Sunday, November 2, 2008

Struggle for Hegemony

秋分も過ぎ、雪も降ったっというのに、サマータイムはいつまで続くのかな~と思っていたら、今朝ようやく終わりました。AM1:59を刻んだ時計は、次の瞬間、もう一度AM1:00に。PCや携帯の時計は何もしなくても勝手に直ってくれました。(一瞬、何が起こったのかわからず、ひるみます。)

もちろん、アナログ時計は人力で直さないといけませんが、それ以外では、普通に暮らしてて困ることはありません。どっかで誰か(システム屋さんとか?)が頑張ってくれてるんおかげなんでしょうけど。日本もああだこうだ言ってる暇があったら、とりあえずやってみたらいいのになぁなんて思ってみたり。

ちなみにアメリカの「サマータイム(正しくはdaylight saving timeといいます。)」が、こんな秋深くまで続くなんて、僕はこっち来て初めて知ったんですが(というか最近まで、サマータイムが終わっていないことすら忘れてた)、次に夏時間が始まるのは3月の第2日曜。ということは、アメリカがほんとの標準時で生活してるのは、年間わずか4か月強だけということになります。こうなると、もはやどっちがほんとの標準時かわからないですよね。でもまぁ、よく考えてみれば、午前と午後の日照時間を同じにしておく必要もないわけで(東京に至っては午前の方が長い!!)、これはこれで合理的なんじゃないかなぁと思います。

さて、アメリカでは大統領選挙が2日後に迫り、報道もそれ一色ですが、世界に目を転じれば、実はもっと大きなニュースが、水面下で動いてるのでは?と思ってます。ほんとは、水面下でも何でもなくて、アメリカのマスコミが報じていないだけなんですけどね。たぶん。

それが、一昨日の記事で紹介したStiglitzの国連総会での発言。このニュースを僕が知ったのは、このブログでもときどき紹介している田中宇氏のメルマガ(だって、アメリカのメディアはやってくんないんすもん…)。というわけで、Stiglitzの話に入る前に、少し遠回りになりますが、田中氏の世界観を簡単に書いておこうと思います。

彼は、現代の世界情勢を、アメリカ内部における「単独覇権主義者」と「多極主義者」の暗闘を軸に捉えようとしています。前者はアメリカが唯一の覇権国として君臨し、「勧善懲悪」的な世界観の中で「世界の警察」役を演じ続けるべきと考える人たち、後者はsuper powerの地位を返上し、世界のいくつかの国・地域で覇権(hegemony)を分掌すべきと考える人たちです。前者の代表選手は現副大統領チェイニーや前の国防長官ラムズフェルドといった人たち。一方、後者の陣営には当然、オバマ候補がいて、また、共和党ながら最近Obama支持を表明したパウエルさんもこっちの陣営だろうと田中氏は見ています。

田中氏によれば、単独覇権主義者のバックにいるのは、いわゆる"軍産複合体"+イギリス・イスラエル。彼らは、アメリカが、今日の単独覇権状態が維持することで、自分たちの有利なポジションを保つことができると考えています。一方、多極主義者のバックにいるのはNYの資本家たち。資本は、先進国に投資するより途上国に投資したが効率よく膨らんでくれるので、世界が多極化していろんな地域がバンバン発展してくれる方が資本家にとってはうれしい、というわけ。また、BRICsやイギリス以外(←これがポイント)の欧州各国、また国連も、基本的にこちらの立場を支持しています。

現大統領ブッシュはどっからどう見ても、単独覇権主義の親玉みたいに見えます。が、田中氏に言わせると『ブッシュのやり方はあまりにもひどい。彼は、「単独覇権主義」的なやり方を「やりすぎる」ことによって、逆にアメリカの凋落を早めようとしている「隠れ多極主義派」だ』とのこと。浅田次郎の『蒼穹の昴』で描かれている西太后がまさにこんな感じでしたね。

このあたりになってるくと、ちょっと素直には信じられなくもなってくるんですが、その前までの部分、つまり今日の世界情勢を二つの陣営の暗闘でもって説明しようとする部分は、かなり説得力があると思います。あくまで僕の感覚では、ということですけどね。

さて、なんでこんな話を長々したかというと、今月15日に行われる金融サミットが、単独覇権主義者vs多極主義者の決戦の舞台になるかもしれないから。 決戦に向けた両陣営のつばぜり合いは既に始まっていて、一昨日紹介したStiglitzの発言もその流れの中でのモノ。彼はアメリカ人ですが、スタンスは完全に多極主義派。新しく国連に設置される国際金融システムに関するタスクフォースのヘッドに就任することが決まっています。

木曜日のAP通信の記事では、"We are now at another Bretton Woods moment(今こそブレトンウッズ体制を更新する時期が来ている)"、"only the U.N. now has the inclusiveness and legitimacy needed to draft new global financial rules(今や国連だけが、新たな国際金融制度を起草する包括性と正当性とを有している)"といった国連総会でのStiglitzの発言が紹介されています。また、国連総会議長のD'Escotoも、そのスタンスを全面的に支持する(というか、もっともっと過激な)発言をした、という情報が載ってました。

一方、単独覇権主義チームでも動きがあって、英ブラウン首相が「IMFの財源強化への協力をサウジに要請した」との記事が今朝の日経に出ていました。「覇権クラブ」の中にサウジを引きこむのはかなり思い切った選択ではありますが、とはいえ、それはあくまで(現行のブレトンウッズ体制の要である)IMFを強化するため。英国流の「肉を切らせて骨を断つ」戦略なんだろうと思います。

最初にも書いたとおり、アメリカでは、金融サミットの報道がほとんどされていません。大統領選が近いということももちろんありますが、それにしても少なすぎる…。現状の体制を維持したいアメリカ(現政権)としては、このサミット自体を「歴史的」なものにしたくない(=議論を金融市場の規制の話にとどめたい)と思っていることの表れなんじゃないかなぁと言う気がします。

日本については書きだすと長くなるし、書いたところでどうにもならないので(あ、それはアメリカについても同じか。)、長くは書きませんが、「消極的選択」であるにせよ、単独覇権主義陣営のメンバーであることは否定できないと思います。決戦の場面で伸るか反るか。けっこう大きな選択の局面が近づいてる気がします。
Maxwell School, Syracuse, Nov 2, 20:15

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