Showing posts with label 電力. Show all posts
Showing posts with label 電力. Show all posts

Saturday, April 17, 2010

comments on thesis draft #1

先日来の長文垂れ流しエントリ(汗)に、丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます。いただいたコメントを元に、目下、アタマをひねっているところです。

おいおい、エントリなりコメント欄なりで、お返事を書かせていただこうと思っていますが、取り急ぎ、knj君からもらった二つのコメントについて、いろいろと考えてみました。一昨日の時点では見えていなかったところが見えてきたりもして、非常にいい勉強になりました。以下、その考察の結果です。また改めて、コメントいただければ幸いです。

================================
1.「水平部分の価格=MC」と言えるか?
  
No。この点、明示的には書かなかったものの、僕自身も「水平部分の価格=MC」というイメージを持っていたのですが、よく考えてみれば、この部分にも何らかのprice regulationが適用されているはずで、であれば、「水平部分の価格>MC」となっている可能性が高いのではないかと。ちなみに以下、「水平部分の価格」を、Pw/o-c(Price without-congestion)と表記します。
----------------------------
2.「“Pw/o-cと価格の差”=“congestion charge”」と言えるかどうかかはともかくとして、「“Pw/o-cと価格の差”=“quasi-rent”」と言えるか?
 
Yes/No。まず、1.を踏まえ、MCをPw/o-cに置き換えています。その上で、「“Pw/o-cと価格の差”=“quasi-rent”」と言えるかどうかですが、
  • イ) Pw/o-cにquasi-rentが含まれていなければ「言える」
  • ロ) Pw/o-cにquasi-rentが含まれていれば「言えない」 ⇒ この場合、
    “Pw/o-cと価格の差”=全quasi-rent-(全quasi-rent中、Pw/o-cに含まれている額)
ということになるのではないかと。また、ロ)で、かつcongestionの発生していない場合が、knj君の言う『効率的な市場でも(Externalityがなくても)』quasi-rentが発生している状態に当たるのではないかと思います。

----------------------------
3.Quasi-rentが発生しているのに追加投資が起きないのは異常であると言えるか?
 
これはNoではないかと思います。というのは、価格pについて、「AVC<p<AC」という関係が成立していれば、定義上、「quasi-rentは発生しているが、新たな参入を正当化できるだけの利潤を生み出せるほどには価格は高くない」という状態になるはずで、(非常にtheoreticalな議論ですが)現状のNY州送電サービス市場がこの状態にあると想定すれば、追加投資が起きない状態が「異常」だと言うことはできないのではないかと考えます。

詰まる所、「“Pw/o-cと価格の差”=“quasi-rent”」とのknj君の指摘(※ 同じく、MCをPw/o-cに置き換えました)自体は、基本的に(=2.のイの状態を仮定する限りにおいては)その通りだと思うのですが、この価格差の“quasi-rent性”に着目するapproachでは、「なぜ追加投資が起きないか」という問の答えに近付くことは出来ないのではないかと。

----------------------------
4.「“Pw/o-cと価格の差”=“congestion charge”」と言えるかどうか?

2.で一旦「ともかく」とした問に戻りますが、これについては、少なくとも業界用語としては、Yesではないかと思います。たとえば、American Public Power Association(APPA)という団体の出した2008年の文書の中に、以下のような記述があります(強調付加):
The mechanism that most RTOs use to manage congestion on their transmission systems (where demand for transmission service in a specific direction exceeds the capacity of the needed lines) is to charge a premium, known as a “congestion charge” to transmission customers using those lines. When congestion prevents generation from being delivered to customers in a “constrained zone,” more expensive generation located within the zone may be provided to meet those customers’ demand. The customers’ price reflects the offer submitted by this higher cost generator, even if there are generators offering lower prices in the RTO, but that cannot deliver their power because of the constraints. The difference between the lowest price in the RTO and that charged in the constrained zone is referred to as the “congestion charge.”
この定義は、これまで読んできた、NY州の電力業界に関する論文・著作の中で用いられている“congestion charge”の意味とも合致します。少なくともこの定義に照らせば、先のモデルにおける“Pw/o-cと価格の差”は、まさに“congestion charge”と呼ぶべきものなのではないかと思います。

----------------------------
5.“Pw/o-cと価格の差”は、経済学的な意味でも“congestion charge”と言えるか?

英語版Wikipediaの“Congestion pricing”の項にある説明を「経済学的な意味での“congestion charge”の定義」とみなして議論しますが、この問も実は、基本的にはYesなのではないかという気がしています。

Wiki同項の記述に見ると(強調付加)、
Congestion pricing is a concept from market economics regarding the use of pricing mechanisms to charge the users of public goods for the negative externalities generated by the peak demand in excess of available supply. Its economic rationale is that, at a price of zero, demand exceeds supply, causing a shortage, and that the shortage should be corrected by charging the equilibrium price rather than shifting it down by increasing the supply.
とあります。ここで、“public goods”=送電サービス、“negative externalities”=transmissionのcongestion、“available supply”=transmissionのcapacityと見れば、上に引用したAPPAの定義で言うところの“congestion charge”と、ここでいうところの“congestion pricing”は矛盾しないのではないかと。

ただ、違いを指摘するとすれば、いわゆる“congestion pricing”の考え方の背景に、
  • 需要家の行動次第で、需要の量は削減可能であり、かつ、
  • 需要を野放しにしたまま、供給の量を増やすことによってcongestionを解消する戦略は、何らかの理由(環境への負荷の増大、公的支出の増大、etc.)により好ましくない
という前提があるのに対して、transmissionの問題については、いずれの前提も完全には成り立たない、という点があるかと。

これらの前提も、“congestion pricing”という考え方に包含されているのだとすれば――たぶんそうだろうと思いますが――業界で使われている“congestion charge”というwordingには、ややミスリーディングな面があるなぁと思います。
my home, Syracuse, Apr 17, 26:38

Thursday, April 15, 2010

thesis draft #3

祝、Sabers、playoff初戦勝利。というわけで、心おきなく第3periodです。

==================
RPS制度とtransmissionの増設に関する同様の問題に対し、具体的な対策を講じている事例をテキサス州に見ることができる。テキサスは、RPS制度によって、これまでにもっとも大量の再生可能エネルギー(RE)発電(capacity base)を導入してきた州であり、NY州と同様、その大半は、風力発電によって賄われている。

テキサス州とNY州は、風力発電の適地と電力の消費地との間に地域的偏りがあり(テキサスの場合、風力適地は州西部、電力消費地は州東部)、両地域を結ぶtransmissionのcapacityが限られているという点で、非常に良く似た地理的条件を備えている。RPSによるRE発電の導入でNYに先んじたテキサスでは、transmissionのcongestion問題にも、NYより数年早くに直面していた。この問題に対処するため、同州議会は、2005年、以下の事項を主な内容とする “Senate Bill 20”を制定した;
  1. Public Utility Commission of Texas(PUCT)が「高いRE発電の開発可能性を有する地域(“areas with high renewable energy resource potential”)」を “Competitive Renewable Energy Zones (CREZ)”に指定する。指定に当たっては、各地域におけるRE発電事業候補者のfinancial commitmentの程度も勘案する(実際には5つのCREZsを指定)。 
  2. PUCTが、CREZsと電力消費地とを結ぶtransmission網の建設シナリオを複数策定する(実際には4つのシナリオを策定)。 
  3. ERCOT (Electric Reliability Council of Texas) が各シナリオの建設コストを試算する。 
  4. ERCOTの試算に基づきPUCTがtransmission網の拡張計画を決定する。 
  5. 同計画に含まれる各transmissionの事業主を、一定の基準を満たす事業者の中からPUCTが選定する。 
  6. 選定を受けたtransmission事業者は、transmission拡張計画の詳細を固め、PUCTからの最終承認を受ける(“シナリオ”の時点では、建設計画の詳細まで完全に固められているわけではない)。 
  7. このプログラムによるtransmissionの増設コストは、sub-areaに関係なく、ERCOT管轄地域全域のratepayerによって、一律に負担される。 
なお、ここで出てくるPUCT及びERCOTは、それぞれ、NY州におけるPublic Service Commission (PSC)、New York Independent System Operator (NYISO)に相当する。

2010年4月現在では、transmission事業者の選定(上記5.)までしか進んでいないため、同政策の成否を今の時点で評価するのは時期尚早である。非常に大胆な政府介入政策であるため、今後、何らかの“government failure”的非効率が発生する可能性はもちろん否定できず、プラス・マイナス両面を加味した最終的な評価を下すには、さらに数年、結果を見守る必要がある。

しかし、この政策が、――“government failure”という副作用をどの程度伴うかはともかくとして――先に挙げた送電サービス市場の、諸market failure要因を克服する手立てとなっているということは少なくとも言えるだろう。そういった意味において、RE発電の導入増に伴うtransmission不足に対処する政策としては、(少なくとも米国内で)もっとも先進的な取組であるということもできる。

では、今後、ますます増加する(と予想される)遠隔地RE発電施設からの電力供給により、transmissionのcapacity不足の深刻化が懸念されるNY州に、このCREZ政策を導入しようとした場合、どのような点が課題となるであろうか。導入に当たり、大きなchallengeとなりそうな二点を、以下、指摘しておきたい。

一点目は、この政策によって発生するtransmission建設コストの費用負担の問題である。先にも述べたとおり、NY州では、transmission建設コストの負担に関して、伝統的に、“beneficiary pays approach”の考え方が取られてきた。一方、テキサスのCREZ政策の肝は、transmission建設の費用負担を「域内一律」とした点にある。それによって、(上流-下流の費用負担論争に左右されることなく)純粋に効率性の観点から敷設シナリオを検討できる環境を確保できたという実務的メリットに加え、RE発電普及による利益(温室効果ガス排出の削減、energy securityの強化、etc.)は、特定の地域(発電地域and/or電力消費地域)にのみ帰属するものではなく、域内のratepayerに一様に帰属するものであるという根本的な問題構造の面から見ても、この費用回収方法は、理にかなっていると言える。

そもそも(RPSとの関連以前の問題として)、transmissionについては、競争的な電力市場を“可能にするもの(enabler)”と捉え、それ自体は競争政策の埒外に置くべき(したがって、政府が、その供給に積極的に関与するべき)とする考え方と、NY州のように、transmission自体も発電施設の競合財と捉え、競争政策の中で同列に扱うべしとする考え方とがある。それら二つの考え方の優劣を巡る議論はこの論文の射程を越えているが、双方の考え方に長所・短所があるということ、また、それらのうちどちらを選ぶかは、電力政策上、RE導入促進に関わる問題よりも、より高次に位置づけられるべき政策判断であるということが言える。

したがって、ここでNY州の“beneficiary pays approach”を非難する意図はまったくないし、また、RE導入促進との相性が悪いという事実だけを以て、NY州が、そのapproachを根本的に見直さなければならない必然性もない。ただ、“beneficiary pays approach”の方針を全く曲げずにCREZ政策を単純に「接ぎ木」することはできないというのもまた事実であろう。このため、NY州にCREZ政策を導入するとならば、費用負担に関する考え方の違いから生まれる「矛盾」をどのように解消するかが一つの大きな課題となると考えられる。

もう一つの課題は、組織の構造と意思決定に関するものである。

NY州内の電力系統の運用を統括するNYISOは、電力の安定供給と経済運用のみをミッションとする機関であり、RE発電の導入促進に自発的に協力しなければならない立場にはない。それどころか、現行のルールの下で、NYISOが、RE発電施設に有利なようにtransmissionを敷設する計画を支援したとすれば、そのことは、彼ら本来のミッションである経済運用との間で支障を来しかねない。

一方、RPSプログラムの執行に責任を負うNYSERDAの方は、RPSプログラムとの関連においては、制度の執行にのみ責任を負う機関であるため――別途、研究機関としての役割も担っているが――、送電網の敷設という(少なくとも現行制度の下では)RPS制度の完全に外側にある事柄に対して、何らかの積極的働きかけを行いうる立場にはない。

これら二機関を管轄下に置き、“order”という形でルールを制定する権限を有しているのは州政府の一セクションであるPSCである。彼らは、RE発電の導入促進とtransmissionの拡張という、両方の課題を同時に視野に入れられる立場にあるわけだが、RPSの目標値の引き上げを決めた“Order Establishing New RPS Goal and Resolving Main Tier Issues”(2009年決定)の中では、RPSの今後にまつわるいくつかの懸念事項が論じられているものの、transmissionのcongestion問題については、一切の言及がなく、そもそも、彼らがこの件に問題意識を持てているのかどうかさえ定かではない。

このように、関連三機関の立場・言動を見渡してみると、“RE発電の導入促進に伴うtransmissionの不足”という形で、統合的にこの問題を捉えられている機関が、NY州政府内には今のところ存在しない可能性がある。テキサス同様、最終的には、立法府による行動が必要だとしても、日々の執行を司る――それゆえ、問題発見に一番近い場所にいるはずの――担当者の間でさえ、十分な問題把握・問題理解が醸成されていないとならば、元来、専門家以外の者による理解が難しいこの問題が、世間や州議会議員の耳目を集める可能性は、非常に低いのではないかと察せられる。このことから、NY州における、現在の関連組織間の責任分担構造が、CREZ政策をNY州に導入しようとするならば、二つ目の大きなチャレンジになるのではないかと考えられる。
==================

この後に、多少、implication的なものをくっ付けてconcludeしようかというのが、とりあえず今の時点での全体構想。実際書いてみて、最後の方が、定性的というか説明的というか、要するにグダグダだということがよくわかりました…sigh

テキサスの事例を引き合いに出してくるところまでは良いとして、そのあと、どういう方向に持っていくか。今の案のまま、頑張ってロジックを詰めるか、あきらめて別の展開を用意するか。。。
Maxwell school, Syracuse, Apr 15, 22:24

thesis draft #2

今日開幕のNHL Playoffをちら見してリフレッシュ。こんな話、どうでもいいと思いますが、今日あった東地区の二試合は、二戦とも、下位シードのチームが上位シードのチームを食う結果に。この流れが、明日のSabersの試合(Sabers=第3シード。第6シードのボストンと対戦)に乗り移らないことを祈るばかり。。

さて、リフレッシュも終えたところでthesis draft後半戦。

======================
こういった不都合の原因となりうる送電サービス供給量の硬直性は、同市場に見られる諸々の“market failure”要因によって説明できる。

まず何より、transmission事業は、「初期投資(capital cost)が莫大で、規模の経済(economies of scale)が働きやすい」という、自然独占(natural monopoly)の典型的条件を兼ね備えている。このため、新規参入が難しく、NY州においては、電力自由化以前からの“legacy transmission owners” 8社による、事実上の寡占状態となっている。これらの既存transmission事業者にとっては、transmission capacityの不足によってgrid内の二地点間で電力単価(Locational Based Marginal Price (LBMP))の開きが生じていたとしても――congestionが一切なければ、送電ロスのrecovery費用を除いた電力単価はgrid内全域で等しくなるはず――、その差をcongestion chargeとして徴収できるので、送電サービスの供給不足が、transmissionの積極的な増設を促すことにはならない。

公共財(public goods)的性質を色濃く持つが故の、費用負担の問題も深刻。NY州では、「transmissionの建設コストは当該transmissionの新設によって恩恵を受ける者=beneficiariesによって負担さるべき」とする“beneficiary pays approach”が取られているが、そもそも、beneficiariesの特定が非常に困難。遠隔地の電力を安く使えるようになるとは言え、transmission建設コストの全額負担は割に合わないと考えるdownstateと、自分たちが恩恵を受けるわけではないのに(一部とはいえ)transmission建設コストを負担させられるのは嫌だと主張するupstateの対立に、その中間地域におけるsiting(立地)問題が絡み、その必要性自体は広く認識されていても、具体的なプロジェクトとなると、なかなか話がまとまらないといった状況がNY州では長らく続いている。

Enforcement costsの問題もある。Transmission ownerにしてみれば、発電事業者が約束通りに新規発電所の建設及び送電サービスの利用を行ってくれなければ、新規transmissionの建設コストを回収できず、一方、発電事業者にしてみれば、transmission ownerが約束通りにtransmissionを建設してくれなければ、プラン通りの発電事業を行えないといった状況が想定されうる。このような場合、互いに相手方の約束履行の確証が得られなければ、双方ともに事業の実施に踏み切ることはできず、結局、事業の実施が見送られる事態に陥りがちである。

規制が送電サービスの供給を妨げている可能性もある。NY州においては、安定供給の面からその必要性が認められる場合を除き、新規transmissionの建設の認可を受けるためには、①“strict cost-benefit tests”をクリアするとともに、②州内load serving entities(LSEs・配電事業者)の80%以上からの賛同を得なければならないことになっている。この仕組みは、理論的には、ratepayerがtransmissionの過剰投資に伴うコストを負担させられる事態を防ぐために設けられているものであるが、LSEsの多くがlegacy transmission ownersの子会社であるという現実を考えると、既存transmission事業者を過度に利するかたちで機能している可能性がある。

以上は、RPS制度の導入如何にかかわらず、NY州の送電サービス市場が本来的に抱えている“market failure”であるが、これに加え、RPSとの関連では、externality(外部不経済)の問題も指摘されうる。そもそも、RPS制度は、既存の電力市場が「温室効果ガスの排出」や「国外産エネルギーへの依存に伴う安全保障の脆弱化」といった「外部不経済」を適切に評価しきれていないという反省に立ち、それらを内部化(internalize)するために導入されている制度であるが、transmission建設認可の際の、上記“strict cost-benefit tests”では、そういった外部性がまったく考慮されず、explicitlyに示されるbenefitのみが勘案の対象とされる。このため、ある地域へのtransmissionの延長が、新規RE発電施設の導入を促すと予想されるとしても、それに伴う社会的価値は考慮の対象とはならないので、そういったtransmission建設案が“strict cost-benefit tests”に耐えられる可能性は低いままとなる。(to be continued.)
======================

「後半」のつもりでしたが、この先、もうしばらくかかりそうなので、第3ピリオドは、また稿を改めて。
Maxwell School, Syracuse, Apr 14, 24:29

Wednesday, April 14, 2010

thesis draft #1

うだうだ言っていてもはじまらないので、とにもかくにも、現在手持ちの知識と考察で、論文の骨子を書いてみることにした。ご意見いただければ幸いであります。

========================
Renewable Portfolio Standard(RPS)政策は、市場メカニズムの中で決定される「最低価格」で以て、再生可能エネルギー(RE)発電の導入を進めようとする制度であり、温室効果ガスの排出削減やenergy securityの観点から、米国内でも多くの州で導入されている。ニューヨーク州は、カリフォルニア、テキサスと並び、RPSによるRE発電導入を最も積極的に進めている州の一つであり、現在は「2015年までに州内消費電力の30%」をRE由来にするとの目標を掲げている。

市場メカニズムに立脚するその方法論から、RPS政策は、同政策の支持者の間で「所定のRE導入目標をもっとも経済的かつ効率的に達成できる方法」と考えられている。しかし、この命題は、政策の対象である商品(=RE発電)が、競争的な市場で取引されているという前提の下でのみ成立するものである。加えて、発電施設がstand-aloneでは機能せず、送電網(grid)に繋ぎ、送電網(transmission)会社から送電サービスの供給を受けてはじめて機能するものであることを考えると、この前提は、送電サービス市場においても満たされていなければならないものである。

送電サービス市場が競争的であるならば、RPS制度の導入で、新設RE発電事業者からの送電サービス需要が増えることにより、より多くの送電サービスが――それに伴って価格も上がるにしても――供給されるようになるはずである。そのためには、送電サービスが、滑らかな供給曲線を持たなければならないが、実際には、送電サービスの供給媒体であるtransmissionは、簡単には増設されにくい特性を有しており、NY州内では、RPSの導入開始(2004年)後はおろか、1980年代半ば以降で見ても、ごく小規模なものを除いて、transmissionの新設・拡張は行われていない。このことから、送電サービスの供給曲線は、滑らかではない右上がりの階段状をしており、より短期的に見れば、右下に頂点のあるカギ形(ある量までは水平、その量に達した時点で垂直)の形状を有していると考えられる。

このような市場において、需要曲線の右上シフトが続けば、あるところまでは、需要に応じた量のサービスが問題なく供給されるが、ある水準(=transmissionの物理的なcapacity)に達した時点(=需要曲線が、供給曲線の屈曲点を通る時点)で、それ以上は供給量が増えず、価格だけが上昇する局面に至る(この局面で積み増される追加的な価格がtransmissionの“congestion charge”(混雑料金)に相当する)。実際のところ、NY州におけるRE発電の主力である風力発電の適地は、電力の消費地(=downstate=NYC& Long Island)から離れたupstate(特に州北部及び西部)に集中しており、従来、発電施設の多くなかったこれらの地域では、既存transmissionの送電容量が限られているため、今のペースでRE発電施設の新規導入が進めば、早晩、transmissionのcongestion問題が深刻化するであろうと予測する向きは少なくない。

送電サービスの供給過少が生じた際、もっとも直接的に懸念されるのは、RE発電事業者が、当初契約通りのRE電力を送電(delivery)できなくなるという事態である。実際、2008年には、transmissionのcongestionが原因で、RPSプログラムに参加するある大規模wind firmがdelivery不足に陥り、RPS プログラム上のdelivery commitmentの下方修正を余儀なくされる事態も発生している。ただし、このような事態は、RE発電事業者の側にも追加的な負担を強いるため、今後、congestionが頻発するようにな(ると予測され)れば、論理的には、congestion chargeがRPSの入札額に織り込まれるようになり、そのことが、RPS入札額の値上がりにつながると予想される(ただし、transmissionのcongestion chargeが、RE発電事業の全事業コスト、ひいては、RPSの入札額にどの程度のインパクトを持つかについては、定量的な情報を得られていない)。

NY州のRPSプログラムでは、ratepayerから消費電力量に応じて徴収されるお金を原資に、NYSERDA(New York State Energy Research and Development Authority)が一括してRE発電電力(厳密には、物理的な電力そのものから切り離された「REで○kWhの電力を発電しました」という権利)を調達する仕組みが取られているので、RPS入札額の値上がりは、①原資不足による目標の未達成、又は②(あくまで目標を達成するための)対ratepayer課金単価の値上げ、のいずれか(或いはそのcombination)という結果を招く。また、将来、①②のうちの、どちらの政策がとられるかわからないという不確実性の存在そのものが、RE発電開発コストを押し上げている可能性もある。

こういった不都合の原因となりうる送電サービス供給量の硬直性は、同市場に見られる諸々の“market failure”要因によって説明できる。(to be continued.)
========================

頭がオーバーヒートしてきたので、続きは次回にて。
Maxwell School, Syracuse, Apr 14, 19:12

Wednesday, March 31, 2010

inevitably imperfect

朝からPower System Economicsなるマニアックな本(でも一応教科書)を読んでいたら、印象的なquoteを見つけたので転載。
The conclusion today, seventeen years later, is essentially the same . . . industries differ one from the other, and the optimal mix of institutional arrangements for any one of them cannot be decided on the basis of ideology alone. The "central institutional issue of public utility regulation" remains . . . finding the best possible mix of inevitably imperfect regulation and inevitable imperfect competition.
Alfred E. Kahn
public utility regulationに限らず、幅広く妥当する卓見かと。
Maxwell School, Syracuse, Mar 31, 10:16

Tuesday, March 23, 2010

Connecting two fields

論文の方、だいぶ考えが煮詰まってきたので、昨晩、knj君に一時間ほど付き合ってもらって、ブレインストーミングをしてみる。今さらながら、こういうときにSkypeって便利。彼らがどうやって儲けてるのか、ビジネスモデルが未だによくわかんないんだけど。

knj君との議論の中で、何となく見えてきたのは、originalityを発揮することにそこまでこだわらなくてもいいんじゃないかということ。まぁ、言ってしまえば、所詮はMasterレベルの論文なんだし。

それよりむしろ、engineeringの世界の方々が、あちこちで書きまくってておられる論説を、電気工学のバックグラウンドがない人でも理解できるよう、「文系フィルター」を通して編み直し、こっちの世界 ― まぁどっちが「こっち」かはともかくとして ― の人たちに問題の存在を知らせる一助となるような論文を目指すというのも、アリなんじゃないかと。

まぁ、いずれにせよ、「問題の存在を知らせる」なんてのは、あくまでバーチャルな物言いであって、結局のところ、誰が読むでもない論文になるのは必定。問題は、「論文を書く」というプロセスで蓄えたモノ(知識・考え方・人脈、etc.)を、東京に戻ってから、活かせるかどうかの一点に尽きる。そう考えると、一足飛びに“originality”を目指すよりも、既存の論説を ― ただ「読んだ」というだけでなく ― 自分の言葉で、言い直せるくらいまで、しっかりと咀嚼・吸収する方が、結局、自分にとっては意味があるんじゃないかと思えてきたのであった。

というわけで、おぼろげながら、最終稿の輪郭が見えてきたかなぁという感じ。残された時間は、一カ月とちょっと。
Maxwell School, Syracuse, Mar 23, 22:53

Sunday, March 14, 2010

Wind Consideration (cont.)

風力ネタ、続き。一部、knj君とのdiscussionへの回答含。(今回も、レスお待ちしてます)

前回取り上げたPuga and Lesser (2009)によると、NY州のRPSは、transmissionとの関連で、以下の3つの問題を抱えているという。
  1. NYISO(New York Independent System Operator)のgrid system planning process上、新規のtransmission建設が認められにくい。(because ①厳格なcost-benefit test と ②配電事業者(LSEs: Load Serving Entities)による80% supermajority approvalの両方をクリアしなければならない)
  2. 最近まで、系統連係(=発電施設をgridに接続する)時の“deliverability test”(which “ensures that the electricity a new generating resource ... can actually be delivered to load centers over the transmission grid.”)を欠いていた。
    → “a significant share of existing wind generating capacity in New York is "bottled up."” (現在、NY州内に存在する風力発電能力の相当割合が“ダダ漏れ”している)という結果に。
  3. ようやくdeliverability requirementを課したのは良いが、そのrequirementをクリアするための負担(for renewables発電事業者)が重すぎて、renewables導入の大きな障壁となりうる。
1. 及び 2. からすると、renewablesの導入量が増えるに従って、風力(或いは全renewables)からのdeliverability(の平均値)は下がってきたかに思われるのだが、generation/capacity値 [1000MWh/MW] の推移を計算してみると(データ元:US Energy Information Administration(DoEの下部組織)のwebサイト)、風力についてもrenewables全体についても、そういった傾向は見られない。

また、3.からは、直観的には、renewablesの導入量が増えるに連れて、RPS電力の買取価格が上がっていくことが予測されるが、実際には、買取価格の契約単価の平均値は、過去三回行われている入札ごとに下がってきている。

<入札実績 (実施年, 契約件数(うち風力の件数), capacity合計, 契約単価平均値)>
  1. 2004年, 5件(2件), 254MW, $22.90
  2. 2007年, 19件(8件), 533MW, $15.52
  3. 2008年, 8件(3件), 180MW, $14.75
※ 契約件数は、契約履行に至ったもののみ(これ以外に、契約するも事業開始前に頓挫したケースがある)

もちろん、deliverability及び契約単価には、transmission以外のいろんな要因が影響しているので、上記のような結果が見られたからといって、Puga and Lesser (2009)の分析が誤っているということにはならない。Puga and Lesser (2009)の妥当性を厳密に調べようと思ったら、deliverability及び契約単価の変化と、transmission要因とのcorrelationを見ないといけないが、もちろん、そんな込み入ったデータはweb上に落ちていないし、入札に参加したrenewables事業者にその点を聞いても教えてくれるかどうかは怪しい。いずれにせよ、そこまでやっていては、おそらく、予定通りに卒業できない、なんて困ったことになってしまう。
一方、トレンドとして、「deliverabilityが下がる」又は「契約単価が上がる」といった傾向は見られないにしても、そもそも(完全競争状態に比べて)「deliverabilityが小さすぎる」又は「契約単価が高すぎる」可能性はある。

NY州の場合、RPS市場の「買い手」はNYSERDA一者のみであり、NYSERDAの主催する入札に、renewables発電事業者が「売り手」として参加する仕組み。(この、「買い手が一者のみ」という形式は、NYのRPSに特有のものだが ― 他の多くのRPS制度では、買い手も複数いて、collaterallyに取引が交わされる ―、この点が、今のこの議論にsignificantな影響を与えるとは思えないので、ここでは、この特徴について深掘りすることはしない。)

renewables発電事業者は、RPS市場における「売り手」であるが、彼らは同時に、送電サービス市場における「買い手」でもある(← 発電した電気を売るためには、transmission事業者から“送電サービス”を買って、電気を目的地まで送り届けてもらう必要がある)。この送電サービス市場において、「競争圧力の排除」が見られるならば ― 上記1.の問題により、その可能性は高い ―、「非効率性と費用の上昇」(=X非効率性)が発生している可能性がある。[泉田・柳川 (2008) “プラクティカル 産業組織論” 有斐閣 p.78]
  
この場合、RPS市場そのものは完全競争的であったとしても、そこで提供される財(=“RPS Attribute”。RPS対象施設での発電量に応じて生みだされる権利)の生産コストに、transmission事業者の享受する(送電サービス市場での)独占利益が織り込まれるかたちになるので、全体としてみれば、必ずしも効率的ではない可能性がある。NYS-RPSの場合、NYSERDAが購入するRPS Attributeの対価は、電力料金に上乗せしてratepayerから徴収されるお金で賄われているので、「効率的でない」ということは、すなわち、ratepayerが「完全競争価格」以上の料金を負担させられている、ということ。もし本当に、そういったことが起こっているのだとしたら、望ましい状態であるはずはない。

RPS制度とtransmission整備に関するここまでの議論を整理すると、
  • RPS目標値を達成するためには、renewables発電源に十分なdeliverabilityを与えるtransmissionの整備が必要。
  • 単に目標値を達成するだけでなく、それに要する費用(究極的にはratepayerが負担)を最小化・最適化するためには、transmission整備に要する費用の適正分担が必要。
ということになるかと。

さらに言うと、前回の議論にも通じるが、ratepayerから義務的に徴収される財源で以て賄われるものである以上、RPSの目標値は、闇雲に上げていいものではないはずである。
この点に関し、NYの公共サービス委員会(Public Service Commission; PSC)のOrder (Apr 14, 2005)に基づくmid-term program evaluation (2009)(参照)の中で、“independent evaluation contractors”の一つとして、RPS制度の評価・分析を行ったKEMAは、同evaluation報告書の中で、今のトレンドで行くと、当初の目標を達せするためには、RPS Attribute買取資金が不十分であることを指摘。具体的には、2004年の公共サービス委員会Orderで認められた買取資金の徴収総額$741.5millionを原資に、2013年までの目標を達成するためには、RPS Attributeの買取単価は$7-8/MWhでなければならない計算になるという。一方、実際の価格は、先に見た通り、制度開始当初に比べれば下がったとはいえ、10ドル台中盤で推移しており、未だ、その差は大きい。[“New York Renewable Portfolio Standard Program Evaluation Report” (2009) p.39]

KEMAは、同報告書の“Recommendations”において“If targets are not set in accordance with available funding, the target is not realistic.”とも述べている。[p.55] この点、KEMAがNYSERDAに提出した、元報告書(KEMA (2009) “New York Main Tier RPS Impact & Process Evaluation”)の方も、読んでみる必要があるかと思う。

なお、KEMAは、買取価格が当初見込みより高くなっているだけでなく、renewables電源の導入スケジュールも、当初予定より遅れ気味である点を指摘している。もちろん、この事実だけでは、「当初の目標設定が高すぎた」と判断するのに不十分であり、更なる検討が必要なのだが。

一方で、公共サービス委員会は、RPSの導入目標を、現行の“2013年までに25%”から、“2015年までに30%”に引き上げる新Order [CASE 03-E-0188 “Order Establishing New RPS Goal and Resolving Main Tier Issues”]を今年1月に採択している。まだ中身は読めていないが、「目標値を引き上げる」という決断に至った背景の議論についても、このOrderの中で述べられているようなので、近いうちに読んだみたいと思う。
my room, Syracuse, Mar 14, 19:50

Saturday, March 13, 2010

Puga and Lesser (2009)

風力発電ネタ。

J. Nicolas PugaとJonathan A. Lesserの共著論文“Why Transmission Planning and Cost-Allocation Methods Continue to Stifle Renewable Energy Policy Goals” (2009) が、大変、示唆に富んでいる。とりあえず、この論文の世界観をベン図で表してみると、多分、こんな感じ。
我々一般人(というか、ほとんどの人)がrenewables development (再生可能エネルギー発電源の導入促進)を考える際に、普通、最初に目が行くのは、Generating costs=発電施設そのもの(風車、太陽光パネル、etc.)のコストの問題。

しかし、発電施設というのはstand-aloneで使えるデバイスではなく、作った電気を市場に送りだせるよう、grid(送電網)に繋いではじめて意味を持つシロモノなので ― stand-aloneで使われるケースもなくはないが、現下の先進国の社会構造においてそういった使われ方をするケースは稀であり、また、通常、RPS制度の対象外でもある ―、 電気を作ったはいいが、grid側にその全量を受け入れるだけのcapacityがないということになると、(ごく大雑把に言って)「全量受入れ」から遠ざかる分だけcost-performanceが落ち、また、温室効果ガスの排出削減効果も減る、ということになってしまう。

このため、より広い意味での(言い換えれば、「より正確な意味での」)efficiencyを考えるためには、Generating costsだけでなく、Interconnection costs(接続コスト。expected renewable resource developmentのdeliverability(送電可能性)を確保するために必要なnetwork upgrade(送電網の補強)の費用)も加味したTotal costsベースで考える必要がある。しかし、このTotal costsについて、筆者らは、「多くのRPSにおいて、考慮されてこなかったように見受けられる(“does not appear to have been considered in the context of most RPS mandates”)」としている。(※)

この点、以下の二節で、もう少し具体的に述べられている:
The current situation, where states mandate the development of renewable generating resources and, at the same time, impose transmission cost allocation policies that make such development financially infeasible, is clearly unworkable. [p.17]
(拙訳) 州政府が、再生可能エネ発電源の開発に義務的目標を課すのと同時に、一方で、そういった再生可能エネ発電源開発を金銭面で困難にする送電網整備コスト配分政策をとっている今の状況は、うまくいくはずがない。 
Too many RTOs continue to have interconnection requirements that are biased toward existing transmission owners (e.g.. New York) or saddle renewable generators that happen to occupy certain spots in the queue with extraordinary upgrade costs. [p.19]
(拙訳) 未だに、多くのRTOs [注: Regional Transmission Organizations。単一の又は隣接する複数の州ごとに儲けられている電力市場運用を管轄する公的主体] は、既存送電網所有者に有利な接続基準 [注: 新規発電施設を送電網に接続するための基準] を維持していたり(たとえばNew York州)、或いは、運悪く特定の順番で接続の申し込みをしてしまった再生可能エネ発電事業者に、莫大な [送電網の] 改修費用を負わせたりしている。
つまり、Total costsベースでみたときのcost allocationが、新たに再生可能エネ発電源を建設・接続しようとする事業者に対して、過度に不利になっている場合が多く、そのことが、renewables developmentの妨げとなっている、というのが筆者らの主張。

この状況を改善するためには、“the [transmission interconnection] costs should be allocated broadly, as they are with many public goods”(送電網接続コストは、多くの公共財がそうであるように、幅広い主体によって負担されるべき -p.17-)と続く。

ここまでの筆者らの主張を僕なりの言葉で言い換えると、
  • RPS制度というのは、再生可能エネ発電源の導入率についての一定を目標値を、最小の社会的コスト(“least-cost”)で達成するための手段と看做されているが、
  • interconnection costsも加味したtotal costsベースで考えるならば、そのような成果は、以下のいずれかの条件が満たされる場合にのみ実現する:
    • 送電網側の送電容量に制約がない、又は、
    • (制約があったとしても)送電網事業者がmarket powerを有さず、「送電サービス」市場(←再生可能エネ発電事業者は、この市場のone of 買い手s)において完全競争が実現している。
  • 実際には、これらいずれの条件も満たされないのが普通であり、結果、「送電サービス」は過少供給(with高価格)となりがち。
  • したがって、RPSを義務として課す以上は、「送電サービス」を公共財として捉え、社会全体の幅広い費用負担をベースに、公的機関がその供給に責任を負うべきである。
といった感じになろうかと。

ここまでならば、しばしば見かける議論と言えなくもないのだが、この論文の主張は、更に外側へと拡大する(最初のベン図の緑色の世界から赤色の世界へ)。目標達成のための投資の一部に、「公共財」的性格を持たせる以上、RPSの目標値は、ただただ「高ければ高い方がいい」というようなものではなく、どこかに「適切な水準」があるはずだ、と。この点について、具体的には、以下のように述べている。
Most importantly, state legislatures must estimate and consider the cost of the transmission necessary to develop new renewable resource areas prior to increasing RPS goals. [p.19]
(拙訳) もっとも重要なことは、州議会の議員たちは、RPSの目標値を上げるのに先立って、新たな再生可能エネ発電立地エリアの立ち上げに必要な送電網整備コストの予測・検討を行わなければならないということである。
... policymakers need to rethink RPS requirements to make sure they are the most cost-effective means of achieving specific policy goals. In the case of RPS requirements, it seems that an urge to "do something" has, in some cases, overshadowed the complex but the necessary task of considering existing transmission policies both in a broader context and in relation to new policies. [p.19]
(拙訳) 政策決定者たちは、RPS基準が一定の政策目標を達成するための、もっともcost-effectiveな手段であるかどうかについて、今一度、再確認するべきである。RPSについては、しばしば、「何かしなければならない」という切迫感が、現行の送電網政策を一般的に、また、新政策との絡みで、見直してみるという複雑ながらも必要な課題を、覆い隠してきてしまったように感じられる。
個人的には、これまで読んできたrenewables development系の論文の中で一番のヒット。ちなみに、筆者の二人は、それぞれ、こことここで働く経済コンサルタントさんらしい。

※ 同論文の分析対象は、米国内各地のRPS制度。なお、現時点において、アメリカでは、連邦レベルのRPS制度は導入されておらず、州レベルでの実施のみ。
Maxwell School, Syracuse, Mar 12, 24:35

Thursday, March 11, 2010

Spring Break is coming

来週は、大学のSpring Break。一週間、授業はまるまるお休みになる。ひと足早く、明日辺りからSyracuseを脱出する生徒も多いと見え、日頃、Maxwell生でにぎわう自習室は、既に人影がまばら。僕も、今学期が始まった頃には、「Spring Breakにはpolar bearに会いに行くぞ!!(彼らの家が北極海に沈んでしまう前に…)」なんて、妄想をたくましくしていたものだが、結局、抱え込んでいる3本のペーパーにまったく目途がつかず、とりあえずは、Syracuseに ― というか自習室に ― 居座ることに。ペーパー執筆にいちおうの目途がついたら、break期間後半に、一泊か二泊ででも、Torontoに遊びに行こうかと考え中。まぁ、こちらも結局は「妄想だった」ということになるかも知れない(苦笑)

ペーパー三兄弟の中でも、一番の悩みの種は、例のindependent study。「RPS制度を単純に導入するだけでは、(initial costだけでなく)operational costも加味した効率性の達成は図れませんよ」という点をまず押さえた上で、その先、
  • だから、単にRPS制度を導入するだけでなく、それによって増加することとなる再生可能エネルギー発電源を十分に活用できるだけの、grid側の補強が必要。そのための投資は、諸々の理由により、市場に任せていては不十分になるので、一定の政府介入が必要。
というところに持っていくか、はたまた、
  • RPSの目標値(全発電源に占める再生可能エネルギーの割合)は、exogenouslyに「えいや」で設定すれば良い(→ あとは市場に任せておけば、もっともefficientな方法で、その水準が達成される)なんていうほど単純なものではない。grid側のインフラには、(風車とは違い)すぐには増やせないという特性があるので、gridの状況と連動したかたちで目標設定を行う必要がある。目標設定の際、具体的に依拠すべき考え方はblablabla...
というかたちに持っていくかで悩み中。無難なのは一つ目だが、できることなら二つ目にまで持っていった方が面白そう。要は時間との勝負。後者を選んだ場合に、5月までに書きあげられそうかどうか、明日、もう一度じっくり検討してみるつもり。
my home, Syracuse, Mar 10, 26:23

Tuesday, March 2, 2010

bottlenecks

世の中の多くの問題は、往々にして、一つ、乃至は、二つ三つの「主因」で以て説明できるものだが、電力システムの世界は必ずしもそういうふうになっていない。causalityの矢印が、あっちこっちを向いていて、一言で言えば“chaotic”。よって、この世界では、ある問題の解決法を考えようとすると、そもそもボトルネックの特定のところで、たいへん手こずることになる。

加えて、このエントリでも触れたとおり、同じchaosでも、国・地域によって、その形状は大きく異なる。したがって、同じ問題 ― たとえば、「風力発電の系統連結capacityを増やすにはどうすればいいか?」 ― を考えるにしても、国・地域が異なれば、第一のボトルネックがそもそも違っていたりするわけで、その先の解決法を考える段階では、まるで別々のゴールを追っているかのように、まったく異なる事象が論じられていても不思議ではない。

なんてことが、この分野を本格的に勉強し始めて二か月で、ようやく分かり始めてきた。不満なのは、それなりの数の論文を読んでいるのに、こういう「違い」の存在をきちんと説明してくれている論文には、案外、お目にかかれないということ。まぁ、「誰に対して不満なんだ?」と言われれば、難しいんだけど(笑) だいたいの論文が、一つの国・地域にフォーカスを当てていて、国際間・地域間の比較分析を試みているものが少ないからなのかも知れない。

ついでに言うと、一つの論文では、一つだけ、多くてもせいぜい二つの「原因」に焦点が当てられている場合が多い。このため、個々の論文を読んでいるだけでは、この世界のchaos性はあまり見えてこない。複数の論文を読み比べてはじめて気づくことになる。(そして大いに苦しむ。うぅ…)

このことは、実際に論文を書いている身からすれば、よくわかる。一本の論文の中に、あれもこれもと、いろんな「原因」(とその解決法)の分析を取りこんでしまうと、はっきり言って、論文としては収拾がつかなくなる。したがって、説得力のある論文を書こうと思うならば、どれか一つ(ないしは二つ)の「原因」にフォーカスしなければならない。その際、論文の書き手には、「なぜその『原因』にフォーカスしたのか」を“正当化”するという課題も同時に課せられる。そこで「ウソ」が混ざるとまでは言わないが、元来、“chaotic”なはずの世界を、ある程度、単純化して見せ、いかにも一つor二つのボトルネックをたたくことで、問題が大きく改善されるかのように描こうとするインセンティブは、どうしても働きがちなのではないかと思う。

電力システム関係の論文を読む際には、この点、注意が必要かと。
my room, Syracuse, Mar 1, 24:35

Monday, February 8, 2010

Transmission Congestion

朝から、Independent Study(I.S.)の担当教官(Popp先生)との面談に臨んできた。今の方向で進めいって良しとの御沙汰をいただき、一安心。

一週間前のエントリーで、「風力発電がtransmission(送電網)に与える影響は、いくつかの分野に分けられる」と書いたが、I.S.の論文では、このうち、transmission congestion(送電線混雑)問題に焦点を当てようかと考えている。

悩ましいのは―というのは、論文の書き手にとって、という意味でだが―日本とアメリカで、最初にfocusすべき分野が違っているということ。日本ではfrequency control(周波数調整。数秒~数時間の単位での電気の需給調整。参照)が一番の問題だが、アメリカでは、むしろ、transmission congestionの方が大きな問題となっている。これは、“系統規模が大きければ周波数は動揺しにくく、結果として送電容量の混雑などが顕在化しやすい”(*1)という、transmissionの特性のため。北米(米国&カナダ)の電力系統は、アラスカとケベックを除くと、Eastern、Western、Texasの三つに分割されている(参照)が、一番小さいTexas Interconnectionでも日本の総面積の二倍弱もある。それに、―これは僕の想像だが―、アメリカの送電網は相対的に容量が小さく、もともとcongestionを起こしやすい状態だったんじゃないかと思う。

どちらにfocusすべきか迷ったのだが、結局、「アメリカ型」の問題を選択することに。日本に帰れば、「日本型」問題のエキスパートはいくらでもいるだろうし、だったら、「アメリカ型」を学んで帰る方が、多少なりとも稀少価値をアピールしやすいのでは?というスケベった判断から。「アメリカ型」問題の方が、経済学で斬りやすそうという(一応まともな)理由もあるにはある。(「日本型」問題は、economicsより、engineeringで斬るべき部分の大きな問題であるように感じられた。)

最終的に、現在、アメリカの各州(参照)で行われているRenewables Portfolio Standard(通称“RPS”。発電事業者に、一定割合以上の再生可能エネルギー源の利用(又はそれを代替するcreditの購入)を義務付ける制度。transmissionはカバーしていない)の改善案にまで辿り着ければbestなのだが、実際、そこまで届くかどうかは不明。まずは、なぜアメリカでは、再生可能エネルギー自体の普及は目覚ましいスピードで進んでいるのに―これ自体のスピードは、既に日本のそれを上回っている(参照)―、transmissionへの投資は滞ったままなのかを考えていこうかと。たぶん、今日のLilacさんのエントリー(“いまさら3Gのカバレッジが問題になるアメリカ”)にも通じるような話になるんじゃないかと思う。

具体例として、地元NY州か、お隣のPJM Interconnectionを取り上げようと思っているのだが(NYはRPSを導入済み。PJM傘下13州(DC含む)のうち9州もRPS導入済み(ただし、うち3州は未稼働)(*2))、どちらを選ぶかは引き続き検討中。PJMだと、面積的にも、プレイヤーの数の面でも、若干、話が大きすぎかなぁという気がしていて、地元というこもあって、やや心はNY州に傾いている。

*1 伊藤 学 (2007). 海外における風力発電の動向について ―主に電力系統への影響評価事例を中心に―, 季刊 エネルギー総合工学, 30 (2), 47-54.
*2 PJM web site http://www.pjm.com/Home/faqs/renewables.aspx#FAQ3 


Maxwell School, Syracuse, Feb 8, 12:22

Wednesday, January 27, 2010

Transmission Congestion Contracts

1999年以降、NY州内のtransmission(送電網)のoperationは、New York Independent System Operator (NYISO)が一元的に管轄しているという話は、一昨日のエントリーで書いた。今日は、そのtransmissionの利用に関するお話。

transmissionを利用するplayer(発電事業者(generators)、transmission owners自身、電力小売事業者(distributors))は、transmissionの使用のたびに、NYISOに使用料を支払うこととされている。そうして集められたお金が、各transmission ownersに分配されて彼らの稼ぎとなる、というのが、基本的な構造。「使用料」は、①Transmission Access Charges、②Congestion Charges、③Loss Compensationの3パートで構成されている。[Rothwell & Gomez (2003) p.146]

①のTransmission Access Chargesは、transmission ownersの資本投資を回収するための料金で、transmission使用料の基本部分を構成するもの、また、③は送電中のロスを補填するためのものである。ここで、問題になってくるのが、②のCongestion Charges(“混雑料金”)。これは、送電元と送電先の二地点間にtransmissionのボトルネックがある場合に発生するものだが、電力の需要・供給の流れは、時々刻々変化するため、非常にvolatileであり、transmission利用者にとって、大きなfinancial riskとなりうる。[Adamson & Englander (2005) p.2]

そこで考案されたのが、Transmission Congestion Contracts (TCCs) (NYでの名称はTCCsだが、より一般的には、Financial Transmission Rights (FTRs) と呼ばれている模様)。これは言わば、transmission資産の「証券化」商品で、これを持っていれば、その区間のtransmission使用料の一部が入ってくるという仕組み。transmission利用者が、実際に利用するのと同じ区間のTCCsを購入すれば、Congestion Chargesの変動に伴うfinancial riskをhedgeできる。また、TCCsを市場取引に晒すことで、追加的な設備投資が必要なボトルネック箇所の特定にもつながると期待された。

2000年の運用開始以降、この制度の有効性について、少なくとも二度の検証[Batholomew et al. (2003) 及び Adamson & Englander (2005)] が行われている。しかし、残念ながら、いずれの結果も、significantlyに「有効ではない」というもの。つまり、TCCs購入者は、――risk aversionのためのプレミアムを考慮に入れたとしても――リスクをhedgeするのに十分なだけのrentを回収できておらず、構造的に損を掴まされている状態にある、ということ。また、そうした「歪み」が発生しているため、「ボトルネックの特定」も正確には行えていないということになる。

てな具合いに、電力のお勉強は非常に面白いのだが、自分自身の統計学知識の薄らぎを痛感しつつある今日この頃。去年のStatsの講義ノートでも読み直してみようかしらん…。
my room, Syracuse, Jan 26, 25:13

Sunday, January 24, 2010

NYISO

この週末は、論文執筆の関係で、アメリカの電力産業制度について勉強をしている。まだまだ勉強途中なので、怪しいところも多々あるのだが、途中経過のメモを少々。

日本で「アメリカの電力産業」といえば、2000年及び2001年の加州電力危機、2003年のNY大停電といった、超ネガティブな記憶とともに、良くも悪くも「自由化が進んでいる」と言われることが多い。しかし、ここで言う「自由化」が具体的に何を指すのかと訊かれて、曲がりなりにも答えられる人は、意外に少ないのではないだろうか。

斯く言う僕自身、ようやくまともに勉強し始めたところで、まだまだ万全の自信を持って断言できるわけではないのだが、察するに、“unbundling”、即ち、「電力会社の垂直分離」こそが、その核心にあったのではないかと思う。発電事業者の参入自由化や、それに伴う電力卸売市場の立上げ、はたまた小売契約の自由化といった競争的改革も同時に行われたのは事実だが、電力産業全体に与えたインパクトの大きさで言えば、unbundlingが一番大きかったように思うし、また、他の競争的政策の基盤を確立する意味もあったのではないかと思う。

とは言え、連邦政府が「やる」と決めても、全国一律に話が進まないのは連邦国家アメリカの面白い(或いは、面倒くさい)ところで、電力自由化に関して連邦政府の示した目標の達成度合いは、州によって大きく異なっている(“One of the fundamental premises of deregulation was the introduction of competition through the unbundling of generation assets from transmission and distribution. However, states varied widely in their approach towards meeting this goal.”*)らしい。というわけで、制度及びその成果が、具体的にどうなっているかを知りたければ、連邦レベルではなく、州レベルに降りて行って、いろいろ調べないといけない。皆さん御存知の通り、一応、僕も“New Yorker”の端くれなので(自分で言ってて寂しい。。)、ここはとりあえず、NY州について見てみることに。

NY州には元々、New York State Electric & Gas Co.、Niagara Mohawk Power Co.など、8つの垂直統合型電力会社(英語で言うところのutility companies)があったが、90年代に、法的強制力を伴ったunbundlingが進められた(州によっては、義務的ではない「推奨」に留めたところや、それさえ行わなかったところもあり、NYはかなり強力にunbundlingを進めた州のうちの一つ。)。その際、transmission(送電事業)については、全市場参加者への開放(third party access)を確保するため、各utility会社に所有権(ownership)を残したまま、運用権(operation)だけを切り離して、New York Independent System Operator (NYISO) の下に集め、同社(いちおう非営利企業という形態をとっている)が一元的に運用を行うことになった(1997年設立。運用開始は1999年)。ちなみにこのISO(参照)という機関は、連邦政府の電力規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission (FERC))の後押しを受けて設立されてものであるが、先に書いた事情から、全国一律に設立されているわけではなく、下の地図からも見てとれるように、非導入地域もかなりたくさん残されている。

(出典:NYISO 2007 Annual Report)

NYISOのサイトによると、同社のmissionは以下の4つ。
  1. RELIABILITY — 電力系統の信頼性確保。
  2. MARKETS — NY電力卸売市場の監督・管理。
  3. PLANNING — 州内電力リソース及び電力需要の長期査定、事業計画の評価、政策決定権者への情報提供。
  4. TECHNOLOGY — 最新技術のdeveloping(開発)及びdeploying(普及)
一般的には、1.の業務がSystem Operator(SO: the entity responsible for transmission system operation and reliability.)、2.の業務がMarket Operator(MO: An organization that arranges wholesale transactions that affect the flows of electricity in the transmission system.)と呼ばれ、ISO事業の中核とされている。

てな具合いに、今学期は、電力(それもtransmission)の世界にどっぷり浸かる予定です。

* Sanyal, P. 2007 The effect of deregulation on environmental research by electric utilities
Maxwell School, Syracuse, Jan 24, 18:21