Tuesday, March 3, 2009

Economic Effects Analysis of the Stimulus by CBO

CBOネタが続いて恐縮ですが、CBOの行った景気刺激策(ARRA)の経済効果分析が、3月2日に公表されています。「予測しきれない部分が多い」と断った上で、短期と長期のそれぞれについて、ARRAの効果を分析。ARRAについてのネガティブな評価も率直に書いています。たとえばこんな感じで;

“Most of the budgetary effects of the legislation are estimated to occur over the next fewyears, and as those effects diminish, the short-run impact on the economy will fade.”

“To the extent that people hold their wealth as government bonds rather than in a form that can be used to finance private investment, the increased debt will tend to reduce the stock of productive private capital. In economic parlance, the debt will “crowd out” private investment.”
このレポートが、もし仮にARRAの成立前に出されていたらどうなったか?? 答えは簡単。大勢には何ら影響を与えなかったでしょう。いろんな意見がある中で、最後に決断をするのは政治の役目。今回の景気刺激策について言えば、その「政治」の主導者(=Obama政権と議会民主党の主流派)が、「絶対に成立させる」という決意を早々に固めていたわけですから、多少、CBOが辛口の評点を下したところで、結果は変わらなかったと見るべきでしょう。
  
じゃぁCBOのやったことはムダかというと、僕はムダではないと思う。確かに今回は、CBOの分析結果が政治決定に与えた影響は非常に小さかったですが、「政治」とは距離を置いて「政策」的視点から意見を述べるCBOのような存在は、議会の中と外でのより健全な議論を促進するのに役立っているんじゃないかと思います。たとえば、先日、Obama政権が、財政赤字の削減プランを発表しましたが、その中で使われている景気見通しが甘いという指摘をマスコミや共和党が行っている。その際に比較材料としてよく使われているのがCBOの予測値(←こっちの方が厳しめ)だったりするんですよね。建設的な議論の材料を提示するという意味で、その役割はやはり大きいんじゃないかという気がしています。

確かにCBOは、その高い独立性や、implementation機能を有していないという点で、D.C.の中でもかなり変わった役所であります。が、その「政策」的視点に徹する姿勢には、日本の役所が見習うべきところも多いのではないでしょうか。

役所というものが選挙に依らない存在である以上、まず依って立つべきは論理性であり、また、その論理性から導き出される「政策」である。その点への執着を安易に諦めて、「政治」におもねったり、ポピュリズムに走ったりすることは、自身のレゾンデートルを危うくするものであり、同時に、社会に対する責任の放棄でもある――最近、僕が考えているのはこんなことです。

my home, Syracuse, Mar 3, 27:25

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