Thursday, June 4, 2009

The Power of Thinktanks

少し前だが、Japan Business Pressというサイトに、「日中で差が開くシンクタンク力」という記事が出ていた。(読むのに会員登録を求められるかもしれません。無料ですが)
  
この記事の筆者である富士通総研の柯隆(Ka Ryu)氏は、記事の冒頭、「この20年間で、日中の外交力は完全に逆転したが、その背景には、日本のシンクタンク力の弱さがある。本来、シンクタンクは、その名の通り「知恵袋」として、その母体(国や企業)の進むべき方向を指し示すべき機関であるが、日本ではシンクタンクにそのような機能が期待されておらず、「刺身のつま」程度の存在になり下がっている」旨、述べた上で(ここまではbayaによる要約。柯氏の文章そのものではない)、以下のように書いている。

しかし、だからといって国や企業にとってシンクタンクの貢献が必要ないというわけではない。グローバル化が進む中で、市場競争は激しさを増す一方だ。それに勝ち抜くためには、強力な情報収集能力と情報分析能力が不可欠である。これは企業レベルのみならず、政府レベルも同じである。

例えば、日本の外交が弱体化したのは、その重要な原因の1つとして、戦略がおろそかになり、評論家を中心に戦術しか議論されなかったことが挙げられる。日本経済と日本の産業を立て直すために、知恵袋としてのシンクタンクの再構築が不可欠である。


このあと、筆者は、中国社会科学院、マクロ研究院(国家発展改革委員会傘下)、国務院発展研究センターといった中国の有力シンクタンクを紹介。これらが中国政府の戦略的な政策立案(とりわけ外交)に大きく貢献しているとしている。
    
中国のシンクタンク事情については全く以て“I don't know”だが、筆者の、一般論としての「シンクタンク」に関する考え方、また、日本のシンクタンク事情に関する認識には、完全にagreeだ。
   
日本に限らず、民主国家でありさえすればどこでも同じだと思うが、「政府」が「政府」である限り、はっきり言って 「言えること」 と 「言えないこと」 がある。企画立案の段階であってもそうだ。したがって、政府部内だけで企画立案を行っている限り、はじめから、「言えること」の範囲内でしかモノを考えることができない。そんな、後ろ手を縛られたような状況の中で、本当に戦略的な構想を描くことができるだろうか。
    
僕は正直、難しいと思う。別に日本に限ったことではなく、民主国家ならどこでも。本当に価値のある戦略を立てようと思ったら、知識と思考力のある人たちが、とことんfact baseで議論をし尽くさなければいけないだろう。そのとき、議論のbaseとなるfactの中には、都合の悪いものや、必ずしも道徳的でないものも含まれるかもしれない。しかし、factはfactである。どんな理由があろうとも、factを曲げて(あるいは実際よりも弱めて)解釈し、それをbaseに構想を描こうとする限り、outputとして出てくる「構想」の戦略性は、当然、不十分なものにならざるを得ない。この「fact baseでとことん議論する」というところに、シンクタンクの本領があると思うのだがどうだろうか。

筆者は、そのあとの部分で、米国のシンクタンクの言葉を引きつつ、以下のようにも述べている。
米国のシンクタンクであるアーバンインスティチュートの研究によれば、政策提言のシンクタンクは非営利的かつ独立した立場が重要であると言われている。確かに、シンクタンクが知恵袋である以上、利益を上げることは第一の目的ではない。そのスポンサーはシンクタンクがコストセンターであることを寛大に容認すべきである。シンクタンクはスポンサーからの影響をできるだけ受けずに、政策立案に取り組んでいくべきである。

先にも書いたように、中国のシンクタンク事情については、僕は全く以てno ideaだが、アメリカの事情については、この一年間、多少なりとも見てきた。そして思うのは、アメリカという国は、この「シンクタンク」という曰く形容しがたい、微妙なる存在を、非常に(異常に?)巧みに活用している、ということだ。誰かが意識的にデザインしたというよりは、長い歴史の中で自然発生的に出来てきたものなのかもしれないが、現代アメリカの政策立案機能を考える上で、「シンクタンク」という存在(「システム」と言ってもいいかもしれない)の果たしている役割は、到底無視できるものではないだろう。

その機能・役割は、非常に複雑かつ見えにくいものなので、なかなか全貌はつかみづらいが、アメリカに戻ったら、日本に帰国するまでの間、彼の国のシンクタンク事情について、もう少し真剣に掘り下げてみようと思う。

Accra, Ghana, June 4, 18:55

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