Monday, November 10, 2008

The End of Oil

Syracuseに寒さが戻ってきました。今朝の最低気温は―2℃。そんな中、僕はと言えば、朝から両太もも・両ふくらはぎの筋肉痛に苛まれてます(>_<)  
  
今日の"Energy, Environment, and Resource Policy"の授業は、"The End of Oil"(by Paul Roberts)の2回目。この本については、11月3日の記事で、前半部分までの感想を書きました。後半はどうだったかというと、正直、冗長の感否めず。。。第一部(前回感想を書いた部分)でエネルギーをめぐる歴史と現状を書いた後、第二部ではエネルギー産業・エネルギー政策の構造、第三部ではエネルギーの未来について書かれてるんですが、第二部・第三部の内容はわりと当たり前の話が多くて(※ かんきょう屋基準です)、第一部を読んだ時ほどの興奮には至らず。個人的には、産業革命以降のエネルギー争奪戦の歴史を描いた第一部第2章と、今日におけるエネルギー覇権争いを描いた第一部第4章が一番面白かったですね。これから読まれる(かもしれない)方は、ご参考まで。

著者のRobertsさんの主張を簡単にまとめると、こんな感じ。

① このままのペースでいけば石油文明は早晩破たんする(エネルギー安全保障の面でも、地球温暖化の面でも。)。
② 石油文明に代わるオプションはすでにいくつか提示されており、そのうちのいくつかは非常に有力。
③ しかし自由経済に任せていては、脱石油文明社会への移行は自動的には起こらない。
④ かといってアメリカ政府も国際社会も、もろもろの事情により、今だ積極的な政策を打ち出せていない。(そして、論理的に考えれば、今後も容易ではない。)
⑤ むしろ各国政府は、中短期的な化石エネルギーの確保に、より大きな関心を振り向けつつあり、そのことが長期的な代替エネルギーへの挑戦をますます困難にしている。
⑥ より早く動き出せば、我々はより大きな選択の自由を確保することができる。本当ににっちもさっちもいかなくなってから動き出すのではなく、今すぐに動き出すべきだ!!

ざっと読んでいただければお分かりの通り、①~⑤と⑥の間には、あきらかな飛躍があります。あるいは、⑥は良いとして、そのための処方箋が示されていないというか…。

邪推ですが、①~⑤までを緻密な論理で書いてきたRobertsさんは、はたと「う~ん、解ねぇなぁ…」と気づき、とはいえそのまま終わったのではあまりに暗い結末になってしまうので、最後に⑥を乗っけてみた――そんな感じではないかと(苦笑)

⑥の主張は最後の最後に出てくるだけで、それまでは、いかに新エネ社会への移行が難しいかが、くり返しくり返し懇切丁寧に(!)述べられていますので、これを英語で読んでると、お経を聞いてるみたいに(?)、ずしーんと重苦しいものがに心にのしかかってきます。 後半部分、あまり目新しい情報はなかったですが、事態がいかに深刻かということを、頭ではなく心で(!?)感じられたという意味では、成果ありかも。

この著者自身、アメリカ人な人にしては珍しいほどのpessimist。本の最後のセクションでは、正直に"When I began work on this book, it was with a profound sense of pessimism"なんて書いちゃってます。でもこう書くということは、英語表現の常道で、「いろいろ調べてみたら希望が見えてきた」的なpositive展開が続くんだよね、と思いきや、次の展開は"Today, my perspective is far more complex."てな具合。いちおう、黒から灰色にはなったものの、灰色以上にはなれません(笑) ぱっぱらぱーな感じの(失礼!)Friedman氏のoptimismとはだいぶ違います。まぁあれはあれで必要なんでしょうけどね(特に、アメリカ人な人向けには!!)。

授業では、Lambrigtht先生(←実年齢は知りませんが、見た目的にはわりとおじいいちゃんな感じ)が、Obama氏の大統領当選に触れ、「私がこれまで生きてきた中で、一人の人間に、世の中がこれほど熱狂している様子は見たことがない」と言ってました。おじいちゃんなだけに、なかなか重いお言葉。その上で、エネルギーについての社会変革(transformation)を起こすには強力なleadershipが必要→今は本当に貴重なチャンスなんだと。ふむふむ。

そのために、最初の演説でObamaがとるべき戦略は何か。Lambright曰く、「温暖化問題だけを切り離すのではなく、エネルギー安全保障や、経済・失業問題といった他のinterestsとcombineしたかたちで訴えることだ」と。この点、僕もagreeです。

そのObama君、今日はBush君のお招きでWhite Houseに遊びに行ってるそうです。(たぶん、「遊びに」ではない。) お話の中心は当然ながら経済問題のようですが(そういえば、家電量販店売上2位の会社(Circuit City)が、今日倒産しました。僕も買物したことあるお店なので、結構リアルでびっくりしてます)。どんな話をしたのか、今晩、ニュースをチェックするのが楽しみです。
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(以下、本分には納まらなかった雑談的なお話)
- 今日の授業でもそうでしたが、アメリカ人がエネルギー効率改善の話をすると、やたらと「家」の話が出てきます。数字を調べたことはないですが、実際、住んでみて思うのは、確かにアメリカ流のセントラルヒーティングはどう考えても非効率だということ。今後、Obamaさんがエネルギー効率の改善を訴え、同時に、経済が停滞して(←これはまず間違いない)、アメリカ人が本気で省エネを考えるようになれば、日本の家電メーカーにとっては、エアコン販売の大きな商機が訪れるのでは?(こっちでいう「エアコン」は、日本で言うところの「クーラー」で温め機能はついてません。) てか、「ルームエアコンに切り替えればutility代が年間これだけお得+ホッキョクグマもこれだけ喜ぶ」的な広告を打ってけば、今だったらアメリカ人な人たちも反応するのでは??

- この国の天然ガスに対する感覚は日本人からするとかなり遅れています。今だに「導入すべきかどうか」という議論が、授業で普通に行われてるくらい。「日本ではとっくの昔にtake offしてるんですけど…」と言いたくなる。ただ、日本のことを考えると、アメリカにはLNG獲得競争に本格参入してもらわない方が助かるよなと思って、言い淀んでみたり…(笑)

- 有名な話かもしれませんが、アメリカのエネルギー省(Department of Energy。通称DoE)の主要業務は、核兵器の管理と、そこから出てくる核廃棄物の処分。新エネ・省エネ促進業務は、彼らにとって、はじっこのはじっこの業務に過ぎません。というわけで、組織改革して、DoEを本当の意味でのDoEにすべき、といった意見がよく聞かれます。Lambrightも今日言ってました。"Department of Energy Security"に改称すべきとも。

- もうひとつ、Lambrightが言ってたのは、国家安全保障会議(National Security Council)みたいなかたちで、White House内に"Energy & Climate Change Council"を設置すべきという意見。このアイデアも、最近ときどき、耳にします。


Maxwell School, Syracuse, Nov 10, 15:07

4 comments:

Anonymous said...

セントラルヒーティングが非効率というよりも、窓から熱の7割だか8割が逃げているという統計があるそうです。

ということで、おうちの窓を換えるとか、確か屋根も該当すると思われますが、エネルギー効率の良いおうちにするための改装だと、免税だっただろうか、それとも改装のためにお金を借りるなら金利が安いだっただろうか・・・、という政策が走っているはずです。NYだけかもしれないけど。

kobutamanju said...

エネルギー問題は、最近日本でもhotになっていて、話を聞いていると、問題の所在は割とクリアになっていると思うのですが、やはり、具体的な処方箋はどこに?とよく思います。

日本だけでなく、グローバルに考えると、特に今、中東などはすごい都市計画したりしてますが、50年後、どうするんだろう・・・と思ってしまいますね~。

髙林 祐也 said...

「私です」さん>
うちの先輩(Boston在住)のアパートの窓が壊れててしまらないらしいんですけど、この政策で直してもらえますかね…?(←たぶん、そういう問題じゃない)

kobutamanjuさん>
今回のfinancial crisisを見てて改めて思いましたが、人間って人たちは、バブルの崩壊を予見できても、結局、がけっぷちまで突っ走ってそのまま崖に飛び込んじゃうんだと思います。なんて書くとえらく悲観的ですけど…。
というわけで、ドバイもアブダビも、50年後はどうなってるかわかりませんが、とりあえず向こう10年くらいは、文字通り「後先考えずに」突っ走るんじゃないでしょうか…?寂れる前に、一度、見ておきたいです。

Anonymous said...

あ~、窓が閉まらないときは、窓枠をばんばんと叩くと、ゆるんで(ペンキを重ねすぎなんですよ;それがくっついちゃうみたい)動くようになります。

窓枠の上のほうがよく効きます。

それで閉まらないときは、大家さんを脅していいのです。法律で、それは大家さんの義務で、大家さんが直さない場合は、市とかの窓口に訴えることができます(物を盗まれた場合、大家さんが弁償することになるし、人が忍び込んで何かあったら困る、ということ)。