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Saturday, April 3, 2010

EU emissions plunge

このエントリでも紹介した、ロンドンに本拠を置くNGO“sandbag”が、昨日発表された、EU Emission Trading Scheme(EU-ETS)の最新取引状況について、分析記事をupしている。彼らの意見にすんなり同意できるわけではないが、cap-ant-tradeという制度について、political economy的な側面も含め、practicalに改めて議論し直す際の出発点としては参考になるかと。

以下、彼らの記事の中から、事実関係に当たる部分と、彼らの主張に当たる部分を、何点かピックアップ。(下線はblog筆者)

■事実関係■
New data released today reveals greenhouse gas emissions across the EU are in steep decline. Emissions covered by the EU Emissions Trading Scheme between 2008 and 2009 dropped by 11%, following on from a cut of 6% the year before.
Power generators saw their emissions fall by 119 tonnes (8%) last year but that still left them 124 tonnes short of permits. On the other hand heavy industry including steel and cement saw a fall of 96 million tonnes (18%) leaving them with 185 million tonnes of permits spare or 30% more than they needed.
At the moment, under the EU’s target of a 20% cut in emissions by 2020 this would mean a reduction in the cap of 1.74% a year. Today’s figures revealed that we are already half way to achieving that reduction level with a decade still to go.
■sandbagの主張■
unless caps are tightened there will be no overall reduction in pollution levels. Permits issued under the EU trading scheme can be banked forward indefinitely meaning they will sooner or later be used to pollute.
If they (=heavy industry) were to sell them at today’s prices this would raise €2.4 bn with most of this money would coming from consumers of electricity.
Given the cuts achieved to date, which can be banked, and the levels of reductions rich countries like the EU are now expected to deliver, it would seem tighter targets are the only sensible way forward.
いろいろと問題は叫ばれているものの、個人的には、cap-and-tradeを諦めるにはまだ早い(というか、それにまともに対抗出来うる手段がない)という気がしているのだが、殊、EU-ETSという具体的実施事例に関して言えば――目標値が緩すぎるかどうかは別にしても――、放置しづらい問題が、いくつか生じてきていると言えよう。そういった不具合がcurableなものなのかどうか、また、そうであれば、どういった対策で以て治癒できるのか、しっかり検証しておく必要があるなと思う。

このニュースに触れ、先学期、米国のcap-and-trade法案(←瀕死)についてのエントリを書いたことを思い出し、読み直してみた。やや書生的な匂いがしないではないが、この法案、非常によく書けているなと改めて感じる。残念ながら、この国で、この法案が日の目を見る可能性は、あまり高くはなさそうだが…。
my room, Syracuse, Apr 2, 26:43

Monday, March 29, 2010

Current mood around Cap-and-Trade

Heal care法案がひと段落して、マスコミ、メディアでcap-and-tradeの文字を目にする機会が増えている気がする。たとえば、NY TimesのJohn Broderが、25日付の新聞に“‘Cap and Trade’ Loses Its Standing as Energy Policy of Choice”との記事を載せれば、28日、ハーバードのRobert Stavinsが、同記事に絡めて“Who Killed Cap-and-Trade?”との記事を、web上で発表する、といった具合に。以下、両記事の抜粋・要約を。

■“‘Cap and Trade’ Loses Its Standing as Energy Policy of Choice” by John Broder
  • Why did cap and trade die? 
    • “it was done in by the weak economy, the Wall Street meltdown, determined industry opposition and its own complexity.”
  • 下院審議では、多数票を得るため、“coal companies, utilities, refiners, heavy industry and agribusinesses”に対する妥協的・例外的措置をふんだんに盛り込み。
    • オリジナルのシンプルさは失われ、反対派からは、“cap-and-trade”ではなく、“tax-and-redistribution”と評される結果に。
■“Who Killed Cap-and-Trade?” by Robert Stavins
  • そもそもcap-and-tradeは本当に「死んだ」のか?
    • 決して「死んだ」わけではない。
    • 現在、準備中のKerry-Graham-Lieberman legislationにせよ、その対抗法案であるCantwell&Collinsの“the CLEAR Act”にせよ、提案者たちは“cap-and-trade”とは呼んでいないが、実質的にはそれと同じ機能・性質を持った制度が、部分的にであれ、盛り込まれている。
  • なぜ短期間に政治的な人気が激減したのか?
    • the economic recession; the financial crisis; and the complex nature of the Waxman-Markey legislation (which is mainly not about cap-and-trade, but various regulatory approaches)
    • しかし、もっとも重要な要因は、単に、cap-and-tradeが、もっとも真面目な討議に付された案だという事実(the simple fact that cap-and-trade was the approach that was receiving the most serious consideration)。下院を通す課程の中で真剣な討議が行われ、それが、反対勢力に火を付けた。
    • こういった結末は、それがどんな形の政策であれ、最初の気候変動政策(any front-running climate policy)は必ず迎えていたであろうもの。cap-and-tradeだったからこうなった、というわけではない。
  • なぜアメリカではこれほどまでに気候変動対策政策に対する政治的支持が低いのか?
    • それによってもたらされる「被害」の直接の結果(a direct consequence of the “disaster”)が明らかではないから。(これまで、米国で立法化に成功した環境法案は、いずれも、何らかの環境被害が広く周知された結果として制定されたもの)
    • 昨今のワシントンの、党派対立を前面に押し出す風潮(partisan political climate)が、同法案成立を一段と難しくしている。
というわけで、頑張ってまとめてはみたものの、どっちの記事もたいして目新しいことは書かれてませんでした。さ、勉強しよ。
my home, Syracuse, Mar 29, 12:02

Monday, March 22, 2010

ObamaCare passed the Congress, and then ...

ヘルスケア法案(通称、ObamaCare)が議会を通過。

というわけで、少しくらいは知っておこうと、新聞・雑誌をいくつか流し読みしてみる。この記事(from The Economist)なんかが一番よくまとまっていて、僕のような、ObamaCare初心者にも分かりよいかと。
  
同記事によると、昨日の深夜に下院を通過したのは、「上院案丸呑み」法案と、“reconciliation”法案の二つ。前者の方は、(上院案丸呑みなので)これで以て、議会プロセス完了。後はObamaのサインを待つのみ。ここでObamaがvetoするはずはないので、最低限、この案の成立は確定。

一方の“reconciliation”法案は、上院のおかげで“flawed(「欠陥含みで」)and pork-laden(「豚肉満載の」。転じて、「選挙区向け公共事業満載の」)”になってしまった法案を、下院でもいちど叩き直したもの。よって、上院の再議決が必要なのだが、それには本来、60/100のsuper-majorityが必要(for filibuster-proof)なところ、Democrats執行部は、「これは予算関連の規定ですよ」ということにして(※ 予算関連規定であれば、budget reconciliation rulesで以て、単純多数決で通せる)、ことを進めようとしているらしい(同数だった時の最後の一票は副大統領Bidenが握っているので、厳密に言えば、過半数である必要もない。50票とれればOK)。

当然ながら、Republicanはこれに反発。「“reconciliation”法案の一部は、この条件に合致しとらん」と。こんな場合、どうやって収拾つけるんだろうか。背景知識がないので皆目、見当もつかず。

なんて記事を読んでいたら、隣に、Climate法案関連の記事も発見。Kerry、Lieberman 、Grahamの三者が、一段と、cap-and-trade色を弱め、エネルギー開発促進色を強めた法案を練り直しているとのこと。

Economistの見立てによると、新法案では、エネルギー開発への補助金が、“一丁目一番地”になるという。cap-and-tradeは、「その原資を得るため(“to raise money”)」という位置付けに格下げされ、capの対象はutilitiesのみ。

経済学的に言えば、― 税とcap-and-tradeのどちらが効率的かという議論はともかく、どうせcap-and-tradeを入れるのであれば ― economy-wideで入れる方が効率的なのは自明。R&Dなど、一部、公的補助が必要な部分はあるにせよ、それはあくまで「例外」として扱うべき。白黒逆転させて、utilityにのみ「例外」的にcap-and-tradeを導入してしまっては、cap-and-trade本来の効能は著しく損なわれる。

政策の効率が落ちるというとは、その分だけ、余計なcostがかかり、totalで見れば、同じ政策目標を達成するのに、より多くの公的負担が必要になるということ。にもかかわらず、議論はそちらの方向へと流れていってしまう。economicsの儚さというか、political economyの難しさというか…。

それでも、このタイミングで、何がしかの(連邦レベルの)cap-and-trade制度が、この国に成立するかどうかは、今後の世界の気候政策情勢に極めて大きなインパクトを持つ、と思う。実際のところは、きちんと数字を見ながら議論しないといけないが、直観的には、今の状況のままのEU-ETS市場が、今後も、単独で立ち続けていられるようには思えない。
Maxwell School, Syracuse, Mar 22, 19:33

Thursday, February 11, 2010

Tanjin Climate Exchange


今日付けのFTのweb記事(“Will Chinese emissions trading schemes gather momentum?”)が、中国における排出権取引市場の展開について報じている。

中でも一番進んでいるのが天津市のTanjin Cilate Exchange(天津排放権交易所)。Chicago Climate Exchange (CCX)の支援を受けつつ、目下、pilot schemeを試行中で、今年中には、本格稼働に移行するらしい(参照)。

CCX自体の停滞が物語っている通り、排出権取引市場をつくればそれだけでうまくいくというものではないが、learning-by-doingによって得られる知見は、少からずあるはず。本来、日本としても、この辺りの動きは、きちんとfollowしておく必要がある。まぁいずれにせよ、遅かれ早かれ追い抜かれちゃう(既に追い抜かれてる?)とは思うけど。。
Maxwell School, Syracuse, Feb 11, 13:15

Thursday, February 4, 2010

reserve price of GHG allowance

2月4日付のThe Economistで面白い記事(“Don't hold your breath - Why hasn’t the carbon price fallen further? -”) を見つけたのでクリッピング。
If European politicians actually wanted to raise the price of carbon in the short term, they could, says Michael Grubb, a Cambridge professor who is also chair of Climate Strategies, a network of policy advisers. New EUAs are regularly auctioned by Germany and Britain. They could set a reserve price of, say, €20. If no one were to bid, the supply of allowances would tighten until the price rose. When this idea was first raised last year, it attracted brickbats for constituting political interference. A fair criticism, perhaps, but given the political nature of the market, a redundant one.
オークションでallowance(排出枠)を競売する際に「最低落札価格」を設けておき、それ以下の買値しか付かなかったときには、その価格に達するまで、競売にかけるallowanceの量を絞っていくというもの。言わば、Kerry-Boxer法案(現在米上院で審議中の気候変動法案)の“排出権価格上限リミッター”(参照)の逆版(※)。

発想自体はそんなに目新しいものではないが、これが実際に導入されれば、いわゆる「低炭素型投資」はかなりやりやすくなるのではないかと思う。もちろん、最低価格の額次第ではあるんだけれども。

※ ざっくり言うと、「逆版」(K-B法は「価格上限」で、EU-ETSの新ルールは「価格下限」)なのだが、少なくとも以下の二点は違っていると思う。
  1. EU-ETSでは(この記事を読む限り)オークションの際にのみリミッターが発動するのに対し、K-B法案では、市場価格が上限値を上回った場合にもリミッター(=政府による「売りオペ」介入)が発動する。
  2. K-B法案では、介入量の上限が設定されている(=価格上限値は絶対のものではない)のに対し、EU-ETSのオークションでの価格下限値は(この記事を読む限り)不動である。
Maxwell School, Syracuse, Feb 4, 17:24