) のためにoffsetを行いたい民間企業で、国別では、アメリカが最大の需要元(39%)。また、同年に発行された全クレジットのうち、96%は、第三者認証を経ているとのこと。
   
というわけで、本報告書はVCMの未来は非常に明るい!!といった筆致で描かれているわけだが、VCM素人の僕からすると、いろいろ気になるというか、引っかかるところがいくつかある。
   
まず、そもそもの話として、急拡大しているとは言っても、CDM市場に比べれば、VCMの市場規模はまだまだ小さい。 同報告書p.6の下の表によると、金額ベースで見たVCMの市場規模は、CDM(Primary + Secondary)の約30分の1。
その中でもアフリカのシェアは非常に小さい。マーケット全体のわずか1%。アフリカのシェアが少ないのは、CDMも同じなのだが、VCMがCDM市場と違うところは、30%弱をUSA産のクレジットで占められているということ。CDMのような、京都議定書に基づく制度ではないので、アメリカ国内での削減からだって、クレジットをつくることができるわけだ。また、VCMクレジットの買い手は、基本、排出削減義務を負っていない者(アメリカの企業がその典型)で、文字通り“voluntary”に買うわけだから、買い手が1 t-CO2あたりのクレジットに払ってもいいと考える額は、CDMよりも小さいだろう。そう考えると、VCMにおけるアフリカ産クレジットの割合は、単にいま小さいというだけでなく、今後も、小さいままで推移する可能性が高い。そんな気がする。
また、2013年以降のCDMの将来は確かに不透明なわけだが、そういう意味では、VCMの将来も同じように不透明。VCMクレジット最大の買い手である米国が、京都議定書の後継枠組みに加入でもすれば(してほしいですけど)、米国企業がVCMクレジットを買うインセンティブは大きく下がる。CCXだって、レゾンデートルを失いかねない。そう考えると、確かに今年、来年くらいは、VCMは引き続き拡大するのかも知れないが、このトレンドがいつまで続くかは不透明と言わざるをえない。
  
というわけで、VCMについては、そんなに真面目に追いかける必要もないかなと思った次第ですが、プロの皆様のお見立てはいかがでしょうか?
my room, Accra, Ghana, June 10, 20:35

2 comments:

knj said...

ガーナでCDMですか。おもしろそうですね。

二酸化炭素を出す製造業もあんまりなさそうなイメージですし、発電所の効率を上げるか、埋め立て処分場や家畜関係で放出されるバイオガスを回収して発電ですかね。カリフォルニアではかなり導入が進んでます。

そもそも、ガーナって電化してるんでしょうか?

髙林 祐也 said...

ガーナをなめてはいけませんよ。sub-Sahara随一の電化率を誇っています。2007年時点での電化率は約54%。ちなみに、sub-Sahara諸国の平均電化率は26%。

ただ、発電量の大半が水力由来なので(残りは石油火力)、発電部門でのGHG削減ポテンシャルはあまり大きくないかと。

どこでならポテンシャルがありそうか、目下、いろいろ調べているところです。。