Monday, May 10, 2010

Uncomfortable Zone

少し前のことになるが、Lilacさんの5月3日のエントリには、正直、身につまされるものがあった。

MBAに行く意味を高めるためにはどうすればいいかというお題のエントリで、その一発目に書かれてあるのが、「『今の自分を根本的に変える』ような破壊的な自己革新目標」を持てというもの。エントリを読み進めていくと、ご丁寧にも、「割と年いってからMBAに行く人」向けの注意事項まで書かれてある。抜粋させていただくと、
特に30代とか、割と年いってからMBAに行く人は、このことは明確に心に留めておいたほうがいい。年をとると、どんな環境でも、自分が快適と思える逃げ場を作るのがうまくなる。それをやっていたら、破壊的な成長は出来ない。
との由。また、「破壊的な自己革新」を遂げるためには、“常に自分をUncomfortable Zone(つらいと思う状況)に置”かなければダメだとも、同じエントリの中に書かれてある。

どれもこれも耳が痛いお話。というのは、取りも直さず、非常に的を射た指摘だということなのだろう。

振り返ってみるに、僕の留学二年間というのは、ここで言う「破壊的」自己革新とは、ある意味で、対極に位置するものだったように思う。別に、遊んでいたというわけではない。その点だけは、いちおう自信を持って言える。ただ、その努力の仕方が、「破壊的」なものではなく、極めて「連続的」というか、要するに、自分を大きく変える方向にではなく、留学前からの自分の強みをコツコツと延ばしていく方向にだけ向かっていたように思うのだ。

このblogは、良くも悪くも、その最たる例だった。英語でのコミュニケーションがままならない中で、日本語という慣れ親しんだ言語で以て自分の思いを自由に走らせられるこの空間は、僕にとって、“Uncomfortable Zone”ならぬ“Comfortable Zone”の極み。期せずして、こういう空間を持てたおかげで、日々の執筆作業を通し、自分なりに思考を深めて来られたのは事実であるが、その反面、自分の中でのフラストレーションを「上手に」コントロールする術を覚えてしまい、自分の出来ないことに対して真正面からぶつかっていくモチベーションを少なからず宥める効果も持ってしまっていたように思う。まさに、Lilacさんのおっしゃる通り、『年をとると、どんな環境でも、自分が快適と思える逃げ場を作るのがうまくなる』ということの典型例だったのかも知れない。

せめて一年前にこの記事を読んでいたらと思う反面、一年前だったらここまで真剣には受け止めていなかっただろうなという気もする。結局、根底にあるのは、三十云年の時間の中で培われ、固定化されてきた、僕という人間のattitudeだ。本人を御存知の方なら重々ご承知の通り、いろんな物事(自分の中のフラストレーションも含めて)と折り合いをつけることには、それなりに長けているが、内面から湧き出るが如き情熱で以て、riskをどんどんtakeしていくような人間では決してない。そういう人間が、このLilacさんの記事を読んで、何らの言い訳をせずに、素直に反省できるのは、結局、留学期間も終わろうとしているこの時期だからこそなのかも知れない。

このエントリをどう閉じればいいのか、よく分からなくなってきた。たぶん、日を改めて、この先に言うべきこと――たぶん、自分に対して――を見つけ出して、blogにアップするんじゃないかと思う。
Maxwell School, Syracuse, May 10, 18:40

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