Tuesday, July 21, 2009

They might be options...

そもそも、このblogは、僕自身の備忘録、思考のピン止め、アイデアのスケッチ、といった要素が強いのだが(強いんです。)、今日のエントリーは、いつにもましてその傾向が強い。と前置きさせていただきつつ、CDMに関する議論の続きを。
  
現行のCDMは、「大きすぎる」案件と「小さすぎる」案件を拾いにくい制度構造になっている、と思う。多少(では済まないかも知れないが)、制度を変えてあげることで、これらを拾いやすくなるのではないかと言うのが、今日のエントリーの趣旨。
  
前回挙げた、「CDMが失敗した4つの理由」のうち、一つ目の理由(密度が薄いこと)と二つ目の理由(トランザクションコストが大きいこと)は、大規模プロジェクトをCDMの対象に選ぶことで、理論上、多少なりともデメリットを減らすことができる。しかし、ここに一つの壁がある。現行、「CDMプロジェクトの資金はODAの流用であってはならない」こととされており(by マラケシュ合意(2001))、「ODAの流用」の解釈が完全には確立されていないものの、一般的には、CDMプロジェクトは、民間からの資金でまかなうべき、というのが一応の常識となっている。民間資金のみで実施するとなると、大きなリスクの伴う低開発国での大規模プロジェクトはなかなか実施されにくい。かといって、低開発国に大規模インフラへの需要がない訳ではもちろんなく、結局のところ、そういった大型案件は、中国やインドの支援で実施されがちというのが最近のトレンド。
  
日本を含む西側先進国が、こういった大規模インフラ建設に、もっと積極的になるべきか、なんて話を始めると、CDM云々のレベルを超えて、「援助」そのものの在り方をめぐる議論になってしまうので、ここではあまり踏み込んだ議論をすることは避けたいが、あくまで個人的な考えとして書かせていただくと、いわゆる“poverty reduction”も確かに大事なのだが、povertyをreduceするためにも、大規模インフラの整備は非常に重要で、また、どうせ中印などの支援で実施するんだったら、西側先進国が積極的にコミットして、よりクリーンな形での開発を進める方が良いのではないかという気もする。
  
これについての具体的な改善案は、「ODAの流用禁止」規定を廃止してしまうこと、そして、よりradicalにやるならば、先進国に対し、「削減約束の一定割合はCDMの実施によって達成しなければならない」との義務を課すことではないかと思う。寡聞にしてよく知らないのだが、現在のODA流用禁止条項が導入されたのには、それなりの訳があるのだろうと思うので、安易に取っ払ってしまっていいものかどうか、断定的なことは言えないのだが、最初に述べたとおり、あくまでひとつのアイデアとして。

一方、「小さすぎる」案件も今のCDM制度では拾いにくい。アフリカの田舎で、Improved Cooking Stove(燃焼効率を改善し、薪の消費を抑えたもの。たとえばこんなの)を普及させるプロジェクトや、ソーラーパネルを設置するプロジェクトを、CDMとして実施しようとしている人たちの話も何回か聞いてきたのだが、正直言って、今の制度の下では、これらをCDMにするのには、困難が多過ぎるように思う。仮に、registrationまでたどり着けたとしても、monitoringに相当なコストがかかってしまい、CERの売却益を相殺しかねない(下手すればマイナス)。

こういった「小さな」CDM案件を促進する目的で、文字どおり、「小規模CDM」という制度があったり(一定以下の大きさのプロジェクトについては登録手続きを緩和してあげる仕組み)、あるいは、小さなactivitiesを一つの「傘」の下にまとめて登録するPoA(Project of Activities)と呼ばれる制度があったりする。が、それらの制度が十分な効果を発揮しているかというと、疑問。多少なりとも障壁を下げることには役立っているのかもしれないが、Improved Cooking Stoveの普及のような、「零細GHG削減活動」にとっては、まだまだ壁が高すぎる。
 
いっそ割り切って、この手の「零細GHG削減活動」については、「プロジェクト」ベースで捉えるのをやめ、「商品」にCERを乗せてあげてはどうかと思う。たとえば上に挙げたImproved Cooking Stoveであれば、その耐用年数の間に、旧型のstoveに比べ、一般的に言ってどのくらいの薪の使用を減らすことができるかは、いちおう概算できると思うので(←ここは思い切ってざっくり割り切る!!)、その分のCO2排出削減量に見合ったCERを商品の販売業者に対して発行し、その業者は、CER売却益分を、値段から差っ引いて途上国向けに商品を販売する、といった具合に。かなり大胆な割り切りだということはわかっているが、プロジェクトベースにこだわっている限り、零細GHG削減活動がCDMの恩恵に与れる日はいつまでたっても来ないんじゃないかと思う。もっとも、仮にこの制度を採用するとして、どのくらいのレパートリーの商品を対象にできるかといった問題はあるし(とりあえず思いつくのは、Improved Cooking Stoveの他、ソーラー、蛍光灯電球、といったところ。どこまで範囲を広げられるか?)、その商品が実際に途上国向けに販売されたかどうかをどうやって確認するのか、といった制度上の課題もいろいろあると思う。繰り返すが、あくまでひとつのアイデアとして。

というわけで、まったく詰まっていない、突っ込みどころ満載の、ふわふわなアイデアスケッチだが、現時点での僕なりの、CDM改善に向けたアイデアということで。
Accra, Ghana, July 21, 19:13

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