Sunday, June 21, 2009

Carbon Market

ガーナのようなCDM未経験の国が、自国初のCDMプロジェクトを実現しようと思えば、そのホスト国の側にも、乗り越えないといけない壁は当然いろいろあるわけだが、CDMというものの性質上、そもそもお金が流れてこないことには何も始まらない。そんなわけで、今日はCDMをめぐる市場がどうなっているのか、少し調べてみた。プロの皆さんからすれば、基本の「キ」の内容だと思いますが、間違いあれば、添削していただければ幸い(笑)

CDMプロジェクトから生み出されるいわゆる「排出権」は、正式には、CER (Certified Emission Reduction) と呼ばれており、ロシア、ウクライナなどのもつ余剰AAU (Assigned Amount Unit) 、JIから生み出されるERU (Emission Reduction Unit) とともに、京都議定書上の約束達成に用いることができる(CER、AAU、ERUの3つをまとめて「京都クレジット」とも呼ばれる)。世銀が2008年5月に発表した推計によると、京都議定書第一約束期間(2008~2012年)における世界の京都クレジットの需要量(=京都議定書目標達成に必要な京都クレジット量)は約24億トン-CO2。この内、EUからの需要が19億トン-CO2、日本からの需要が4.5億トン-CO2で、この二つを合わせると23.5億トン-CO2。つまり、京都クレジットの買い手は、ほぼこの二者で独占されていると考えていい。しかも、EUのシェアは日本の4倍以上、全体の7割以上。

一方、CERには、京都議定書の約束達成の他に、もう一つの使い道がある。EU内では、EU-ETSと呼ばれる独自の排出権取引が行われているが、この制度においては、EUA (EU Allowance。EU-ETSでの本来の排出権) の不足分を、一定の比率で、CERで補うことが認められているのだ。このため、EU-ETSの規制を受けるEU企業は、EUAだけでなく、CERの売買も行っており、そのボリュームがCER市場の中で非常に大きな割合を占めているので、結果、CERの市場価格は、事実上、EUA価格に連動する形になっている。

(出典:NTTデータ経営研究所

ではEUA価格は何によって決まるのか。このレポートこのレポートによると、EUAの最大の価格形成要因は、エネルギー価格と、EUの経済活動水準とのこと。たとえば石油の値段が上がると、石油価格up→火力発電所における石炭への燃料転換進展→石炭使用量up→CO2排出量up→排出権需要upというパスを経て排出権の値段が上がる。逆もまた然り。また、景気が後退して経済活動が低下すれば、当然ながらCO2の排出量も減るため(また、機関投資家がそのようなシナリオを予測するため)排出権が売られて価格が下がることになる。

となると、ここ最近の排出権価格の市場動向は、お察しの通り。昨年8月から今年2月までの半年間で、EUAは70%以上、CERは60%以上、価格が下落している(出典:日本総研三木優氏)。 三木氏によると、こういった市場価格の下落に加え、以前はプライマリーCER(CDMプロジェクトの実施に伴って発行されるCER)よりも割高だったセカンダリーCER(既に発行済みのCERの転売商品)の価格が、ここにきて、プライマリーと同水準まで下がってきたため、リスクの伴うプライマリーCERの購入を見送るバイヤーが増加しているとのこと。「この状態が長く続けば、CDMプロジェクトへの資金の出し手がいなくなり、CDMプロジェクトの開発が停滞することが懸念される。」 (by 三木氏)

つまり、現下の状況は、CDM資金の出し手を探すには、かなり厳しい状況のようだ。三木氏は、「価格の低迷している今こそが、CDMプロジェクトの開発を進める絶好の機会とも考えられる」と書いておられるし、市場動向だけからすれば、確かにそうなのだが、CDMをめぐっては、第一約束期間以降(2012年以降)のルールが固まっていない(いちおう、今年12月のコペンハーゲンで固まる予定)という、さらにやっかいな(ある種、根本的な)問題もある。

こう考えると、残念ではあるが、ガーナが自国初となるCDMにチャレンジしようとしても、プロジェクト資金の出し手・クレジットの買い手を見つけ出すのは、かなり難しいだろうし、仮に見つかったとしても、大きなリスクプレミアムが織り込まれた、安い価格でのクレジット売却を覚悟しないといけないのだろう。

my room, Accra, Ghana, June 21, 13:26

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