Saturday, January 31, 2009

What is "Liveral"? What is "Conservative"??

Obama新政権は貿易保護主義に走るんじゃないか――。Obamaの就任以前からアメリカの内外で懸念されてきた点ですが、今週、下院を通過したStimulus Billに、早速、保護主義的な"Buy American"条項が盛り込まれているとの情報が31日付のMankiw's Blogのエントリーに出ていました(元ネタはWshington Post)。「 景気刺激法案の予算で措置される公共事業では外国産の鉄鋼の使用を禁止する」というのがその条項。上院は、さらにきつい法案を準備しているとの話もあるとのこと。最終的にどこまで歯止めをかけられるか。Obama政権の議会運営の一つの試金石ですね。(他人事みたいに言ってる場合じゃないですけど…)

金曜のエントリーで、Yさんと2時間話し続けたと書きましたが、その中で僕が話したネタの一つを。

僕はアメリカに来るまで、リベラルとか保守主義とか、新自由主義とかネオコンとか、そういう「〇〇主義」みたいなものを、あんまり理解できてませんでした。こんなとこに書くのも恥ずかしい話ですけど。そんなわけで、仲正さんの『アメリカ現代思想』を読んでみたりもしてみたわけですが、そんなこんなしてるうちに、最近、なんとなくわかってきた(と本人的には思っている)ことがあります。それは、「要は階級闘争なんじゃないの?」ということ。

こっちに来る前(来てからも)、僕が一番よくわからなかったのは、「なぜ文化・社会的な保守主義(伝統的倫理観重視、妊娠中絶反対、同性婚反対…etc.)と経済的な自由主義(「小さな政府」信奉、規制反対)が結びつくのか」という点だったんですが、要は、その両方ともが、いわゆる"エスタブリッシュメント"な人たちにとって都合いいってことだよねと考えれば、筋が通ります。逆もまた同じで、いわゆる"マイノリティ"と呼ばれる人たちにとっては、文化・社会的には、伝統的ではない価値観がより広く容認されることが自分たちの利益になり、経済的には、所得の再分配がより大きく行われることが利益になる。そして、そんなそれぞれの立場を代表する政党として、共和党と民主党とがある――多少、乱暴すぎる整理かも知れませんが、こう考えると、少なくとも僕的には、すごくストンときます。

ただ、「階級闘争」を全面に押し出すというやり方は(少なくともアメリカでは)当世、もはや流行らない。そこで、両陣営とも、「自由」という全アメリカ人共通の最高の価値を達成するにはどうすればいいかという方法論の形で、持論を展開します。その方法論が、「リベラル」であったり、「新自由主義」であったり、なんやかんやであったりするわけですね。なもんで、外から聞いていると、リベラルも、コンサバティブも、なんだか世界のどこに行っても通用する普遍的な主義主張のように聞こえるわけですが(実際、そう聞こえるように両陣営とも理論武装しているわけですが)、一枚皮を引っぺがしてみると、実際のところは、アメリカというひとつのローカルな社会の中での、固有の事情を踏まえた階級闘争、という色合いがかなり強いんじゃないかなぁという気がします。

逆に言うと、だからこそ両陣営とも、あれだけの政治的な迫力を持てる、ということも可能。これが、単なる方法論の争いだけだったら、エリート同士が机の上で(国会の中で?)議論しているだけで終わってしまって、あれだけの金と人とを動かせるパワーにはつながらないですよね。

これが、二大政党制という政治システムを裏から支えるアメリカの構造なんじゃないかと、最近、思っているわけなんですが、もしそれがある程度正しいとすると、じゃぁ二大政党制というシステムは、日本という国に根付くんだろうか…?という疑問が次に湧いてきます。上の仮説からすると、①利益を異にする二大勢力が存在する、②両陣営の勢力は(少なくとも中長期的にみれば)拮抗している、③対立の争点は多くの国民が関心を寄せるポイントである(そうでないと両陣営とも共倒れしますから)というあたりが、二大政党制成立のための必要条件じゃないかと思われますが、じゃぁ、今の日本で、何を対立軸にすればいいのか…?正直僕には、いいアイデアがありません。もちろん、国民の中に、あからさまな対立構造がないということはそれ自体、happyなんですけどね…。

実はここまでが、Yさんとのお話の中で、僕が投じた一石で、その後、二人の間でかなり議論が盛り上がったんですが、ブログで書くのはここまでにしておきます(笑)
my home, Syracuse, Jan. 31, 12:08

Friday, January 30, 2009

First Volunteer Experience in US

アメリカに来てから、たぶん初めてですが、ボランティア(といっていいのかな??)に参加。どんなボランティアかというと、「世界のLiteracy(識字能力)向上に取り組んでいるNGOの、教育プログラム開発に関するお手伝い」。これだけ聞いても何をするのかよくわからんと思いますが、実は、僕らが事前に知らされていた情報も、これだけ。かつ、募集対象は「留学生のみ」…。ということは、文字通り、読み書きのお勉強のためのプログラムを体験してみるのか??…なんて思いながら、半分モルモットになった気分で行ってきました。きゅっきゅっ。

60年以上の歴史があるというそのNGOは、大学からそう遠くないところにありました。これまでも、それと知らずに、何度か車で横を通っていたかも。もともとは、地元で読み書き教室を開いていたおばさんが、事業を拡大していき、最終的には、国際的なLiteracy問題に取り組む機関に成長したそうです。現在のメインフィールドはアフリカと南アジアとのこと。

で、そこで僕が何をしてきたかというと、「Literacy教育とは何か、Literacy教育にはどういった効果があるか」を勉強するためのlearning program(β版)を使ってみて、いろいろダメだしするというお仕事。じゃぁ別に留学生じゃなくてもいいじゃん…??? (ま、いいけど)

プログラムの中身はといいますと、「"Literacy"はコレコレコレコレと定義されます」「世界には、読み書きできない人が今も〇万人くらいいてます」「読み書きができないと、こんな困ったことがあります」「逆に読み書きができると、こんなに素晴らしいことがあります。(AIDS予防の効果が上がる、やみくもな焼畑が減る…etc.)」といった感じ。確かに、きれいにそつなくまとまってはいるんですが、なんともパンチが足りない。。。致命的だと思ったのは、誰がこのプログラムを使うのか、具体的な想定を置いていないということ。スタッフの人に聞いてみたら「幅広い利用者を想定しています」とのことでしたが、そうすると、結局、「帯に短したすきに長し」の中途半端な作品になっちゃうんですよね。政治家が読むには冗長すぎるし、これから現場に出かけていこうという人が読むには、今更な話が多すぎる(そんな人に、いまさらliteracy教育の重要性を説いても、ねぇ…)。

僕自身、そのプログラムを読んでみて、確かに「あぁliteracy教育は大事なんだなぁ」と改めて思いはしましたが、じゃぁ読む前に思っていた気持と比べて何かが大きく変わったかというと、残念ながらそんなこともなく、「アタマで理解した」というレベル止まり(逆に言うと「ココロ」はinspireされず)だったなぁと思います。

ということを、拙い英語でではありますが、頑張って伝えてきました。どこまで伝わったかなぁ。。若干不安。ただいずれにせよ、自分にとってもいい勉強になりました。誰に何をして欲しいのか、具体的なイメージを持って作らないと、自己満足で終わってしまう――公共セクターの人が犯しがちな失敗だと思います。

夜は、半年ぶりのSyracuse大学日本人会に出席。参加者はほぼundergraduateという異次元空間(!?)でしたが、都市環境を勉強しているという日本好きのアメリカ人と、「浜離宮にとっての汐止高層ビル群は、現代的な"借景"なのか、単なる景観破壊なのか」で盛りあがったりしながら、気楽なひと時を楽しんできました。
Maxwell, Syracuse, Jan 30, 23:30

McKinsey thinks Climate Change

一週間の授業が全部終わった木曜日。何の因果か、"超早口な女の子4人+僕"という、一見めちゃめちゃ楽しそうに見えて、実際かなりしんどいチーム構成のグループワークも終え、若干気持ちが開放的になっていたのか、帰り途中の日本人同級生YさんをMaxwellの廊下で呼び止め、少しの雑談のつもりが、気づいてみたら2時間あまり…。Yさん、失礼しました。とはいえ、日本の来し方行く末について(??)面白い話ができました。たまには日本語でじっくり語らうのもいいですね。今日は時間的に遅いのであれですが、また余裕のあるときに、お話の一部分(放送できる部分??)でも紹介したいなと思っています。

全然話は変わりますが、かの有名戦略系コンサルティングファーム、マッキンゼーさまが、"Pathways to a Low-Carbon Economy"と題するレポートを発表したとのこと。左のリンク先から、全文とサマリーをダウンロードできます。今日は時間的に遅いのであれですが、また余裕のあるときに、サマリー版の方でも読んでみたいなと思っています。ちなみに、結論はこんな感じだそうです。
  • The potential exists to reduce GHG emissions by just enough to stay on track until 2030 to contain global warming below 2 degrees Celsius. 
  • Opportunities can be grouped into three categories of technical measures: energy efficiency, low-carbon energy supply, and terrestrial carbon.
  • Capturing all the potential will be a major challenge: it will require change on a massive scale, strong global cross-sectoral action and commitment, and a strong policy framework.
  • While the costs and investments seem manageable at a global level, they are likely to be challenging for individual sectors.
  • Delays in action of even 10 years would mean missing the 2 degrees Celsius target.
2030年までに2℃以内の気温上昇に押さえこむ手だては残っているが、大々的なchangeが必要で、個別セクターの中には、非常に厳しいコストが必要となるものも。10年間、対応が遅れると、「気温上昇2℃以内」という目標の達成は不可能――といった内容。これだけでは、面白そうかどうか、なんとも言えませんが、読んでみて面白かったらまたこのブログで紹介します。ではでは。
my home, Syracuse, Jan 29, 25:30

Thursday, January 29, 2009

Under the Winter Storm...

最近、webからネタを拾ってきてばっかりで、自分の生活についてはあんまり書いてなかったですが、雪ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、元気にやってます。気がつけばもうすぐ1月も終わりで、早くインターン先を見つけないとと、若干焦っていたりもしてますが、春学期の授業自体は、幸い殺人的な忙しさではなく、かといって、暇でもなく、つまりその、いい感じの忙しさ。そんなわけで、日がな一日、(ジムに行く以外は) Maxwellの校舎にこもり、授業に出るか、そうでなければreading assignmentを読むかして、充実した毎日を過ごしております。冬のSyracuse特有の「大学に来る以外、他に何ができんねん!?」という環境は、勉強する環境としては、ある意味最高なのかもしれません。たまに閉塞感に苛まれていますが…(爆)

--今朝のSyracuseの様子--



今日のNYtimesに、「Obama政権の、この先の環境政策をめぐっては、民主党内で、 "カリフォルニア州・東部諸州連合軍" vs "内陸州" のバトルが繰り広げられるだろう」との記事が出ていました。彼らのスタンスを分ける最大の要因は、州内電力の石炭への依存度の差(たぶん、その次に来るのは自動車製造業の有無)。Obama政権は、つい先日、自動車燃費規制の強化を打ち出したところですが、この国が更にもう一歩温暖化対策に踏み出せるかどうかのカギは、石炭関連産業(Big Coal)が握っていると言っても過言ではないと思います。

今日はこの辺で。
my house, Syracuse, Jan 28, 25:05

Wednesday, January 28, 2009

Spain's Crazy Solar Rush Offers Lessons for All

Winter stormが接近中!! 今晩から明日にかけて、雪が4~8インチ積もるとのこと。んんんん?8インチ??? それ、何センチやっけ???

ecogeekというblogサイトに、スペインのソーラーバブル(?)の記事が載っていました。孫引きで恐縮ですが(元ネタではgreentechmediaの1月16日付記事)、ちょっと面白い(といったら不謹慎??)記事ですのでご紹介を。

同記事によると、スペイン政府は昨年度、期間限定で、太陽光発電の電力を全量買い上げるよう、電力会社に要求。この政策が予想を凌ぐ効果を上げ、年間1ギガワット程度の新設を見込んでいたところ、なんとその3倍以上、3.1ギガワットのソーラーパネルが新設される結果に。思わぬ需要急増で、パネルメーカーはうはうは。ところが、2009年に入り、買い上げ電力量に上限(500メガワット)が設定されると、状況は暗転。パネル価格が急落した上に、パネル代の支払いを完済できない購入者まで現れ、多くのパネルメーカーは、経営難からlayoffを強いられる羽目に…。

この記事を読んで思ったこと。

1. 新エネ市場は、何かしら政府が介入しないと回らない。
2. 政府はそのことを自覚して長期的視点から政策を立てないといけない。
3. もしかして、今ってソーラーパネルの買い時??
my house, Syracuse, Jan 27, 25:39

Monday, January 26, 2009

Take Steps On Car Fuel Efficiency

日本でも報じられてると思いますが、Obama大統領がカリフォルニアの自動車排ガス規制にGoサインを出しました。イラクも、グアンタナモもそうですが、就任早々、攻めまくってますね。涼しい顔してますが、内心ドキドキなんじゃないかなぁ…なんて思ってみたり。文字通り、政治生命懸けてると思います。車もイラクもグアンタナモも、冷静に考えれば、どれ一つとして簡単じゃないですからね。一年後、ホントに全部実現できてたら、それだけですごいことだと思います。

さて、その車の話ですが、具体的にObamaさんが大統領司令(executive order)で言ったことを、いくつかの新聞をベースに整理してみました。
  • EPAに対し、「温室効果ガスは人間の健康と生活に害悪を及ぼす」旨を公式に宣言するよう指示。(→ これがClean Air Actで温室効果ガスの排出を規制するための第一歩となるそうです。有体に言えば、EPAが、「うちの所管だもんね」って宣言する感じ?)
  • カリフォルニア州の自動車排ガス規制(加州以外の13州&D.C.も採択済み)の執行を認めるようEPAに指示。(→ Bush政権下のEPAが長年ストップをかけてました。)
  • 交通省に対し、自動車の連邦燃費改善基準(2020年までに35mpg以上)の前倒しを指示。
  • 連邦ビル及び連邦政府所有車のエネルギー効率基準の強化を指示。
アメリカのメディアも大々的にこのニュースを取り上げていますが、総じて好意的。もちろん、Obama人気のおかげもありますが、そもそも、一般アメリカ人のBig3に対する関心・愛着が低い(←少なくとも日本人がイメージしてるほどには高くない)ことも影響してるんじゃないかと思います。アメリカの自動車産業って、言ってしまえば、"地域産業"なんですよね。ミシガンやオハイオ以外の人にとっては、Big3に、そこまでの愛着はないのが実態…。

というわけで、どの新聞を見てもPew CenterとかCenter for American Progressといったリベラル系シンクタンクや、規制推進派国会議員のコメントばっか載ってて代り映えしないので、ここは敢えて渦中(!!)のDetroit Newsから、微妙な立場の人たちのインタビュー記事を拾ってみました(すいません、時間がないので訳しません)。

GM is working aggressively on the products and the advance technologies that match the nation's and consumer's priorities to save energy and reduce emissions. We're ready to engage the Obama administration and the Congress on policies that support meaningful and workable solutions and targets that benefit consumers from coast to coast. We look forward to contributing to a comprehensive policy discussion that takes into account the development pace of new technologies, alternative fuels and market and economic factors. 【GM社】

I am fearful that today's action will begin the process of setting the American auto industry back even further. The federal government should not be piling on an industry already hurting in a time like this. 【G.Voinovich上院議員(Republican-Ohio州)】

"The president and EPA need to lead and cooperate with the states in setting a single, aggressive standard for greenhouse gas emissions from vehicles," Dingell said, pledging to work to "resolve this delicate and important issue in a way that doesn't further endanger an already fragile industry." 【J. Dingell下院議員(Democrats-Michigan州Dearborn)】

共和党のVoinovichさんこそ吠えていますが、正直、「ナントカの遠吠え」の感あり。Dingellさん(長年、下院のEnergy and Commerce委員会議長として、デトロイトの守護神ぶりを発揮)も音なしです。GMに至っては、可哀そうなほど従順。もちろん、お三方とも腹の中で何を考えてらっしゃるかはわかりませんが、少なくとも表立っての反論はできない空気がみなぎっているんでしょうね。そういう意味では、「今しかできない」という読みがObama政権の側にはあったのかもしれません。
Maxwell, Syracuse, Jan 26, 24:40

Sunday, January 25, 2009

What is a "Green Job"?

英語を読むのに疲れてきた今日は、朝から、youtubeで『たかじんのそこまで言って委員会』(←大阪よみうりTV制作のある意味すごい番組)を見て、そのまま、週末恒例になりつつある桂枝雀のDVDを一席鑑賞。(今日の演目は『鷺とり』。四天王寺さんが出てきます。懐かしや懐かしや)。ひとしきり大阪弁を聞きまくったので、ほとんどどこにいるのかわかりません。東京でないことだけは確かみたいです。
 
さて、今日は昨日の予告通り、blog "Environmental Economics" の記事をご紹介。このblog、州立アパラチア大学教授のWhiteheadさんと、オハイオ州立大学教授のHaabさんの共著みたいですが、今日ご紹介するのは、Whithead教授が書いた記事。

"Q and A with The Energy Collective" と題されたこのエントリーは、Obama政権の提唱するGreen Stimulus(環境にやさしい景気刺激策)の中身を、経済面・環境面から考察したもの。全文引っ張ってくると長くなるので、独断と偏見(!!)で要点をしぼって紹介させていただきます。
  1. そもそも"green job"とは何か?
    定まった定義はないが、代表的なものとしては再生可能エネルギー部門、住宅の耐熱化、smart grid(効率的な送電網)の建設など。それらの多くはいわゆる「建設部門」の仕事であり、彼らの仕事が常に「グリーン」かというと、そうではない。また、green jobについての研究の中には、「再生可能エネルギーを使用している工場で働いている労働者」のような間接的なものまで"green job"としてカウントしているケースがある。
     
  2. Obama政権は今後10年間、毎年$15 billionを投資して、500万の新たな"green jobs"を生み出すと言っているが、これは可能か?
    「今後10年間毎年$15 billionの景気刺激策」で「500万の雇用口創出」という結論を得るためには、乗数≒5 と想定する必要があるが、Obama政権のchief economistであるRomer教授が自身の論文(共著)の中で用いている乗数は1.5 (← つまり、500万という数字は非現実的だというのがWhithead教授の主張)。167万くらいが妥当な数字だと思われるが、それも、雇用の純増によって達成されるか、多部門からの移転によって達成されるかは定かでない。
     
  3. 現時点で、今後10年間に創出される雇用数についてコンセンサスを得ることは可能か?
    No. この手の問題には不確実性が必ず伴う。また、もうひとつ気になるのは、(エネルギー市場の)需要サイドを無視している点。需要サイドに手を着ける(← 具体的には税を課すなどしてCO2を多く排出するエネルギーの市場価格を上げる)ことをしなければ、供給サイドにばかりテコ入れしても、「(相対的に)高価な再生可能エネルギーの過剰供給」という結末に陥りかねない。
     
  4. その規模がどのくらいになるかはさておき、雇用創出効果が現れるのはいつ頃か?
    (green jobの主力である)建設業界は立ち上がりに時間のかかる業種なので、マクロ経済への効果が現われるのは早くとも今年末、あるいは来年になるだろう。政権が言っているほどに短期的なマクロ経済への効果があるかどうかは疑わしい。
     
  5. 再生可能エネルギーの導入をgreen jobの創出によって正当化しようというのは間違った議論か?
    Yes. 環境政策の有効性は、自然環境・生活環境の改善によってもたらされる経済的価値で以て評価されるべき。green jobの有効性を強調し過ぎると、「環境を改善して大きな経済的価値を生み出すが雇用は創出しない政策」が、不当に軽視される恐れがある。
     
  6. 景気刺激策の使い道のプライオリティはどうあるべきか?
    景気刺激策と環境政策は分けて考えるべき。マクロ政策としては、財政政策よりも、減税と金融政策の方が効果的だという意見は多い。
  7.    
  8. 2009年はどんな一年になると思うか?
    経済については楽観的だが、景気刺激策の効果については悲観的。意志決定過程で生じる時差(policy lag)によって、実際の発動までに時間を要して十分な効果を残せない反面、政府は多額の負債を抱えることになるだろう。気候変動問題についても悲観的。(と言いつつ、)一年以内にcap-and- tradeか炭素税が導入されることを期待…。

経済学者としても、環境保護主義者としても、基本的にまともな議論をされていると思いますが、リアルな政策決定プロセスをどのくらい意識できているかについては・・・?。「財政政策は効かない」(6.)というのは、世界の主流経済学者のほぼ通説のようですが、だからと言って、金融政策に一点張りするなんて現実的にできないことは、どの国にも共通の事情。で、どうせ財政出動をやるんだったら潜在成長率を高める投資に突っ込む方がいいわけで、その点はgreen stimulusを(相対的にであれ)評価してあげてもいいんじゃないかなぁという気がします。

とはいえ、傾聴に値する点もいくつかあると思います。経済面で言えば(時期・規模ともに)過度の期待は禁物という点がそうですし、また環境面で言えば、需要サイド軽視しすぎという指摘には特に注意が必要かと。Whitehead教授同様、僕も、stimulusの審議がひと段落したら、cap-and-trade or 炭素税の議論が本格化することを期待しつつ…。

my home, Syracuse, Jan 25, 16:51

Saturday, January 24, 2009

The American Reinvestment and Recovery Plan

大統領就任後初の週末ビデオ演説が、White Houseのwebサイトにアップされました(president-elect 時代にも政権移行チームのwebサイトに毎週アップされていましたが、White House.govに載るのは当然ながら今回が初めて)。演説の中身はというと、オバマ政権が国会に提出した$825 billion(約73.3兆円)の景気刺激策 (正式名称はThe American Reinvestment and Recovery Plan)の紹介。これ(↓)が、その週末演説のビデオです。



ちょっと詳しめのプラン概要も載っていたので、エネルギー政策を中心に拾い読みしてみます。

まず、このplanでは、以下の6つのベンチマーク(ここでは「主要政策課題」くらいの意味でしょうか)を掲げています。
  • Spurring a Clean Energy Economy → 詳細は以下で。
  • Lowering Health Care Costs and Ensuring Broader Health Care Coverage → ヘルスケアコストの削減と、幅広いヘルスケアの提供の確保。5年以内のhealth record コンピューター化完全実施など。
  • Preparing Our Children for the 21st Century Economy → 教育政策。学校設備の近代化(500万人の生徒が対象となる)など。
  • Rebuilding America’s Roads and Bridges and Investing in 21st Century Infrastructure → 道路をバンバン造り直しちゃいましょう!! というお話。new mass transit options (大量交通手段=電車??)を提供します、とも。よく読むと、退役軍人支援の話も入ってたりして、このベンチマークはごった煮状態。
  • Supporting America’s Working Families → 労働者向け減税、失業保険の拡大・延長など。この減税歳策には「Making Work Pay tax cut」という名前が付いてますが、「Making Work Pay」は「work をpayする(割の合う)ものにする」という意味らしく、課税所得最低限まで稼げていない人には、課税所得最低限と実所得との差分をサポートしてあげますよ、といった意味合いらしい。恥ずかしながら知りませんでした。
  • Changing the Way Washington Does Business → earmarkしません、透明性極めます、外部機関にバッチシ監視してもらいます、などなど。
で、おまちかね(?)、クリーンエナジー政策の中身はというと、こんな感じ。そんなに長くもないんで、全文掲載しておきます。
  • Doubling renewable energy generating capacity over three years. (3年以内に再生可能エネルギーの発電量を倍増) It took 30 years for our nation to reach its current level of renewable generating capacity – the recovery and reinvestment plan will double that level over the next three years. That increase in capacity is enough to power 6 million American homes.
      
  • Jump-starting the transformation to a bigger, better, smarter grid. (より大きく、より良く、よりスマートな(効率的な?)送電網への転換の急発進) The upfront investments and reforms in modernizing our nation’s electricity grid will result in more than 3,000 miles of new or modernized transmission lines and 40 million “Smart Meters” in American homes.
      
  • Weatherizing at least two million homes to save low-income families on average $350 per year and modernizing more than 75% of federal building space, saving taxpayers $2 billion per year in lower federal energy bills. (少なくとも200万戸の住宅断熱化と75%以上の連邦ビルの近代化) Today, the federal government is the world’s largest consumer of energy. The recovery and reinvestment plan will make an historic investment in upgrading the federal building stock that will save taxpayer dollars and help catalyze a green building industry.
      
  • Launching a Clean Energy Finance Initiative to leverage $100 billion in private sector clean energy investments over three years. (3年間で1000億ドル(約8.88兆円)の民間クリーンエナジー投資を喚起するためのクリーンエナジー投資イニシアチブの創出) The finance authority will provide loan guarantees and other financial support to help ease credit constraints for renewable energy investors and catalyze new private sector investment over the next three years.
いろんな方(←誰やねんって話ですが)のblogを読んでいると、単なる財政支出をやっても(経済政策としての)効果はほとんどなくて(※)、どうせ景気対策やるんだったら投資部門に突っ込むべき、という意見をよく見かけます。そのスタンスからすると、一番最後のタマが一押しということになるんでしょうね。ただ、いったい何をしたいのやら一番ようわからんのもコレ。というわけで、わかりやすさにも、インパクトにも(ついでに言うと透明性にも)欠けるということで、一番下にきてるのかなぁという気がします。ただ、僕的には確かにこのタマが一番気になるので、引き続き情報収集してみます。
  
このObama政権のgreen stimulus(環境にやさしい景気刺激策、って訳になるのかな??)を、環境・エネルギー政策と経済政策の両面からどう評価するか――。日米の新聞記事を読んでいても、残念ながらほとんどまともに議論されていないのが実情で、「環境にも良いし、雇用も増えるし、何となくいいんじゃん、いいんじゃん」ということくらいしか書いてないのが大半。(ですよね?) どんぐらい「良い」のか、どんくらい「雇用も増える」のか、また、その方法として、ホントにこれが一番効率的なのか、といった議論を展開してる新聞は、ほぼ皆無なんじゃないかと思います(って言えるほど、しらみつぶしに読んでるわけじゃないですけど…。)
  
なもんで、真面目に論じてくれてる記事を読みたいなぁと思って探していたら、今日、その名も "Environmental Economics" という、ど真ん中直球の「おいおい、恥ずかしくないんかい」というタイトルのbolgを発見。州立アパラチア大の経済学部の先生が書いておられるらしいんですが、面白そうなエントリーがあったので、あとでじっくり読んでみて、ホントに面白かったら、明日の記事でご紹介します。

※ この点は、財政支出によって企業の倒産・失業の増大を防ぐという政策行動を、(少なくとも短期的には)必要な手当ての発動と見るか、(いずれにせよ長期的には)必要な社会構造改編の阻害と見るかにもよるんでしょうけどね。
my home, Syracuse, Jan. 24, 14:28

Friday, January 23, 2009

Little-known congresswoman picked for Clinton seat

Obamaさんが抜けた後のIllinois州上院議員議席をめぐるすったもんだは、日本でも大きく報じられているかと思いますが、実は、ここNY州も、ヒラリー元上院議員(現国務長官)の後釜問題を、1か月以上抱えこんでいました。(だいたい、「上院の議席に空席ができたら知事が自由に指名できる」なんておかしな制度を放ったらかしにしてるから、いろいろ面倒なことが起こるんですよね。まったく…。)

知名度抜群のCaroline Kennedy(JFKの実娘)が最有力候補と見られていましたが、経験不足を危惧する声も強く、決め手に欠いていたところ、昨日突然、Kennedyさんが指名レースから降りることを表明。これを受け(?)、知事さんは、Kennedy家に気を使うこともなく、本日、心おきなく後任議員を発表しました。

さて、その後任はというと、我らがupstate NY(=NY州の北の方=面積的には州の大半を占めるも人間はほとんど住んでいない(牛はたくさん住んでいる)NY州の田舎エリア)出身の現役連邦下院議員Kirsten Gillibrandさん。ちょうどいい機会なのでwikipediaから拝借した地図で州内の位置関係を説明しておきますと(皆さん、興味がないことは分かっていますが続けます)、NY州の南の果てにぶら下がっているのがLong Island、本土とLong Islandの継ぎ目がNY市、それ以外は全部田舎、という構成です。ね、面積でみればNYなんてほとんど田舎でしょ。まぁ人口がいかにNY市に集中してるかは、選挙区割りを見ていただければ明らかですけどね(全部で29ある選挙区のうちの17がNY市)。ちなみにGillibrandさんの下院議員としての選挙区は、州都(といってもそんなにでかくない)Albanyを囲むエリア(NY州第20選挙区)。ついでに僕の住んでるSyracuseは第25選挙区です。

話がだいぶそれましたが、Gillibrandさんはそんな田舎NYを代表する政治家で(彼女のwebサイトのトップページには牛と馬の写真が!!)。だからなのかなんなのかよくわかりませんが、民主党なのにpro-gun。もっとも、gun controlには賛成で、あくまで「ハンターの権利を保護したい」ということらしいですが、Bloomberg NY市長(=anti-gun)は、さっそく苦言を呈されたそうです。(詳しくはこちらを。)個人的には、ちゃんとコントロールさえしておけば、適正な状況での猟銃の使用は認めてあげてもいいんじゃないかと思いますけどね。

環境ネタで、面白そうな記事があったんですが、よく読んでみるとそんなに面白くもなかったんで今日はここまで。ちなみに今夜の気温―2℃。Syracuse的に言えば「春を思わせる陽気」ですね(←ほんとにそう思えてしまうところが恐ろしい…)。
my home, Syracuse, Jan 23, 25:10

Thursday, January 22, 2009

Speculation without Conclusion

池田信夫氏が、御自身のブログに、こんなことを書かれていました。 (下線は僕が引きました)

ハイエクが見抜いたように、大きな社会を維持するシステムとして唯一それなりに機能しているのが、価格メカニズムである。それは富を増大させるという点では人類の歴史に類をみない成功を収めたが、所得が増える代わりにストレスも増え、生活は不安定になり、そして人々は絶対的に孤独になった。会社という共同体を奪われた老人はコミュニケーションに飢え、派遣の若者はケータイやネットカフェで飢餓を満たす。

マルクスとハイエクがともに見逃したのは、伝統的な部族社会がコミュニケーションの媒体だったという側面だ。正月に郷里に帰ると、東京では出会ったこともない人々の暖かい思いやりにほっとするが、それをになっているのは70代以上の老人だ。やがて日本からこうした親密な共同体は消え、「強い個人」を建て前にした社会になってゆくだろう。それが不可避で不可逆だというマルクスとハイエクの予言は正しいのだが、人々がそれによって幸福になるかどうかはわからない

僕的にすごくしっくりきたので、転載させさせていただきました。世間的にはリバリタリアンと目されている (と、少なくとも、僕は理解している) 池田氏らしからぬ発言だとは思うんですが。 (見る人が見れば、これはこれで池田氏らしい意見なのかもしれませんが、不勉強な僕にはよくわかりません)

社会が「進歩」していく過程で、昔ながらの「コミュニティ」は弱体化・希薄化を余儀なくされる。両者は基本的にトレードオフであり、僕らはその間でバランスを取っていくしかない (つまり、「どっちも」という選択肢はあり得ない)―― これは普遍的な真理だと思うんですが、このテーゼに対する向き合い方は、日本とアメリカでかなり違っている ―― 一言で言うと、アメリカの方が相当先を行っている ―― 気がします。

日本でも、過去に何度か (特に小泉さんの時代に) このテーゼに絡んだ激しい議論がありました。ユニバーサルサービスか、効率性向上かが争われた郵政民営化の議論もそうですし、日本的経営 (終身雇用&年功序列) から成果主義への変革論争もそう。わかりやすいところでは、プロ野球選手が大リーグに移籍しようとする度に持ちあがる下世話な議論 (賞賛すべき挑戦か、日本球界に対する裏切りか) も、その一例だと思います。

しかし日本の場合、これらの論争は、それぞれ独立した文脈の中で扱われがちで、その根底にあるはずの、「進歩」(←全面的に肯定的な意味では使ってません) vs 「コミュニティ(の維持)」という対立構造に関する認識は、ついぞ今日に至るまで、広く社会に浸透することのないまま来てしまっている気がします。

その点、この国(アメリカ)では、この対立構造がかなり一般的に共有されています。「リバリタリアン vs コミュニタリアン」 という思想界の (ゆえに一般人にはわかりにくい) 議論にとどまらず、その両者の価値観をほぼ体現するかたちで共和党と民主党とという二大政党があり、両党が、誰の目にも見えやすいかたちで(よりわかりやすくするためにPalinなんてマンガキャラまで登場させながら)論争を展開してくれる→ 対立構造に関する認識が社会全体に浸透する。この結果、現われてくる日米の違いはかなり大きい…。

なぜそんな違いが生まれたのかと言うと、何もアメリカ人が日本人より先見性があったからということではなくて、アメリカ人が、抜き差しならぬ議論を避けては通れない環境に置かれてきたから、というだけのことだと思います。それ自体、決してhappyなことではありません。しかし、Obamaが就任演説の中で"because we have tasted the bitter swill of civil war and segregation, and emerged from that dark chapter stronger and more united" と言ったように、禍福はあざなえる縄のごとし。雨降って地固まる。結果としていまここにある現状だけを見れば、この点において、アメリカが日本よりいく段か成熟しているのは否定できない事実だと思います。

自分でもどこに向かいたいのかようわからん議論を展開してしまいましたが、無理やり結論付けるならば、「アメリカの多くの内政問題(特に、国民間の対立)は、(少なくとも今の世代のアメリカ人たちが自ら選んだわけではない)この国の成り立ち・構造によるところが大きい」ということでしょうか。アメリカの内政のイケてなさっぷりを、僕ら日本人はよく笑いのネタにしますが(実際、いろいろイケてないのでしょうがないんですが)、僕ら日本人は、アメリカ人の一歩先をいっているから笑っていられるわけじゃなく、たまたま、アメリカの抱える難しい問題(の一部)を抱えずに済んだから、笑っていられる(或いは、笑っていられた)だけなんだということを、意識しておく方がいいんじゃないかと思った午後でした。

というわけで(←支離滅裂ですが)、今夜はアメリカ人たちと一緒にボーリングに行ってきます。ではでは。
Maxwell School, Syracuse, Jan 22, 20:28

Wednesday, January 21, 2009

The Day After Inauguration

この国の大統領がObamaさんになって丸一日と10時間。メディアは引き続きお祭りムードです。といいつつ僕も、ふと立ち寄ったファーマシーで普段は買わないNewsweek(←Obama就任特集。もちろん表紙はObama。しかもどアップ)を衝動買いしちゃいました。記念にとっとこ。

そして就任式ネタを二つほど。昨日の就任式、スピーチはいつもどおり滑らかだったObamaさんでしたが、宣誓はカミカミだったのを見られた方も多いと思います(まだの方は、昨日の記事内の動画をどうぞ)。あまりにカミカミだったので(?)、偉い人たちが相談した結果、今日、宣誓をやりなおすことにしたそうです(笑) 左の写真は宣誓再挑戦中の様子。NYtimesから。

NYtimesの記事によると、宣誓の再挑戦(??)は、今日(水曜日)の7:35pmにホワイトハウス内で行われたとのこと。司法長官Robertの“Are you ready to take the oath?” という問いかけに対し、大統領は、“I am. And we’re going to do it very slowly.” と返したそうです(笑) ちなみに同記事によると、宣誓の文言は合衆国憲法に定められているとのこと。確かに合衆国憲法を見ると、Article. II-Section.1に、


Before he enter on the Execution of his Office, he shall take the following Oath or Affirmation:--"I do solemnly swear (or affirm) that I will faithfully execute the Office of President of the United States, and will to the best of my Ability, preserve, protect and defend the Constitution of the United States."
との規定があります。ほへー、知りませんでした。勉強になりますね(←知ってどうする!?)

宣誓は、司法長官が最初に文言を朗読し、それを大統領が復唱する、という形で行われますが、昨日の就任式では、最初、司法長官が"faithfully"を間違った場所(the United statesのあと)に置いてしまい(それでObamaが一瞬、「うっ」て感じになったんですね)、司法長官氏が言い直すも、今度は"execute"を飛ばしてしまい、結局不完全なままだったとのこと。悪いのは、Obamaじゃなくて司法長官Robertの方だったんですね(笑)

もうひとネタはWashington postから。その、カミカミだった宣誓の瞬間、podiumには誰がいたのか―― 顔写真にカーソルを合わせると名前を教えてくれる面白い写真が、Washington postのwebサイトに出てます。
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/metro/interactives/inauguration09/faces/index.html?hpid=topnews

マケインの奥さんは見つかりましたが、マケインがいません。どこに行ってたんだろ。あと、よく見ると、けっこういろんな人が写真撮ってますね。Obamaの娘のMaliaちゃんも撮ってたのがCNNには映ってましたが。アメリカってこの辺、自由ですよね。そういえばアメリカ人ってオリンピックの入場行進でも、みんな写真撮りまくってましたね。妙に納得。

Maxwell, Syracuse, Jan. 21, 22:38

Tuesday, January 20, 2009

The Historical Day for USA, or even the World

Obama大統領が、パレードを終え、ホワイトハウスに到着しました。まずはここまで、何事もなく一連の式典が進んできて、本当によかったなと思ってます。まぁ、皆さんもご存じのとおり、僕は単なる部外者ですけど。 (ケネディ上院議員(JFKの末弟)が、就任式後の晩さん会中に倒れて病院に運ばれたというニュースは少し心配ですが。)

東部時間の11時くらいから始まった就任式の模様は、Maxwell内に設置されたスクリーンで、同級生たちと一緒に鑑賞。アメリカ人の皆さんは、日本人がサッカー観てるときみたく一喜一憂(今日に限っては「憂」はないか。。)しておられました。歓声を上げたり、拍手喝采したり、ときにはスタンディングオベーションまで繰り出したり(笑)

就任式に臨むObamaさんの表情は、僕にはいつもとだいぶ違うように見えました。意図的にそうしてたのかどうか、「晴々とした」と形容するには程遠い、ある意味、思い詰めたような表情に見えました。一旦、演説台に立つと、いつものテンポのいいスピーチが始まりましたが、そのトーンも終始押さえ気味。家に帰って改めてフルテキストを読んでみると、まるで戦争に負けた後のような内容でしたね。(演説のフルテキストはこちら


 
「これまでやってきたことが間違っていたから、一旦全部チャラにして、もう一度、国を造り直そう」――そんな意図のこもったスピーチだったんだろうと思います。今のこの国には、これから大統領になろうという人物が、自国の現状をそこまで強く否定しても 「言いすぎだろ!!」 とは言われない空気があります(要はそれだけ、堕ちきったということですが)。そしてその空気を過不足なく読めている大統領がいる。そんなこの国の将来に、僕は明るいものを感じました。もちろんV字回復はあり得ないと思います。Obamaの一期目はまるまる不況でした、なんてことも十分にあり得る話だと思う。でも、この大統領の下、国民が本気で「国を造り直そう」と努力したならば、5年後、10年後に、足腰のしっかりしたアメリカ合衆国が、再び浮揚してくるんじゃないかという気がしました。(今日のお祝いムードで、僕も多少、楽観的になり過ぎてるかも知れません。笑)
  
ちなみにBushさんはと言えば、就任式終了後、Capitol Hill (国会議事堂)の裏庭から、ヘリで直接D.C.郊外の空軍基地へ。そこでAir Force Oneに乗り換えて、就任式終了の1時間後にはテキサスへと飛び立っていかれました(もうそろそろダラスに着いてる頃かも知れません)。D.C.周辺をうろちょろされては警備上かなわん、ということなのかもしれませんが、あまりのあっけなさに驚き。引っ越し準備も大変やったやろなぁなんてしょうもないことを考えてみたり。愛犬のバーニーちゃんはちゃんと飛行機に乗せてもらえたんでしょうか(笑)
my home, Syracuse, Jan 20, 17:40

Monday, January 19, 2009

The Day Before Iauguration

今日は、Martin Luther King, Jr. 牧師の祝日。というわけで、授業はありません。朝から大学に来て、ぼちぼちreadingをやってます。そこそこ進んだような、いっこも進んでないような…。
 
Obamaさんの就任式が明日に迫りました。この町はいつも通りどんよりしてますが、D.C.には、200万人が集まってるとか…。 すごいですね。いくら歴史的瞬間が見れるとはいえ、人ごみ嫌いの僕としては、とても行く気になれません。何事もなく終わってくれることを、遠くからお祈りするばかりです。

そんなObama新政権のDirecter of the White House Office of Science and Technology Policy(大統領府科学技術局長官??)に、秋に講演を聴きに行ったHoldren教授が就任するそうです(講演を聞きに行った日のblog記事はこちら。) Holdren教授が教鞭をとっているHarvard大の友人が教えてくれました。たった二時間とはいえ、実際に近くで話を聞かせてもらった人が政権入りするというのは、なんかちょっとうれしいもんですね。めっちゃミーハーですけど。ちなみにその友人氏は、Holdren先生の授業が受けられんくなったと言って凹んでます。
 
 
Gazaの紛争が終わりました。ようやくといった感じですが…。

戦争なんていつでもそうかも知れませんが、今回のイスラエル侵攻は特に、当事者(特にイスラエル)の意図が、僕にはよくわかりません。謎です。撤退のタイミングがなんでこのタイミングなんかもようわからん。日本でも報道されてると思いますが、イスラエルの高官はやたらと「Obamaの就任式の前に撤退を完了する」とアピッてます。関係ねーじゃん、と思うんですけど…。(もちろん、紛争が終わってイスラエル軍が撤退すること自体には僕も大賛成ですよ)

19日のHerald Tribuneの記事に、こんな一節がありました。
A senior Israeli official said that if Hamas continued to withhold rocket fire at Israel, an Israeli troop withdrawal from Gaza by the time the new American president took office would be preferable, so Mr. Obama could concentrate more on rebuilding Gaza and a more moderate Palestinian leadership than on pressuring Israel to withdraw. The official spoke anonymously because of the sensitivity of the matter.
「Obamaに、ガザ復興と穏健なパレスチナ政府の再構築に専念してもらうため…」。とりあえず圧倒的に無責任だし、聞きようによっては皮肉を言ってるようにも聞こえます。それにもしこれが本音(の全部)だとしたら、別に無理して撤退を就任式前に完了させる必要はないと思うんですよね。アメリカには、撤退の確たる見通しさえ示していればいいわけで。と考えると、ようわからんなぁと思うわけです。
 
そもそも、今回の紛争、イスラエルとしては「Bushが大統領の座にある間」を狙っていた、という噂がいくつかのメディアで報じられています。そうやって考えていくと、Obama氏は表向き、沈黙を守っていますが、実は水面下でイスラエルにプレッシャーをかけているんじゃないかなぁという気もしたり。。 一方では、「ならず者国家」の一員であるはずのSyriaの大統領が、「米国と協力関係を築く用意がある」と発言したなんて報道もありますしね。

Obama新大統領の誕生から、そんなに日の経たない間に、中東の外交地図が大きく塗り替わるようなニュースがあるんじゃないかと、希望半分(半分以上、かな…)で思っております。
Maxwell School, Syracuse, Jan 19, 19:15

Go out to Shop

今日は日本人だけでお買いもの。MPA同級生のYさんと、交換留学で1月はじめに来たばかりのEさんと、3人で郊外のアウトレットモールへ。

「いくらでも土地余ってんねんから、何もこんな辺鄙なとこに作らんかてええやないの…」と言いたくなるような場所に、そのモールはありました。

ぽつーん。

周りは何もなし。一面の銀世界。。。Yさん曰く、その辺はいちおう牧場らしく。夏に来た時は、牛さんがたくさんいたそうな…。

行き帰りの道すがらは、僕とYさんのおっさん(?)二人組で、Syracuse初心者のEさんに、Syracuseがいかに素晴らしい町か(ただし、雪が融ければ!!)という話を延々レクチャー。少しは役に立ったかなぁ…。逆効果でなければいいんですけど。


話は変わりますが、ルームメイトが、青山テルマとやらにはまっています。正月、一時帰国したときに香港で流行っていたらしく…。「日本でも流行ってるだろ?」と聞くので「そもそも、その青山某とやらを知らん」と答えたら、「それはお前が若くないからだ」と、23歳に言われました。。。。それが昨日。

今日、ルームメイトが、「これなら知ってるだろ。香港でも流行った、ちょっと古めの日本の曲だから」と言ってyoutubeのURLを送ってきた曲は、中村雅俊。冗談とか悪戯とかじゃなく、本気で「これなら知ってるだろ」と思われてるところが痛い…。こらこら少年、お兄さんは、君と10年も20年も年離れてるわけじゃないんだよ。(だいたいお前の普段の態度は、そんな年上の人間に対するもんじゃないだろが。)

というわけで、「これが僕のfavoriteだ」と言って、ハイスタの"Stay Gold"@ライブ映像を送っておきました。聴いてくれたかなぁ…?? 青山テルマより、だいぶ若そう(≒バカそう)でしょ。

珍しく音楽の話をしたついでにもうひとネタ。くるりが去年の秋に出した『京都の大学生』という曲に、遅まきながらはまっています。マキシシングル『さよならリグレット』の二曲目に収録。歌詞の世界が、いかにも左京区な感じで、元左京区民としてはたまりません。歌の最後に「206番」(=市バス206番系統。京都駅から祇園、百万遍を経由して北大路まで行きます。いつもアホみたいに混んでます)が出てくるのもグッときますね。

京都(てか左京?)に住んだことのある人にしかわからんネタですいませんでした。明日は真面目にお勉強します。
my home, Syracuse, Jan 18, 26:17

Sunday, January 18, 2009

Inaugural Train Tour

インターネットのブラウザを、Chromeに変更。IEが頻繁にふて寝するので、愛想を尽かしてやりました(苦笑) Chromeも前からちょろちょろ使っていたので、特に驚きや感動はありませんが、今のところ、まったく問題なく使えています(当り前か)。でも、こうやって、生活がどんどんGoogleに侵されていくんですね。なんていいつつ、そもそもこのblogがpowered by Googleなんですけど(笑)
 
今朝、Skypeで奥さんと電話してたときのこと。「ヨセミテ行きたいね」という話が、いつの間にやら「そろそろまた寄席見てみたいね」という話に(うちの夫婦の会話は、だいたいいつもこんな調子です)。というわけで今日の午前中は、日本から持ってきた桂枝雀のDVDを観てました。
  
今日観たのは『くしゃみ講釈』という演目。町内で人気の講釈師に、ふとしたことで、恋路の邪魔をされた男が、友人と一緒に講釈師への復讐を企てる。講釈小屋で胡椒を燻して、講釈の邪魔をしてやろうと算段をつける二人。胡椒が手に入らず、唐辛子で代用するが、効果はてきめん。くしゃみが止まらなくなった講釈師は、ついにその日の講釈を途中で切り上げることに…。とまぁ、こんな感じで、非常に単純なストーリーなんですが、講釈師が度重なるくしゃみに見舞われるシーンの枝雀さんが、最高。おもろすぎ!! パソコンの前で、一人、大爆笑してしまいました。この方の落語、いっぺんでええから、生で観たかったなぁ…。

話はガラッと変わりますが、3日後に迫ったInauguration(大統領就任式)に向けて、こちらでは日に日に盛り上がってきています。もっとも、引き続き、"ハドソン川の奇跡"に盛り上がってる節もありますが。今日は、Obama夫妻(途中からBaiden夫妻も)がPhiladelphiaから鉄道に乗ってD.C.入り。聞くところによると、この企画、同じく鉄道でD.C.入りしたリンカーン大統領の故事にあやかったとのこと。Obamaさん、選挙選のときからそうでしたが、徹底してリンカーンへのオマージュを使っていますね。   
  
Iauguration当日の火曜日は、キャンパス内に設置される大型スクリーンで就任式を観る予定。ちなみに、MPAのメーリングリストには、「Iaugurationの日にD.C.に行くので、同乗者募集」的なメールが、ちらほら飛び交っています。僕なんかは、そんなメールが届くたびに、「行ってどうするんだろ??」と思ってしまいますが、アメリカ人の人たちにとっては、「何ができるかわからんけど、Inaugurationの日にD.C.にいてたい」なんて思考が成り立つほどに、歴史的な瞬間が訪れようとしているということなのかもしれません。


 

my home, Syracuse, Jan 17, 24:28

Saturday, January 17, 2009

Crossing-the-border Game

青木昌彦氏著『私の履歴書 人生越境ゲーム』を完読。日経新聞『私の履歴書』コーナーの連載記事がベースになっているだけあって、さらさらと読める本でした。

「マルクス主義」と「近経」、「アメリカ」と「日本」、「官」と「学」…。題名どおり、いくつもの「境」を「越」えてきた著者 青木昌彦氏。そのうちいくつかの「越境」は、(青木さんほどハードではないにせよ)僕自身も経験してきたものなので、自分の思いにも照らしつつ、ときどき考え込みながら(笑)、総じて楽しく読ませてもらいました。

中でも、僕的に一番面白かった(というか、考えさせられた)のは、経済産業研究所(RIETI)のくだり。1997年、通商産業研究所(RIETIの前身)の所長に迎えられた著者は、同研究所の独法化を陣頭指揮。単なる形式的な独法化に終わらせず、ブルッキングス研究所にも比肩する理想のシンクタンクを創設しようと研究所のメンバーとともに尽力するも、次第に経産省による"官僚的管理"に呑まれるかたちとなり、理想としていたことができなくなって、結果、2004年、任期を2年残して辞任されます。
 
RIETIや経済産業省がどうのこうのということではなく(というかむしろ、RIETIは少なくとも一時期、国立研究所改革の最先端を走っていたはずですし、経済産業省がそれを後押ししていたのも事実)、一般的な問題として、日本の官庁附属研究所(いま、その多くは、RIETI同様、独立行政法人となっていますが)はどうあるべきなのか、より具体的に言えば、何を目指すべきで、そのために親元官庁とはどのような関係を築くべきなのか、ということについていろいろ考えさせられました。
 
著者は、理想の研究所の要件として以下の3点を挙げています(p.197の記載内容を要約)。

1) 研究員は、親元官庁を越えて広く世に求める。
2) 個々の研究員はそれぞれのイニシアティブと責任を持って研究に専念(別途、サポート・スタッフを雇う。)
3) 理事長職と所長職を分離し、研究者の人事権は所長が、所長の人事権は理事長が握る。所長の給料は年俸制。(プロ野球球団のオーナーと監督みたいな関係??)

要は、研究所に自由責任を与えなさいということなんだろうと思います。これって、青木さんがスタンフォードなどで実体験された"American way"なんでしょうけれど、そのせいもあってか、実際、この国では、アカデミックな人たち(特に社会科学分野)が、しっかりと実社会にコミットしていている印象を受けます。特に、経済問題については、政治家(もちろん、大統領も含めて)が、経済学者から公式・非公式のアドバイスをもらうのは当然のこととなっていますし、見ている限り、そういったときの経済学者が、官側から何らかの影響を受けているようにも見えません。彼らは、基本的に自分の頭で考えてモノを言っているように見えます。
  
一概に何でもかんでもアメリカがいいとはいいませんが、アカデミックが自律的で、かつ積極的にコミットするというこの点は、日本と比べてアメリカが大きく秀でている点だと思います。そしてそれは、青木さんも書かれていたように、アカデミックだけの責任ではなく、むしろ「官学の関係」の賜物である、というのも事実。ちょっと議論が大きくなってしまいましたが、この点を踏まえて、日本の国立の研究所が、これからどうあるべきなのか、自分なりにもう少し考えてみたいと思います。 
my home, Syracuse, Jan 16, 26:09

Friday, January 16, 2009

The First Week Was Over

ハドソン川に飛行機が不時着するも、奇跡的に大きなけが人は一人も出ず――というニュースが大きく報じられていますね。ついこの間、NYCに行ってきた(しかもLa Guardia空港を使った)ところなので、僕的にも非常にビックリしたんですが、このニュースを報じた産経新聞の記事に誤りらしきものを発見。
 
「気温はこの冬一番の冷え込みといわれる氷点下にまで下がり」とあるんですが、これってたぶん"sub-zero" の意訳だと思われ(実際、今日のNYCの気温はそんくらいです)、だとすると "sub-zero = 華氏0度以下 = -17.8℃以下" のはず。「氷点下」は、普通に考えれば「摂氏0度以下」ってことですよね?ってことは、誤訳なんじゃないかなぁと思うんですけど、どうでしょう? まぁどっちでもいっか。幸い、大きなケガ人も出なかったわけだし。重箱のスミを箸でつっつくような話でスイマセン。
 
そんなしょうもないこと書いてる暇があったら、自分のことをちゃんとやんなさいって話なんですが、まったく以てそのとおりでございまして、現在、取りかかっているインターンのカバーレターの執筆作業がなかなか進みません。英語力の問題も半分くらいはありますが、残り半分は、むしろ中身(コンテンツ)の問題。書き進めては書きなおし、また書いてみては書きなおす、というのを繰り返しています…。たかだか一枚なんですけどね。いや、一枚だから難しいのかなぁ。去年、大学院の願書を書いてるときにも感じましたが、この手の「自分はこんな人間です。やりたいことはこんな感じです」的な文書を英語で書くのは、なぜだか知りませんが本当に苦手みたいです。はぁ…。くだらない日本語だったら、このblogで毎日のようにダラダラ垂れ流してるんですけどね…。
 
さて、今学期は、最初、授業を5コマ受講する予定でしたが、IRの必修授業をひとつ、drop(受講のキャンセル)することにしたので、金曜日の授業がなくなり、今日をもって、春学期一週目の授業は、無事すべて終了しました。なかなか大変そうではありますが、とりあえず真面目にコツコツやっていけば、たぶん乗りきれそうなメドはつきました。それに、授業内容はどの授業も面白そう(History of IRの今後の展開がやや心配ではありますが…)。前学期の反省を踏まえ(しかも今学期はインターンの準備もやんないと。)、今学期は初めから計画的に頑張ります。
my home, Syracuse, Jan 15, 24:40

Wednesday, January 14, 2009

At Hearing, Chu Tempers Comments on Gas Tax, Coal

夕方、ジムのルームランナー(動く歩道の超速い版をモルモットみたいに逆走するヤツです)の上を、モルモットみたいに走りながら、ipodでラジオを聞いていたときのこと。blog仲間の友人Nの住んでいる街、ミシガン州Ann Arborの男性(自称、高校教師)が電話口に登場。今日のその番組は、「みなさんところの州政府が、どれだけ困窮してるか、お話聞かせて」という企画だったんですが、Ann Arborのその男性曰く、「皆さんもご存じのとおりミシガン州はいまヤバいことになってます。」「今年は例年にもまして雪が多いのに、州政府には金がないのか除雪を十分にやってくれません。」「塩(※ アメリカでは、融雪用に塩をばら撒きます)の撒き方も今年はなんだか中途半端。」 と嘆いておられました。Nさん、大丈夫でしょうか。生きてます??
  
まぁ、Syracuseの街中を見てると、正直、「そこまでやんなくていいんじゃないの?」って思うくらいがっつり除雪してるのも事実なので、ちょっと手を抜くくらいの方がいいかもしれませんけどね。ちなみにただいまの気温マイナス15℃、明日の最低気温(予報)マイナス18度でございます。
  
 
昨日(米国時間で13日)、Obama次期政権でエネルギー省(Department of Energy)長官に就任予定のノーベル賞学者Chu教授が、議会で施政方針演説(?)をしたそうです(Chu先生のプロフィールについてはこちらを)。今朝のWashington Postにその記事が出ていました。内容的には、Obama氏が選挙中に話してた内容とほぼ同じで、特に目新しいものはありませんが、復習がてら(?)に要点を載せておきます。
  • 「もし世界が今と同じように石炭を使い続けるのなら、それはひどい悪夢(a pretty bad dream)だ」 と指摘。
  • ただし同時に、「CCS(carbon capture and storage 炭素隔離・貯蔵技術)の研究を促進し、アメリカが、その豊富に保有する石炭を使い続けられるようにしたい」旨も表明。
  • 「危機的な経済状況を踏まえ、ガソリン税の値上げについては、当面、議論を控える」旨、表明。ただし、高率のガソリン税がCO2の削減に有効であるという考え(=Chu教授の持論)自体は間違っていないと主張。
  • 原子力については、「選択肢の一つ(part of our mix)」であるべきだと主張するとともに、原子力産業の復興のため、融資保証を提供することに賛意を表明。
  • ただし、「核廃棄物の安全な処理方法が見つかるまでは、少数の発電所の新設にとどめたい」旨も併せて表明。
  • offshore drilling(海底油田の掘削。昨秋の選挙の一つの争点になった)については、「総合的なエネルギー政策(a comprehensive energy policy)の一つであるべきではあるが、アメリカの石油埋蔵量は世界の埋蔵量に比べれば微々たるもので、アメリカのエネルギー問題を解決できるほどの量ではない」旨、発言。
  • cap-and-trade制度については、控え目な支持を表明するにとどめた(gave only tepid endorsement)。なお、同制度は、シンプルであればあるほど好ましい、とも。
  • 農業廃棄物などから作る新しいタイプのバイオ燃料の開発に対する賛意を表明。

my home, Syracuse, Jan 14, 24:23

Beware Cold Weather Injuries

大学のヘルスサービスから、「Weather Injuries」の注意喚起メールが送られてきました。ある意味、貴重(?)なので、全文掲載しておきます。

SU Health Services, the SU Safety Department and the SU Environmental Health Office remind all students, faculty and staff that persistent sub-freezing temperatures projected for this week place everyone at risk for frostbite, hypothermia and other cold weather injuries.

While outdoors, it is critically important to avoid wet clothing, particularly wet socks. Other body areas at particular risk include the cheeks, the tip of the nose, the top of the ears and fingers.

Signs of frostbite include dull, whitish skin and impaired sensation. If frostbite occurs, move immediately into a warm environment and remove and replace wet clothing. Do not massage affected areas.

For a fact sheet on cold weather injuries, see
http://emergency.cdc.gov/disasters/winter/pdf/cold_guide.pdf

※ frostbite―凍傷、hypothermia―低体温症

ちなみに、明日からの3日間の最高/最低気温(摂氏)は、水-12°/-18°、木-16°/-23°、金-13°/-22°。心して登校します。うぅぅ・・・。
my home, Syracuse, Jan 13, 25:22

Tuesday, January 13, 2009

Economic Growth Theory

時間あるときに、またゆっくり書こうと思ってますが、去年の12月あたりからにわかに、「技術政策」をちゃんと勉強せねば、という思いがむくむくと頭をもたげてきました。そんなわけで今学期は、"Economics of Science & Technology" を受講しているわけですが、これがなかなか面白い。自習室にこもって明日の予習をしていたら、夜になるまでのめり込んでしまいました(おかげで帰り道はめちゃめちゃ寒かった)。
     
明日の授業で扱うのは、経済成長理論。ハロッド=ドーマーモデルとか、新古典派成長モデルとか、内生的成長モデルとか、そんな感じのヤツです(←この発言自体、既に十分バカっぽいですが)。 僕の場合、経済成長理論なんて、就職試験(?)の勉強してたときに、某予備校(←WじゃなくてLの方)でさらっと教えてもらっただけなので、改めて勉強してみて、ようやくその面白さに気づいた、という状態。考えてもみれば、当時(4回生のとき)は、「経済成長」の意味も、まともには理解してなかった気がします…。
   
  
イスラエルによるガザ侵攻は、相変わらず続いていますが、“陰謀論好き”で知られる(?)国際情勢評論家の田中宇氏が、ご自身のメルマガで、こんなことを書いておられました。本当かどうかはわかりませんが(書いてるご本人にももちろんわからないと思いますが)、ちょっと気になった(というか、「なるほど、こういう見方もあるか」と思った)ので、抜粋して書きとめておきます。

ブッシュ政権への気遣いを口実に、ガザ侵攻について沈黙してきた就任間近のオバマ新大統領に対しても、看過するなという世論の圧力が強まった。

 (中略) 

ガザ戦争についてオバマができる限り沈黙しようと考えてきたのは、ガザ侵攻が長引くほど、イスラエルは世界から悪者とみなされる傾向が強まり、中立的な仲裁がやりやすくなるからかもしれない。イスラエルが米政界を牛耳っている現状から考えると、早い段階で何か表明するとしたら「イスラエル支持」を表明せざるを得なかった。米議会はいまだに強くイスラエルを支持しているが、米国外の世界の世論に引きずられるかたちをとれば、以前よりは中立な態度をとりやすくなっいる。
      (本文はこちらを)

my home, Syracuse, Jan 13, 23:39

Monday, January 12, 2009

Virtue of Fahrenheit

春学期開講!!! というわけで、Syracuse Universityのキャンパスにも、学生たちが戻ってきました。そして思うのは、
やっぱここは金持ち大学だ
ということ。何気なくジムの駐車場に停まったベンツの運転席から、undergraduate(学部学生)風のお姉ちゃんが降りてきたり、頭の上からつま先まで油断も隙もなくオシャレな服で身を包んだ学生さん(←氷点下の世界でこれをやれるのは結構スゴイ)がそこらじゅうを闊歩してたり。まぁ、落ち着いて考えたら、なんでそんなお坊ちゃん・お嬢ちゃんが、こんな雪国までわざわざ学生しにきてんの、っていう謎はあんですけどね(笑) ちなみに僕の通うMaxwell Schoolのオシャレ度は幸か不幸かそこまでではなく、正直、僕的には助かってます (にしても、もうちょっと頑張るべきか??)。
  
春学期初日の今日の授業はIRの"History of International Relations" と、MPAの"Economics of Science & Technology"。"History of -"のBennett先生は、「いかにも歴史学のせんせやなぁ~」という印象の人。実学志向のMPA教授陣とは、明らかに何かが違います。一言で言うと、浮世離れ。思わず学部時代の教授陣 (=変人奇人の巣窟) を思い出してしまいました(笑)。
  
一方、"Econ of S&T"のPopp先生は、評判通りの人のよさそうなお兄さん。授業内容も面白そうだし、板書が致命的に汚いことを除けば、今のところ文句はありません (にしても兄ちゃん、字、汚すぎるで)。
  
ところで、前にもこのblogで書いたかも知れませんが、どうも白人の人たちの体感温度は、僕らのそれとだいぶ違ってるように思えてなりません。基本的にみんな薄着だし、たまに信じられない格好 (氷点下の中、半袖半ズボンで散歩してるとか) の人を見かけたりもします。彼らがこんな極寒の地で普通に生きていられる秘訣はそこにあるんじゃないかと思ってみたりもしているわけですが(ホンマか?)、そういうフィジカルな理由に加えて、精神面から彼らの耐寒性を支えている(と僕が勝手に思っている)のが、華氏(Fahrenheit)度システム。どういうことかというと、僕ら"摂氏の世界"の人間は、「マイナス〇℃」と見ただけで、「おいおい今日も氷点下かよ」と、多少なりとも萎えてしまうわけですが、彼ら"華氏の世界"の人間にしてみれば、それは単に"32度"を下回ったというだけの話。そこに特別な意味はまったくありません。というわけで、彼らは何らの心理的抵抗もなく、氷点下の世界に飛び込めてしまうわけです!! (暴論??)

と思っていたら、今日、気温のことで凹んでいるアメリカ人に遭遇。前にもこのblogにご登場いただいたボストン出身のナイスガイ、C君。ジムの更衣室で立ち話をしていたときのこと。彼曰く、「お前、天気予報見たか?今週の木曜日、―7度になるらしいぞ。マイナスやで、マイナス!こらあかん。寒すぎるわ。」とのこと。
  
なるほど。"華氏の世界"の人たちも、やっぱりマイナスの気温には凹むわけか。逆に僕らからしてみれば、華氏で0度を切ることに特別な意味はないんですけどね。

とは言え、念のため、"華氏-7度"が、摂氏で言うと何度になるのか計算してみましょう。えーっと、えーっと、―7から、32を引いて、それに5/9をかけて…。

え?―20℃???

結局、"摂氏の世界"の住民も凹んでしまったのでありました。(計算せんかったらよかった…。)
my home, Syracuse, Jan 12, 21:19

Sunday, January 11, 2009

Exxon CEO Advocates Emissions Tax

自動車免許の学科講習に行ってきました。NY州の自動車免許を取ろうとしてい(て、その過程でヒドい目に遭ってい)るという話は、年末の記事でも書きましたが、今日はその続編。仮免を取得した“ひよこドライバー”ちゃんは、最終関門である路上試験を受ける前に、5時間の学科講習を受けなければなりません(なぜかこのステップだけ、民間のドライビングスクールで受講)。というわけで、今日は、朝の8時半(早っ!!)から某スクールの提供する学科講習へ。

どんな内容だろうと思いつつ、胸を高鳴らせて(←大ウソ)会場に着いてみると、講師は「本職は高校教師です」という、若干強面のおっさん。最初に、生徒一人一人に、自分の名前と免許にまつわるエピソードをしゃべらせた後(←この辺はいかにもアメリカ的)、問題集とテキストが配られ、その後は、二人ひと組になって、テキストを見ながら、ひたすら問題集を埋めていく(というか、書き写していく)。カツカツカツカツ…。ある程度時間がたったところで、みんなで答え合わせ。「高校教師」が生徒を一人ずつあてていき、一問ずつ、答えを言わせる。これを2サイクル、計5時間。でもって$40.00也は高いんじゃないの!! (ほとんど自習やし~)と思ったが、これを受けないと先に進めないのでやむなく払う…。てかそもそも、今日の講習の内容は、運転技術に関することじゃなくて、交通ルールに関すること。それなら仮免とったときに、すでに筆記試験通ってるんですけど!!!。まぁ、半強制的に何十万円も支払わされる日本の自動車教習所に比べたらまだましか…と思って自分を納得させたのでした。
 
ともあれ、これで、残るステップは路上講習だけになりました。これまたハプニングの臭いがぷんぷん漂ってますが、何が飛び出すか、こうご期待。またそのうちご報告します。
 
さて、少し前の話になりますが、8日のWashington Postに、「世界最大の石油メジャー、エクソン・モービルのCEOが、初めて、炭素税を容認する発言をした」という記事が出ていました。同記事曰く、 
In a speech in Washington, Rex Tillerson said that a tax was a "more direct, a more transparent and a more effective approach" to curtailing greenhouse gases than other plans popular in Congress and with the incoming Obama administration.

(ワシントンでの講演で、Rex Tillersonエクソン・モービル社CEOは、温室効果ガスの排出を削減する上で、(炭素)税は、国会やオバマ次期政権が支持する他のプランよりも、「より直接的、より透明、かつ、より効果的だ」と述べた。)
とのこと。other plans というのは、言わずもがな、排出量取引(キャップアンドトレード)のことですね。また、同氏は、"a cap-and-trade system would be costly, bureaucratic and create a Wall Street of emissions brokers."(キャップアンドトレード制度は、コストがかさみ、官僚的で、ウォール街に「排出権ブローカー」を新たに生み出すだけだ)とも発言したそうです。"bureaucrat"と"Wall Street"――いま、アメリカで嫌われてる人、ワースト1とワースト2でしょうね。どっちがワースト1かは別にして。(苦笑)

この発言に対し、リベラル系シンクタンク the Center for American Progress の研究員は、
"Calling for a carbon tax could be a ploy because few observers believe such a tax is politically feasible in our Congress"

((Tillerson氏が)炭素税の導入を要求したのは、一種の策略かもしれない。なぜなら、政治的に見て、そのような税が国会を通過することが可能であると思っている人はほとんどいないからだ。)
と反論したそうです。ちなみに、この the Center for American Progress というのは、Obama政権移行チームのトップを務めるPodesta氏が作ったシンクタンク。なので、「税の方がいいんじゃん?」と言われて反論するのは当然と言えば当然かもしれません。とはいえ、個人的には、「確かにployかも」という気はしますが…。

発言の真意はともかく、世界最大の石油会社のおっちゃん(しかも、つい2007年には、「どんなCO2排出削減政策にも賛成せぇへんぞ」と公式の場で発言していた)が炭素税の導入を容認する発言をしたのは画期的。それだけ、化石エネ陣営が追い込まれてきたのは確か。とはいえ、(税になるにせよキャップアンドトレードになるにせよ)実際に政策が導入されるまでには、まだまだ険しい道のりが待っているんだろう。

というのが僕の感想。個人的には、このTillerson氏の発言が、キャップアンドトレードに傾いている米政界の流れを、税に引き戻すほどのインパクトは持ち得ないんじゃないかと思っていますが、キャップアンドトレード導入の議論のかく乱する要因にはなるかもしれませんね。「険しい道のり」をどのくらいのスピードで駆け抜けられるか―Obama新政権を評価する、ひとつのポイントになりそうです。
my home, Syracuse, Jan 11, 20:08

Saturday, January 10, 2009

It's a BEAR, not a CAT.

ここのところ、固めの話が続いていたので、今日は柔らかめのニュースを三つほど。
  
日本でも2011年の夏に、地上波アナログTVの放送中止が予定されていますが、来月17日に行われるはずだった、アメリカでの地上波アナログ放送打切りは、「鶴の一声」で、しばらく延期されることになりそうです。ロイターの9日付記事によると、「オバマ次期大統領は、視聴者が十分な準備をできていない可能性があることを理由に、2月17日に予定されているデジタルTV放送への強制的移行を遅らせることを支持した」とのこと。同記事によると、予定通り2月17日にアナログ放送を打ち切った場合、最大で800万世帯がテレビを見れなくなるそうです。
  
世論に訴えかける上で、TVがなくてはならない役割を果たしているこの国のこと(まぁ、この国だけではないですが)、次期大統領が気にする気持ちはよくわかりますが、一ヶ月前に言いだして、ホントに予定を引っくり返せるんもんなですかね?まぁそれにしてもObamaさんの決断力、大したもんだなぁと思います。延期したら延期したで、ものすごい数の人たちに影響出るわけですもんね。
   
次のネタは、まったくもって趣味の世界の話ですが(笑)、昨日付けのgoogle newsによると、昨年、惜しまれながらインスタントカメラの製造を中止したポラロイド社が、現在ラスベガスで開催中の家電ショー(Consumer Electronics Show)に、"デジタル版インスタントカメラ"ともいうべき"PoGo"を出展しているそうです。このカメラ、"Zink"というインク不要のプリント技術(そのかわり専用の紙が必要。感熱紙みたいなもんでしょうか??)を使って、撮ったその場でプリントできるというのが売り。携帯や他のカメラで撮った写真を"PoGo"に転送して打ち出すことも可能だそうです。 

ラジオで聞いた時は「欲しいかも!!!」と思ったんですが、記事をよく読んでみたら、「"ポラロイドカメラ"のデジタル版」というよりは、「"チェキ"のデジタル版」あるいは「写メにプリンタ付けてみました」に近いイメージ。要するに、良くも悪くもおもちゃの延長っていう感じがします。ポ社のインスタントカメラが持っていた、あの独特の「バッッシャン」って感じの撮り心地とは残念ながら無縁みたいです…(←完全に「世界」に没入中♪)。まぁ若い子たちが持てば何かと遊べそうですけどね。というわけで、"PoGo"を買うことはまずなさそうです。奥さん、ご安心してくださいませ。ちなみに、本体価格$199で、アメリカでは3月に発売されるそうです。
 
最後のネタは中国から。web版CNNの今朝の記事によると、北京動物園のオスのパンダ、Gu Gu君が、観光に来ていた男性の両足にかみつき、じん帯に達する大けがを負わせたそうです。当のGu Gu君、観光客に噛みついたのは、今回が3回目とのこと。これに関し、被害男性の治療に当たったお医者さんが、名言(迷言?)を残しています。
Normally, we think the panda is very tender animal, but actually it's a bear, not a cat.
中国語ではパンダのことを「熊猫」と書く(あくまで「猫熊」ではない)ことから、「若干熊っぽいけど、実は猫みたいに穏やかな動物なんやんね」と、パンダを甘く見る観光客が後を絶たないことを踏まえ、記者を通じ広く注意喚起したものと思われますが(ホンマか???)、どう考えても問題の本質はそんなところにはない気が…。観光客を3回も檻の中に入れてしまってることの方が明らかにおかしいですよね。ちなみに、同記事によると、今回の被害者(28歳)は檻の中に落ちた息子のおもちゃを拾おうと檻の中に入って噛まれ、前回の被害者(15歳少年)は「パンダにもっと近づきたいよー。えへ。」と思って檻の中に入って噛まれ、最初の被害者(年齢不明)は酔っ払って檻の中に入り、パンダをhugしようとして噛まれ、さらに逆切れして噛み返した(!!)そうです。うーん、最初のおっさんの時点で柵、強化しとけよ…。
   
ちなみに、wikipediaによると、ジャイアントパンダは、「クマ科に属するか、アライグマ科に属するか、独立したパンダ科(もしくは、ジャイアントパンダ科)に属するかの論争が長年繰り広げられていたが、遺伝子の解析により、クマの近縁であることが明らかになった」とのこと。お医者さん、言ってることはいちおう正しかったわけすね。
 
なんて話をしてたら中国(香港)から、ルームメイトJ君が我が家に帰ってきました。青年実業家になるという話(詳しくはこちらを)はどうなったのか聞いてみたところ、「両親の会社の子会社(厳密には関連会社?)の社長に就任するはずだったが、両親は、その会社の持ち株の一部を既に北京の会社に売却しており、その時点で、筆頭株主の地位は、両親からその北京の会社に移っていた。年末、J君の社長就任を北京の会社に打診してみたところ拒否され、結果、学業に復帰することになった」とのこと。彼の話は長いわりに肝心なところでポイントを外す(!!)ので、どこまで正確かわかりませんが、だいたいこんな感じみたいです。なんでそんなこと香港に帰るまでわからなかったのか、全く以て謎ですが、それを聞くとまた話が長くなりそうだったので、「ふーん、大変だったね」と言っておきました。今日は、来週月曜から復学するべく、大学の事務所を回っておられます。無事、彼の取りたい講座を受講できればいいんですが、受講登録って、この時期からでもできるのかなぁ…。
my home, Syracuse, Jan 10, 20:15

Friday, January 9, 2009

American Contemporary Philosophy

仲正昌樹さんという金沢大の先生の『集中講義!アメリカ現代思想 ―リベラリズムの冒険』という本を読んでみました。毎日、ニュースや授業で見たり聞いたり、自分で使ったりもしている、「リベラル」とか「保守派」とかいう言葉。ただ、その意味を、正確に理解してるかと言われると、自信を持って「yes」とは言えない気持ち悪さが前々からあったので。思想系の本を読むのは、高校の倫理の時間以来でしたが、比較的読みやすく、一部分を除いて、たぶん、ほぼ理解できました(と、本人は勝手に思っています♪)。
  
この本は、副題からも見てとれるように、「リベラリズム」の展開を中心に、アメリカの現代思想を解説していきます。
  
皆さんもご存じのとおり、この国は、ことあるごとに、「Libertyだ」「Freedomだ」と叫び、外国人からしてみれば「ちょっと無理し過ぎとちゃうの」と言いたくなるくらい、「自由」にこだわろうとします。僕も、アメリカに来て以来、端々に見え隠れする、この国の「“自由”至上主義」ぶりに、正直、食傷気味だったんですが(今でも食傷気味ですが)、この本を読んでみて、この国の人たちが、自分たちの国のアイデンティティの一部でもある「自由」という価値観をめぐって、深く真剣な議論を積み重ねてきたんだということは、よくわかりました。
 
実質的な自由を確保するために、政府は「平等」の確保にも注力するべきか、それとも徹底して市場に委ねるべきか、といったリベラリズムリバリタリアニズムの間での議論や、国内での「リベラル」化を推し進めていった結果、80年代に発生した「差異の政治」派(ジェンダーや文化に根ざした「差異」を強調し、各人を西欧近代の同化圧力から解放することを目指す動き)と、建国の理念を中心とする伝統的価値観に回帰しようとする保守派との間での「文化戦争Culture War」と呼ばれる一連の議論――これらの議論が、単にアカデミックに行われたのではなく、現実の社会問題と結びつき、(著者の言葉を借りれば)「アクチュアルな意味を持つ」問題として議論されてきたところに、アメリカ現代思想の奥深さがあるんだろうと思います。
  
この点、日本はまったくかなわないと思いますね。それだけ戦後の日本は恵まれていて、「日本人としてのアイデンティティとは何ぞや??」という問いに対する答えを真剣に考えないといけないような状況に追い込まれなかったからと言ってしまえばそれまでですが。この点に関して、著者が面白い(と言ったら語弊があるかもしれませんが)意見を書いているので、少し長いですが、引用しておきます。

 55年体制の下で、(中略)「アメリカ」との関係をどうするかが、日本における「左/右」の政治的な対立の中心的なテーマになった。
 ただし、「左/右」の対立といっても、「左」の側にはマルクス=レーニン主義を軸とする政治哲学が一応あったのに対して、“右”の側には、それに対応するものがなかったことに留意しておく必要がある。(中略)反共・反ソを共通項にして、“現体制”を取りあえず維持しようとする勢力が集まっただけであり、明確な思想的基軸はなかった。(p.104)

日本のアカデミズムや学生運動において長年にわたって、マルクス主義のようなラディカルな思想が圧倒的な優位を誇ることが可能であったのは、日本の政治・経済・文化に完全に定着しつつある「アメリカ」のプレゼンスをもはやどうすることもできないという暗黙の了解が左派的な人たちにもあったからではないかと見ることもできる。どれだけ暴れても、「アメリカ」との繋がりを現実的に断ち切ることができそうにないので、安心して観念のうえで“ラディカル”になれたということである。(p.261)

さて、今週は、読書三昧+ジム通いという、近年稀に見る(別に近年に限定しなくても超まれ!!)穏やかな一週間を過ごしてきましたが、来週からはいよいよ怒涛の春学期が始まります。しかも、青年実業家になるべく香港に帰国したはずの元ルームメイトJ君が、何の因果か再び舞い戻ってきて(ヤツが継ぐはずだった会社はどうなったんだ???)、明日から、この家に住むことになりました。というわけで、そろそろ、騒々しい日々が戻ってきそうな予感です。

my home, Syracuse, Jan 9, 20:00

Thursday, January 8, 2009

It must snow!!

年初めから始めたことが二つあります。三日坊主で終わったらカッコ悪いので、一週間続けられたら発表しようと思っていたんですが、今日、晴れて一週間が経ちましたので、ここに発表させていただきます。ぱちぱちぱちぱち。

わたくし、今年の元旦から、ジム通い家計簿を始めました。

なんだそんなことかとおっしゃるなかれ。僕という人間をよくご存じの方からすれば、どちらか一つが続いただけでも、ほとんどunbelievableだと思います。でも奇跡って起こるんですね(←自分で言うな)。この一週間、ジムも家計簿も、一日も欠かさずに続けています。続けてみると案外楽しいもので(←言うたった!!!)、間食も激減しましたし(下げシロが大きかっただけという噂も)、外食して無駄遣いをすることもなくなりました(晩御飯は2日から今日まで、一週間連続自炊継続中!!) 。
  
昨日、奥さんに、メールでそのことを報告をしたら、一言、「雪が降るわ」。そのせいだかどうだか知りませんが、今日のSyracuseは大吹雪です。まぁ、そんなに珍しいことではないんですけど。と、言ってたら、東京も今日は雪らしいですね。ひょっとして僕のせい…??
 
授業が始まる来週以降、どれだけ続けられるかが次なる課題ですが、今回こそは本気で続けようと思っています。お腹もお財布も、だいぶヤバいことになってきてるので。えぇ。
  
 
いきなり話は変わりますが、今朝、Obamaさんが、バージニア州の大学で講演を行い、その中で、議会に対し、速やかな景気刺激法案(economic stimulus measures)の可決を訴えました(from NYT)。これまで、「アメリカ大統領は常に一人だけだ(there can only be one president at a time.)」と言って、現在進行中の政治プロセスへの口出しを、敢えて控えていたObama氏ですが、就任式(Innaugration)を12日後に控え、いよいよ本格稼働といったところでしょうか。
 
一方、これまでこのブログではあまり書いてきませんでしたが(正直、何をどう書けばいいのかわからないので。。)、ガザの情勢は、日に日に深刻の度を深めているようです。こんなこと書くのも恐ろしいですが、「玉砕の覚悟を決めたガザ」、「世論を抑えきれないイスラエル」、「ガザを捨て駒にしてイスラエルへの総攻撃を目論むヒズボラ-シリア-イラン枢軸」という構図が見えるような気がして、行く末が本当に心配です。今日報じられたイスラエル北部へのロケット攻撃について、ヒズボラは犯行を否定していますが、うがった見方をすれば、下部組織か何かを使って、イスラエル・アメリカの出方を試しているような気もします。そうならないことを願わずにはいられませんが、このまま悪い方向にことが運べば、就任式の頃には、新大統領が、就任早々、かなり大変な決断を迫られる状況になっている可能性もあるのではないでしょうか。
 
いずれにせよ、Obama政権が、歴史的に見ても稀なほど難しい船出を強いられ、政権発足早々、全力での舵取りを求められることはどうやら間違いなさそうです。
my home, Syracuse, Jan 8, 21:41

Wednesday, January 7, 2009

Outlook for Spring Semester #2

「ですます」調で書くか、「である」調で書くかについて、しばらく迷走しましたが、やっぱり元の「ですます」調に戻すことにしました。「ですます」調でも、十分、書きたいことは書けるということが分かってきたので。まぁ読者の皆様にとっては、「どっちでもいいから好きなようにやってくれ」という話かもしれませんが(笑)
 
さて、本題に入る前に、気になったニュースを一つ。web版Voice of Americaの昨日付けの記事によると、ガソリン価格の下落と景気低迷の影響を受け、先月(2008年12月)のアメリカでのプリウスの月間販売台数が、前年同月比45%下落したそうです。トヨタの発表によると、2007年一年間の北米での販売台数は18万3800台。これを単純に12で割ると月平均1万5000台強。その45%ですから、ざっと言って(ホントはカナダの分を除いたりしないといけませんが)6000~8000台のオーダーで、販売が落ちたということのようです。もちろん、景気低迷の影響もあるんでしょうが、トヨタ全体では37%の売上下落にとどまったそうなので、プリウスについてのそれ以上の落ち込み(単純に引き算すると8%分)は、基本的に、ガソリン価格の下落が原因と見ていいんじゃないかと思います。
 
このニュースを見ながら思ったんですが、各月に販売された全自動車の燃費の平均値を算出して、その値の、ガソリン価格に対する弾力性を弾いてみたら、面白いんじゃないかと。何となく、上方弾力性よりも下方弾力性の方が大きい(=ガソリン価格が上がってもすぐに低燃費車の売上げが伸びるわけではないが、ガソリン価格が下がったら低燃費車の売上げはすぐに落ちる)ような気はしますが。まぁ、もしかしたら、こんなこと、とっくの昔に誰かが計算済みかも知れませんね。
 
 
さて、ここからが本題。昨日の続きで、今日はMPAの2つの授業について、見通しを立ててみようと思います。
 
〇 Quantitative Analysis 【火木午前・Lopoo先生】
秋学期に受講したIntroduction to Statisticsの続編にあたる必修コース。春学期も秋に続いてLopoo先生のコマを受講することにしました。課題は、全7回の宿題+中間テスト+期末テストで、秋学期と同じ。たぶん授業の進め方も同じような感じになるんだろうと思われます。 その点、ちょっと気が楽。Syllabus曰く、「統計ツールの“現実世界”への適用に焦点を当てる」とのこと。ただこなすだけじゃなく、実際に「使える」ようになるために、しっかり勉強しておきたい授業です。
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〇 The Economics of Science and Technology
【月水午後・Popp先生】
今学期受講する唯一の選択科目。5つ目のコースになるので(ほとんどの生徒は、一学期あたり4コースまでに抑えている)、受講しようかどうしようか迷ったのですが、内容がすごく面白そうだったので、チャレンジしてみることにした授業。政府の活動がscienceやR&Dの分野にどのような影響を与えるか、経済学的に理解し、ひいては、政府の科学技術政策が如何にあるべきかを学ぶのがこの授業の主題です。まさに、いま僕が一番興味のあるテーマの一つ!課題は、
  • email discussionへの参加
  • take home quizzes 2本
  • research paper (10~15ページ)
  • group debateへの参加
と、まぁまぁ盛りだくさん。かつ、readingの量は少なくありません。というわけで、この授業も要求量はなかなか大きそうです。
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MPAでは、この2つの授業のほか、4月に行われる3日間の集中講座"Environmental Conflict Management"(一単位)も受講する予定にしています。

というわけで、この二日間、春学期受講予定の授業について一つ一つ見通しを立ててきましたが、これをやっていると、めっきり気が重くなってしまいました(笑) とはいえ、どの授業もそれなりに面白そう。春学期は、秋学期の反省を踏まえ、最初から計画的にコツコツ準備を進めつつ、頑張っていきたいと思います。
my home, Syracuse, Jan 7, 22:19

Tuesday, January 6, 2009

Outlook for Spring Semester #1

今日と明日の2日間は、来週から始まるSpring Semesterで受講する授業について、一つ一つ、見通しを立てていこうと思う。1日目の今日は、International Relations(通称IR)の必修3コースについて。

注) 私、bayaの所属しているカリキュラムは、MPA(Master of Public Administration)とMA-IR(Master of Arts-International Relationship)という2つの修士コースを同時並行で履修しちゃいましょう、という一石二鳥のお買い得コース(ほんまか?)。去年の夏学期・秋学期は、MPAの授業しか受講しなかったのでIRの話はほとんど出てきませんでしたが、次の学期からはIRの話がちょくちょく出てきます。
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〇 Histries, Theories, and International Policies
【Bennett教授・月曜午後】
学期の前半で「基礎」として、International Relationsの理論(Political Realism, Liberalism, Marxism)と、「歴史とはいかに形成され、いかに利用されるものか」を学んだ後、後半では、それらの知識を用いて、6つの"redirections of history"(日本語で言うと「歴史の転換点」?)について考察する。興味はあるのに(←予備校時代は筋金入りの世界史オタク)、これまできちんと学んだことのない(←学部で履修した『西洋史学基礎論』では、半年間、ひたすら「ハーメルンの笛吹き男」についての講義を聞かされ続けた(故に寝続けた))分野なので、syllabusを読んでいると非常に楽しみになってくる。課題はというと、
  • 'literacy test': 学期前半の「基礎」部分の理解を測るための中間テスト。
  • paper 2本+それらについてのpresentation。毎回出されるreading assignmentsの中から、2つ選び、それらについて書くということのようだが、詳細・分量は不明。
  • disucussant(討論参加者?)を2回担当する。こちらも詳細不明。
reading assignmentsは、毎回、100ページ前後と結構多め。内容的には非常に面白そうだが、それなりに負荷の大きな授業になりそう。
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〇 Evaluation of International Programs and Projects
【Mathiason教授・水曜午前】
国際的な機関(国際機関や国際NPO)の活動を、どうやって評価(evaluate)するかを学びましょうというのがこの授業。evaluationの基礎理論の勉強から入って、最終的には、ある国際機関の実在する活動(projects and programs)を実際に評価するところまで行うとのこと。いわゆる「政策評価」の国際組織版、ということでしょうか?政策評価、うーん、大事だよねぇ…(←あんまり乗り気じゃなし。)課題は、
  • final paper: 自分で選んできたprogram 又は projects を評価してpaperにまとめる。
  • 国際プロジェクト評価simulationへの参加(学期の前半):詳細不明
  • 毎週、授業のほかに行われる"interactive part"でのdisucussionに参加する。(マジで!?)
reading assignmentsについては、その都度指示があるようだがそこまで多くはなさそう。とはいえ、これもなかなか大変な授業だ。。
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〇 Culture and World Affairs
【金曜午前・Rubinstein教授】
人類学の先生でもあるRubnstein教授の教えるこの授業。Syllabusによると「文化(culture)が特に重要な意味をなしている、いくつかの国際問題の領域について概観する」とのことだが、いまいち全体像が掴めない。まぁ、受講しているうちに見えてくるだろう。(きっとそのはず…) 課題は、
  • 毎週、その週のreading課題についてのコメントをweb上のforumに投稿する。
  • 750字程度のニュース分析記事を書く。
  • final paper(4,000字):「現在起こっている問題・紛争についての分析」
  • case briefing: final paperの内容について15分間でbriefing

と、こちらもかなり盛りだくさん。毎週のforum投稿が明らかに大変そう…。reading assignmentが毎週50ページ前後と、やや少なめなのが救い??
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というわけで、IRの3つの授業を見ただけでもかなりしんどそうなことがわかってきました。正直、先が思いやられます。このブログの更新も、これまでほど頻繁にはできなくなるかもしれませんが、ご容赦を。明日は、MPAの授業について、概観します。

my home, Syracuse, Jan 6, 22:27

Back to Basics

夕食を食べ、ちょっと休憩…と思ってソファに座って、気がついたら朝の4時になっていた。おかしいなぁ…。
 
冬学期の授業(実は1月2日から始まっている)は、結局、受講しないことにしたので、あと一週間は引き続き冬休み。のらくらのらくら。
 
昨日は、春学期に受講するBennett先生の"Histories, Theories, and International Policies"の予習に着手。syllabusに"Read this first"(何はともあれこれ読んで来い)と指示のあったChristina Romerの"The Nation in Depression"を読む。著者のRomerさんは、Obama政権で大統領経済諮問委員会委員長に就任することが内定しているおばちゃん。だからこその"Read this first"なんだろう。

論文の中身は、1929年の大恐慌(the Great Depression)の発生から回復に至る経緯を、アメリカに関して分析したもの。20ページ弱のそんなに長くはない論文だが、読み始めると大きな問題が…。

マクロ経済学の基礎がアタマからすっぽり抜けている。。。

うすうす(濃ゆ濃ゆ??)そんな予感はしていたものの、ここまですっぽり抜けていようとは。こんなところで発表するのも恥ずかしいが、「IS曲線って、何と何の均衡でしたっけ??」というレベル。時間もあることなので、Romerの論文はいったん脇に置いて、マクロ経済学の基本の「き」(IS-LM分析~総需要・総供給分析)からおさらいすることに。

ググってみると、笹山茂さんという熊本学園大学の教授の、非常によくまとまった講義ノートがヒット。このページのお世話になりつつ、昨日はほぼ一日、基本マクロのお勉強に費やしたのでした。

Romerの論文の中身はというと、「アメリカにおける1929年の大恐慌は、株価高騰(バブルの発生)→FRBによる金利引上げ→株価暴落→先行き不安からの消費減退→金融危機による不況の深刻化→ルーズベルト政権による通貨供給量の大幅拡大→景気回復へ といった経緯をたどった」、「恐慌は外国由来のものではなく、アメリカの内生的な原因によるものであった」といった感じで、わりと普通。

ともあれ、マクロをおさらいするいい機会であった。
my home, Syracuse, Jan. 6, 9:07

Sunday, January 4, 2009

Great Collapse of American Finance

今日、Syracuseで、また発砲事件があった。しかも2件。方角は違うが、現場は、両方とも、我が家から直線距離で1.5kmくらいのところ。一件では、おじさんが自宅の前で撃たれ、もう一件では、朝食中の家族4人が、上がりこんできた犯人に撃たれたらしい。年明け早々、なんだか物騒だ。やだなぁ…。

今日は、奥さんが日本から持ってきてくれた3冊のうちの一冊を読み終えた。水野和夫氏著『金融大崩壊 -「アメリカ金融帝国」の終焉-』(NHK出版生活人新書)。(今日の書き込みのタイトルは、いちおう、この本の名前の英訳(のつもり)です。)去年の12月10日に発行されたばかりの本だが、いろんなところで取り上げられているだけあって、なかなかわかりやすい。急いで書いたがゆえの(?)粗さも多少、目につくが(特に最終章~あとがきは、若干、駆け足過ぎる感あり)、現在進行中の歴史の大転換をお手軽に理解できるという意味では、十分に一読の価値ありだと思う。
 
グリーンスパンは、今回の金融危機を「100年に1度起こるかどうかの深刻な金融危機だ」と言ったが、著者は、「16世紀の資本主義誕生以来の最大の危機が訪れている」(p.37)という。著者の言葉を借りれば、近代資本主義=工業化であり、その仕組みのもとで厚みのある中産階級を生み出してきたのが「近代国家」。その構図の下では、資本・国家・国民の「三位一体」が成り立っていた(=工業化の進展は三者のすべてに利益をもたらした)が、「資本が国家と国民に対して離縁状を叩きつけ」、400年来のシステムが瓦解したのが今回の金融危機の本質だという。
 
僕自身、金融については学部レベルのことしかわからないズブの素人だが、たまにこういう本を読むと、金融を理解しておくことの大切さを感じる。金融の視点から世の中を眺めることは、鳥の視点から社会を考察するようなものだと思う。地面から見えるものだけを情報源に考えていたのでは決して察知できない世の中の大きな動きを、鳥瞰図(=金融)を見ながらであれば知ることができる。
 
著者の主張の中で目にとまったものが二つある。一つは、「先進国が積極財政に転じても、期待した通りの効果は得られないと思います」(p.208)というもの。その理由について、著者は、独自の言葉を用いながら、「先進国では、いまでも「大きな物語」が消滅したままだからです」と説明している。もう少し専門的な言葉で言い換えれば、「現下の不況は、短期的な需給ギャップ(需要の不足)が原因なのではない。自然成長率が低い水準にとどまっていることこそが、本当の原因だ」ということが言いたかったんじゃないだろうか。つまり、今回の不況に対しては、ケインズ的な「ばらまき」をやっても意味がなく、イノベーションを起こして、本質的な成長力を高めないと解決策にはならないということだと思う。
 
もう一つは、「今回の金融危機で国家と国民は傷みましたが、しかし、資本は本当に傷んだわけではありません。その資本はこれからどこへ投資されるのか、その相手を探そうとしている段階にあるといえます。」(p.150)というもの。著者曰く、95年以降に増えた世界の金融資産のうち、金融危機による損失分を除いても100兆ドル(約1京円)がいまだ世界に残っているという。これらのお金が向かう先(投資先)の候補として、著者は、①BRICsなどの高発展地域、②脱化石エネルギーへの投資 の二つを挙げている。②について、著者の記述を抜き書きすると、
脱化石エネルギーへの転換が行われないと、30億人の人々が中産階級になれないからです。石油に依存したまま、これまでの勢いで新興国経済が拡大していくことは、環境の制約から困難なのです。
との由。この記述、半分当たっているが、半分当たっていない。なぜなら、「環境の制約」を「経済活動の制約」に変換する制度的インフラが未だ整っていないから。つまり、今の世の中では、実際には「環境の制約」を超過していたとしても、そのことが直接、個々の主体の経済活動を制約する要因とはならない。したがって、一定のタイムラグを置いたのち、「制約」を超えた分の環境負荷が「人類への脅威」となって跳ね返ってくるまでの間、30億人の人々(=BRICsの人口)は石油に依存したまま、これまでの勢いで経済拡大を続けることができる。

逆に言えば、制度的インフラ(=温室効果ガスの排出による外部不経済を内部化するためのシステム)が整いさえすれば、脱化石エネルギーに向けた研究・開発に投資するための資本は、黙っていても湧いてくる(どころか、資本家たちが、効率的な投資先を探しあぐねている状態)ということだ。

そう考えると、いま環境保護派が手を組むべき相手は資本家なのかもしれない。うーん、やっぱり金融って、大事そう。もっと勉強しよっ。
my home, Syracuse, Jan 4, 23:34

Saturday, January 3, 2009

Miami is Spanish World !!

旅行中に発見したことをいくつか。

まず一番驚いたのは、Florida、特にMiamiは、想像していた以上にスペイン語が幅を利かせているということ。オフィス街や高級住宅地がどうなのかはわからないが、空港、タクシー、レンタカー屋、Miami Beachといった、普通に観光客が利用する場所をうろついている限りでは、スペイン語を聞くことの方が圧倒的に多い。まともに英語を話せない人も多数(まったく人のことは言えないけど)。というわけで感覚的にはほとんどガイコク。

そんなMiamiは、とにかくだだっ広い。それでいて市内電車は京都よりもはるかに貧弱なので、車がないと何にも始まらない。市内を走る幹線道路は片側4~5車線と巨大。車で走っていると気持ちいいが、とても歩いて渡れるシロモノではない。というか、(ビーチ地区を除いて)街中を人が歩きまわることは、想定されていないんだと思う。アメリカに住み始めたときも自動車依存度の高さにカルチャーショックを受けたが、Miamiを見て、改めて驚く。

一方で、おもしろい発見も。Everglades国立公園の中にあるChokoloskeeという集落(そこから出ているカヌーツアーに参加した)では、住民たちが、ゴルフ場のカート(たぶん電動)を日常の足に使っていた。もちろん、集落の外に出るとき用に、普通の車も持っているんだろうけれど、村の中を行き来するには、カートの方が、小回りが利いて便利なんだと思う。素人考えだが、もしかすると、都会よりもこういった田舎の方が電気自動車の初期的な普及に向いているのではないだろうか。もちろん、そのモデルをそっくりそのまま都会に持ち込むことはできないけれど、実地経験を積んだり、電気自動車関連企業が資本力をつけたりする意味では、まずは田舎で普及させみる、という戦略もありのような気がする。環〇省さん、いかが??

昨日の記事で、Key Westには、シニアワーカーがいっぱい、という話を書いたが、Disney Worldでも元気なシニア(50~60代くらい?)の方々がたくさん働いておられた。皆さん、まったく違和感なくあの「世界」に溶け込んでいる(そして、楽しんでいる。)。日本だとこうはいかないだろうなぁと思っていたら、「だってディズニーランドって半分はアメリカの歴史を紹介してるわけやん」と奥さん。確かに。Disney Worldがフロリダにあるということも大きいんだろう。アメリカ人は故郷を離れることにあまり抵抗がないらしいので、たぶん、リタイアした人たちが悠々自適(+楽しい仕事)を求めてフロリダに押し寄せているんだと思う。

アメリカに住まれたことのある人ならご存知だと思うが、アメリカでは、12月25日を過ぎてもクリスマスの飾りは片付けない。片付けるのは、Holiday Seasonの終わる元旦あたり。というわけで、元旦の朝にNYCを散歩していたら、無残にも路上に捨てられるツリーたちを多数目撃。こっちは、ツリーに生木を使うことが多いので、毎年、Holiday Seasonが終わったら、バイバイということになってしまうらしい。儚いなぁと思っていたら、アメリカ人もやっぱり同じことを考えるらしく、「ツリーの無料リサイクル」、なんてニュースがテレビで流れていた。半分は捨てる人の自己満足だと思うが、悪くないニュースだと思う。



my home, Syracuse, Jan 3, 9:14

Friday, January 2, 2009

New Year Has Come

あけましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

昨日、11日間の新婚旅行から帰ってきました。クリスマスのNYCを3日間観光した後、南国Floridaへ。OrlandoのDisney Worldではネズミたちとたわむれ(妻はどちらかというと、ネズミより黄色いクマさんに夢中でしたが)、その後、Overseas Highwayを一路、南に下ってKey Westへ。アメリカ最南端の島で一泊したあと、Miamiに戻り、Everglades国立公園をカヌーに乗って満喫した後は、大晦日のNYCに戻り、寒空の下、カウントダウンに参加してきました。

<フロリダでのドライブルート>

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NYCもかっこよかったし、Evegladesの大湿原も雄大ですごくよかったんですが、なんといっても最高だったのはKey West。ビーチだけでなく、町も本当にいい雰囲気で、できることなら一週間でも二週間でもいたいと思える所でした。リタイアしてアメリカ本土から越してきたと思われるシニアなみなさんが、カフェやレストランで、溌溂と働いていらっしゃったのも印象的。「いつかこんなところでうどん屋を開きたいね」なんてアホな会話を夫婦でしながら、南の島での2日間を満喫してきました(笑)

JFK空港から日本へと飛び立つ妻を見送った後、僕は再び、雪深いSyracuseの街へ。積雪は思っていたほどではありませんでしたが、天気予報によると、次の寒波があと数時間でやってきて、明日の朝までに9インチ(22cm)の雪を積もらせるとのこと。いきなり現実に引き戻された感じですが、とはいえ、まだまだ学生をさせてもらえている身。今年一年は、まるまる自己投資に費やせるわけで、つぎ、妻に会うときには、「一段と成長したね」と思ってもらえるように、一日一日を大切に過ごしていきたいと思っています。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。残りあとわずかですが、皆様も素敵な冬休みをお過ごしください。


my home, Syracuse, Jan 2, 2009, 15:59