Friday, March 20, 2009

US Is Open to Carbon Tariff

秋学期に、ある授業のresearch paperでCarbon Tariff について書いたという話はこのblogでも、だいぶ昔(昨年12月18日)に紹介しました。このcarbon tariff、簡単に言うと、「自国と同レベルかそれ以上の温暖化対策をとっていない国からの輸入品には、関税を課す」というもので、去年、上院で廃案となったcap-and-trade法案(いわゆるLieberman-Warner法案)にも、盛り込まれていたものです。
  
正直、4か月前にresearch paperを書いていた頃は、アイデアとしてはあり得ても、実際に導入するのは相当難しいだろうと思っていたんですが、今週、この制度の導入を巡って、米中の閣僚級どうしが、マスコミ経由でやりあっています。

Washington Post紙によると、今週の火曜日、DoE(Department of Energy)のChu長官が、下院での委員会出席に先立ち、
establishing a carbon tariff would help "level the playing field" if other countries haven't imposed greenhouse-gas-reduction mandates similar to the one President Barack Obama plans to implement over the next couple of years.
と語ったとのこと。同記事によると、Obama政権がcarbon tariffについての見解を公に示したのはこれが初めて。

このChu長官発言に対して中国側も反論。中国日報紙によると、ワシントン訪問中の解振華(Zhenhua Xie)国家発展・改革委員会(the National Development and Reform Commission (NDRC))副大臣(前環境保護部大臣)が、
"I oppose using climate change as an excuse to practice trade protectionism,"
と発言したのに加え、先のWashington Postの記事によると、Li Gao NDRC上級交渉官(同じく訪米中)は、
a carbon tariff would be a "disaster," would prompt a trade war and wouldn't be legal under World Trade Organization agreements
と、Dow Jonesに語ったとのこと。

12月18日のエントリーでも書きましたが、carbon tariffがWTOに抵触するかどうかは、最終的に裁定にもちこまないと白黒つかないと思います。環境保護目的など、一定の条件が満たされている場合に加盟国が輸入障壁を設けることを容認する規定(GATT第20条)が、"Process and Production Methods (PPMs)"(製造工程及び製造方法)にまで及ぶかどうか(つまり、製品そのものが環境破壊を引き起こすわけではないが、その製造段階において環境破壊を引き起こしているようなケースもGATT第20条の対象となりうるかとうかと言う問題)については、国際的に、はっきりした結論が出ていないので。
  
もちろん中国は、この問題だけでなく、アメリカの全体的な貿易保護主義化に対して懸念を抱いています。今のところ、Obama大統領はことあるごとに「protectionismには対抗する」という旨のことを言っていますが、実際、どのくらい本気で「対抗」しようとしているのかは不明。先のstimulus packageにも"Buy American"条項が盛り込まれたわけですし…。また、昨今のAIG問題(AIGをはじめとする政府支援を受けた複数の金融機関の幹部が、多額のボーナスを受け取ってたいた件)に対する議会の反応を見ていても、アメリカ政界の"populism化"は、かなりの程度進行している気がします。

Washington Postの別の記事によると、前財務長官のPaulsonは、「carbon tariff みたいなものを導入したら、米中の気候変動分野での協力はますます難しくなる」として、carbon tariffを“a dangerous path to go down”と称したらしいですが、僕は、たとえこの一件が持ち上がろうとも、気候変動問題を巡る米中の協力関係は、そう簡単には挫折しないんじゃないかという気がしています。他のいろんな問題と同じように、今やアメリカと中国は、戦略上、お互いがなくてはならない存在。ただ、それはもちろん、日米や英米のような「ベッタリ」の関係ではなく、戦略上、お互いの必要性は認め合うものの(→ だから協力関係の枠組みそのものを潰してしまうところまでは行かない)、一定の「ルール」の中では、可能な限り相手から多くを引き出してやろうとやりあっている関係。そういう意味では、大枠での協力関係を維持しつつも、carbon tariffをめぐる攻防はしばらく続いていくんじゃないかと思いますし、もう少し大きな視点から言えば、今後、米中の協力/対立軸の中で、各国(もちろん日本を含む)にも大きく影響を及ぼすいろんなことが決まってくるんじゃないかと思います。気候変動の分野でも、それ以外でも。
Maxwell School, Syracuse, Mar 20, 17:31

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