Sunday, February 15, 2009

China Is at the Heart of Clinton's First Trip

今日(15日)、クリントン国務長官が、就任後初の外遊となる東アジア歴訪に旅立ちます。今朝のWashington post紙も書いている通り、今回の歴訪の最重要目的地は中国(もちろん日本ではありません)。その中国との間でのメインの議題は、「北朝鮮問題」と「気候変動問題」になるだろうというのが大方のメディアの見方のようです。(下は、金曜日に行われたクリントン国務長官の会見の模様)



アメリカと中国が、気候変動分野での協力態勢に入りつつあるようだ、という話は2月6日のエントリーでも書きましたが、そのエントリーで紹介した"A Roadmap for US-China Cooperation on Energy and Climate Change"のcontributorの一人であるTodd Stern氏(京都議定書採択時の気候変動問題担当大統領補佐官)が、気候変動問題特使として今回の外遊に同行するとのこと。また、たまたまかもしれませんが(そんなわけはないか)、金曜日のクリントン会見が行われたのは、DCの国務省内ではなく、NYにあるAsia Society(←上記"Roadmap"の共同事務局の一つ)のオフィス。このあたりの状況証拠からしても、今回の外遊では、気候変動分野での米中協力に関する相当強いメッセージが打ち出されるんじゃないかという気がします。

12日付の英紙Guardian Weeklyの記事によると、先週、Brookings研究所でのフォーラムで、周文重在DC中国大使は、"Co-operation between our two countries... will enable China to respond to energy and climate change issues more effectively while at the same time offering enormous business opportunities and considerable return to American investors" と語ったとのこと。
 
この発言を見ると、アメリカ側が作成した"Roadmap"については、中国側も好感触を抱いており(或いは既に内々合意済み??)、単なるアメリカ側の青写真ではなさそうです。ここで注目したいのは、周大使の"offering enormous business opportunities and considerable return to American investors"(気候変動問題分野での米中協力は、大きなビジネスチャンスとアメリカ人投資家への多大なリターンをもたらす)との発言。
 
僕が理解する限り、新エネ・省エネ投資は、それ自体では、今の市場で評価されうる形での富は産み出しません。ゼロというのは言い過ぎかもしれませんが、投資効率が他の投資機会に比べて悪いということは少なくとも言えるでしょう(そうでなければ、政府が後押ししなくても民間ベースでの自発的な投資がバンバン行われているはずです)。その投資効率の差分を誰かが補わないといけないわけですが、中国又は米国政府が単純に国庫で賄うとも思えず、となると、一番現実味のある方法は、投資プロジェクトをCDM化した上で、そのCERsの売却益で補うという方法ではないかと。そうなると最終的な出資者は、carbon-intensiveな先進国で、carbon-intensiveな御商売をやっておられる方々ということになるわけですが、その代表格は、アメリカの石油産業、石炭産業、電力業界。一見、アメリカが痛むようにも見えますが、ハイテク産業や新エネ・省エネ産業を有力な支持母体とするObama政権(←by NYtimes)にしてみれば、「政敵」の力を削ぐことができるので、それはそれでOK…??
 
こう考えると、Obama政権は、いろんな条件を付けるにせよ、ポスト京都の議定書の成立に向けて、積極的にcommitするだろうし、「中国での投資機会拡大」という、米経済界へのニンジンをぶら下げてあげることで、議会の支持も得られるんじゃないかと思うんですが… knjさん、どうでしょう?希望的観測入り過ぎ???
my home, Syracuse, Feb 15, 10:11

2 comments:

Anonymous said...

おもしろいですねえ。まだそのレポートを読んでないので(汗)正確なことは言えないのですが、ありそうな話かと。
中国のCDMは、むしろ某隣国が最も手をつけないといけないところだと思うのですが(IGCCとか、日本では政治的事情で使えない技術を宝の持ち腐れにしている)、その投資機会をアメリカに取られて、某隣国が買うというシナリオになりそうな気がします。ただ「アメリカ政府が資金を出して米中の企業で中国のCO2減らす→CDMをどこかの国が購入してアメリカの企業が受け取る」となると、アメリカの企業にひも付きで受注させる(tiedの契約)ことになりますが、それってできるんですかね?

髙林 祐也 said...

米政府は裏方 (次期約束でのCDMルールの整備とか、中国の投資環境の整備(←カントリーリスクの削減)とか) に徹して、プロジェクト自体は、民間の資金で回そうとしてるんじゃないかなぁ。政府も多少は投資するのかもしれんけど、それはあくまで「呼び水」としてであって。
(ODAではなく)民間ベースで投資するんであれば、どこの企業に発注しても問題ないね。唯一文句付けるとしたらホスト国やけど、そことも今回、クリントンが行って、握ってきちゃうわけやし。
民間のお金で省エネ・新エネ投資するって、一見、philanthropyみたいにも見えるけど、儲けを出せるってこと (つまり、“CDMsの売却益-投資コスト>0”になるってこと) が、一定のリスク水準以下で言えれば、純粋な民間投資案件として成り立つわけやよね?(←非常にざっくりした議論ですが) NYの投資家さんたちにとっても、それってなかなかおいしい話なんじゃないかと。彼らも住宅に代わる投資先を探しあぐねてはるやろうし。