Tuesday, February 10, 2009

What is "management" by governments

Exxonが炭素税支持を表明――という話は、先月11日のエントリーでも書きましたが、Exxonの上席副社長(a senior vice president)がよくわからないことを言っています。CNN Money.comより。Michael Dolan副社長 曰く、
  • 政府は、微細管理したいという衝動に抗わなければならない。(Michael Dolan, a senior vice president at Exxon, said that governments need to "resist the urge to micromanage.")
  • キャップアンドトレードだと、価格が変動する(With cap and trade, "the cost floats," Dolan said)
  • 炭素税の税率は政治家が決めればいい。(When asked how much the tax should be, Dolan said that should be left up to the policy makers.)

とのこと。

原理的には、キャップアンドトレードは「市場にお任せ」の制度。政府による"micromanage"の対極にあります。とはいえ、あくまでそれは「原理」の上でのお話であって、いざ実際に導入とするとなると、最初の「キャップ」の分配や、排出量の算定のところで、いろいろと面倒くさい話があるのも事実。そこを突くならわかりますが、「キャップアンドトレード=governments' micromanage」という漠然とした理解は、ズレていると言わざるを得ません。

また、基本的に、「政府は市場に介入するな」という発想をお持ちのようですし、そのこと自体、別に悪いことでも何でもないんですが、だとすると、「価格が変動する」のは市場経済の道理。価格が変動しつつもそのプロセスの中で、「適正な資源配分」が実現するというのがミクロ経済の基本原理のはずです。更には、「炭素税の税率は政治家が決めればいい」とも。その方が、政府の介入レベルはよっぽど強いと思うんですけど…。

まぁ揚げ足を取ってても仕方ないんですが、マジメな話、彼らが税を推す真意がどこにあるのかは気になる所。「議論をかく乱して(キャップアンドトレードと炭素税の)共倒れを狙っている」という噂にもそれなりに信ぴょう性はあると思いますが、単にそれだけで発言しているとも思えず、「最悪、導入されるとしても炭素税の方がまし」という算段がかれらにはあるんだろうなぁと思います。うーん、なんなんだろ??

ちなみに、BPのChief Executiveは、同じ会議の席上で、キャップアンドトレードへの支持を表明しています。経済界にも広がってきたキャップアンドトレードをめぐる議論の今後に注目です。(実はBPの発言も業界ぐるみのかく乱作戦の一環だったりして??)

Maxwell School, Syracuse, Feb 10, 21:14

【追記】NY timesの11日付の記事に、この会議の話がより詳しく載っています。その記事で紹介されていた、Royal Dutch Shell のchief executiveの発言は以下の通り。これが正論だと思うんですけど…。

A cap-and-trade system establishes a clear environmental goal by setting an upper limit on emissions, something a carbon tax does not necessarily do, he said. Meanwhile, the possibility of trading carbon permits provides companies with an economic incentive to invest in technologies that reduce emissions. He said that a cap-and-trade system had worked well in the United States for cutting the emissions that cause acid rain.

But he added that higher fuel taxes largely explain why European vehicles are far more efficient than American ones.

“Both can work, and even coexist,” he said. “They both price CO2,” or carbon dioxide.

4 comments:

Anonymous said...

税支持の意見には、共倒れ狙いや、高税率は導入困難という思惑もあるだろうけど、税率が一定というのが重要なポイントなんだと思う。
理論上、企業は限界削減費用が税率や排出枠価格と一致するように削減投資を行うことになって、税率と排出枠価格は同じ意味を持つわけだけど、実際の排出枠価格は、年間で倍になったり半分になったりと値動きが大きすぎて、投資水準を示すシグナルとしての役割を果たしていないのでは。15ユーロ/tのときと30ユーロ/tのときでは導入可能な削減技術が大きく違うはずで、EU-ETS下の企業が排出枠価格を横目に見ながら削減投資をしているとは思えない。
というわけで、税(変動なし)の方が企業が安心して削減投資ができる、ということで一定の支持があるのだと思う。

Anonymous said...

連続投稿、すみません。
個人的にはエクソンの「キャップアンドトレード=governments' micromanage」という理解が非常にしっくりきます。

キャップの配分が恐ろしく手間のかかる作業で、だからこそ役所の裁量が働きやすい。(ついでに、排出量の検証機関やらなんやらと関連組織がポコポコ生まれることも間違いない。)
だからオークションなんだいう話もあるけど、山口光恒氏がよく言うように、それって税率が変動する環境税。
企業の経営戦略上、為替みたいに先の読めない(仮定の数字を置かざるを得ない)変動要因があるわけだけど、価格の読めない排出枠も加わわるってのはマジ勘弁、ということなんではないだろうか。

髙林 祐也 said...

Exxonのおっさんが何考えてるかは別にして(笑)、一般的な税支持派の理由は、多分そこなんだろうね。基本は炭素税とした上で、現物(CERs)での納税も認める、なんて制度ができないもんかと最近、夢想しています。

髙林 祐也 said...

2つ目の投稿について。確かに、Exxonのおっさんの言ってる二つのこと(①政府に微細管理されるのは嫌だ、②これ以上の変動リスクを抱えるのは嫌だ)はそれぞれ道理の立つ話で、かつ、その二つはconsistentだと思います。ただ、その二つは、consistentではあるけども、まったく別々の話。それを一つの文脈で語って、かつ、その両方の原因を「大きな政府」に帰させようとするExxonのロジック(1月の発言ではその意図がよりはっきり出ている)にはトリックがあると思います。二つ目の話(=変動リスク)は言うまでもなく、「政府」ではなくて「市場」に内在する問題なので。