Sunday, January 4, 2009

Great Collapse of American Finance

今日、Syracuseで、また発砲事件があった。しかも2件。方角は違うが、現場は、両方とも、我が家から直線距離で1.5kmくらいのところ。一件では、おじさんが自宅の前で撃たれ、もう一件では、朝食中の家族4人が、上がりこんできた犯人に撃たれたらしい。年明け早々、なんだか物騒だ。やだなぁ…。

今日は、奥さんが日本から持ってきてくれた3冊のうちの一冊を読み終えた。水野和夫氏著『金融大崩壊 -「アメリカ金融帝国」の終焉-』(NHK出版生活人新書)。(今日の書き込みのタイトルは、いちおう、この本の名前の英訳(のつもり)です。)去年の12月10日に発行されたばかりの本だが、いろんなところで取り上げられているだけあって、なかなかわかりやすい。急いで書いたがゆえの(?)粗さも多少、目につくが(特に最終章~あとがきは、若干、駆け足過ぎる感あり)、現在進行中の歴史の大転換をお手軽に理解できるという意味では、十分に一読の価値ありだと思う。
 
グリーンスパンは、今回の金融危機を「100年に1度起こるかどうかの深刻な金融危機だ」と言ったが、著者は、「16世紀の資本主義誕生以来の最大の危機が訪れている」(p.37)という。著者の言葉を借りれば、近代資本主義=工業化であり、その仕組みのもとで厚みのある中産階級を生み出してきたのが「近代国家」。その構図の下では、資本・国家・国民の「三位一体」が成り立っていた(=工業化の進展は三者のすべてに利益をもたらした)が、「資本が国家と国民に対して離縁状を叩きつけ」、400年来のシステムが瓦解したのが今回の金融危機の本質だという。
 
僕自身、金融については学部レベルのことしかわからないズブの素人だが、たまにこういう本を読むと、金融を理解しておくことの大切さを感じる。金融の視点から世の中を眺めることは、鳥の視点から社会を考察するようなものだと思う。地面から見えるものだけを情報源に考えていたのでは決して察知できない世の中の大きな動きを、鳥瞰図(=金融)を見ながらであれば知ることができる。
 
著者の主張の中で目にとまったものが二つある。一つは、「先進国が積極財政に転じても、期待した通りの効果は得られないと思います」(p.208)というもの。その理由について、著者は、独自の言葉を用いながら、「先進国では、いまでも「大きな物語」が消滅したままだからです」と説明している。もう少し専門的な言葉で言い換えれば、「現下の不況は、短期的な需給ギャップ(需要の不足)が原因なのではない。自然成長率が低い水準にとどまっていることこそが、本当の原因だ」ということが言いたかったんじゃないだろうか。つまり、今回の不況に対しては、ケインズ的な「ばらまき」をやっても意味がなく、イノベーションを起こして、本質的な成長力を高めないと解決策にはならないということだと思う。
 
もう一つは、「今回の金融危機で国家と国民は傷みましたが、しかし、資本は本当に傷んだわけではありません。その資本はこれからどこへ投資されるのか、その相手を探そうとしている段階にあるといえます。」(p.150)というもの。著者曰く、95年以降に増えた世界の金融資産のうち、金融危機による損失分を除いても100兆ドル(約1京円)がいまだ世界に残っているという。これらのお金が向かう先(投資先)の候補として、著者は、①BRICsなどの高発展地域、②脱化石エネルギーへの投資 の二つを挙げている。②について、著者の記述を抜き書きすると、
脱化石エネルギーへの転換が行われないと、30億人の人々が中産階級になれないからです。石油に依存したまま、これまでの勢いで新興国経済が拡大していくことは、環境の制約から困難なのです。
との由。この記述、半分当たっているが、半分当たっていない。なぜなら、「環境の制約」を「経済活動の制約」に変換する制度的インフラが未だ整っていないから。つまり、今の世の中では、実際には「環境の制約」を超過していたとしても、そのことが直接、個々の主体の経済活動を制約する要因とはならない。したがって、一定のタイムラグを置いたのち、「制約」を超えた分の環境負荷が「人類への脅威」となって跳ね返ってくるまでの間、30億人の人々(=BRICsの人口)は石油に依存したまま、これまでの勢いで経済拡大を続けることができる。

逆に言えば、制度的インフラ(=温室効果ガスの排出による外部不経済を内部化するためのシステム)が整いさえすれば、脱化石エネルギーに向けた研究・開発に投資するための資本は、黙っていても湧いてくる(どころか、資本家たちが、効率的な投資先を探しあぐねている状態)ということだ。

そう考えると、いま環境保護派が手を組むべき相手は資本家なのかもしれない。うーん、やっぱり金融って、大事そう。もっと勉強しよっ。
my home, Syracuse, Jan 4, 23:34

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