Wednesday, April 14, 2010

thesis draft #1

うだうだ言っていてもはじまらないので、とにもかくにも、現在手持ちの知識と考察で、論文の骨子を書いてみることにした。ご意見いただければ幸いであります。

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Renewable Portfolio Standard(RPS)政策は、市場メカニズムの中で決定される「最低価格」で以て、再生可能エネルギー(RE)発電の導入を進めようとする制度であり、温室効果ガスの排出削減やenergy securityの観点から、米国内でも多くの州で導入されている。ニューヨーク州は、カリフォルニア、テキサスと並び、RPSによるRE発電導入を最も積極的に進めている州の一つであり、現在は「2015年までに州内消費電力の30%」をRE由来にするとの目標を掲げている。

市場メカニズムに立脚するその方法論から、RPS政策は、同政策の支持者の間で「所定のRE導入目標をもっとも経済的かつ効率的に達成できる方法」と考えられている。しかし、この命題は、政策の対象である商品(=RE発電)が、競争的な市場で取引されているという前提の下でのみ成立するものである。加えて、発電施設がstand-aloneでは機能せず、送電網(grid)に繋ぎ、送電網(transmission)会社から送電サービスの供給を受けてはじめて機能するものであることを考えると、この前提は、送電サービス市場においても満たされていなければならないものである。

送電サービス市場が競争的であるならば、RPS制度の導入で、新設RE発電事業者からの送電サービス需要が増えることにより、より多くの送電サービスが――それに伴って価格も上がるにしても――供給されるようになるはずである。そのためには、送電サービスが、滑らかな供給曲線を持たなければならないが、実際には、送電サービスの供給媒体であるtransmissionは、簡単には増設されにくい特性を有しており、NY州内では、RPSの導入開始(2004年)後はおろか、1980年代半ば以降で見ても、ごく小規模なものを除いて、transmissionの新設・拡張は行われていない。このことから、送電サービスの供給曲線は、滑らかではない右上がりの階段状をしており、より短期的に見れば、右下に頂点のあるカギ形(ある量までは水平、その量に達した時点で垂直)の形状を有していると考えられる。

このような市場において、需要曲線の右上シフトが続けば、あるところまでは、需要に応じた量のサービスが問題なく供給されるが、ある水準(=transmissionの物理的なcapacity)に達した時点(=需要曲線が、供給曲線の屈曲点を通る時点)で、それ以上は供給量が増えず、価格だけが上昇する局面に至る(この局面で積み増される追加的な価格がtransmissionの“congestion charge”(混雑料金)に相当する)。実際のところ、NY州におけるRE発電の主力である風力発電の適地は、電力の消費地(=downstate=NYC& Long Island)から離れたupstate(特に州北部及び西部)に集中しており、従来、発電施設の多くなかったこれらの地域では、既存transmissionの送電容量が限られているため、今のペースでRE発電施設の新規導入が進めば、早晩、transmissionのcongestion問題が深刻化するであろうと予測する向きは少なくない。

送電サービスの供給過少が生じた際、もっとも直接的に懸念されるのは、RE発電事業者が、当初契約通りのRE電力を送電(delivery)できなくなるという事態である。実際、2008年には、transmissionのcongestionが原因で、RPSプログラムに参加するある大規模wind firmがdelivery不足に陥り、RPS プログラム上のdelivery commitmentの下方修正を余儀なくされる事態も発生している。ただし、このような事態は、RE発電事業者の側にも追加的な負担を強いるため、今後、congestionが頻発するようにな(ると予測され)れば、論理的には、congestion chargeがRPSの入札額に織り込まれるようになり、そのことが、RPS入札額の値上がりにつながると予想される(ただし、transmissionのcongestion chargeが、RE発電事業の全事業コスト、ひいては、RPSの入札額にどの程度のインパクトを持つかについては、定量的な情報を得られていない)。

NY州のRPSプログラムでは、ratepayerから消費電力量に応じて徴収されるお金を原資に、NYSERDA(New York State Energy Research and Development Authority)が一括してRE発電電力(厳密には、物理的な電力そのものから切り離された「REで○kWhの電力を発電しました」という権利)を調達する仕組みが取られているので、RPS入札額の値上がりは、①原資不足による目標の未達成、又は②(あくまで目標を達成するための)対ratepayer課金単価の値上げ、のいずれか(或いはそのcombination)という結果を招く。また、将来、①②のうちの、どちらの政策がとられるかわからないという不確実性の存在そのものが、RE発電開発コストを押し上げている可能性もある。

こういった不都合の原因となりうる送電サービス供給量の硬直性は、同市場に見られる諸々の“market failure”要因によって説明できる。(to be continued.)
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頭がオーバーヒートしてきたので、続きは次回にて。
Maxwell School, Syracuse, Apr 14, 19:12

2 comments:

Unknown said...

論文の骨子、楽しく読ませていただきました。

主題を「market failure要因による送電サービス供給量の硬直性」とするのであれば、それならばNY州はどうすればいいのか、という部分が必要になろうかと思います。

例えば、思いつきですが、Cost&Benefit分析、つまり外部性が生じている部分がどの程度か(気温上昇抑制による冷房費の低下etc)をまず推計し、政府等がどの程度送電網構築を支援すればNY州にとって社会的に最も望ましい結果が得られるのかという点を考察するというのも一手かと思います。

髙林 祐也 said...

お返事、遅くなってしまいましたが、コメント、ありがとうございます。
  
発電市場には、「外部性の内部化」の発想が取り入れられていて、それがまさにRPSプログラム、という形で政策化されているわけなんですが、送電市場では、それがまだなされておらず、そのことが、前者政策(=RPSプログラム)の効果を下げてしまっている、というメカニズムの説明に、まずは専念しようかと、思い始めております。

最後まで書いてみたら、思っていたより長かった、というのが正直なところでして、このまま論文にすると、(僕の英語力&構成力では)すかすかの文章になりそうな怖さもありますので、今回は、テーマを絞って、丁寧に書くようにしようかなぁと思っております。