Tuesday, June 2, 2009

Harvard Professors debate over cap-and-trade

cap-and-trade法案について、ハーバード大のRob Stavinsは賛成を唱え、ハーバード大のMarty Feldsteinは反対を唱えている――と、ハーバード大のGreg Mankiwが彼のblogの中で紹介している。(ちなみに、Mankiw自身は、何のコメントも付していない。)

両方を読み比べてから感想を書こうと思ったのだが、Stavinsの方は途中で読み疲れてしまい、今日のところは断念。というわけで、とりあえずFeldsteinの記事についての感想を書いておこうと思う。Stavinsはまた後日。

で、Feldsteinの記事であるが、字数制限のある新聞コラムということを差し引いて考えても、ちょっと「場当たり的」に過ぎるというか、目に着いたところをとりあえず批判してみたという感じがして、アカデミックな深さの感じられない内容だった(言い過ぎ??)。

Waxman-Markey billについての、彼の批判のポイントは以下の通り。
  1. 得られる効果に比べて、家計への負担が大きすぎる。
  2. 排出権のほとんど(向こう20年間に配付される排出権の85%)は、オークションではなく、無償配付されることになっているので、政府が、その売却益を得られない。
  3. 一部の配電事業者への特例措置(排出権の30%はlocalの配電事業者に無償で配付されることになっている(らしい))は、その恩恵を被らない、他の家計に皺寄せが行くだけ。

まず、一見して明らかなように、2と3の論点は、細かな制度設計に関する批判である。2を「細かな」と言ってしまうと、確かにちょっと言い過ぎのような気もするが、ともあれ、2も3も、cap-and-tradeという制度の持つ本質的な欠点でないことは確かだ。排出権の無償配付が気に入らないだけなら、オークション枠の拡大を主張すればいいのであって、“Cap-and-Trade: All Cost, No Benefit”との表題の下、cap-and-tradeそのものを否定する必要はない。

1の論点は、より大きな問題を突いてはいるが、今度は逆に大きすぎて、cap-and-tradeというより、温暖化対策そのもののに対する批判のようになってしまっている。記事の中で彼は、「15%のGHG(温室効果ガス)排出削減を、cap-and-tradeによって達成するために平均的なアメリカ家計が負担する追加的コストは年間 $ 1,600」とのCBOの試算を示している(確かにこれは大きい!!)が、この値が、環境税(あるいはもっと古典的な非経済的手法(直接規制))と比べてどうなのか、という点についてはまったく触れられていない。つまり、「他の手法に比べてcap-and-tradeはイケていない」と言いたいのか、そもそも、「アメリカは、今の時点で、こんなにハイレベルな温暖化対策を取るべきではない」と言いたいのかがわからない。
   
わからないと言えばわからないのだが、同じ記事の中で、“The U.S. should wait until there is a global agreement on CO2 that includes China and India before committing to costly reductions in the United States.”(アメリカは、中国やインドを含むCO2に関する国際合意が成立するまでは、費用のかさむ排出削減に取り掛かるべきでない)とも書いていることを考えると、筆者の本音が、後者(温暖化対策そのものの否定)にあることは、ほぼ間違いないだろう。
   
まぁ、外交戦略上、そういう選択肢もあるといえばあるのだろうが(もちろん、それが良いとは思わない)、それならそれで、某テキサスおじさんのように、正々堂々と「温暖化対策そのものに反対」と論じるべきであって、cap-and-tradeだけを攻撃するのはあまりfairなやり方ではない。また、本質的な問題(=climate change)に対するスタンスを示さず、方法論のみを批判する筆者の論法は、将来世代の財政負担を考慮しない単純な増税反対論と同じであって、ポピュリズム以外のナニモノでもないと思う。
   
と、気づいたら言いたい放題書いてしまったが、僕としては、別にcap-and-tradeに全面的に賛成というわけでもない。ざっと読んでみただけだが、Stavinsの記事(cap-and-tradeに賛成)にも、突っ込みどころはいろいろあると思う。Feldsteinが主張するように、温暖化対策を単純に先送りすることは、僕的にはあり得ないと思うが、その対策手法として、cap-and-tradeの方が良いのか、環境税の方が良いのかについては、両者、一長一短であり、また、その国の社会・経済システム次第という面もある(たとえば、電力市場の自由化が進んでいる国での方が、cap-and-tradeは効果を発揮しやすい)。そういう意味では、cap-and-tradeが良いとかcarbon taxが良いとかいう、advocacy的な二者択一の議論はもういいので、より客観的・建設的な視点から、両者の長所・短所を比較してくれる記事をそろそろ読みたい。

my room, Accra, Ghana, June 2, 21:42

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